Don't Forget
この手紙は、誰でもいいから、誰かが仲間の面倒を見なきゃならないってことを覚えてる奴に宛てたものだ。
俺はコンクリートの分厚い層で覆われたこの小部屋に閉じ込められている。向こう側から鍵が掛かっているから、普段はドアを開けることができない。時々、誰かがドアを開け、俺は外に出られる。だが、誰かに助けを借りようと近づくと、そいつらは誰も俺に注意を払わない。俺はあいつらを殴りつけることも、持っている物を払い除けることも、あいつらに向かって叫ぶこともできる。でも連中は、俺が存在すらしてないかのように自分の仕事を続けるんだ。時には逃げ出そうとすることもあるが、俺が一旦外に出ると頭が痛みだして、とても体がだるくなってくるんだ。俺が眠りに落ちると、目覚めた時には例の耐え難い部屋の中に戻ってる。またしても、閉じ込められて、忘れ去られて。
時々、人々が俺の部屋に入ってくる。俺たちは話をして、連中は大抵、俺を見てひどく驚いている。連中はいつも俺を助けてやると約束する。連中は俺の事を忘れないように山ほどメモを書いて写真を撮っていくが、いつも忘れるんだ。近頃来るのは白衣を着た科学者どもだ。あんたは多分、科学者ならその前に来た奴らより記憶力が良いんじゃないかと思うかもしれん。だが連中も他と同じように俺の事を忘れてしまう。
あんたがこの手紙を見つけて俺の部屋に入ってきたら、そこに俺を取り残さないでくれ。連れ出して、他の連中にも俺が見えるようにしてくれ。あいつらに俺が存在することを見せてやってくれ。
頼む。
ページリビジョン: 2, 最終更新: 10 Jan 2021 16:45