クレジット
翻訳責任者: Yukth
翻訳年: 2026
著作権者: Elenee FishTruck
原題: Fifthdation
作成年: 2019
初訳時参照リビジョン: 12
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/fifthdation
スーザン・ゲイルは軍で育ち、軍で教育を受け、軍で戦った。彼女が見つけようとしたものは必ず彼女の弾丸に撃ち抜かれることになった。常に主席で部隊でも最優秀。そんな彼女を財団が機動部隊ミュー-7の隊員に選ぶのは当然だったし、彼女自身も自分が正確に何をするのかを知ったとき、その申し出を大いに喜んだ。ついに、自分に挑戦しうるものが現れる。それは、カオス・インサージェンシーのエージェントか、危険なアナーティストか、あるいは、アーカイブを読み漁る中で目にしたあの怪物の一体かもしれない。
しかし実際には財団の最優秀の頭脳をも困惑させるアノマリーを彼女は追うこととなった。何らかの現実改変存在がジョージア地域へ侵入しており、この存在について財団が得ていた最有力の手がかりはその文書記録、つまりは試験ログだけが記されたものだった。各地で異様なほどに多発する失踪や山火事や突発的な超常現象によって、その追跡の手掛かりは幾分か明確になっていた。とりわけ、スターバーグという小さな町にそれらは集中しており、その中でも木造の簡易便所の一つが特に高いヒューム値を示していた。
スーザンは機動部隊ミュー-7の隊員たちとともにその便所を包囲した。数名は必要に応じた支援のため外に残り、大半は合図シグナルがあり次第にそのちっぽけな建物へ突入する態勢を整えていた。その合図を出す役目はスーザンにあった。額から汗が滴り落ちた。重い装甲と先の見えない状況によるストレスが重なり、本来よりもずっと暑く感じられていた。便所からは、まるでそこに在ってはならないもののような、不吉な気配が漂っていた。それでも彼女に残された選択肢は二つだった。外に留まるか、財団の任務を続けるか。そして彼女はこれまでで一番に重要なこの任務を投げ出すような真似は決してしなかった。
「全員、マイクを確認しろ。内部に何がいるのか、それは見当もつかないno idea。カウントスリーで突入する。」彼女は叫んだ。「ワン… ツー… スリー!」
スーザンと隊員たちは屋外便所に突入した。だが、そこで彼女たちを迎えたのは逃れようのない虚無だった。その虚無はあり得ないほどに混ざり合った色彩の塊のようであり、真空のようにミュー-7を吸い込んでいったが、それでも隊員たちは問題なく呼吸できていた。周囲は闇に包まれており、あらゆる光が瞬く間に呑み込まれてしまう。スーザンは入口に押し戻ろうと試みたが、扉は勢いよく閉まり、そのまま無へと消え去った。スーザンと隊員たちは宙に浮かんだままとなり、彼女は慌てて無線機へと手を伸ばした。
「バックアップ、扉を開けろ、繰り返す、扉を──」スーザンは口が無くなっていることに気づき、言葉を失った。悲鳴は皮膚越しにくぐもって響いた。そのとき、突如として扉が開き、残りのミュー-7を吸い込み、再び閉ざされた。やがて全員が声にならない悲鳴を上げ始め、ほどなくして身体の他の部分も変形し始めた。自身の両手にはそれぞれ十本の指があり、両腕には五つずつの手がつき、その腕もまた五本に増え、どこにも繋がれないままに自分の周囲を回っている。スーザンはそんな感覚に襲われた。最初に視力が失われ、次に聴覚が消え、やがて鼻もなくなり、気づけば奇体な身体断片が寄り集まった塊となり、ゆっくりと窒息していった。それに恐怖しているにもかかわらず、彼女は奇妙な陶酔感へと落ちていった。
「これだ。」彼女は思った。「これが死か。忘却の茨が見える。誰があたしの救いとなるのだろう?」
「私がなろう。」一つの声が優しく囁いた。「黒から離れよ、手放し、私とともに受け入れよ。」それが、色のない緑に盲目とされる前にスーザンが聞いた最後の言葉だった。
財団に発見された屋外便所の痕跡は、扉を失った扉枠と、木々を呑み込んでいく煙だけだった。
ジュリア・リーチはコンピュータの画面を見つめてその目を疑った。次々と表示される見出しはそのどれもが常軌を逸していた。『キリンの一種が絶滅』『太平洋でクジラの群れが生きたまま煮え死に』『全米各地のベーカリーで腺ペストを確認』世界は終わろうとしているのだろうか? そうかもしれない。だが、全ては夢なのかもしれない。そうだ、それだ。彼女は家で眠っていて、まだベッドの中であって、職場にいる夢を見ているだけなのだ。ただ流れに身を任せていればいい。
いつの間にか喉がカラカラに渇き、彼女は外のウォータークーラーへ向かった。オフィスの外へ出ると視界の端に何か奇妙なものが映り込んだ。何かがおかしい。
振り向いてそれを目にした。それは言い表し難い。ライオンの体にヘビの頭、そして脚の代わりに触手を持つような姿をしていた。触手は正確には五本。その化け物は四本の脚でゆっくりとジュリアの方へ歩み寄ってきた。ジュリアはドアを叩きつけるように閉め、オフィスの窓を乗り越えて外へ出ようとした。素早く梯子を降りると携帯電話で上司に連絡を取り始めた。
「早く、出て、出てよ。」電話の呼び出し音が鳴る中、彼女は口ごもるように呟いた。
「もしもし?」電話の向こうの声が応じた。
「所長、リーチ博士です。何か動物的なやつが逃げ出してます、まるでライオ──」
「しゅすぶ どてふぁ。」
「…なんて?」
「しゅすぶ どてふぁ。あれはもう君のものだ。実際のところ、中へ戻って会いに行けばいい。」
「いったい何を仰ってるんですか?」
「自分の目で確認しなさい、ジュリア。錨たちアンカーはこの世界と第五世界のどちらにするのかを決めきれずにいる。彼らの代わりに君が決めなければならない。」通話は途切れ、ジュリアの背筋に冷たいものが走った。振り向くと、そこにあったはずのサイトがもはやサイトではなかった。それは怪物であり、絶えず形を成しては壊れ、変化しては打ち消し、その全てが自らの上へ崩れ落ちていく。理解できるのは五のみ。五つの扉。五つの人間。五つの世界。彼女は別の現実へ通じる穴を見つめていた。自分の役目は既に演じ終えた。であれば、新しい幕が上がる前にそれを終わらせよう。夢は現実だった。
「反物語アナファブラが侵入せんとしている。させてはならぬ。世界を五つずつ死なせよ。」
ローレンス・オニールは荘厳な扉の前で期待に胸を高鳴らせながら待っていた。その扉は壁の半分を占めるほどで、ダイヤモンドと宝石の数々、そしてヒトデで飾られている。この巨大な大聖堂、ジョージア第一南第五主義教会としても知られるそれが成長を始めて以来、彼は数ヶ月にわたってその内部を彷徨っていた。花が開くようにそれは自ずと成長していったが、それは早かった。壁は洪水のようにローレンスの故郷の町を呑み込み、たちまちに町の全ての構造物が歪められ、この複合体の数ある部屋の中の一つへと溶け込んでいった。今や大聖堂はジョージア全土を覆っていると彼は耳にしていたが、それはただの噂に過ぎなかった。
ときおり、彼は床板に埋め込まれた動物を一つや二つ見かけることがあった。その顔は木板と癒着して大聖堂に呑み込まれた後、広大な廊下で死を待つばかりだった。さらに稀ではあるが、彼と同じように廊下を歩く人間の姿を目にすることもあったが、彼らもまたゆっくりとアレに侵されていくのだった。アレが何なのか、ローレンスには完全には理解できなかった。だが、アレがここの全てを、大聖堂の成長も、水が煙へ変わることも、煙が星に変わることも、全てを引き起こしていることだけは理解していた。何であれ、彼はあの荘厳な扉の向こうでアレが到来するのを待っていた。
小柄な女性が一人、華やかな帽子をかぶりハンドバッグを提げながらローレンスの隣まで歩み寄ってきた。二人はきまり悪げに扉の前で待ち尽くしていたが、やがてどちらかがその沈黙を破った。
「こんにちは、私はアビゲイル。」女性が言った。彼女は手を差し出し、ローレンスもそれに応じて握手を交わした。
「ローレンスです。調子はいかがですか?」ローレンスが答えた。彼女の手に指が五本以上あると感じた気がしてならなかった。アビゲイルはため息をついた。
「ええ、歩き通しでちょっぴり疲れました。ホワイトハウスが穴に呑み込まれたって聞いたわ。大統領の最後の言葉が "なんてことだ、神でいっぱいだ!"My god, it's full of god! だったらしいの。ねえ、何だか狂ってるって思わない?」
それを聞いてローレンスは笑った。「空が鮮やかなピンク色に変わってからというもの、もう何が起きてもおかしく思わなくなりましたよ。大統領も、探していたものを見つけられて何より。大統領の名前って何でしたっけ?」
アビゲイルは肩をすくめた。また再び、二人は沈黙のまま数分間待ち続けた。アビゲイルは足を小刻みに叩きながら何かを忘れていたことに突然気づいた。彼女はさっとハンドバッグに手を突っ込んで一冊の本を取り出した。
「『スター・シグナルズ』の最新版、読んだことあるかしら? 夢を叶えるためのまったく新しい方法なんだから!」
「誰でも一冊は持ってますよ。今じゃ聖書より売れてます。」
「聖書って、何?」
「さっぱり分かりませんI have no idea。」扉が開き始め、何千もの長椅子が並ぶ、喰らい尽くすように広がる大きな身廊が姿を現した。落ち着いた様子ながらも胸を躍らせて二人は中に入って席に着いた。一人の男性が壇上に歩み出ると、身廊は静まり返った。それは、およそ男の姿をしていたが、まるで男という形が先にあり、あとからアレが追いついてきたかのようでもあった。幾つあるのかも分からない脚で歩き、幾つあるのかも分からない口で様々な言語を話したが、それでも皆がその声をはっきりと聞き取ることができた。
「どうやら、アンタ方みんなが説教を心に刻んでくれたようだ! 感心だ。だがね、兄弟姉妹、いよいよ最後の試練の時だ、第五の試練だ、第五世界に至る時だ。」身廊のあちらこちらから喚声とどよめきが飛び交った。「聞くところによれば、ここの輩には七本足の反物語主義者アナファブリストが紛れ込んどるそうな。そりゃおかしい。おい、君。そう、そこの。こっちが見えているだろう?」彼はローレンスを指差した。
「あ、はい、牧師様。レヴァレンド」ぎこちなく立ち上がりながらローレンスが言った。
牧師が豪快に笑い声を上げ、その笑いに会衆全員が加わったかと思うと、やがてはぴたりと止んだ。「アンタが唱えるべきは牧師様レヴァレンドじゃなくてだな。尊敬すべきレヴァレンド… 指導者のアルコン… 祝祭そのものセレブレーション… 超大物のビッグチーズホレス様、だろう!」ローレンスは座席に崩れ落ちた。「おおっと、何も心配なさんな。ちょっと試してみただけだ。君は七本足のアニー・ファー・ブー・リストじゃない、見りゃ分かる。だが、アンタ!」彼は声を張り上げてローレンスのすぐ脇のアビゲイルを指差した。「アンタは、何やら厄介事に首突っ込みそうだ、そんな顔してるな。」
信徒の群れが立ち上がり、アビゲイルの方へと歩み寄り、彼女を取り囲み、その身体を押さえ付けた。先ほどまで親しく言葉を交わしていたにもかかわらず、それが正しいことのように感じられたローレンスは群集に加わらずにはいられなかった。彼らは一団となり、蹴り叫ぶアビゲイルを引き摺ながら壇上中央まで連れて行き、床へと投げ出した。
「さて、見たところ、かの黒い茨にすっかり囚えられてしまったご様子。間に合って捕まえられたのはよかった。クソほどに惜しいことだがアンタを手放さなきゃならん。アンタはまさしく "正しい" シスターって感じになれそうだったというのに。あて どぅ じぇど ふけぐす どぅ、フィフス。」アビゲイルの足元に穴が開き、彼女は声もなく闇へと落ちていった。そこには、いつ何時でも世界を呑み込めるように待ち構える茨が見えた。それはビッグチーズですらも恐れていたものだったが、穴はすぐに閉じられて再びの平穏が戻った。「さて、皆の衆、願いが叶う準備が出来ているか! これはまやかしに非ずだぞ、兄弟姉妹よ。星のシグナルはまやかしを唱えず! これは全くもって新たなる真理なのだ! 星々を受け入れよ!」
その瞬間、意識と無意識の境界は引き裂かれ、夢は現実に転じ、生は悪夢と化した。穴は大聖堂を呑み込み、そして第五世界が形を成し始めた。
マークス博士はオフィスチェアに腰掛け、頬杖をつきながらゆらゆらと回っていた。残されたレーションを見つめる。残りは3か月分ほど。既にSCP-2000が五角形のブラックホールに置換されたという知らせも受けていたため、新たに食料を求めて外に出る意味はほとんどなかった。それに、彼のいるサイト-5を除けば、全てのサイトがアレに敗れた。サイト-5には百を優に超える数の現実錨が設置されていたが、それらが何の役にも立っていないことは誰の目にも明らかだった。単純なアノマリーは幾つか回収されていたが、有用なものは何一つない。CDが数枚に、壊れないランプが一基に、半分だけ存在するネコが一匹に、『スター・シグナルズ』の古いコピーが一冊に、それに蝋燭が一本。蝋燭が何をするものかを彼は忘れていたし、別にどうでもよかった。この場所で彼は世界でただ一人の正気の人間として死ぬ。多少のアノマリーが転がっていようと構わない。気分を紛らわせるために音楽でも流すとしよう。
CDの一枚を再生機に入れたが、それが何をするものだったかはとっくに忘れていた。古惚けたブルースのセッションが流れ始めると蝋燭に火が灯り、そこから声が聞こえてきた。
「よお、兄弟。ずいぶんと久しぶりだな。」ゆったりとした滑らかな声で蝋燭が言った。
マークスは椅子の上で跳び上がった。「ふざけんな、誰だてめえは?」
「まあまあ、そんな騒ぐほどのことじゃねぇさ。どうせもう、アンタにゃ騒いでられるほどの人生も残ってないだろうしな。」
マークスは立ち上がり椅子を掴んで蝋燭を叩こうとした。だが、痛みに膝をついた。額で何かが成長しており、視界が突如として大きく広がった。
「分かんだろ、兄弟? 傑作ってのは聴きゃ頭を回してくれるモンだ。言っとくがな、コイツは俺が作ったんだぜ。」マークスはなおも苦痛にもがき続けた。
「いったい… 何が… 欲しいってんだよ…?」マークスが叫んだ。なおも彼の視野は絶えず広がり続けていた。
「俺はなーんも欲しがっちゃいねぇさ、兄弟。ただな、アンタの魂はもっと先、もっと多くを求めてやがる。アルコンたちはヒトデによる救いの道を知ってんだ、あの茨に掴みから逃れる道をよ。そしてこれは、ほんの現れってヤツさ。」
「てめえら第五主義者どもは、全部おっ死ちんじまえ!」
「第五世界に死なんてモンはねぇ。俺らはこっちの世界を置いてく、もう役目を終えてンだからよ。アナファブラが来て全部がブチ壊しにされない限りはな。煙を受け入れろよ、兄弟。」蝋燭はますます煙を上げて、炎はより明るくより熱く燃え上がった。「俺はそうしてるぜ。」
燃え盛る超新星のように蝋燭は爆発し、マークスを生きたままに焼き尽くした。サイト-5は灰燼に帰し、轟く猛炎の中でマークスの悲鳴はすぐに途絶えた。突如として炎は消え去った。残されたのは、CDプレイヤーが一台と、五つの目を持つ死体が一つと、それに灰の上で流れ続ける落ち着いたブルースの音色だけだった。CDが終わりを迎えると五つの目を持つ死体が蘇り最後の言葉を口にした。
「うわぉ、今のはマジモンに凄かったな!」
フレデリック・イートンは、かつて意味ある形で知られていたのはD-7645という識別子のみだったこの男は、この宇宙でアレに呑み込まれていない最後の人間だった。財団が全てのDクラスを集団自殺で溺死させて以来、彼はとうの昔に最後のDクラスとなっていた。今でもあの歓喜の叫び声が聞こえてきた。彼は自身にはほとんど理解できない書類や設計図で埋め尽くされた光沢のある白い部屋に住んでいた。そこに入るのは簡単だった。パスワードは "55555" だった。部屋の中には財団のアーカイブ一式が保存されたノートパソコンが置かれており、削除された記録は何一つとしてなかった。彼はエントリーの一つ一つをスクロールしていき、今やアレにより破壊や変質が齎されたアノマリーの全てに目を通していった。フレデリックはまた、アレが何であるかを知った唯一の人間でもあった。SCP-3125と呼称されるアノマリー。どういうわけか、世界は判別もつかない姿へと変貌しつつあった。それは主に3125によるものだったが、別の何らかのアノマリーによっても引き起こされていた。フレデリック自身、そのファイルに並ぶ専門用語の大半は理解できなかったが、この宇宙に起きたことを引き起こしうるのは奴以外にあり得ないと見抜くには十分だった。
外の世界は色のない緑と鮮やかなピンクの虚無が広がるばかりで、それらは混ざり合い、第五世界にしか存在しえない異形の存在へと変じていた。フレドリックが立っていたその部屋こそ、かつての世界の面影を残す唯一の場所だった。忘れ去られ、誰の記憶にも残らない世界の残滓に過ぎない存在でありながら、それでもフレデリックはSCP-3125に対抗しうる唯一のものに慰めを見出していた。
それを上手く言い表すことはできなかったが、それでも可能な限り言葉にしようとした。茨。黒。数字の七。完全なる忘却。それらの混ざり合い。それこそがSCP-2747を定義するものだった。SCP-3125が再編を目論むならば、SCP-2747は破壊を目論む。ならば、もしもSCP-2747を召喚することができれば、SCP-3125を阻止することができるかもしれない。だがどうやって? 外界の虚無は決して黒ではなく、この部屋にも茨らしきものはほとんど存在しない。フレデリックは周囲を見回した。
ペンがあった。しかもそれは黒のペンだった。茨のように鋭く、言葉を忘却させうる物だった。彼はそのペンへと歩み寄った。そのとき、恐ろしい金切り声が部屋に侵入して壁から忌まわしい雲が滲み出てきた。それはヒトデじみた頭部を持ち、人間のような声を発するオオカミの化け物へと形を成した。
「第五却オブリフィフスは非ず 死は第五帰リフィフス 星々を受け入れよ プラズマ プラズマ プラズマ プラズマ プラズマ、」化け物は穏やかな口調で語りながらフレデリックを執拗に追い立てた。彼に飛び掛かって床に押し倒し、机をひっくり返してペンを床に落とした。両者はそのペンを巡り、犬のように奪い合った。
「七を求めるな 第五の第五スモークシグナルズ お前は答えでない 私は第五進者ゴーフィフス。」
フレデリックは宙でペンを掴み取ってSCP-3125の文書に書き殴り始めた。「SCP-3125は打倒可能だ。SCP-2747は亻──」オオカミが彼の背中に噛みついて、そのまま部屋の反対側へと振り飛ばした。それでも彼はペンを強く握りしめていた。
「移行 移行 移行 移行 移行はほぼ第五の お前 第五の我ら皆 七でなき 茨 助け求め 煙 今日。」化け物はフレデリックに向かって突進し始めたが、彼は素早く立ち上がり文書に駆け寄った。
「──到せる、SCP-3125。真なるアルコーンは七つ。七 七 七 七 七 七 七。茨がSCP-3125を倒す。黒は──」フレデリックは書きながら部屋中を走り回っていたが、また別の化け物が壁から滲み出てきては彼をその牙で捕らえた。それは五つの腕に、五つの頭に、五つの脚を持つ巨大なナマケモノのような姿をしていた。ナマケモノとオオカミはフレデリックの身体を奪い合ったが、それでも彼は書き続けた。「──3125をたオす。3125たお。忘きやく ぼぅ却 ボう去ウ 3125お タす クろ くロ クロ く──」
ナマケモノとオオカミがフレデリックの身体を真っ二つに引き裂いた。オオカミは脚を喰らい、ナマケモノは胴体を吐き捨てた。「第五 第五 第五 第五 第五 世界は終わる 世界は近い 第五 第五 第五 第五 第五。」オオカミが彼に近づくと部屋のガラスが割れ始めた。虚無がかつてないほどに流れ込み、煙がフレデリックのほとんど生気を失った瞳を満たし、熱は耐え難いものに変じていた。オオカミがその熱にたじろいだ一方でフレデリックは残り僅かな命の中でペンを掴んで書き終えた。
「──ろ くろ くろ くろ。」
最初はSCP-3125の文書。次にフレデリック。それからフレデリックが立っていた部屋。その中にいた化け物たち。そして外界の虚無。最後にSCP-3125。一つ、また一つと、全てが黒の中に消えていった。全てがアナファブラの強大な茨に呑み込まれていった。免れるものは何一つとして存在しない。全ては破壊される。
第五世界は飛ばされ、その代わりに新たなる第七世界がその座を占めた。



