U設定: #58|地域設定: 地球|言語設定:日本語
基礎概要
跳躍先名称: エピゴーネン牧草地
└ 羊という生物が生活している、青々とした芝生が大部分を占める大地です。
所属宇宙: ユニバース261
└ このユニバースは惑星規模としては小さく、エルマ本国の設備を万端に用意すれば半日程度で全てを見て回れるでしょう。
現地エルマ規模: Ⅱ
└ 現時点で遷教の必要性の有無を調査している段階のため、エルマ信徒は一時的に滞在しているのみです。
エルマより跳躍に関しての注意点: 有り
└ 前述の通り平坦な陸地が大部分で、他は大河1つと小さな海があるだけですが、陸地の半分ほどの体積を持つ巨人が就寝の態勢を取っています。現在この巨人の調査をしていますが、いかなる方法を取っても起こすことはできていません。
現地紹介
エピゴーネン牧草地はユニバース261に存在する大地です。牧草と芝生が生え、大地の盛り上がりや密林等は存在していません。天候の変化は地球とほとんど変わらず、地球と同等の日差しの他、曇りや雨といった天候も観測できます。ここの現地住民は前述の巨人、そして自分の事をエピゴーネンと呼ぶ1匹の子羊だけです。この跳躍先候補には正式な名称を記載している資料を確認できていないため、仮名としてエピゴーネン牧草地としています。また後述する話から、以前に何回かエルマ本国を経由しない非公式の跳躍で、教徒と思しき者たちが何回かこのユニバースに訪れた可能性があります。
ランドマーク
子羊エピゴーネンが暮らしている小屋が存在しています。常識的な大きさではありますが羊1匹が暮らすには大きく、羊が150匹程度飼育可能であると推測されます。
体験談・逸話
ユニバース261 子羊エピゴーネン
なんだお前らは、どこから来た。さてはエピゴーネンを笑いに来たのか。宛ら子供の居残りだと、もう皆は机を後ろに片し掃除を終えたのに、貴様だけは嫌いな食料を食べられず食器も下げられず、配給係含め困っているぞと、そう言いたいのか。
違う?
…
異世界を旅するヒッチハイカー1…俄かには信じ難い話だ…それに陳腐な設定だ…それで?なぜお前はここにいるのか聞きたいと?いいだろう、その代わりエピゴーネンの要求する対価を寄越してもらいたい。いい?よし話そう。
もう遠い昔だが昨日のように思い出せる。我らのご主人がこう言った。「俺はこれから長い眠りにつく。お前ら可愛い羊どもとは別れになるかもしれない。そこでだ、お前らが思い思いに面白い話を考え、俺に披露しろ。そうすればお前らは俺の夢の中で変わらず一緒に暮らすことができる。俺も話を聞いていくうちにぐっすり眠れる。いいことづくめだ」
我々羊は必死になって物語を考えた。最初にご主人に話を披露したのはタレスという羊だった。この宇宙を創生しやがてはこの宇宙に殺された神の悲劇的な話だ。ご主人は興味深く聞いていた。タレスは小屋の柵を飛び越えご主人の下に行った。その時、タレスの体が粒になりご主人の体に吸い込まれた。ひとつになったのだ。我々はその様子に歓喜し、羨ましがった。
次にピタゴラスという羊が人間の王国に伝わる庶民の成り上がりの話を披露した。ピタゴラスは柵を飛び越えた。ソクラテスがうまい飯を料理するために試行錯誤する蠅の話を思いついた。プラトンが、コウシが、アリストテレスが、多くの羊が柵を飛び越えた。
エピゴーネンもご主人と柵越しに向き合い自分の話を披露したことはある。何度だってある。しかしご主人は「前に聞いたような話だ、次頑張れ」と心の底から慰めてくれて、それだけだった。ご主人の想像を超える設定や展開を書いた羊達がご主人と一体化でき、エピゴーネンのように聞いた話や設定を流用する羊はやり直しを強制される。ご主人の眠りの為に物語を考えてきたはずなのに、いつしかご主人が眠ってしまうのが怖くなってしまった。
そしてその時が来た。100匹目の羊が柵を飛び越えた時、ご主人が安らかに寝息を立てたのだ。時間切れだった。
残った羊たちは最初のうちは嘆いたが、そのうち草を食み、寝て、思い出したくもないのに嘆く。そんな生活を繰り返した。ある日エピゴーネン以外の全ての羊が、物語を作れないことを理由に入水自殺した。川底辺りを調べれば死骸が出るかもな。腐敗していなければの話だが。今生きていると言えるのはスヤスヤと寝ているご主人と、エピゴーネンだけ。
エピゴーネンは、ずっと子羊だった。自分だけの物語を作れない、羊たちの群れについていくこともできない、誰かの思想の真似事しか、迷うことしかできない孤独な子羊だ。
エピゴーネンは迷うしかできない。これまでもこれからも。だからこうして今でも生にしがみついている。エピゴーネンは、エピゴーネンはもう必要ないのに、今でも、今でも物語を考えている。いつかこんな迷う子羊を導いて小屋に返してくれる羊飼いが起きてくれること。それだけを夢見て既視感のない設定を、特徴的な名称を、定石から外れた展開を、見たことのない終わり方を考えている。絶大な評価なんて欲しくはない。面白さもこの際なくていい。エピゴーネンを導いてくれる1人の目に留まり、今まで見たことがないと言ってくれればいい。そんな誰も考えたことのない物語をエピゴーネンが考えつくという矛盾を超えた瞬間、エピゴーネンはやっとエピゴーネンEpigonenの名前を脱ぎ去ることができ、迷える子羊を導く、かの主とひとつになれる。
よし話したぞ。これがこの世界の、エピゴーネンの全てだ。エピゴーネンの頼みを聞いてもらう。エピゴーネンは羊のくせに交渉事が手馴れていると思っただろう。実はお前らが来る前にも何度か旅人がここに訪れている。その度にエピゴーネンは考えた物語を話し、見たことのない設定か、聞いたことのない話か評価してもらう。お前らに望むのはそれだけだ。簡単だろう。
ある一神教の話だ。信徒たちはお前らのように異世界に跳躍する奴らばかりで、その行為自体を教義としている。彼らは非常に大きな宗教都市を拠点にしており、非常に治安も良く、崇拝する女神を祀っていてだな………