SCP-798-JP
アイテム番号: SCP-798-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-798-JPは高い耐火性能を持つ特殊壁で構成された収容室に収容してください。万が一、SCP-798-JPの花弁が損傷した場合には、該当するSCP-798-JPを手折り異常性を喪失させた上で焼却してください。
説明: SCP-798-JPは花弁内部に異常な熱源を持つヒガンバナ(Lycoris radiata)です。現在、財団は982輪のSCP-798-JPを収容しています。SCP-798-JPは他の同種とは異なり、日光や水分、肥料を必要とせずに生存することが可能です。SCP-798-JPが枯死することはなく、SCP-798-JPの外観は収容当初から変化していません。
SCP-798-JPの花弁を損傷させると、内部から3000℃以上の粘性率の高い流体(以下、SCP-798-JP-1)が流出します。SCP-798-JP-1の大部分は未知の成分で構成されていますが、微量にヒト由来の成分が含有しています。SCP-798-JP-1は高温であるにも関わらず、SCP-798-JPが損傷しない限り、花弁表面や周囲には熱が伝達されません。人間がSCP-798-JP-1に接近・接触した場合、本来発生するであろう火傷等の症状は発症せず、その影響はただ僅かな温もりを感じるだけに留まります。SCP-798-JP-1の影響によって他のSCP-798-JPが損傷することはありません。
SCP-798-JPに接触した人間は不明な人物(以下、認識主体)を主体とした一人称視点の視覚情報を瞬間的に取得します。視覚情報の時間的な長さは一定ではなく、また、得られる情報はSCP-798-JPに接触する度に変化します。視覚情報に稀に写り込む認識主体の身体的特徴から、それぞれの認識主体は同一人物ではないことが判明しています。
人間がSCP-798-JPの茎を手折ると、SCP-798-JPは上記の異常性を全て喪失します。それ以外の外的要因による破損は異常性の喪失に繋がりません。
以下は記録した視覚情報の一部抜粋です。視覚情報はBIV1を用いて出力しています。
scp-798-jp.data.001
認識主体は畦道を素足で走り回っている。前方には10歳前後の男児が確認でき、認識主体はその男児を追いかけているようだが、認識主体よりも男児の方が足が速いようで中々追いつくことができない。突如、認識主体が転倒する。認識主体が寝そべりながら自身の右脚を見る。右脚は太腿部分を大きく擦り剥いており、血が滲んでいる。顔を上げると、前方にいた男児はいつの間にかすぐそばまで接近しており、笑みを浮かべながら認識主体に手を差し伸べる。
scp-798-jp.data.017
認識主体と16歳前後の少女が河原で水浴びをして遊んでいる。認識主体が陸地に腰掛け休んでいると、少女は笑いながら認識主体に接近し、服の端を持ち上げて作った簡易な空間を見せる。内部には水が溜められており、小さな雑魚が数匹泳いでいる。
scp-798-jp.data.034
認識主体は教室と思われる場所で授業を受けている。周囲には認識主体と同じように多数の児童が長椅子に着席している。前方には年老いた男性がチョークで黒板に簡単な童謡を綴っている。男性は認識主体に背を向けているため顔を確認することはできない。認識主体は男性を気にしながら、隣にいる男児の腹を突いたりしてちょっかいをかけている。
scp-798-jp.data.055
認識主体は白米が盛られた茶碗を手にしている。白米の上には沢庵が載せられており、認識主体は箸でそれを白米ごと掻きこむように食べる。茶碗が空になると認識主体は少し奥に置かれた幾つかの皿に目を移す。皿には蒸したサツマイモやカボチャの煮物、数個の大福が載せられており、認識主体はそれらを丁寧に一つずつ食べていく。認識主体は全てを平らげた後、手を合わせる。
scp-798-jp.data.112
認識主体は布団の上で横になっている。左右には成人の男女が同じように横になっており、それぞれの手を認識主体は握っている。窓から差した月明かりが掛け時計を照らしており、針が23時丁度を指していることが確認できる。認識主体はゆっくりと瞼を閉じ、視界は暗闇に覆われる。
scp-798-jp.data.281
認識主体は目の前の青年と言い争っているように見える。最初は怒鳴り合うだけだったが、次第に殴る、蹴るなどの暴力を伴うようになる。数分間争った後、認識主体と青年はそれぞれ逆方向へと足速に去る。しかし、認識主体は立ち止まり自身の手を数秒間見た後、振り向き、青年の元へと駆け寄る。
scp-798-jp.data.349
認識主体は縁側に腰掛け、足元に群れる蟻の行列を見ている。暫くすると、視界外上部から葉が舞い降りてきて蟻に覆い被さる。認識主体はその葉を手で丁寧に取り除いた後、顔を上げ、生い茂った木々を眺める。突如風が吹き、認識主体は靡いた葉の隙間から現れた太陽に照らされ、視界が白くぼやける。
発見経緯: SCP-798-JPは1945/8/7に広島県広島市で発見されました。当時、日本領土に侵入していたAgt.グレイが周辺が壊滅しているにも関わらず無傷であったSCP-798-JPを不審に思い、何らかの異常性を保持している疑いがあると判断しサンプルの採取を試みた結果、SCP-798-JPと接触し異常性の発覚・収容に至りました。全てのSCP-798-JPは、それぞれ融解した人間と思われる物体らの中心部分から生えていたため、この物体らと視覚情報及び認識主体の関係性が提言されていますが、前述した通り物体らは個人を識別できるほど原型を留めていないため、断定はされていません。