管理、操作、予報。
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2、4、6、8……17人。はい、皆さん揃いましたね。開始予定時刻から大幅に遅れてしまいましたが、オリエンテーションを始めましょう。いえ、謝らなくて大丈夫ですよ。長距離移動してきた方も結構いますから想定内です。それでは改めまして……皆さん、オリエンテーションへようこそ! 初めてお会いする人が多いと思いますので簡単に自己紹介をします。私は田仲と申します。これから皆さんとは長い付き合いになると思いますから、どうぞよろしくお願いしますね。

さて皆さん。北は北海道、南は沖縄、一部は海外など、様々なサイトからここへ来てくれたと思います。えー、そうだなあ……では貴方。うん、突然指名しちゃってすいませんね。普段はどこで勤務を?……東北地方ですか。太平洋側? ああ、良いですね。では東北、太平洋側の天候の特色をひとつ挙げて貰えますか? ……そう! 有名なものはやませが挙げられます。義務教育でも教わるくらい特徴的な気象現象です。春から夏にかけて吹く、冷たく湿った風ですね。しかし、このやませが長く続けば作物に悪い影響が出ますよね。冷害と呼ばれるものです。

やませはちょっと範囲が狭いので皆さんにわかりやすいように例を変えてみましょう。そうですね……地球温暖化なんてどうでしょうか。私たちの住む地球の気温が上昇していっていることは随分と前から著しい問題として挙げられていますよね。こういった天候の及ぼす影響は様々なところにあります。先程挙げたやませの冷害のように植物への影響があったり、動物や虫、魚、そして勿論人間にも。あなた達の年代にはばらつきがありますが、皆さん誰しも一度くらいは『地球温暖化は私たちの世代が食い止める』みたいなの聞いた事ありませんか? 『こまめに節電を!』とか、『温室効果ガスの減少を!』とか。

……その甲斐あってか、近年は気温上昇が抑えられている傾向にあるとつい最近WMO、世界気象機関から発表されましたね。それに伴い異常気象も減少していると。

さあ、前置きが長くなりましたがここでようやく本題です。気温上昇を抑えた最も大きな要因、それが何かわかりますか? ……話の流れからして分かった方もいるかもしれません。……そう、財団です。我々財団が今、世界の気象現象を管理、操作しています。ああいや、地球丸ごと全部ではありません。財団の手の及んでいない地域ももちろんありますよ。まあ、そういう地域は大抵周りの他の地域の気候に影響されるので間接的に操作してるのが大半ですが。あ、その顔。『なぜ財団がそんなことを?』と、そう思いましたね? では、そのきっかけを少しお話しましょう。

きっかけは‪SCぴ……ええと、このオブジェクトについて閲覧権限を持たない人もいるのでざっくり話します。そのオブジェクトはオブジェクトが存在する地域が特定の気温、天候、風向きになると異常性を発現させるものでした。その発現範囲はとても広く、異常性そのものも凡そ一般人から隠せるような物ではなかったのです。ですから、81エリア、俗に言う日本支部はそのオブジェクトが存在する特定地域の天候を管理し、必要な際は操作できる機械、或いは装置などと呼ばれるものを生み出しました。これが始まりです。

この世界には様々なオブジェクトが存在していることは皆さんご存知の通りです。その中には似たような特徴のオブジェクトもあります。ある時……えーっと、どこだったかな。ヨーロッパの方で似たようなオブジェクトが見つかりましてね。その際に収容の参考にする為にそのエリアから81エリアへ先程のオブジェクトの特別収容プロトコルの閲覧申請が出されました。それで、その時の担当者が……まあ、私なんですけど……閲覧許可を出すついでに天候操作技術の輸出もしたんです。それが間違いだったと言うべきか、成功だったと言うべきか、ものすごくウケたんですね。……で、その技術が色々な所へ輸出、拡散されていった結果、今このように我々は世界の気象を管理、操作するようになりました。実際そこに至るまでには色々なことがありましたが、詳しく話してるとただでさえ長い話が更に長くなるのでやめておきましょう。

ふぅ、長々と話してしまいましたね。そちら側の発言タイムも取りましょうか。ここまでで何か質問はありますか? はい、どうぞ。…………え、私これが何のオリエンテーションなのか話してませんでしたっけ? えっ嘘……あぁー……ごめんなさい……えぇー、それでは改めまして。

皆さん、気象管理部門へようこそ!

Supervise, Control, Predict.

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