SCP-5226(記録用:Posthumous Postproduction™ by Westhead Records™ (A wholly-owned subsidiary of Westhead Media™))
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ウェストヘッド・ビルディング、ロサンゼルス。


特別収容プロトコル: SCP-5226は、GoI-1783から移送された分類待ちの異常実体群と共に、サイト-19の防音保管ユニットに収容されています。毎週1回、ユニットから1実体を取り出し、補遺5226.1に詳述されているように財団サイト内のラジオ放送に使用します。実体群は食物、水、刺激を必要としないため、概ね自己維持的な収容が行われています。

説明: SCP-5226はラスベガスを拠点としていたアマチュア音楽家、シックス・サヴェッジ (本名 ジェイソン・ヒギンズ) の蘇生した遺体です。SCP-5226は腐敗が進行した状態ですが、更なる劣化は異常な手段で阻止されており(補遺5226.1参照)、その挙動は未発表楽曲を発声することと大声で唸ることのみに制限されています。知性は無いと考えられています。

25歳のヒギンズは、幾つかのインターネット音楽サイトに自らの楽曲を投稿し、多数のシングル曲でミニヒットを記録したことによって、カルト的なファン層を得ていました。発表が近付いていたデビューアルバム “Savagery Vol. 1”を宣伝するための全国ツアーの主役を務めた後、ヒギンズは2017年6月4日にラスベガスで大規模な帰郷コンサートを開催し、ラスベガスでも近年最大級の観客を集めました。このコンサートから間もなく、所属レコード会社との契約を再交渉しているという噂が流れる中で、彼は公の場に姿を見せなくなりました。6月25日、セレブリティ関連ニュースサイトのTMZは、ホームパーティーでコカインを過剰摂取したヒギンズが発作を起こし、サンライズ病院医療センター(SHMC)に救急車で搬送されたと報じました。ニュースは数分後に確証されました — SHMCの医師たちはヒギンズの蘇生を試みましたが成功せず、6月26日の12:02 AMに彼の死亡を宣言しました。

ヒギンズ死亡のニュースは、インターネットと音楽業界で同情と哀悼の意を呼び起こし、同時に彼の未発表楽曲が今後どうなるかについて若干の詮索が行われました。ニュースが財団の関心を引いたのはこの詮索が切欠です — 自動ウェブクローラはGoI-1783、正式名称 “ウェストヘッド・メディア” に関するオンライン上での言及の急増を報告しました。調査の結果、ヒギンズは帰郷コンサートから間もなく、ウェストヘッド・レコード1との契約を結び、彼らの“Savagery Vol. 1”販売権を認めたことになっていると判明しました。何らかの異常活動があったか否かを確認するため、エージェント チャズ・アームストロングがウェストヘッド・メディア代表者との会談に派遣されました。


補遺 5226.1

インタビュー


質問者: エージェント チャズ・アームストロング

対象者: ウェストヘッド企業構造コンストラクト #324

«記録開始»


WC324: ヘイヘイヘーイ、調子どうですかぁ? 何か飲みます?

アームストロング: どうも。せっかくだが-

WC324: コーヒー? お水?

アームストロング: 結構だ、本-

WC324: コーク? それともコカイン系のコークにしますか - そっちがお好みでも私は全然オッケーですよ。

アームストロング: …いいんだ、構わないでくれ。もし可能なら上司と話したいんだが?

WC324: おぉーう。すみませんね、無理です。ちょっとここではそういうのやってないんですよ。私たちが報告する相手は取締役会だけですけど、彼らが面会に同意するとは思えません。それに取締役会が報告するのは… ま、本末転倒な話は止しましょ。ともかく、あなたのお相手は私だけです。でも多分知りたい事はお話しできますよ。

アームストロング: 成程ね。じゃあ、最近のヒギンズ氏の死について話し合いたい。

WC324: ヒギンズ、ヒギンズ。少々お待ちを…

[WC324はファイルキャビネットの中身をめくり始める。]

WC324: ハンクス、トム… ヘップバーン、オードリー… ヘンドリックス、ジミ… あーこれこれ。ヒギンズ、ジェイソン。ははぁ - サヴェッジさんですね。

アームストロング: そうだ。突然早世する直前、ヒギンズ氏はお前たちと契約を結んだそうじゃないか。何も妙な事は起きてないんだろうな-

WC324: 素敵な声してますね、あなた。

アームストロング: あー、それはどうも?

WC324: それにイケメンですし。

アームストロング: 何だって?

WC324: 特技とかあります?

アームストロング: 素手で人を殺す方法を15種類実践できる。

WC324: イケてますねぇ! スターの素質ありますよ。立身出世できること間違い無し。あなた才能に恵まれてます、私にかかればカルト的な-

アームストロング: はいはい、興味無いね、どうも。

WC324: あぅ。でも女の子のチャレンジ精神を責めたりしないでしょ?

アームストロング: 分かったよ… とにかく、何か異常な事件が発生しなかったかを確認したいんだ。一般大衆に見せたくないようなアレだよ。呪いの契約とかな。

WC324: ウチでは“ヴードゥー”って用語を使います。それか“おまじない”。

アームストロング: 勘弁してくれ。

WC324: ちゃんと試験したんです! なんと契約を結んでないアーティストの70%は、契約書に呪いや魔術やジンクスその他が掛けてあるって事前に話すとレコード契約してくれないんです。比較してヴードゥーやおまじないって言葉を使った場合の辞退率はたった45%なんですよ!

アームストロング: それは… それでもかなり多い気がするぞ。

WC324: かもですけど、いちいちそんな統計取る人がいると思います?

アームストロング: …お前が今- いや、いい。つまり、ヒギンズ氏には呪-

WC324: おまじない。

アームストロング: おまじないの掛かった契約書を渡したんだな。

WC324: いーえ。契約は完璧に魔法度数0%です。ま、署名したペンは昔殺人にも使いましたけど、誤差の範囲ですよね。

アームストロング: …何か隠してるだろ。

WC324: それはその、ちょっと裏技と言いますか。それ自体は魔法じゃないんですが…

アームストロング: さっさと吐け。

WC324: あのですね、殆どの契約にはある条項が添えてあるんです。もしアーティストが死んだら、我が社が遺産の代わりとして全てのライセンスと流通を管理する、という。

アームストロング: 下劣だが確かに魔法ではないな。しかし、アーティストがもう作曲できなくなってるのに流通を管理して何の意味がぁぁぁあーはいはい成程ね。

WC324: ええ。モルグから遺体を持ち出した後、我が社の死霊術師ネクロマンサーの1人を呼んで-

アームストロング: 待て、お前たちの何だと?

WC324: - 死から引きずり上げたんです。ただ残念ながらその、我が社で雇ってるのは、えー、最上級とまでは-

アームストロング: ド素人のネクロマンサーを雇ったんだな。

WC324: 死霊術ネクロマンシーって結構お高いんですよ。

アームストロング: 従業員はただのネクロマンサーじゃなくて、安売りのネクロマンサーか。やれやれ。オーケイ、ヒギンズ氏は何処だ?

WC324: 地下ろ - えっと、レコーディングスタジオです。昼も夜も歌を吐き出しまくってます。今後の予定としては、誰も聞いたことの無い“幻の”ミックステープ集として、思いっきり誇大宣伝しながら売り出していくつもりです。彼の人気が死後に急上昇したの知ってますよね? 彼は今後数週間、地球上で最も有名な人物の1人で、しかももう生きてないんです。誰かが利用しなきゃ嘘ですよ。

アームストロング: 人の心が無い。

WC324: だけど完全に合法です!

アームストロング: そもそもどうして一切合切を白状してる?

WC324: そりゃあ… 皆さんが我が社を阻止できるわけじゃありませんから。法には全く触れてませんし、ビジネスを内密に保つのはトリガージョッキーな皆さんよりも我が社の方が得意です。それに、もし我が社を止めたら止めたで、きっと皆さん、ビルボードTOP40の歌手の半数が一夜にして失踪した理由の説明にきっと困るでしょうね。

アームストロング: な、何?

WC324: これは我が社の初めてのロデオじゃないんですよ。このビジネスモデルはかれこれ10年近く音楽業界を生かし続けてるんです。あの手のセレブってホントにどうしようもなくってですね、15行ちょっとの歌詞を1つ書いたらダンスフロアにバタッと倒れてそれっきりです。私たちはファンを失望させないようにしてるだけです。

アームストロング: 巨額の利益を荒稼ぎしながらな。

WC324: 美味しい副作用です!

アームストロング: 成程。じゃあ、お前たちに取引を提案したい。

WC324: 取引は大好きですよぉ…

アームストロング: だろうね。取引内容はこうだ - アルバムが発売されたら、直ちにヒギンズの遺体をこっちに引き渡せ。それ以外のゾンビ・ボーカロイドも全部だ。

WC324: 応じる理由がありますか?

アームストロング: もし応じないなら、俺たちがそいつらを押収して、お前たちの商売を永久に終わらせて、お前をサイトに叩き込んで腐るまで放置する。さっきの提案なら、お前たちは少なくとも商売を続けられるだろ。

WC324: 強談判ってやつですね! 私から上司に掛け合います、それでどうですか?

アームストロング: ああ… お力添えありがとう。

WC324: やっぱりどうしても銀幕に顔を出してみる気にはなれませんか?

アームストロング: 生憎だが、俺は死んだら墓の下で眠っていたい… うん?

WC324: ん?

アームストロング: 一つ訊きたい - ヒギンズ氏の死因は知ってるよな?

WC324: コカインですよね?

アームストロング: そうだ… もしかしてお前らが-

WC324: おおっとこんな時間、もうすぐ11:30じゃないですか! 忙しなくてゴメンなさーい!

[アームストロングがぞんざいにオフィスから追い出され、インタビューが終了する。]


«記録終了»

インタビューに続いて、GoI-1783の代表者たちは、29体の蘇生死体をサイト-24の近隣へ移送する手配を行いました。暫定的にSCP-5226-2から-30と指定されたこれらの遺体には、E████ P██████、L██ P███、W██████ H█████が含まれます。長期収容体制が整うまでの間、実体群は財団サイト内放送ラジオで流す作業音楽を提供しています。

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