二倍馬
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ジェイコブズ博士は重役用会議室の先頭に立ち、スライドショーを進めながらプレゼンを行っていた。画面に映し出されているのは金網塀に囲まれた少々手入れの行き届いていない馬預り所の写真だ。脇には馬がいて、カメラを見つめている。

「気紛れな馬の家に入る前に心に留めておくべきことは、これらの馬は単に頼りにならないということだ。」彼は言った。「彼らは見かけによらず、信頼できない。」

カチッ。スライドは傾けて撮影した厩舎の一つの内部の写真に変わった。カメラの後ろにある開いた扉から日の光が差し込んで、現場の一部が白っぽくなっている。撮影者から離れた暗い奥には馬が立っており、喉を膨らませている。

彼は物語り続けた。「また、ストレスが溜まると首が脅迫的に膨らみ、酔っぱらったような臭いを放つことが知られている。」

カチッ。ガスマスクを装着した数人の現場チームから離れて、熱心に馬を追いかけるDクラスが映し出される。Dクラスは装着していなかった。エージェント達はDクラスを追いかけていたが、彼の足取りは非常に速かった。

「恐怖に怯えた馬の膨らんだ首によって、彼らは破滅へと導かれた。」

カチッ。膨らんだ馬を追いかける三人のDクラスとそのDクラスを一マイルの広さの棘のある枝や生垣へと追いかける8人のエージェントをヘリコプターから撮影したと思われる空撮写真。

ジェイコブズ博士が写真について説明した。「彼らは無礼でもある退屈した馬達に導かれ、命取りの迷路の中心に辿り着いた。」

カチッ。Dクラスの制服を着た腐敗した人間の死体が現場チームによって雑木林の中の空き地で発見された。タイムスタンプを見ると、まだ30分しか経っていない。

「馬に悪戯をされた愚か者が大きくて複雑な低木地帯の中心でゆっくりと餓死していく。」

カチッ。スライドショーは終わりを告げた。ジェイコブズ博士は映写機のスイッチを切った。頭上の蛍光灯が再び点灯した。

「だからこれらのことや、恐らく他のことも頭に入れておいた方がいい。頭の中に入れておかないといけないものは切りが無いように思えるが、頭の中が忙しいと馬も動揺するから、気紛れな馬の家に持ち込むものを限定することをお勧めする。」

ジェイコブズ博士はテーブルを囲んでいる数人の研究員の観客に向かって微笑んだ。前方の男性が咳き込むまで暫く誰も発言しなかった。

「君の住む世界に魅了されたよ」アデリー博士は咳払いをしながら言った。

ジェイコブズ博士は顔を赤らめた。「どうも。」

「俺は家を見つける。俺は征服する。俺はこの馬達に鞭を打って状態を良くしてやるぜ、くそったれが」 テイラー博士はいつものように声を張り上げた。

会議室の扉が開くと、回転椅子が全て回った。黒髪の女性が頭を突っ込んできた。「『馬』という言葉が聞こえてきたわ。良いわね。」

「やあ、ハナウォルト博士!」ジェイコブズ博士はぎこちなく叫んだ。彼は装飾的な紙を持った手を突き出した。「俺のゲーム『DOUBLEHORSE二倍馬』への招待状だ。二倍馬が何だと思うかを描くゲームだよ。楽しいぜ!」

ハナウォルト博士は歯を食いしばって叫んだ。「おいおい、今は仕事中なんだよ…」彼女は少し考えた。「でも今夜はDOUBLEHORSE二倍馬を遊ぶための時間が一時間くらい空くかも!」

「やったぜ、本物のハナウォルトの二倍馬は最高になるぞ!」

「招待感謝するよ」彼女は言った。「殆どの人は恐れをなして私とDOUBLEHORSE二倍馬で対戦しようとしないからね。」

気まずさの中で、ジェイコブズ博士は考えを巡らせていた。「ロックウッド博士が二倍馬と戦っている姿をうっかり想像してしまった。」

安心させようと、ハナウォルト博士は彼を黙らせた。「うっかりなんかじゃないよ!彼女は主要の馬に乗っていて、私は小さな付属の側車の馬に乗っているの。」

今まで黙っていたケリー博士が口を開いた。「気紛れな馬の家に行った時、馬の安定性の専門家をこっそり連れて行こうとしたんだけど、山麓がエスカレーターのような仕掛けで彼女を連れ去ってしまったの。」

「自分の二倍馬が恥ずかしい」ウォルター博士は嘆いた。「彼は走ることもできないんだ。テイラー博士が言っていた二倍馬はちょっとした横揺れをすることが出来るが俺のは、ウーッ…」

続いて専属の異星人学者であるステレストフ博士が発言した。「私は宇宙人の二倍馬しか見たことがないな… すごい優しいけど悪名高くも頼りにならないんだ。そしてピンクがかった紫色のあらゆる色合いをしている。」

部屋は静まり返っていた。彼女は続行して、彼女の翠眼は単独で周囲を見渡した。

「それと、地球の二倍馬とは逆に、それらはいつもフレンチ・キスをしているの。」

まだ沈黙が続いた。

「そして敢えて言えば、お互いに。」

アデリー博士は再び咳払いした。彼は何かの病気にかかっているようだった。ケリー博士は彼の背中を軽く叩いた。

「馬のポケデックス番号を二倍にすると、」数学者のネイト・タラント博士は控えめに計算機に入力しながら言った、「咳のSFXと山の妖精で構成された未定義になる。スピードランナーは[誕生]や[方向性の無い切望]などの時間のかかるエリアを回避するため使用する。」

突然、ジェイコブズ博士は忘れていたことを思い出してテーブルを拳で叩いた。彼は映写機の電源を入れ直した。照明が暗くなり、彼は最後のスライドを表示した。画面では、古代ギリシャの哲学者が幾何学的な数式の中に奇妙で不明瞭な動物を描いていた。

「これは誰にでも使える簡単な自家製公理から二倍馬を論理的に導き出したEuclidだ。」誰もが「おぉー」と感嘆の声を上げた。Euclidの石盤を拡大したスライドが更に何枚かあった; スライドショーが終了するまでジェイコブズ博士は進めていった。

灯りが戻ってきた。不可解なことに、タラント博士と部屋の隅に潜んでいる影のような複製体は暗いままだった。

「漆黒ネイトの二人が二倍馬について何か言いたいことがあるみたいだな」ジェイコブズ博士は悲鳴を上げた。影のような姿がちらついていた。タラント博士は暗いままだった。

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