前置き: 2021年12月11日、エクストラバーサル事務部門での経験と、異次元に関する知識量が評価され採用されたエージェント・ロウとエージェント・クローマーによって調査が行われました。疑惑を避けるため、双方のエージェントは私服を着用の元、標準的なサイドアームのみを所持し、隠したマイクとカメラを装備していました。
エージェント・ロウとエージェント・クローマーがSCP-6108の入り口に近づくと、すぐに若い白人女性スタッフが迎え入れる。彼女の名札には"シャルロッテ"と記入されている。
シャルロッテ 卸売のシェルモへようこそ!会員証の提示をお願いします!
ロウ: 俺たちはあんたの店の会員資格を持っていないんだ…
シャルロッテは憤慨し、ため息を吐いた後、指をパチンと鳴らす。他の3人のスタッフが合流する。
シャルロッテ: 聞きましたよね。この人達はカードを持ってないって。もう何をするか、わかりますよね。
4人のスタッフ全員が歌を歌い出す。歌詞はSCP-6108の優れた点と、エージェントらがカードを取得する理由の説明を中心に展開している。この歌は約10分間継続する。簡潔にするため省略。
ロウ: …今の本当に必要だったのか?
クローマー: 素晴らしいね。
シャルロッテ: 私はルールなど作りませんよ。
クローマー: それで、誰がする?
突然、店全体のインターホンシステムがオンになり、一連のでたらめな放送が発信される。エージェントらは発言内容を理解できている。
SCP-6108-1: 私ですよ、私。シュレモです。どうぞ何なりとお申し付けください!…待って。お二人と話したことがない?これどの世界ですか?
ロウ: どういうことだ?
SCP-6108-1: なんで自分の世界を知らないんですか?!自分の住所を知らないことと同じですよ!…ちょっと待って、すぐに確認させてください。
SCP-6108-1が再び発言する前に、紙がめくられ物体が落下する音がスピーカーから発せられる。
SCP-6108-1: わかりました、私の間違いでした!その話したというのはすぐ隣の世界のロウとクローマーでした。妙なタイミングですね。つまり、あなたの偽物さんも私の店を見つけているのです!でも、あなたたちはどちらも彼らより少しずんぐりしてますね。特にあなた、クローマー。
クローマー: おい!
ロウ: なんで俺たちがここにいるのか、話を戻せるか?お前が既に俺たちの…偽物に会ったなら、俺たちがここの調査をするために来たことも知っているんだろう?俺たちはこの場所をもっと知る必要があるんだよ。
SCP-6108-1: では彼らに与えたものと同じルーティンをあなた方に与えなければなりませんね。お二方、ミス・シャルロッテに従ってください。
シャルロッテがSCP-6108の奥に向かう。エージェントらが彼女の周りを動く。SCP-6108内の製品のレイアウトは、卸売店のもののように見られる。製品は大きな金属製の棚と施設中央付近の列に積み重ねられている。他の買い物客は見られず、休暇状態の従業員だけがそれぞれの区画を掃除している。
クローマー: ああ、この場所は"コストコ"を思い出させるな。
シャルロッテら従業員全員はエージェントらの通路に立ち寄り、ぞっとするような表情でエージェント・クレーマーを睨みつける。SCP-6108-1は数秒間沈黙する。
シャルロッテ: …どうぞ。
SCP-6108-1の音声が著しく大きくなる。
SCP-6108-1: 何を言ったのですか?
クローマー : んー何もない!そうだな、ここはコストコを思い出させるなって。
SCP-6108-1: ここにその話題を持ち込まないでください!コストコは、私のアイデアを盗んだ才能のない貸し馬ですよ!
ロウ: 待て、ちょっと待て。プライスクラブとコストコは、次元を超えた店舗として創られたというわけか?
SCP-6108-1: まるで地獄のように明確なんですよ!それは!やつが私のアイデアを盗む前、やつは私のために労働していたんです!今やつは新たなる世界に飛びつき、同じような奴らに卸売小売の美徳を伝えています。多次元宇宙でプライスクラブを設立していない世界がいくつあるか知っていますか?ゼロ!!!
ロウ: こいつが怒らせてしまったのなら、悪かった。続けてもいいか?
SCP-6108-1: …はい、もちろんですよ。申し訳ありませんが、その場所の話題を持ってこられると、私はちょっと熱くなってしまうのです。さて次に進むと、左手に宝石店があります。すべての宝石は、亡くなったトレジャーハンターの所有物とバカランブラッドマインから倫理的に調達されています。
ロウ: 誰の…あれ?
エージェント・ロウは展示ケースの前で、頭が大きな青い人型の地球外生命体の形を模した偶像を指差す。その偶像は頭からつま先まで全身が宝石で覆われており、装飾の重みから、体制を保つのに苦労しているように見える。
SCP-6108-1: それは私たちのジュエリースタンド、ハリーですよ。素晴らしくないですか?動くことはほとんどないですし、最低でも10ポンドの価値があります。
ハリー: シュレモ、僕は-
SCP-6108-1: ハリー!マネキンはそんなばかげたことを話しません!…失礼、では次の区画に移動しましょう。
宝石店を通り過ぎる際、偶像は静かにエージェントに「助けて」と囁く。
クローマー: 少し…倫理的とは言えないかな。
SCP-6108-1: 心配しないでください、クローマー!私たちは彼にお金を払っているのですよ。
SCP-6108-1はマイクから離れた場所にいるであろう人物に話しかける。
SCP-6108-1: 払っていましたよね?…ああ、構いません。よしよし。
SCP-6108-1: 次の区画は私たちの強硬派です!これは、私たちがすべての電子機器、家庭用品、および食品ではないその他のものを備蓄する場所です!お気軽にご覧になってくださいね。
エージェント・ロウはラベルに"グロムの魂の吸盤"と書かれている、上部に単一の円形の開口部がある大きな金属管に近づく。
ロウ: おい、シュレモ。こいつの対処はー
エージェント・ロウは、金属管が自身の口から、発光する白いガスのような未知の物質を抽出し始めると、発言の途中で突然顔が崩壊する。シャルロッテが前に出て金属管のスイッチを切り、エージェント・ロウから出たガスを体に送り返す。そのとき、エージェント・ロウの恐ろしい幻影は金属管の途中にある。
クローマー: くそったれ!ロウ、大丈夫か?やつは君の魂を吸い上げていたんだ。野郎!
ロウ: 咳 咳 ああ、お前の言うことぐらい理解できる。俺はそこにいた。シュレモ、説明してくれないか?なんで俺がほぼ幽霊になっていたか。
SCP-6108-1: お詫びします!ごめんなさい!従業員は電化製品を棚に並べる前に、製品の電源を切ることになっています。今あそこを担当しているのは誰ですか?トム、そうですか?
次元の裂け目が頭上に開き、裂け目が従業員の一人を吸い上げると、1つの通路から恐ろしい悲鳴が聞こえる。
SCP-6108-1: 異次元内での1週間と1時間の対価は、彼に電化製品の電源を切るように伝えることですね。
クローマー: 何度も繰り返すけど、少し倫理的とは言えないな。
SCP-6108-1: きっと大丈夫ですよ!悪魔より速く走る必要はないのです、あそこに送ったのは彼が最後ですよ!とにかく、次の区画、パン屋と肉屋の解説に移りましょう!
エージェントらは建物の奥に導かれる。パン屋に着くと、エージェントらは匂いを嗅ぎつける。
ロウ: シュレモ、この匂いは何なんだ?俺はこんな匂いを嗅いだことがないな。これは…
クローマー: おいしそう!
SCP-6108-1: それは恐らく、この店舗での代表的なパイのことですね。自家製のレシピが代々シュレモ家に受け継がれています。シャルロッテ、1つ取り出して、お二方にサンプルをさし上げてください。
シャルロッテがパン屋に入る。プラスチックケースに入ったパイを持って戻り、エージェントらに差し出す。エージェントらはパイに対し違和感を抱く。
ロウ: …なあクローマー、このパイには顔があると言ってくれ。俺は狂っていないと言ってくれ。
パイ: 私を食べなさい。私を飲み込みなさい。
クローマー: 君は狂っていないかって?俺たち二人とも狂ってるな。
SCP-6108-1: わかってます。自我を持った小麦粉を使う食品には慣れていませんよね。安心してください。あなたがパイの願望を乗り越えてさえしまえば、今まで食べた中で最高のパイにきっとなってくれますよ。
ロウ: なあ、今すぐ食品店に行けるか?肉屋を飛ばしても大丈夫だと思うのだが。
SCP-6108-1: 構いません。でも、最新のリンカーンステーキをお見逃しなく。
クローマー: 何が-
ロウ: よせ。たぶん聞かないほうがいいだろう。
エージェントらは食品店、特にさまざまな種類の穀物やオーツ麦がある通路へ案内される。エージェントらと同じ世界の食品もあれば、解読不能な名前が刻まれている商品もある。
SCP-6108-1: 最後に、至って普通の食品たちです。残念ながら、このシリアルを作る術はありません-
「カズボ」というラベルの付いた箱から、助けを求めるような小さな叫び声が聞こえる。揺れた箱をシャルロッテが押し戻す前に、一瞬、棚の端から箱が落ちていくように見える。
ロウ: シュレモ…。
SCP-6108-1: あなたたちの世界にカズボが存在していないことは言わないでください。当店で最も人気のあるシリアルですよ。
クローマー: 穀物に変わったところでパイから遠ざかったわけではないぞ。
ロウ: どうせ残りの店も同じなんだろ。シュレモ、薬局とかは?
SCP-6108-1: 退屈ですね。では、医薬品店でも寄っていきましょうか。ねえ、シャルロッテ。
エージェントらは、通常の食品とパッケージの混合物が保管されている食品通路の奥へ誘導される。医薬品店は通常の卸売店とほとんど同じように見られる。
クローマー: …ちゃんとしてるな。普通すぎる。おいシュレモ、この薬のキャッチフレーズは何なんだ?
SCP-6108-1: キャッチフレーズ?必要ですか?そんなもの。それは全部ただの薬です。ボトルを手に取り自分の目で確かめてください。
エージェント・ロウはカウンターに近づき、「シュレモのスキンリムーバー」と書いてある小さな薬瓶を手に取る。
SCP-6108-1: わかりましたよ。一分の人が触れてくれること自体は知っていますが、すべての世界で同じことが言えるわけではありませんよね。確かに、爬虫類のお客さんのことも考えなければなりませんね。
ロウ: 今のところ、ここらで十分だと思う。そろそろ休んだ方がいい。
SCP-6108-1: ああ、やめてください。待って下さい!最後に1個だけ。お願いします!私たちのフードコートは、多元宇宙全体でかなり有名なんです。今すぐにでもあなた達は実物を見たほうがいいですよ。
クローマー: 最後の1つは傷つけられなかったな、なあロウ?
ロウ: …わかったよ、さっさと見せてくれ。
シャルロッテはエージェントらをSCP-6108入り口付近の隅っこに誘導する。小さなフードコートが目の前にあり、メニューは名簿表とともにぶら下がっている。メニューは「チョリソーシチュー」の1品のみ。
クローマー: 期待させておいて…異次元の店にはもっとあると思うだろう…
SCP-6108-1: チョリソーシチューがどれだけ美味しいかわからないから言っているだけですよ。ここでは二人分の食事をお作りしましょう。コンスエロ!素敵な紳士たちにチョリソーシチューを持ってきてください!
メニュー表の後ろのキッチンから、地球外生命体のものらしき悲鳴と流れる音が大声で聴こえる。
SCP-6108-1: …「まだ調理中」ってどういうことですか?!6年間も調理してきたのにですよ?ああ、しまった!
ロウ: クローマー、もう十分見たぞ。
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