SCP-3499-JP
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アイテム番号: SCP-3499-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 現在の財団の技術では、SCP-3499-JPを物理的に収容することはできません。そのため、SCP-3499-JPを目撃した民間人に記憶処理を行います。SCP-3499-JPによる大気の異常が民間人に感知され、なんらかの記録に残された場合、適切なカバーストーリーを流布して対策を行います。

SCP-3499-JPと関連しているとみられる寓話『北風と太陽』は極めて広範に知れ渡っている上、それがオブジェクトに由来するものであると認識されていないため、収容措置はとられません。

説明: SCP-3499-JPは20代後半のコーカソイド系男性の外見を持つ異常な人型生物です。SCP-3499-JPは財団に友好的であり、死語や未知の言語を含む3000種類以上の言語を理解することが可能です。SCP-3499-JPの服装は時期や発見された場所によって違うものの、いずれもその場所にいる他の人物に比べ厚着であり、上着を着用しているという点で共通しています。SCP-3499-JPはいかなる手段を用いても傷つけることができません。

SCP-3499-JPは不定期に地球上のどこかの場所に出現し、イベント3499-JP-1及びイベント3499-JP-2と呼称されるイベントを発生させます。SCP-3499-JPの出現はさまざまな場所で観測されており、屋外であるということを除いて共通点は判明していません。SCP-3499-JPが消失してから出現するまでは最短で13分、最長では8年の開きがあることが確認されています。

イベント3499-JP-1はSCP-3499-JPの出現から5分後に発生するイベントです。イベント3499-JP-1が発生すると、SCP-3499-JPの半径15m以内(以下、イベント3499-JP-1影響範囲)にて大気を対象とした異常現象が発生します。この影響により、イベント3499-JP-1影響範囲では北から4.0m/sで風が吹くようになります。また、イベント3499-JP-1の発生中はイベント3499-JP-1影響範囲の気温が1.5℃下がることが確認されています。イベント3499-JP-1は15分ほど続き、その後イベント3499-JP-2が発生します。

イベント3499-JP-2はイベント3499-JP-1の終了後に発生するイベントです。イベント3499-JP-2が発生すると、SCP-3499-JPの周辺にある雲が未知の力によって跳ね除けられ、SCP-3499-JPの周囲50m以内は快晴となります。その後、SCP-3499-JPの周囲50m以内の温度は1分あたり0.5℃ずつ上昇していきます。SCP-3499-JPが暑さに耐えかねて上着を脱ぐと温度の上昇は止まりますが、そこから30分経つまで温度は変化しません。SCP-3499-JPが上着を脱いでから30分が経過するとイベント3499-JP-1によるものも含めて気温の変化は元に戻り、SCP-3499-JPやその衣類は消失します。

補遺1: SCP-3499-JPは数百年以上にわたって異常存在に関わる組織に認知されていきました。ASCIや陰陽寮といった財団の前身組織のほとんどがその存在を把握しており、またそのほかいくつかの歴史のある要注意団体にもSCP-3499-JPと考えられる存在の記録が残されていることから、SCP-3499-JPはかなり前から存在していたことが確認されています。このほか、古代ギリシアではSCP-3499-JPを元としたと考えられているイソップ寓話『北風と太陽』が存在しており、この寓話は世界的に広がっていることから収容ができていないものの、この寓話が何らかの異常存在をモデルにしたものとは考えられていないため、これといった収容措置は取られていません。

また、前身組織による発見当初からイベント3499-JP-1は一定速度で徐々にその異常性を弱めていることが確認されています。この速度でイベント3499-JP-1の異常性が弱まっていった場合、イベント3499-JP-1は将来的に無力化すると考えられています。

補遺2: 2023/04/09、███公園で休憩をとっていた塚山博士がSCP-3499-JPの出現を観測しました。SCP-3499-JPは穏やかな表情で4分ほど歩き回ると、そのまま最寄りのベンチに座って桜を眺め、その直後にイベント3499-JP-1の発生が確認されました。そのままインタビューが行われました。以下はそのインタビューの記録です。

対象: SCP-3499-JP



インタビュアー: 塚山博士

<記録開始>

塚山博士: こんにちは、旅人さん。

SCP-3499-JP: こんにちは、人間さん。では初めに、名前をお聞きしてもよろしいですか?

塚山博士: はい。塚山と申します。あなたのお名前は?

SCP-3499-JP: 私ですか?特にないですね。私は長い間人と会ってこなかったので、わざわざ名前なんてつけてもいませんでした。

塚山博士: はい、それではSCP-3499-JPと呼ばせてもらいます。

SCP-3499-JP: そうですか。なんだか変わった名前ですね。まぁいいでしょう。

塚山博士: ではまず、あなたとこちらの寓話には何か関係があるのですか?

(塚山博士がSCP-3499-JPに『北風と太陽』の内容が書かれた紙を渡す)

SCP-3499-JP: おお、これは……懐かしいものをもらいましたねぇ。

塚山博士: どういうことですか?

SCP-3499-JP: 私が数千年前にギリシャを訪れた時、お話が好きなアイソポスという人と出会ったのですよ。まぁ、あっという間にその人はいなくなってしまいましたけどね。私にとってはあれがいい思い出です。

塚山博士: 数千年前?あなたはそれほど昔からいたのですね。

SCP-3499-JP: はい。私はそれほど前からこの星を旅してきました。私を見るたび、北風と太陽は喧嘩をするのです。不思議でしょう?

塚山博士: 喧嘩?それほど激しいものではありませんが……

SCP-3499-JP: まぁ、そう思うのも無理はないでしょう。ついこの前までは喧嘩も相当激しいものでしたけどね。それこそ、木が揺れて、雨が降っていれば雪が降り積もるような……まぁ、それだけ北風が頑張っても私の上着を吹き飛ばすことはできませんでしたけどね。

塚山博士: は、はぁ……

SCP-3499-JP: 最初太陽が北風を煽ったので、北風は怒ってどんどん力を増していきました。しかし、どれだけ全力を出しても北風は私の上着を吹き飛ばすことができませんでした。疲れたのか、それともやっても無駄と感じたのか、北風は今度はどんどん弱っていきました。しかし今度は太陽が北風を煽るのが楽しくなってしまい、まだ喧嘩は続いています。

塚山博士: それはなかなかに痛ましい話ですね。あなたも当時は辛かったんでしょう?

SCP-3499-JP: はい、辛かったです。でも、私が辛かったのは実はそこではないんです。私は長い間、人と出会うことができずにいました。だからギリシャでアイソポスと出会った時、あの人と話をしたかったんですけど、人と出会わなかったので相手の言語が分からず……その後は場所を転々としながら、ちょっとずつ言語を学んでいきましたね。時々文字の読み書きを勉強しましたよ。おかげで今ではまるで苦労していないんですけどねぇ。

塚山博士: ほう、それで今、あなたはどう思っているんですか?

SCP-3499-JP: とても幸せですよ。私にはこういったちっぽけな存在の方が身の丈に合っています。ほら、見てください。あそこの桜が綺麗でしょう?

(SCP-3499-JPが上を見上げ、右手の人差し指で桜の木を見つめる)

塚山博士: (水筒の茶を飲む) そうですね。微笑ましい限りです。

SCP-3499-JP: はい。もう私は一人も傷つけたくないんです。代わりに、美しい景色を、風になびかれながら見ていきたい。それが私の身の丈に合っている気がしたんです。

<記録終了>

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