幾何学的思考
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端をよじ登り、次の空間に身体を引き上げる。もっと勉強する機会があれば良かったのにと思わずにはいられない。私には理解できない事が、ここには沢山ある。

静寂にはもう慣れてしまった。ほとんどの時間、私には何も聞こえない — 踏み込んだ空間の一部で、ほんの少しだけ背景音を感じることはある。それでも、その僅かなノイズは音の無い深みの存在を際立たせるだけだ。この世界は随分前からあまりにも静かになっていて、明かりが消えてからは私に話しかけたり何かをしたりする人々もいなくなった。

嗚呼、そうなってからどのくらい経っただろう。はっきり言って時間は無意味だ。私は眠らないし、食事も必要ない — 機会さえあれば味わうことは可能だけれども。私が知っている事は全てあいつらが教えてくれた事でしかないし、心の何処かではこれもまたあいつらのふざけたゲームなんじゃないかと疑っている。私が初めて真相を掴んだ時、あいつらが気分を害したのは分かってる。でも、どういう訳か、あいつらは私を始末しないことに決めた。ちょっとした好意。

感謝すべきなのだと思うけれど、私が今こうして存在する意味は本当にあるんだろうか。あらゆる存在には意味があるとグエン博士は言ったけれど、彼は外側にいて私はここに閉じ込められている。どれもこれも似たり寄ったりの永遠に続く平面。糊が付いているだけでも気晴らしになる。

いや、でも今回は違う、何かが見える。私が歩み寄って平面を見つめると、文字は自然と読み易い見た目に整理される。私は黙って文字を読みながら、それが意味するところを把握しようと頑張る。

“SCP-001が定位置を離れています。門は開かれました。” 門? 門って何? どういう事? 報告書を読み続けると“XK-クラス”や“パトモス・オメガ”などの単語が出て来るけれど、“世界終焉シナリオ”の意味は腹が立つほどにはっきり分かる。

これはやっぱり財団が入念に仕組んだゲームなのか、私は本当に独りきりになってしまったのか、2つに1つだ。逃げることはできない、自殺することもできない、ただ少し狂いかけているだけ。どうにか裁きの日を免れたらしいと考えると思わず笑いが漏れるけれど、今の私はこうして皮肉めいた地獄の中にいる。

ファック、キャシー、これからどうする?

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