異世界跳躍先候補:411 "宇宙船神殺し号"

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"神殺し号"

基礎概要

跳躍先名称: 宇宙船神殺し号(オーライ・コロニー)
└ 現地住民は存在せず、交流は望めません。

所属宇宙: ユニバース930
└ 各種文明の宇宙進出が進み、西暦4000年を超えてなお発展し続けているユニバースです。

現地エルマ規模:
└ 遷教の必要性は無く、エルマ信徒は一時的に滞在しているのみです。

エルマより跳躍に関しての注意点: 有り
└ 神殺し号内部の時間流は地球とは真逆かつ比較的高圧で流れています。若化事故防止のため、跳躍の際は関門で与えられた指示へ適切に従って下さい。


現地紹介

宇宙船神殺し号は、ユニバース930の地球からアルファ・ケンタウリ方面14.247光年地点に存在する巨大な構造物です。その名前が示すとおり神殺し号は未知の存在によって建造された宇宙船であり、無人の状態で自動的に宇宙空間を航行し続けていました。全長26km、半径4kmの円筒形の船体には数千人規模の居住スペースと食料生産プラント、水・空気完全循環システムが備えられており、神殺し号への滞在者は自由にこれらの設備を使用することが可能です。

神殺し号の大きな特徴は、宇宙船全体の時間流が地球のそれとは逆行していることです。神殺し号は3次元的宇宙の移動のみならず高度な科学技術によって超次元時間流を"遡る"形で航行することが可能であり、地球時間流の1日につき神殺し号内部では約74時間逆向きに時間が経過しています。

この性質により、神殺し号への跳躍は所持物品の分解や跳躍者自身の肉体の若返りを発生させる可能性があります。時間逆行の影響は特に生命体に対して顕著かつ個人差が大きく作用するようであり、過去には神殺し号に踏み行った瞬間、159歳の老人が6歳まで若化する事故が発生しています。跳躍の際は体質が領域内に適応できるかテストを受けた後、若化事故によって帰還困難になったときのために適切な滞在期間を申告して下さい。

また、あるユニバースから神殺し号に転移し、その後再跳躍によって元のユニバースへ戻ると間接的に時間流を遡ることが可能であることが知られており、エルマの信徒は神殺し号を擬似的な過去へのタイムスリップ方法として活用しています。時間逆行に対して神殺し号の船体と内部機構については何ら影響が確認されていないため、この時間遡行手段は今後も安定して利用できると考えられていますが、原理上自身の肉体が経過した年齢以上に時間を遡ることは出来ないことにはお気を付け下さい。

当ページ執筆現在、神殺し号はユニバース930の西暦3260年代時点を航行中です。


ランドマーク

神殺し号の中心部、集会用に設置されたと思われる巨大な吹き抜けの"中央広場"には、スローガンの如く"On tue dieux"(私たちは神を殺す)というフランス語の一文が彫り込まれている星を模した金属オブジェが鎮座しています。神殺し号へ最初に跳躍したエルマであるオーライ遷教師は、この宇宙船を自身の名前からとって"オーライ・コロニー"と名付けましたが、この"On tue dieux"の一文から呼ばれるようになった"宇宙船神殺し号"がよりキャッチーな愛称としてエルマの信徒に膾炙してしまったため、オーライ遷教師は地団駄を踏んで悔しがったと言われています。神殺し号に跳躍した際は、是非オブジェの前にある窪み、"オーライ・地団駄の跡"を見物してみて下さい。

多くのエルマの信徒が目当てとして訪れているのが、神殺し号の時間遡行影響による文字通りのアンチエイジング効果です。この特性を求めて、年間で平均5億352万人が神殺し号に跳躍しているとされています。しかし前述した若化事故のような過度な若返りは知能にまで影響を及ぼすことがあり、自身の年齢を超過して滞在した結果肉体が消滅する事例も多発しています。消滅の際には激しい閃光が発生し、シルエットがくっきりと壁に焼き付くことのみがその人がそこにいたことの証明となります。船内には多くの場所でこの"影"が残されていますが、「明らかに今まで確認された若化事故の犠牲者数より影の数が多い」というホラーな要素も人気を博しています。

船内で使用されている高度な技術も神殺し号の魅力の一つです。時間逆行特性の影響により調査は遅れていますが、船内に使用される未知の技術はパラテックの領域にまで高められた現在の主流技術の高度な発展形であり、多くの技術者たちの垂涎の的となっています。特に、"プランター"と呼ばれている園芸用に作られたであろう施設からは、大幅に遺伝子改良された植物の種子が大量に発見されており、回収されて多くのユニバースで生育実験が行われています。また近年、日奉葛同志が発見した"艦橋"も神殺し号の起源に関わると推測される情報が数多く保存されており、未知の存在とのロゼッタストーンになりうると期待されています。

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"オーライ・地団駄の跡" 船内のあちこちに残る"影" "プランター"の設備の一つ


体験談・逸話

ユニバース01 アトラル エルメス 日奉葛

私はアトラルで聖印奇跡論の研究を行っている学者です。以前に所用のため、時間の流れが非常に早いアトラルから異世界跳躍した際のこと。いざ用事を終え家に戻るとアトラルでは数年が経過しており、冷蔵庫の食品が全部腐っていたという経験をしました。それからはアトラルへ戻る前に一旦神殺し号に滞在し、出発した日時となるべく近くなるように時間調整をしています。

ある日、 産まれながらの特殊な体質のせいでしょうか。私は居住区画から移動する最中に名前も知らぬ部屋へと迷い込んでしまいました。

そこは薄暗く、操作方法も分からないような様々な機械が並んでいました。ある種のモニタールームのような役割を果たしていた部屋なのか、"中央広場"や居住スペースのリアルタイム映像、神殺し号全体の見取り図などがホログラムとして部屋のあちこちで投影されていました。

とりわけ私の眼を引いたのは前方のスクリーンでした。まるで閉じ込められていた赤子が生まれて初めて見た世界の美しさに打ちのめされるように、神殺し号の進みゆく星々の超次元空間が高速で流れていく様は圧巻の一言に尽きる美しい光景で、私はこの部屋を神殺し号の船長室か艦橋に違いないと確信しました。もしあなたが神殺し号を建造する側の立場だったとしても、あの景色は選ばれた人間だけで独占したくなるでしょう。

もっと間近でその景色を見るため、私はスクリーンに近づきました。するとどこを触ってしまったのか、急に目の前に青い宝石    恐らくはサファイアの図柄が浮かび上がり、音声の再生が始まりました。それは文法・語彙的にスペイン語、官話方言および/または広東語、██████およびHaskellなどに最も近しいと思われましたが、ほとんど未知と言うべき言語で、最初は音声を止めようとあたふたしていた私もその奇妙さに思わず耳を傾けました。所持していた愛用の翻訳機(聖印詠唱のために購入した15年選手です)を片手に読み解くと、それはどうも口述による航海日誌のようなものだということがわかりました。以下に分かった単語の内容をまとめます。

1日目~8日目: "長く待った出航"、"皆[多くが?]、希望に満ちあふれている"、"[ヘブライ語で]光あれ"、(すぐ後に)"[現代英語で]ファック"、"身体に活力"、"やる気"、"明るい展望"

9日目~23日目: "万事順調"、"慣れた"、"退屈"、"懸念"、(すぐ後に)"観葉植物"、(すぐ後に)"発芽しない"、(すぐ後に)"永続的に種子"、"[不明な単語]空間のせいだろうか?"

24日目~37日目: "全て子供"、"謎、影"、"消失"、(すぐ後に)"15以下・不明"、"混乱"、"疑心"、"対立"、"一部の乱闘"、"親の悲しみ"、"懸念"、"閉鎖空間"、"[ネガティブな?]発展"、"神罰の否定"

38日目~42日目:(記録者の声質が変化している) "分かった"、"船の外殻"、"[不明な単語]空間の[流入?]"、"あり得ない事故"、"設計の不備"、(すぐ後に)"また[もしくは?]内部工作"、"著しい若返り"、"航行の中止"、(すぐ後に)"出来ない"、(すぐ後に)"システムと運動[エンジン?]の関連"、"速度の減少"、"求める[願う?]"、(すぐ後に)"影響の消失"、"疑心"、"信用の無い"、"この場所と皆[多くが?]"、"対立"、"閉鎖空間"、"避けられない[逃げられない?]"

43日目~50日目:(記録者の声は明らかに高い音程になっている) "[現代英語で]ファック"、"[現代英語で]ファック"、"[現代英語で]ファック"、"始まった"、"戦い"、"子供の皆[多くが?]"、"血"、"殴打"、"死"、"影"、"悲鳴、若返り"、"両方の地獄"、"私は一人"、"この場所を作る"、(すぐ後に)"閉鎖空間"、"[ため息]"、"[ヘブライ語で]バベルの塔"、"神罰の否定"、"神罰の否定"

50日目~53日目:(記録者は平易な文法しか使用しなくなっている) "私たちの証明、無駄な試み"、"宇宙は神の手によらない"、"神め私たちを拒むのか"、"理性の輝き"、"観測による否定は成し遂げられなければならない"、"皆消えた、死んだ"

54日目: "待ってろビッグバン"

彼らの試みは無謀にして不遜なものだったかもしれませんが、それでも私は一人の科学者として彼らの探求には敬意を表します。

私の祈りを乗せ、宇宙船神殺し号は今も過去へ航行し続けています。この船はいつか彼らが目指した場所へたどり着くでしょう。神無き創世、宇宙が始まるその時まで。

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