- 監督者のみ閲覧可 -
以下のファイルにはهلاك-クラス"ダークボディ"全世界群終焉シナリオに関する情報が含まれています。
アーカイブ済み手順書: SCP-001に指定された本データファイルは財団メインデータベース上の偽のSCP-001アーカイブとは別個に置かれ、エリア-11またはサイト-01の隔離ユニットからのみアクセスできるものとします。それ以外に当ファイルのコピーが存在してはなりません。本データファイルは指定の暗号化マーカーを有していないシステムに置かれた場合、そのシステムを破壊するよう設計されています。
特別収容プロトコル: SCP-001は現在ノルウェー国クーンズ近辺に位置する武装次元収容エリア-11 (Armed Dimensional Containment Area-11: ADCA-11) の地下6階に存在するピエトリカウ-フォンテイン空間安定化装置の内部に収容されています。SCP-001の収容室の温度は3.2K以下に維持しなければなりません。研究職員の派遣団全員、ならびに4個の専門機動部隊 (Applied Task Forces: ATF) をADCA-11に配置してください。現時点で割り当てられている機動部隊は以下の通りです。
- ATFインディアナポリス-13 "キルボーイズ"
- ATFデトロイト-11 "恵みの雨"
- ATFアトランタ-9 "シャーマンズ・マーチ"
- ATFネバダ-3 "着火隊"
ピエトリカウ-フォンテイン装置の標準機構に加え、SCP-001の発見時点より数点の大規模な改造が施されています。
- 追加のエネルギー負担を補うためのアイボリーキャノン-クラス液体フッ化トリウム反応炉3基の追加。
- 装置の構造的完全性を維持するクラス-VIマグネシウム合金製サスペンションリング9点
- 過剰なエネルギー出力を制御するスクラントン-ケンプ共鳴緩衝機16基
- 過剰なエネルギー出力を制御するポリコット型デフレクター盤3枚。
- 過剰なエネルギー出力を制御するウェルドン-スタンリー融合エネルギー槽8基。
- 過剰なエネルギー出力を排出・制御するディープウェル排路孔1の建設。
- 時空間に関する複雑な計算を処理する自動知的応答指示器21基。
不安定化イベントが発生した場合、フォーティデイズ・プロトコルを実行してください。
サイト管理者代理が施設の完全撤退を開始すると同時に40分のカウントダウンが始まる。
T-マイナス40分: 撤退命令がなされる。
T-マイナス33分: 撤退開始から7分後、近隣の川へと繋がる水門を開き、施設下部を水没させる。
T-マイナス31分: 9分後、実験室周囲に配置された爆薬を作動させることで実験室と地下階を破壊し、ディープウェル排路孔の内部へと崩壊させる。
T-マイナス21分: サイト各所に設置された追加の爆薬を作動させ、サイト全体を排路孔の内部へと崩壊させる。
T-マイナス6分: 山腹に設置された爆薬の作動によって発生させた地滑りによりディープウェルを埋没させ、排路孔の最大幅より長く設計された封じ込めスチールプレートにより密封する。
T-マイナス0分: 排路孔の基底部に存在する現地の核装置を作動させ、SCP-001を破壊する。
フォーティデイズ・プロトコルがSCP-001の破壊に十分ではないということが判明した場合、担当の全財団監督者、地域管理者、管理官、執行役員は監督司令部 (サイト-01) に報告を行い、トレデシム・プロトコルの実行に備えてください。
トレデシム・プロトコルはهلاك3-クラス「ダークボディ」全世界群終焉シナリオの開始と同時に実行されます。全財団職員に本プロトコルを開始する旨の警告を行い、SCP財団の解散と全職員の解雇を通知します。هلاك-クラスシナリオの性質上、最初の通知がなされるまでこれ以上の情報が提供されることはありません。
トレデシム・プロトコルに関するさらなる情報は補遺001.6を参照してください。
更新版収容規約: 本ファイルはレベル5 - 監督者機密に指定されました。エリア-11に残っていた全職員は記憶処理され、転属となりました。全専門機動部隊は記憶処理され、転属となりました。収容の管理は監督者の主管の下でNETZACHシステムのみが執り行います。フォーティデイズ・プロトコルの確認と実行はNETZACHシステムのみが執り行います。それ以外の職員は本ファイルの閲覧を許可されません。
説明: SCP-001は現在エリア-11のピエトリカウ-フォンテイン装置内に収容されている人型重力特異点です。SCP-001は計測不能な密度を有しており、財団職員はスクラントン-ケンプ装置を用いて時空間への影響を弱めることによってのみ空間安定化装置の構造的完全性を維持することが可能です。SCP-001は常に放射性ガスと霧状デブリの密な雲によって覆われているため、特殊な機器 (通常はハイコントラストの赤外線カメラ) を用いない限り視認できません。またSCP-001は特異点であるため光を反射せず、オブジェクトの周囲の光の消滅をもってのみ視認可能です。
SCP-001は時空間の形態と構造に変動をもたらす重力を改変することによって現実の性質を操作できます。この異常能力はピエトリカウ-フォンテイン装置を除くいかなる存在によっても軽減不可能4であり、SCP-001による時空の改変は復元不可能です。
補遺001.1
最初の出現
1982年6月19日、ラマー・フォンテイン博士率いる財団の研究チーム5はピエトリカウ-フォンテイン空間安定化装置 (時空間の性質を操作するアノマリー6を収容するための装置) の技術試験の実行段階にありました。試験中、粒子加速器を用いて超重元素であるオガネソンを作成したところ、連続的に自壊し、小型の特異点が生成されました。この手順は他の実験でも行われていたものであり、その際特異点は発生した直後に消滅していました。6月19日の試験はこれをスケールアップした実験を目的としたものでした。
現地時間の20:30直後、粒子加速器の立ち上げ中に、プロジェクトの研究助手の1人であったカルヴィン・デスメット博士が安定化リングのアームの1つにわずかな力の変動があることを指摘しました。この連結器は実験室の低温環境下において劣化が確認されていたものであり、デスメット博士は交換を申し出ました。実験開始までにはまだ1時間以上時間があり、実験室は閉鎖前であったため、デスメット博士は連結器の交換のために部屋に入りました。加速器の立ち上げの実行中、システムのメイン発電機に取り付けられた出力調節器の機能が低下し始めました7。実験前の段階での出力異常は実験室内での放射線の蔓延を引き起こすおそれがあったため退去命令が出され、実験室は閉鎖されました。しかしこの時システムの出力が過剰であったため、デスメット博士は装置の起動音により警報を聞き取ることができず、そのまま連結器の修繕を続けました。
約7分後、外にいた研究職員が出力低下サイクルの実行を試みている最中に出力調節器が完全に機能停止し、加速器は実験直前の状態まで稼働し始めました。デスメット博士は連結器を放置し、実験室からの脱出を試みました。しかし博士が非常口にたどり着く前に加速器が実験状態のピークにまで達し、特異点が形成されました。特異点は装置内に回収されましたが、そのわずか数ミリ秒前に安定化アームが故障し、デスメット博士は裸の特異点に曝露しました。実験室、研究棟の大部分、ならびにデスメット博士自身は特異点に吸い込まれ、その直後に特異点は消滅しました
6月19日の事件後、サイト-11の管理職員の多数が配置換えされ、技術職員と財団建設チームが施設 (当時はまだ他のアノマリーを数点収容していました) の崩壊箇所の修復を行いました。修復作業には数年かかり、その間スタッフ削減と曝露の最小限化のために安定化装置の操作部の大部分が取り除かれ、自動システム8へと置き換えられました。空間安定化装置に割り当てられた技術チームは1995年3月から装置の性能試験を開始しました。
それから数年間、エリア-11のチームは概ねエネルギー需要量の削減と自動化の推進を目標として装置の小規模な実験を行いました。2002年までにシステムのほぼ全てが自動化され、必要な人員は操作を担当するごく一部の職員のみとなりました。2004年に空間安定化装置内に微弱な重力異常が発生し始め、2005年になるまで常に続きました。2005年後半、エリア-11の職員は自立的特異点に対する安定化装置の試験に向けたテストを開始しました。
2006年初頭、現地の技術員はNETZACH知能システム9による支援を受けて試験をスケールアップし、実験を完全稼動させました。実験から数ヶ月後の2006年5月、エリア-11の技術員は最大出力の装置内に特異点を生成し、特異点と実験室双方の構造的完全性を維持しました。
しかし完全に安定した特異点を生み出した実験から2時間後、装置内の空間が急激に変化し始めました。特異点は急速に拡大し、装置の限界範囲を超えて広がる危機を生み出しました。NETZACHは退去警報を発令すると同時に、特異点に由来するエネルギーの急増に対応するための調整を始めました。最終的に特異点の拡大は止まり、特異点が収容室に及ぼす影響はNETZACHによる装置の再構成により軽減されました。この時点で特異点は流動する放射性ガスと形成された塵の厚い雲によって覆われ、内部に隠されました。
財団技術員が損傷を受けた装置の補強に取り掛かったところ、SCP-001は財団職員との初の対話を試みました。この最初の試みは概ね解読不可能なノイズとして現れ、まず完全な文章に変化し、やがてガス雲内の特異点が人型であり、その場を動いてはいないものの明らかに職員へと話しかけようとしていることに財団職員が気付くと会話に変化しました。
補遺001.2
最初の接触
SCP-001と財団との最初の接触はエリア-11地下にあるSCP-001の収容装置内にて、サイト-17所属のJ. バートン・ラムジーが行いました。特筆すべき点として、SCP-001は自然に対話を行う術を持たないようでした。実体の極めて高い密度のため発声は不可能でした。その代わりとしてSCP-001は音を出すために重力を用いて装置のサスペンションリングを振動させました10。
[音声記録開始]
ラムジー博士: (くぐもった声) -ただのマイクだ。聞こえるかな?
(不明瞭な呟き)
SCP-001: (くぐもった唸り声)
ラムジー博士: 待て! 今のは何だ? 何か聞こえなかったか? (沈黙) よく聞いてくれ。
SCP-001: (金属音) ヨハネス- ヨハネス・ラムジー。
ラムジー博士: 私の名前を知っているのか?
SCP-001: (沈黙) 彼は- そうだ。ヨハネス・バートン・ラムジー。君は博士だな。S- (沈黙) SCP財団。収容。彼は収容されているのか? (沈黙) 彼には何も見えない。彼は- 装置。これは…… ピエトリカウ・フォンテイン…… 彼はこの場所を知っている。彼は-
ラムジー博士: 君はこの場所に来たことがあるのか?
SCP-001: いや、彼は- (沈黙) いるのは私ではない、彼だけだ、他の誰でもなく。1人の男。おそらく私は彼だった、あるいは彼が- 彼が私。(沈黙) 彼はかつてここにいて、そして一度いなくなった。
ラムジー博士: (マイクから離れたくぐもった声) 信じられん、こいつはデスメットか?
SCP-001: デスメット? (沈黙) そうだ。デスメット。カルヴィン。彼の名前はカルヴィンだった。
ラムジー博士: (マイクから離れた場所で収容職員と小声で会話をする) 残念だが、我々の持つ手段では-
SCP-001: この機械、そ- これを止めてくれ。彼にはなすべきことがある。すべきこと…… 見るべきもの…… 必要なのは- (言い淀む)
ラムジー博士: お前は「何」だ?
SCP-001: ふ- 2つの似たものを区別する方法。 (沈黙) 必要なのは…… 監督者だ。1人だけではない。全員だ。ここに連れて来てくれ。
ラムジー博士: それはプロトコル違反だ。それに-
SCP-001: いや。彼らはここに来るだろう。彼には差し出せる対価があるのだから。
ラムジー博士: 対価とは?
SCP-001: 活路だ。
[音声記録終了]
補遺001.3
活路
以下はO5-1がSCP-001と接触した際の全記録です。
[音声記録開始]
O5-1: 君は何者なのかね?
SCP-001: 申し訳ないが込み入った話になる。この姿になるのに幾分時間を要し- 自己を確立するのにはさらに時間がかかった。おそらく不要だとは思うが…… 会話を容易にするために私のことをカルヴィン・デスメットだとみなしても構わない。 (沈黙) 私見だがこれは異様。彼の特徴が、元の持ち主とは全く異なる別の存在に投影されている。
O5-1: 22年前にこの部屋で死んだカルヴィン・デスメットと同じ存在か?
SCP-001: いや。同じではない。多くの面で似てはいるが、変わったのだ。
O5-1: では理解しているのだろう、我々が今どれだけのプロトコルを破ってここに来たのか。
SCP-001: ああ、彼は理解できると思う。だが今の状況は常軌を逸している。
O5-1: 君は活路といったそうだな。
SCP-001: ああ、ある意味では。
O5-1: 何に対しての活路だ?
SCP-001: 君たちは世界を脅かしているという理由で奇妙なもの、異常なものを収容しているが、それは傷口に軟膏を塗るようなものだ。根元はエントロピー。避けられぬもの。どれほど努力しても決して逃れられぬもの。存在とは現実同士を織り込んだ非常に複雑な1つのタペストリーであり、各々の現実が極めて整然と編み込まれている。エントロピーはその端をほつれらせ、タペストリーはやがて…… 綻び出す。
O5-1: どうやってそのことを知ったのかね?
SCP-001: 私は見たのだ。カルヴィン・デスメットはそれを見た。彼の魂が闇に投げ込まれる前のあの瞬間に。君たちが解明不可能であるという理由で収容しているものは全てどこか別の場所、それを解明可能な場所から来たもの。異なる現実、それが君たちの現実に染み出してきている。エントロピーはこれを悪化させる。時が過ぎれば境界は完全に消失し、君たちの世界は他の全ての世界と同じように、互いに相反する健全性を持つ無数の現実同士の大戦場と化すだろう。君たちの世界は死ぬ。全ての世界は死ぬ。全ての宇宙は喉が詰まるほどに互いを貪りあい、そして死ぬ。これは仮説ではない、必然だ。
O5-1: (沈黙) 確信はあるのか?
SCP-001: 疑いの余地はない。
O5-1: それが起きるまでにあとどれだけ猶予がある?
SCP-001: 数十年。各々の小さなほつれがシステム全体に負担をかけている。この綻びは境界が完全に崩壊するまでに大きくなり、連鎖崩壊が生誕の運命を遂げる瞬間が確定するだろう。未曾有にして不可避だ。君は違うかもしれないが、君の子か孫の世代は悪夢の空を見て死に絶える。
O5-1: 君の言う活路とはなんだ?
SCP-001: カルヴィンは虚空へと落ちる寸前に計算した。宇宙の秩序が永久に存続することはなく、宇宙はゆっくりと無秩序になる。一つの軸を永久に伸ばすことはできるが多くの軸は混沌を呼び込む。交差する点で。この世界の未来を保証する方法が1つだけある。他の全ての世界を抹消することだ。
O5-1: 理解できん。
SCP-001: 期待はしていない。君はあの物語たちを目にはしていないのだから。あの瞬間、カルヴィンはそれを見ることができた。カルヴィンは終末の日を見て、カルヴィンはその活路を見出した。ここ以外の全ての物語を抹消し、1つの物語を創造する。何者にも傷つけられぬ1つの宇宙。安全だ。君たちの愛するものたちは侵略する闇から保護される。子供たちは恐怖のうちに死ぬことなく自由な暮らしを謳歌できる。君たちの果てしなき戦いの終焉。暗闇の終焉。光の中に生きる自由。
O5-1: 他の全ての現実を破壊することで、か。計り知れない数の生命を失うことになるだろう。
SCP-001: (沈黙) そうだ。
O5-1: そして君ならそれが可能だと?
SCP-001: そうだ。
O5-1: (沈黙) どうすると?
SCP-001: 全ての現実の障壁を一度に消滅させる- この現実を除いて。最も崩れやすい地点に圧搾時空を。あとはエントロピーのなすがまま。
O5-1: その手段を行使しようと思っているのなら、なぜ今まで何もしなかった?
SCP-001: 私が現れた時、この機械が…… 私にはこの装置の外を見ることができない。君のことも見えない。機械を止めてもらわねばならない
O5-1: 無数にある現実のどれか1つでも我々と同じように君を妨害する可能性をどう排除する? 我々がしたことに気が付いて破壊し返しに来る可能性をどう排除する?
SCP-001: 全てが終わるまで彼らは私のしたことに気付きはしないだろう。
[記録終了]
この会話の終了直後、エリア-11にいた全職員が転属と記憶処理のために近隣サイトへ出向するよう命じられました。
補遺001.4
討議
O5-1: 本議会は世界の終焉を阻止する目的でSCP-001を利用することに賛成するか否かに関する意見を聴取するために開かれたものです。O5-3、用意ができていれば。
O5-3: 互いに独立した数組のチームで調査を行い、SCP-001は創造の性質に関して話した内容という点では正しいらしいと結論付けました。財団が認知し、収容したアノマリーの傾向曲線はSCP-001が予言した加速的増加と一致します。我々のモデルに基づけば、新たなアノマリーの数は30年以内に収容不可能なレベルに達し、過去のそれを遥かに上回ると予測せざるを得ません。最も有力な予想では45年以内に大きな破綻が発生するとされており、そうなればもはや打つ手はなくなるでしょう。
O5-7: それはどのような理由で起こるのでしょうか? その実体の話した通りの速さで宇宙が崩壊するというのは何が原因なのですか?
O5-1: デスメットによれば、他の現実で自身らの世界の終焉を阻止するためにとられた行動が全宇宙群の形而上学的構造に深刻なダメージを与えているとのことです。多くの面で、我々は他の全てと同じくらい咎めを受けるべき存在なのでしょうが- (沈黙) 無数の咎めが無数の責任の所在にのしかかることでしょう
O5-8: 本当に無数の宇宙があることを考えれば、救済が他のどの宇宙でもなく私たちの下に現れるというのは…… 確率的にありえません。
O5-3: その通りです。しかし我々以外の別の宇宙の下に現れていた可能性もまた同じくらいありえないものです。
O5-11: その実体が虚偽を述べていないとどうして分かるのです?
O5-3: もし嘘だというのなら、かの存在は自分が経験したと主張する体験なしに高度な形而上学的概念を極めて正確に把握していたということになります。
O5-1: さらに言えばですが。私は許可を取り…… 数多くの未来予知が可能な実体と話をし-
O5-9: (話に割り込む) それは禁止事項では。
O5-12: (O5-9の話を遮る) 知りたいのはあなたも同じではありませんか?
O5-9: 我々が下した決断をそうそう容易く覆しては-
O5-1: -我々は可能な限り確認し、未来予知のヴィジョンが急に途切れる時点があることを確かめました。その時点までは未来が見えるのに、その先は何も見えなくなるのです。予知実体たちが気付いていなければ私には知る由もなかったでしょう - 数十もの実験データを引っ張り出してようやく、何者も2066年以降の予知ができないと気が付きました。
O5-6: オブジェクトがただの現実改変者であったらどうするのですか? 装置から出してやるなり我々を皆殺しにしたら?
O5-1: もし現実改変者であったなら既にそうしていたでしょう。この実体はヒュームを操りません。操っているのは重力。時空間です。もしヒュームに影響を及ぼせたのなら、オブジェクトはただ手を伸ばすだけでとっくに我々を粉砕することができたでしょう。あの安定化装置は時空を乱す存在による影響を緩和するものであり、今現在オブジェクトはこの装置によって一区画に押し込められています。あの実体、つまりデスメット博士は- もし本当にあそこにいるのならですが- タイプ・グリーンではないようでした。あれは全く別の何かです。オブジェクトは…… あらゆる物の性質にとって根源的なものになっています。
O5-2: か- (沈黙) 仮にその生命体が本当に自称している通りの存在で、話した内容を本当に実行できるとして、それを解き放つことは途方もなく数多くの- 多くの命の死を意味します。それほど数多くの生命に裁きを下すことなどどうしてできましょう?
O5-4: 他の宇宙が異常存在ではないと誰が断言できましょうか? これは単に存在してしかるべきなのかもしれません。自然の摂理であるのかもしれません。
O5-9: 詭弁だ。我々は-
O5-2: それでも無数の生命の終わりであることに変わりありません。とても- とても想像もつかないほど多くのものが死に絶えることになります。無辺際の命がA number without limit。
O5-1: 無関係の命がA number without us、です。
静寂
O5-3: 我々の誓いは正常性を維持し、我々の世界を守ることです。この世界を。よその世界のことはよその世界の仕事です。そうした要注意宇宙、そのどこにある監督者評議会も同じように行動するでしょう。この場所、この場所の全て、科学、軍国主義、ありとあらゆるもの。その全ては唯一にして到達不可能な目標を成し遂げるためのもの、すなわち怪物を目に見えぬ場所に押し込めるためのものです。今、我々は十分ではないかもしれませんが答えを見つけ出しました。どちらを選ぶにせよ日々の終わりはいつか我々の下に訪れます。しかし我々には選択肢があります。何もしなければ全ての宇宙が苦しみのうちに死に絶えます。この手段を実行すれば、ほぼ全ての宇宙が苦しみのうちに死に絶えますが、我々だけは助かります。一度終わってしまえば、何もかもが終わりです。私たちが行ってきた努力が、この世界を守るために死んでいった者たちが無為となることを阻止できるのです。我々の歩んできた道の終わりにそれほどの価値もないと言うのでしょうか? 来たる終末の日から我々自身を守ることはそれほどの価値もないと言うのでしょうか?
静寂
O5-1: 投票に入りましょう。世界終焉を回避するためにSCP-001実体を用いるか。賛成の方は?
O5-3, -4, -12, -1, -11, 10, -5, -6: 賛成アイ。
O5-1: 反対の方は?
O5-9, -2, -7, -8: 反対ネイ。
O5-1: O5-13は棄権ですね。期限は終了しました。
O5-9: たとえ辛うじてこの未知の怪物から逃れ生き残ることが…… できたとしても…… 今日というこの日が我々が使命を投げ出した日であることは胸に留めておきましょう。我々は確保し、収容します。この2つが最優先です。我々は辛くも最後の一宇宙を勝ち取ると言う限りなくか細い希望のために全てのものを危機に晒しますし、私には奴が我々を地獄に落とす恐怖が拭えません。 (沈黙) なぜ奴を信用するのです、ブラミモンド? 我々がことをなせば全てのものを危険に晒すのですよ。
静寂
O5-1: 私は数十年前のカルヴィン・デスメットを知っています。生まれ変わる前の。彼は財団に誘われてきたのではありません- 自ら志願してきたのです。彼は当時我々が進めていた新技術の試験実施のためにインサージェンシーとの契約で来たメンバーの1人でした。しかし彼には幼い娘がおり、その娘が現在のSCP-106の有効な収容プロトコルが確立する前の1975年に起きた輸送中の収容違反によって死亡し…… その後彼は私たちを見つけ出しました。彼は決して口には出しませんでしたが、あなたたちには分かるでしょう。彼があの場所にいるというのなら、彼は我々の宇宙から異常な物を痕跡一つ残らず消し去る方法を見つけたのです。どれだけのものを犠牲にしてでも彼は実行します。彼がそうすることを私は知っています。私は奴の中に彼の声を聞きました。
補遺001.5
欺瞞
SCP-001とのさらなる話し合いと独立した追加調査を終えた2007年1月11日、監督者評議会は8-4-1の決議で空間安定化装置の出力低下を開始することとSCP-001に説明した通りの行動を許可することに賛成しました。3名の監督者 (O5-1、O5-4、O5-12) が立ち会いました。信用のための証拠として、1つの異常物品 (SCP-884) が選ばれ、SCP-001はその物品の発祥である現実を特定するよう指示されました。この試験中、O5-3は当該オブジェクトを監視していました。
[映像記録開始]
O5-1、-4、-12は安定化装置のコントロールセンターの中に立っている。もう1つのスクリーンにはSCP-001の周囲を回る暗いガスと塵の雲が映っている。O5-4は右手に受話器を持っている。2人はO5-1の方へとうなずく。
O5-1: 装置を動かしている出力を段階的に減少させていく。取り決めの段階まで来たら、君が主張していた通りのことが可能なのか確かめられるまで減少をやめる。分かったかな?
SCP-001: 了解。
O5-1は減少プロセスを開始する。NETZACHが第2・第3反応炉のサイクルを下げる。SCP-001を周回していた放射性雲と塵が穴の中に落ちていく。装置の光がSCP-001周辺で捻じ曲げられることで、真っ黒の人型実体が見えるようになる。実体は動かない。
O5-1: 完了だ。私のことが見えるか?
SCP-001: 全てが見える。
O5-1: 君の探しているものは分かるか?
SCP-001: 鏡だ。
O5-1: やってくれ。
SCP-001は当初、反応する様子が見られない。実体の位置は装置の中心から変化しない。
SCP-001: 私の見ている世界は君たちの世界とは違う。この世界では、1つの死にかけた魂がその鏡に取り付いている。それを所有する全ての者への呪いだ。 (沈黙) もう終わった。
しばしの静寂の後、O5-3が通信越しに声を上げる
O5-3: なんてことだ……
O5-1: 何がありました?
O5-3: 消えました。オブジェクトはテーブルの上に置かれていたのですが、突然…… 折れ曲がるようにして消え去りました。何も残っていません。
O5-1: (SCP-001に向かって) 君がやったのかね?
SCP-001: その物語は終わった。
O5-1: 時間はどれだけかかる?
SCP-001: 少々だ。
O5-1: その過程で皆は痛むか?
SCP-001: 痛み苦しむだろう。
O5-1: (考えの後、うなずく)
装置内のSCP-001の周囲の空間がちらつき始める。周囲の空気から低い、大きな騒音のパルスが発せられ、チャンバー内の光がSCP-001の方へと吸い寄せられる。装置にはひびが入り、軋み出す。O5-4とO5-12は監視窓から離れる。O5-1は動かない。
建物が揺れ出す。SCP-001周囲の空気はめいめいにSCP-001に向かって引き寄せられているかのように歪みだす。部屋が暗くなる。排路孔から、さらに低いパルスが発せられ始める。薄い白熱した1つの塵の輪がSCP-001の周囲に形成され始める。他の物もそれに倣う。近辺ではNETZACHが装置に耐久限界を超えた負荷がかかっている旨を警告している。
O5-1: 君は痛むか?
SCP-001: これは…… 途方もない苦しみだ。
急にO5-1が後ろの方向へ動く。周囲の空間が彼の中心へ引っ張られるように歪み出す。彼は前の監視窓の方へ手を伸ばし、身体が不自然に縮み出す。
O5-1: (咳き込む) 私は…… ない。
SCP-001: (O5-1の声で) 彼があの場所にいるというのなら、彼は我々の宇宙から異常な物を痕跡一つ残らず消し去る方法を見つけたのです。どれだけのものを犠牲にしてでも彼は実行します。
O5-1: む-
SCP-001: (自身の声で) 子供たちは恐怖のうちに死ぬことなく自由な暮らしを謳歌できる。君たちの果てしなき戦いの終焉。暗闇の終焉。光の中に生きる自由。全ての痕跡は消し去らなければならない。(O5-1の声で) ……我々の宇宙から異常な物を痕跡一つ残らず消し去る。(自身の声で) この世界は洗い清められなければならない。これこそが唯一の活路だ。
O5-1: (呻く)
O5-1は倒れ、折りたたまり、捻れ、一瞬だけ宙に浮く1つの点へと変化した後に消失する。部屋の周囲にあった全ての物品と壁が歪み捻れ出す。空気が揺らめく。O5-4が浮かび上がり、叫ぶと同時に内側に折りたたまれる。彼女の両眼は膨れ上がり、骨は音を立てて破砕する。もう一つの力の波が安定化装置から発せられ、監視窓が粉砕される。SCP-001がO5-4の方を見上げると、彼女の体は一つの点になるまで潰され、消失する。O5-12は逃げようと立ち上がるが、恐怖で動けないように見える。
物が軋む轟音が鳴り響き、O5-12は地面へと倒れこむ。収容室内から大きな唸り声が放たれ、声量は著しく大きくなっていく。SCP-001がまた監視デッキの方を見上げるも、即座に塵とデブリの雲に覆われる。装置の状態が落ち着くと、低いパルス音は聞こえなくなり、緊急フェールセーフを作動させたことを伝えるNETZACHの警告音だけが鳴り響く。O5-12が監視デッキのカメラに映らない部屋の隅で咽び泣く音が入る。安定化装置の金属リングを通してSCP-001の声が鳴り響く。
SCP-001: (鈍い、軋むような呻き声) 子供たちは恐怖のうちに死ぬことなく自由な暮らしを謳歌できる。君たちの果てしなき戦いの終焉。暗闇の終焉。光の中に生きる自由。全ての痕跡は消し去らなければならない。この世界は洗い清められなければならない。財団が贖罪を逃れることはない。これこそが唯一の活路だ。
[記録終了]
補遺001.6
トレデシム・プロトコル
SCP-001の収容違反が発生した場合に、SCP-001の手による全滅を回避するため異次元への逃走経路を重役の財団職員に与えるトレデシム・プロトコルが策定されました。
我々は誤っていました。トレデシムはもはや選択肢となり得ません。あらゆる代替案を考慮しなければなりません。SCP-001の継続した収容が現時点での財団の唯一の目標です。
O5-3