アイテム番号: SCP-CN-1895
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 財団ウェブクローラを通しウェブスクリーニングを行い、社会地位、人格、最近の交流などの観点からSCP-CN-1895-B個体に接近しています。対象が通常の状況下で基本的に所在地から遠出をしないのにも関わらず、最近になり突然遠出をすることを決め、疑似SCP-CN-1895-A実体を探し出した時、機動部隊-子午-2/4「江湖にて相忘る」はそのルートを追跡し、SCP-CN-1895-Aを発見した際にはSCP-CN-1895-Bに対して記憶処理措置を行うとともに、SCP-CN-1895-Aを収容しなければなりません。
現状発見されている14のSCP-CN-1895-A実体は既に集中人型収容室内に収容されています。収容室内に置かれた通常の機器でその生命反応を監視し、一度対象に心拍数上昇などの平常時と比較した異常状況が発生した場合は、記憶処理薬を静脈注射することで抑制せねばなりません。
倫理道徳委員会では「SCP-CN-1895-Bを利用しSCP-CN-1895-AをSCP-CN-1895-Bに変化させた後、記憶処理を再度行い一般社会に復帰させるか」という討論が行われています。
説明: SCP-CN-1895は一種の通俗的な意味における、社会的周辺人の集団の中での夢幻状態のことです。通常当該集団の特殊個体(以下SCP-CN-1895-Aと呼称)には重視されず、気にもされず、慢性アルコール中毒の特徴があり、アルコール類を飲用した後、長時間の重度な昏睡状態に陥り、外界の刺激に如何なる反応も示さなくなりますが、生命反応は正常です。生命を維持するために体外から栄養物質を摂取する必要はなく、個人の正常な老化を除けば、排泄や感染は見られず、外傷を受けた場合でも即座にある種の液体が分泌され急速に癒合します1。SCP-CN-1895-Aは軽微な反ミーム的効果を有しており、個人とその居所の存在は大衆に忘れ去られ、その親族や同僚などには曖昧な印象だけが残り、仮に関係する具体的な情報を問われた場合は言明することが出来ません。しかしながらSCP-CN-1895-BはSCP-CN-1895-Aの影響を受けず、却ってその所在地を感知でき、また相手を探し出そうとする強烈な意欲を見せます。
SCP-CN-1895-BはSCP-CN-1895状態から離脱したSCP-CN-1895-A個体です。主張する所に依れば自身がSCP-CN-1895状態であった時は夢幻の中のようで、特定の外観(如例えば動物或いはその他の物体を擬人化した形であったり、通常対象が考えるところの「守護霊」を形どります。)を持ち、広々とした街道に入り、更にその中の店舗に滞在し、未知の場所からアルコール類を満たした杯を取り出し進んで飲んだとのことです2。杯の酒は飲んでも減少しません。同時に、その周囲に時として出現する単独のSCP-CN-1895-Aとの二者の間にやり取りが発生しなかった場合、即座に相手は段々と消失していきます。一度SCP-CN-1895-Bが相手に対しての強烈な感情の変化を抱いたとき、現実世界の身体にも相当の生理的影響が生まれ、SCP-CN-1895状態から離脱することになります。
SCP-CN-1895-BがSCP-CN-1895状態にあるSCP-CN-1895-A個体の現実の所在地を探し当て離脱するよう促した時、仮に相手が当該状態下にある場合は、即座に相手を呼び起こし、更に同居し、同時に両者の心理状態は積極的な生活的態度へと変わっていきます。一般的に、両者の異常状況下で遭遇した記憶は時間の推移と共に段々と消えていきますが、Cクラス記憶処理薬を用いない限り、相手に対する印象を消すことはできません。またSCP-CN-1895-Bが長時間にわたって相手を探し出せない場合は、漸次的に相手及び関連する記憶を忘れていき、また生涯独居しますが、刺激を受けた場合容易にSCP-CN-1895状態へと陥ってしまいます。
発見経緯: 財団ウェブクローラ(I/O-「掃黄打非専案組」)によるインターネット監視行動中、プラットフォーム・██████████にて発表された『夢の中のあの人を捜して』というタイトルの文章中に、「アンブローズ」などの超自然領域に関する言葉が見られたため、発信者の位置を追跡しました。その後財団によるSCP-CN-1895-Bの捜索時、SCP-CN-1895-Aの存在が発見されました。後日、財団は二者にインタビューを行った後Aクラス記憶処理を行い、カバーストーリー「一度の縁を追い求めて」を適用しました。
補遺: 20██/██/██、SCP-CN-1895-A-9に異常状況が出現した後、記憶処理薬剤を注射しようとした職員の手に一枚の便箋が出現しました。内容は以下の通りです。
財団の各位、ご機嫌いかが?
ここに来た人はどんどん多くなってきた、ただ誰もが孤独で、物哀れげだ。
ただ折よく誰もに熱意があり、多くが知り合っては新たな友人となっていく。
畢竟「同に是れ天涯淪落の人、相逢するに何ぞ必ずしも曾ての相識たらん」3というじゃないか!
私たちの友人の中には別れたいと思う者もいるので、私たちは彼らを送って別れる。
私たちは共に思いあう人たちが再び出会うのを願っているんだ。
だからさ、どうか彼らがお互いを捜すのを妨げないでほしい。
彼らは完全に忘れられたわけではない、彼らは路傍に酔い倒れる一人であるべきじゃない。
故事がそれを示している、「悲しきは生きながら別離より悲しきは莫く、楽しきは新しく相知るより楽しきは莫し」4と。
なら、彼らが再開する日がきたら、彼らに一杯やろうじゃないか。
たとえ人の世が別の大きな夢に過ぎなかったとしても、
それでもいい夢を見ようじゃないか。酩酊街より 愛をこめて