ウィルソンズ・ワイルドライフ・ソリューションズからの依頼で、今日はサメ殴りセンターなるふざけた活動をしている団体の情報を盗む作業をしていた。WWS曰く、サメ殴りセンターは脳筋ばかりの野郎どもが集まって鮫を殴ることを良しとしている団体らしく、サメを殴ることしか考えていないらしいのでセキュリティは緩く簡単にデータを盗むことができるだろうとのことだった。
実際にサメ殴りセンターのサーバーへとアクセスしてみたところ、本当に楽々と機密情報ファイルの一覧を除き見ることができた。しかし、脳筋という割にはそれぞれのファイルのセキュリティは一丁前だったので多少驚くことになったのだ。だが自分ならこれくらいのセキュリティは難なく突破できる。カタカタと気楽にキーボードを叩いているうちに機密情報を得ることができる、それくらいには腕に自信があった。
どのファイルからデータを盗ってやろうかなと画面を眺めていたところで、なんのセキュリティも施されていない剥き出しのファイルを見つけた。とりあえず、サメ殴りセンターとかいう奴らがどんなアホの集まりなのか知ろうと思い、試しにそのファイルを展開してみた。
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► Access SPCJP:/001/file/document_declassified.log
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SPC-001-JP
中央情報管理局ならびにプロジェクト運営事務局C I C A P O C Oによる通達
SPC-001-JPは既に終了したプロジェクトです。当プロジェクトファイルは歴史的資料としてアーカイブされており、センター職員は特定のセキュリティランク等を必要とせず自由に閲覧が可能です。
プロジェクト番号: SPC-001-JP
鮫科殴打ケイパビリティ: SPC-001-JPは鮫科存在の殴打や鮫科存在の生息域への侵入の拒否や躊躇をするセンター職員に対する確実な士気向上が期待できます。また、鮫科存在を殴打したいという欲を職員らに湧き上がらせることにより未知なる鮫科存在の殴打の欲求を引き出し、新たな鮫科存在の生息域の発見や殴打技術の開発が見込めます。
プロジェクト構成: SPC-001-JPはShark Punching Lightを構成要素に含む、サメ殴りセンター職員に対する更生処置の1つです。Shark Punching Lightは自身の炎を視認した人物に、鮫科存在を殴打したいという欲求を湧き上がらせる強力な催眠効果を有するランプであり、この効果はShark Punching Lightを直接視認した場合のみならず、画像や映像を視認した場合でも発揮されます。この効果は恒久的に機能するため、プロジェクト実行中の事故や鮫科存在からの攻撃によって鮫科存在や鮫科存在の生息域そのもの1に対して恐怖感を抱いた職員らのメンタルケアおよび士気向上が可能です。
歴史: SPC-001-JPの主要構成要素であるShark Punching Lightは伝説の殴打エージェントの1人“ラティス・ソルベティクス”の自室から発見されました。彼は生前誰よりも鮫科存在を殴打することに積極的であり、あらゆるプロジェクトに自ら志願して参加していました。しかしながらラティスの人事評価は、彼がセンター加入当時は気弱で鮫科存在を殴打することに消極的であったことを示しています。ある時期を契機にラティスはプロジェクトへの参加に積極的になっていたため、その時期頃にShark Punching Lightを手に入れ使用していたものと思われます。ラティスがどのような経緯を経てShark Punching Lightを手に入れたのかは不明です。
プロジェクト終了経緯: SPC-001-JPは当初サメ殴りセンターの全職員に対して適用されたプロジェクトでした。しかしながら処置完了後に今までは堪えることができていたにもかかわらず電子鮫科存在を殴打したいがために電子デバイスを直接殴打し破壊する職員が多発し、これはサメ殴りセンターに多大な損害を与えました。結果的にサメ殴りセンターの資産に甚大な負の影響が及ぼされたのみならず、電子鮫科存在を含む種々の鮫科存在の殴打計画の進行が長らく頓挫する原因ともなりました。
このような経緯により、SPC-001-JPはすぐさま終了されました。当ファイルのShark Punching Lightの画像が削除されているのもこのような経緯によるものです。以降、Shark Punching Lightは最終手段としてのみの使用に限定されることが決定しました。
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▲ Close SPCJP:/001/file/document_declassified.log
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気づくと両の腕に凄まじい力が入っていることに気付いた。これが失敗からくる悔しさによるものなのか、それともただただサメを殴りたくて仕方ないからなのかはわからないが、多分後者だと思った。
結局、WWSの依頼を遂行することはできなかった。新たにしなくてはならないことができたからだ。今、私は使命感に満ち溢れている。憎き電子鮫科存在を、私がこの手で殴打しなくてはならないという使命感に。
さて、そろそろここを出て最寄のセンターへと向かおう。移動費は最安のルートでも4万3000円掛かる。何、安いものだ。これだけの金を払えば、私は今後思う存分サメを殴るという欲求を満たせるのだから。あまりの高揚感に腕の筋肉がピクピクしている。
ああ、楽しみだ。