説明: 金属製の巨大な構造物。由来不明の言語で書かれた大量の本、独自の形式でデータが保存された大容量の電子媒体、多数の未知の生物の死体、用途不明の機械類で埋め尽くされている。
回収日: ████-██-██
回収場所: メキシコ合衆国領内に位置する財団サイト-██の地下の土中
現状: 調査の結果、歴史的資料以上の価値および危険性がないことが判明したため、Anomalousアイテムに分類。
回収資料A: 大量の図、グラフ、写真が添えられた書籍の山。本資料をロゼッタストーンとして、言語の翻訳や電子媒体の解析がスムーズに行われた。おそらくこの資料の作成者は、未知の知性体にこの構造物が発見された際に、本資料を元に翻訳および解析が行われることを期待して残したものと推測されている。
回収資料B: 「無限エネルギー炉」と銘打たれた機械。構造体の中央付近で発見された。何者かにより完全に破壊されており、修復および解析は不能。
回収資料C: 「無限食料デュプリケーター」と銘打たれた機械。構造体内に複数存在するが、いずれも完全に破壊されている。設置場所の大半で「故障中」と書かれた張り紙が発見されたことから、破壊以前から機能停止していたものと推測される。
回収資料D: 比較的状態のよいミイラ。遺体を細かい細工が施された装飾品で飾り付けられていた。内部スキャンの結果、体内に別の個体が存在していたことが判明。この生物は胎生であり、妊娠していたことを示唆している。
回収資料E: ズタズタに切り裂かれた死体のミイラ。内部スキャンの結果、消化器官内に大量の宝石類が詰まっていた。どのような経緯でそのような状態になったのかは不明。
回収資料F: 電子媒体から復元された音声データ。大部分は破損している。
[データ破損]の長きにわたるコールドスリープから目覚めた私が目にしたものは、かつての仲間たちの子孫が、惨めな類人猿へと退化した姿だった。私は目を疑った。あの凛々しいクルーたちはどこへいったのか? 私は必死に残された文献を読み漁った。その結果わかったのは、機関部で発生した事故によるエンジニアの大量死、食料デュプリケーターの故障と修理者の不在による食料の枯渇問題、何百年経っても見つからない移住可能な惑星、徐々に狂気に侵されるクルーたち、そして顕現した地獄。この船は、かつて我らが故郷から飛び立ったときには、確かに人類最高峰の精鋭ばかりを乗せていた。それがいまや、喰らい、殺し、交わるだけの、下等なケモノの巣に成り果てている。調べてみたが、私以外の管理者は、同化したか、殺されたか、コールドスリープ装置ごと破壊されたか、とにかく誰も生きてはいないようだ。私は管理者としての責務を果たさねばならない。そもそも一度人類は滅んでいるのだ。我々だけがこの「最後の希望」に乗って逃げ出したとて、その運命は変えられるものではなかったのだ。あの災厄から我々だけでも逃げ延びれば、いつか人類が復興できるなどというのは、とんだ思い上がりだった。ほんの数千人の天才が宇宙に飛び出したところで、宇宙はそれを救うほど寛容にできてはいない。統括者たち以下、人類の誰もがそれに気付いていなかったとは、いや、そんな幻の希望にすがろうとしていたとは、今考えると、愚かしくて涙が出てくる。なにがObject Class: Thaumielだ。こんな船、犬の排泄物ほども価値がない。くそ、くそ、排泄物に群がるウジどもめ、またドアを叩いてやがる。待ってろ、今終わらせてやる。これが人類の終末だ。アポカリプスナァァァァァウ![爆発音]
回収資料G: 電子媒体から復元された音声データ。
──すべてご破算、願いましては──