SCP-3939-JP
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SCP-3939-JP
Tiamat
LEVEL 4/3939-JP
CLASSIFIED

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SCP-3939-JPにより発生した樹海。12月25日8時頃撮影。

特別収容プロトコル: 気象庁と連携し噴火警戒レベルを3に引上げ、富士山への一般人民の侵入を防いで下さい。財団職員も許可なしに進入してはなりません。また、浅間神社には財団職員を潜伏させ、内部情報を常に収集して下さい。

記憶処理剤の散布は順次行われる予定です。これをもって蓬莱作戦は完遂とし、この報告書はセキュリティクリアランスレベル4機密に分類されます。

説明: SCP-3939-JPは2022年12月24日20時31分頃に発生した富士山の消失事象です。SCP-3939-JPは瞬間的に発生し、SCP-3939-JPの発生時に富士山上に存在していた人物及び構造物はその直下に転移しました。富士山が存在していた約1200km2は全域が樹海に変異しており、消失した岩石等の富士山を構成していた物質の行方は不明です。

補遺3939-JP.1: SCP-3939-JP発生に伴う影響

以下はSCP-3939-JPの発生から約10時間後に提出された調査報告書です。緊急で作成されたため報告者の主観的表現が一部残存していることに留意して下さい。

緊急調査報告


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積雪し始めた熱海市。12月24日21時頃撮影。

  • 天候

富士山はその大きさから主に冬における寒波を遮っており、そのため静岡県東部は比較的天候が崩れにくい状態にありました。しかし、SCP-3939-JPが発生したことにより寒波が直撃したため、発生直後の12月25日0時頃には-11℃を観測し、それと同時に86cmの積雪が確認されました。これにより住宅の倒壊・落雪による生埋めなどの被害が発生し、もともと積雪がほぼ発生していなかったことも相まって被害は大規模に発展しました。今後も強力な寒波の到達が予想されており、早急な対策が求められます。


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富嶽三十六景より版画「山下白雨」

  • 文化

富士山は2013年に世界文化遺産に指定されており、古来からその風貌が絵、写真、工芸、和歌、物語などで表現されていました。また、日本の象徴的な存在として信仰対象にもなっており、活火山であり頻発的に噴火が発生することから富士山自体を怒れる神とする信仰が存在しています。このように富士山は深く日本文化に根ざしており、例え記憶処理により富士山という存在を全人類から忘却させたとしても記憶と記録の不整合によりさらなる混乱を招き、長期的な対応としては不十分であると考えられます。


[93件のエントリが省略されています]

上記の報告が提出された時点で既に混乱や被害は広域に拡大しており、これ以上の隠蔽は不可能と判断されました。そのため、財団はBK-クラス"壊された虚構"シナリオを宣言し、SCP-3939-JPはTiamatクラスに分類されました。

補遺3939-JP.2: 蓬莱作戦

SCP-3939-JPの脅威は広範囲に及んでいますが、それらはほぼ富士山の地理的条件に関連して発生しているため、富士山そのものをSCP-3939-JP以前の状態に復元することが最も有効であると判断されました。SCP-3939-JPの発生から6日経過した12月30日、大規模な収容及び鎮静プロトコル「蓬莱作戦」が提言・承認されました。

蓬莱作戦


前文: 以下の作戦は仮説的世界終焉事象規定に基づきSCP財団収容部門を中心とした多数の部門により緊急作成されました。一部のセクションは不確定な要素を含有するため削除されている場合があります。

抜粋: 蓬莱作戦は未曾有の事象であるSCP-3939-JPの影響を鑑み、ノストロモ計画の技術を利用してSCP-3939-JP以前の富士山を復元するため作成されました。

作戦情報: 富士山は地理的・文化的要因から日本に対し多大な影響を与えており、隠蔽工作は困難です。そのため、現在保有されている富士山の表層領域を用いて現実改変により復元を行います。以下は作戦スケジュールの簡単な概要です。

  • t-9: 周辺の一般人民の退避を開始。
  • t-1: 上記の完了。
  • t=0: 旧富士山山麓周辺に5箇所を中心にSRA及び周辺機器を展開。
  • t+2: SRAの起動。
  • t+8: SRAの停止。
  • t+11: 山麓周辺の調査を開始。
  • t+16: 上記の完了。その後、調査部隊を派遣し山頂周辺の調査を開始。
  • t+19: 調査部隊が山頂に到着。
  • t+21: 調査部隊の帰還。
  • t+24: 最終撤退の完了。
  • t+24以降: 全世界に対する記憶処理剤散布。ヴェールの復元。

蓬莱作戦は翌31日に実施されました。以下はその簡易記録報告書です。完全版はこちらを参照して下さい。

SCP-3939-JP収容報告 簡易版


日時: 2022年12月31日 9時36分

担当: SCP財団日本支部職員 約3939名

付記: 周辺の一般人民の退避は完了済。


«ログ開始»

9:36 (t=0): SRA及びその周辺機器の設置開始。この時点の気温は-8℃であり、低温による故障の可能性があるため予備機器も持ち込まれた。

10:53: 設置が完了。最終点検を開始。

11:26: 一部機器の交換の後、点検が完了。それとほぼ同刻に現場に向かう不明な集団の存在が報告され、現場は警戒態勢に突入する。緊急時に備え部隊は既に配置されている。

11:50: 警戒態勢のままSRAの起動が決定され、SRAは正常に起動する。カント計数機は128Hmを示し、SCP-3939-JPによって発生した樹海が消滅し始める。

12:48: 旧山麓付近の岩石が急速に顕現し始める。これと同時に、震度1~3程度の小規模な地震が多数観測される。富士山上に存在していた構造物は岩石に押し上げられている。

14:57: 標高1000m程度まで顕現が完了する。このとき、蒐集院を名乗る集団1により襲撃を受ける。対象は奇跡論能力を行使し、機動部隊と交戦状態に突入する。作動中のSRAが破壊された場合の被害は予測不能であることから緊急停止されるが、停止中に一部が破壊され、108Hmまで低下する。これにより標高1100m地点の山肌が一部崩壊し、SRA・周囲の財団職員に対して落石が突撃する。直後にSRAの停止が完了するが、富士山の上部は不安定化している。

15:09: 交戦中であるが、予備のSRAが起動される。不安定化した部分は流動的に形が変化している。一時的に現実性濃度は196Hmまで上昇され、安定化が図られる。この時点で交戦対象の終了が許可される。

15:12: 交戦が終了し、富士山の安定化が完了する。当初の現実性濃度による現実改変が再開される。

17:00: 標高3939m程度に到達する。湧水やマグマ溜まりの復元が確認される。

17:22: 静岡県東部を震源とした震度5強を観測する地震が発生。富士山の顕現に伴う地震である旨が報告されたため現場では停止せず続行される。また、この時点から緩やかな気温の上昇が確認される。

18:13: 山頂までの顕現が完了する。しかし、富士山の火口内にSCP-3939-JP以前に存在していなかった巨大な岩石の存在が確認される。

18:39: 山頂部に限定して現実改変が再行使される。変化は確認できず、これ以上の現実改変は無駄であると判断される。SRAの停止が開始されるが、急激な現実性濃度の低下による崩壊を防ぐため、徐々に出力強度を低下させる。

19:12: SRAが完全に停止され、山麓付近からの撤退が開始される。周囲2kmが規制されているが、富士山の復元が完了したことにより一般人民が殺到する。警備を強化。

22:00: 一般人民を退避させたため調査部隊が派遣される。

2023年1月1日

2:56: 標高3939m地点までの全ての調査が完了し、調査部隊は山頂に向かう。

6:01: 調査部隊が山頂に到着。

6:42: 山頂の調査が完了し、調査部隊が下山を開始する。

9:15: 調査部隊が帰還。完全撤退が完了。

«ログ終了»


後記: 山頂の調査については別途記録が存在します。詳細は補遺3939-JP.3を参照して下さい。

補遺3939-JP.3: 作戦結果

蓬莱作戦の結果、富士山の復元に成功したものの富士山自体の神格化が観測され、SCP-3939-JP-Aに分類されました。SCP-3939-JP-Aからは多量のEVEが観測されていますが、奇跡論能力の行使の兆しはありません。しかし、いかなる物理的・超常的改変による影響をもうけておらず、全て無効化しているか、 即座に自己改変を行っている可能性があります。また、後記の調査結果から、SCP-3939-JP-Aの火口に存在している巨大な岩石はSCP-3939-JP-Aの核または本体であると考えられています。

以下は山頂における最終調査記録です。

音声映像ログ


日時: 2023年1月1日 6時01分

担当: エージェント・██

付記: エージェント・██は登山家であり、富士山の登山には長けている。


«ログ開始»

[まだ日は昇っておらず、周辺は暗い]

6:01: 山頂に到着しました。記録を開始します。

6:01: ではまず最初に確認されていた岩石の調査を行います。

6:02: えー、半径約300m、火口を埋めるようにして存在しています。ポータブルPTA及びカント計測器も反応しています。おそらく神格実体、またはそれに類するものであると思われます。外見はただの岩石と違いありません、そしてこちらに反応する様子も示しません。

6:03: また、体感ですが、多少の熱気が感じられます。この数十年間は火山活動が見られていないので、単純に活発化しているだけであると考えられますが、そうであるのならば調査を急ぎます。

[移動のみであるため省略]

6:26: 浅間大社奥宮の前まで到着しました。隣の郵便局は変化ないようですが、この奥宮は酷く破損しています。

6:27: 老朽化したようにも見えますが、それとしては外傷が多すぎるように思います。

[深く呼吸をする]

6:27: そして、この空間だけ酸素が十分にあります。標高が3500mですが、とても綺麗な空気があるように感じます。

[エージェント・██は黙り込む]

6:29: 何らかの精神影響を受けている可能性があるのでこの場を離れます。

[移動のみであるため省略]

6:37: 剣ヶ峰に到着しました。こちらは通常です。

[周囲がだんだんと明るくなる]

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エージェント・██が撮影した写真。

6:38: 丁度日の出みたいです。初日の出ですね。

[エージェント・██は写真を撮影する]

6:38: 旧観測所の中を調査します。

[何も異常は確認されない]

6:41: こちらも通常です。それでは下山を――

[沈黙]

6:41: 例の岩石ですが、日光が当たっていません。岩石がある部分だけ影になっています。日光を遮るものは存在していないため、光を吸収しているものだと考えられます。各種数値は変化ありません。

[エージェント・██は周囲を見渡す]

6:42: この他に異常は確認できません。記録を終了し、下山します。


«ログ終了»





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