異世界跳躍先候補:2903 "酔い潰れる地サティベックス"

U設定: #58|地域設定: 地球|言語設定:日本語

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基礎概要

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サティベックスの風景

跳躍先名称: 酔い潰れる地サティベックス
└ 全域が地球上の熱帯雨林に似た気候・植生であり、原始的な狩猟採集生活を営む人型知的生命体の集団が存在します。彼らの禁忌を冒さない限り、エルマに対しては概ね友好的です。

所属宇宙: ユニバース339
└ 複数の天体に文明が存在するユニバースです。

現地エルマ規模: II
└ 布教活動は進行中ですが、現地の食糧事情等により難航しています。

エルマより跳躍に関しての注意点: 有り
└ 現地住民は外部から持ち込まれた食物に著しい拒否反応を示します。食物を持ち込んでいる事を知られた場合、以降の接触は困難となる事に注意してください。また、現地産の食物の接種は必要最小限に留めてください。





現地紹介
酔い潰れる地サティベックスはユニバース339に存在する、森林に覆われた小型惑星です。非常に大きな特徴として、サティベックスに存在する植物はすべてTHC(テトラヒドロカンナビノール)という物質を含んでいます。これは地球などのユニバースにも存在する物質で、一般的に大麻と呼ばれる植物に含まれています。
つまり、サティベックスに存在する植物はすべて麻薬と同じ抗精神性、依存性、催幻覚性などを持ちます。そのため植物を餌とする生物の多くは健全に生育する事が難しく、サティベックスに存在する生命体は植物や微生物を除けば人間のみです。人間が例外的存在である理由については不明ですが、恐らく人間は元々この地にいたのではなく、別惑星や別ユニバースからの移住者・漂流者の末裔ではないかと思われます。
移住はかなり大昔に行われたと思われ、移住元の文化などの情報を伺い知る事は不可能です。現地で育まれた特筆すべき文化としては、食事という行為を悪とみなしている点がまず挙げられます。食欲は悪魔の誘惑であり、それに従えば死に至るとサティベックスの住民たちは説明します。実際、サティベックスでは食事を頻繁に取る者は中毒症状によってより多くの食物を求めるようになり、結果として早世するため食事を忌避する行為は理に適っていると言えます。ただし栄養不足による健康被害は避けられず、サティベックスの住民の平均寿命は30歳前後、成人の平均身長は140㎝未満です。





体験談・逸話

ユニバース58 地球 アメリカ合衆国 ダレル・エゼルレッド
サティベックスの住民を原始人だとか、未開人だとか言って揶揄する者が我らエルマ遷教師の中にすら存在するのは残念な事だ。確かに、彼らは進んだ文明を持っているわけではない。この星には科学技術はおろか文字すら存在せず、進んだユニバースに慣れている者からすれば未開の地に見えるかも知れない。しかし、サティベックスの住民は我々よりずっと純粋で、幸福に満ちた生活を送っているのだ。例えば、彼らの話すサティベックス語には「悩み」を表す単語が存在しない。悩みに相当する感情を持つ事が無いのか、将来に起こる悪い出来事を想像して嫌な気分になる事が無いのかと彼らに問うたら、未来の事は分からないのに何故嫌な気分になる必要があるのかと聞き返された。まさに、真理を突いた言葉であると思う。人口僅か千人弱、平均寿命30歳前後のこのユニバースでは、ある意味では地球よりずっと進んだ文明が息づいている。

我々が忘れてしまった多くの事を教えてくれるこのユニバースだが、何より問題になるのが食料である。前述の通り自生している植物は全てが麻薬だし、外から食物を持ち込めば現地人の怒りを買う。私は地球から野菜や穀物を持ち込み、この地の住民に栽培させる事ができればと考えているのだが、現段階では難しいだろう。私の持っている紙やペンすら食物でないかと疑われ、口に入れさせられた程なので、野菜の苗など持ち込んだ場合に何が起こるかは目に見えている。余談だが、私の前任の遷教師はこっそり缶入りのフルーツを食べている所を見つかり、怒り狂った現地人達に追いかけ回されたそうだ。

一体なぜ、外部の食物を嫌うのか。興味は尽きないのだがこの話題自体が彼らにとっては愉快でないようで、聞き出す事は難しい。しかしついに先日、ある少年から興味深い昔話を聞く事に成功した。曰く、何世代も前の住民の一人が禁忌の食物を入手し、それを巡って争いが起きたという伝承があるとのことだ。争いは苛烈なもので、今の数十倍いた人口の殆どが死に絶えたとも言っていた。果たして、「禁忌の食物」とは何か。まずは我々のような外部の者が持ち込んだというのが考えられるが、私は別の説を支持したい。恐らく、禁忌の食物とは人肉の事だろう。この地に存在する植物以外の食物は、人肉しかないのだから。

何世代か前のサティベックスの住民は、人肉を食べれば麻薬の禁断症状に悩まされる事無く腹を満たせる事に気付いたのだろう。そして、安全な栄養源を巡って争いが起きた。通常の戦争であれば殺されるのは戦闘員である大人の男のみだが、人肉を巡る争いとなれば女・子供も狩りの対象となり、食われたかもしれない。人口の殆どが死んだという伝承も誇張とは言い切れないだろう。この血生臭い記憶が植物以外のものを食べない教えを定着させ、さらには外部の食物を拒む風習へと転じたと思われる。

人肉食とそれによる争いのリスクは、完全に消え去った訳でも無い。誰かがふと、人の肉は食えないのかと思い立ち、実行に移せばまた同じ事が起こりうる。そう考えれば、あらゆる外部の食物を嫌う事は理に適っているのかもしれない。今の禁忌の維持が彼らの文明の維持なのだと自分に言い聞かせ、私は今日も腹を空かせながら布教活動をしている。

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