プライベートサーバーより回収された映像
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ジョージ・バウ将軍、1986年頃、インシデント████-オメガ発生以前。

大衆の場合、ジョージ・バウ将軍(1930年生まれ、恐らくは1983年に死去)は冷戦時代の数多くの武勲で最も有名である。財団の場合、多くの職員にとってはアメリカ軍との連絡役として記憶に残っている。しかしながら往々にして見逃されがちな事実として、彼が財団の創設資金を確約した立役者であり、この収容科学観が元々はバウの考えに基づいている事が挙げられる。事実、創設間もない時期から、バウは財団の運営に参加しており、彼の影響を過小評価するのは不可能も同然である。

現実改変者の起こした極秘指定インシデントの結果、バウ将軍は1983年12月17日に失踪した。類似の規模の他のインシデントと同じく、このインシデントにより財団は収容科学ドクトリンの撤回と単独収容理念へと至った。RAISAは1990年代の殆どの時間を割き、財団データベース内のバウ主義の完全なる根絶に専念した。2000年代初頭を迎えるまで、バウ主義者は財団に対して絶えず厄介事をもたらしていた。

以下の文書は2020年8月28日、財団のウェブクローラーが傍受した映像の書き起こしである。映像が添付されたEメールの発信元のIPアドレスはGoI-102 (カオス・インサージェンシー)の所有する代理サーバーであると判明した。ターゲットサーバーはSCP-140-A1と関連する休眠会社が所有していた。


ビデオ転写


<記録開始>

<カメラが無人の演壇を映し出す。室内の大部分は暗闇に包まれている。カメラの前には、カオス・インサージェンシーの制服を着用した数名の人物が演壇に視線を注いでいるのが分かる。聴衆からは期待に満ちた囁きが漏れ出ている。>

<暗闇からダークグレーのダスターコートを羽織った男性が現れる。男は顔を明かさぬようヘルメットを被っている。後の場面で当該人物がカオス・インサージェンシーの最高幹部陣、デルタコマンドのメンバーの一人であると分かる。聴衆はデルタコマンドのメンバーを目にすると会話を止める。>

<聴衆を見渡すと、男はマイクに近づいて、話を始める>

エンジニア: こんにちは、皆様方。大変お忙しい中とは思いますが、本日は貴重なお時間を割いていただき感謝申し上げます。組織の上級工作員による重大発見は、皆様方を必ずや満足させられるものです。事実、カオス・インサージェンシー史上最大の発見と断言しましょう。

<沈黙。>

エンジニア: クリアランスを持たぬ方のためにも、自己紹介と参りましょう。私はエンジニア。宇宙の諸法則を活かして作戦計画を立案してきた黒幕です。創設者達が最初にインサージェンシーを立ち上げたのと時を同じくして、アノマリーをより一層活用しようという明白な活動目的が生み出されました。母体組織である財団は宇宙の驚異の数々をチタンの箱に押し込めておきたかったわけです。上層部全体の中で、ただ一人の男が反対を表明しました。

エンジニア:バウ主義の理念には皆さま馴染み深いと思いますがね?その理念こそ最終的に、我が組織を立ち上げたものなのです。我々が"異常"と呼ぶ現実の不全に対して永久とわの封印ではなく活用を通じて、より良い世界を作り上げるべきだという思想です。どうぞ壇上にお上がりください。ジョージ・バウ将軍。

<聴衆の中から息を呑む者が出る。背後にいた護衛らしき一人の大柄の男がヘルメットとコートを脱ぐ。ジョージ・バウ将軍は装飾付きの軍服を着ていた。インシデント████-オメガでの失踪以前と変わらない容姿をしており、過去37年の間で年を取っていない事が分かる。バウはマイクへと歩み寄ると、エンジニアと握手を交わし、話し始めた。>

バウ: およそ40年前に反旗を翻した時、今日の我々の所属する組織が発展を遂げるとは全く考えていませんでした。ここにお越しくださった全ての方には戻ってくるまでの何十年もの間、私の大義を守り抜いた事に感謝の言葉を申し上げたいです。皆さん一人一人が偉業を成し遂げたのです。

バウ: この世を去ってから30年経ちました。世界は間違いなく私の理解する以上に進歩を遂げました。コンピューターの速度は20倍に、氷冠の喪失は20%、そして敵陣営の強さは20倍にも達しました。

<バウはマイクを掴むと壇上を歩き回った。>

バウ: 私が内部から財団変革運動を始めた時、奴らは大変危険な野望を抱いて前進していました。確保、そして収容です。連合という"破壊を好む蛮族"よりも理性的だと、一人悦に浸っていました。打ち立てた収容戦略が比較対象以上の危険性を有していたにも関わらずです。人が箱の中に現実の不全性を宿した事物を封じ込めたとしても、収容対象は悪化と強大化の道を辿り、最後は爆発します。私はその始まりを食い止めたかった。だからこそ排除されました。

バウ: 2020年、財団はこれまで以上に危険な目標を抱いて動き始めました。私が40年前に唱えようとしたように、奴らは収容してきたアノマリーを有効活用出来ると信じていたのです。しかしながら、奴らはこの素晴らしき力を人類の幸福のために使おうと望みませんでした。この正常性を強化する力を見ている以外には何もしたくなかった。これは破壊不能な爬虫類や魔法の怪物以上に危険な理念です。余りにも陰険です。

バウ: ここに来る前、私はニューヨークへの飛行機旅行に行きたいと頼みました。勿論、身元を明かさないままで、ですがね。何を見たと思いますか?イワシの大群の如く密集した通りをこの目で捉えたのです。汚染された空気を吸い、プロパガンダを目にしました。財団が収容してきたアノマリー以上に致命的だというのに、注目には値しないと見なされてきた終わりのない戦争や終わりのない貧困について読んだのです!

バウ: これが財団の守り抜こうと戦っていた現実世界の有り様です。財団は皆様方のお子さん達がより貧しく、そして我々の資産を枯渇させるつもりで、20年にも渡る戦いの日々を続けてきました。我が組織インサージェンシー最強のハッカー達の協力のお陰で、彼らの秘密のデータベースに目を通すことが出来ました。奴らは邪悪な自前の軍勢として機能するMTF アルファ-9を結成し、Thaumielクラスアノマリーを開発しました。私のこれまでの人生で夢想すらしなかった筈の兵器の数々を我が物としたのです!

バウ: 何より最悪なのは、財団はこれらの兵器を実戦投入し、本来の運用想定を上回る戦力増強を成し遂げてしまったのです。80年代において本来であれば小規模な米国中心の研究所であった組織は全世界の政府に影響力を及ぼす、無数の腕を備えたケダモノへと進化しました。私は監視の目を逃れるために、文字通りの透明人間にならねばなりませんでした。現時点をもって宣言します。息を潜めるやり方は終わりだと。私は完全に理解したのです。世界の幸福のために、我々は財団を滅ぼさなければならないと!現時点をもって、私は財団に対して宣戦布告します!

<聴衆からは喝采が巻き起こる。バウは歩みを止めて、直立不動となる。>

バウ: 財団に対する全面戦争での唯一の論理的問題はリソースです。確かに我が組織インサージェンシーは巨大ではあるものの、十分な規模とは言えません。成長による拡大だけが唯一の選択肢ではありません。前にも申し上げた通り、財団はこの惑星で最恐の政治勢力です。影響力の及ぶ範囲を広げようという試みは掲げた理念に対する死刑執行を意味するでしょう。

バウ: だからこそ、我々が採れる唯一の行動指針は財団の存在を否定する同志達との提携です。かつては最終目標は同じではあっても、他集団と手を組む選択肢を避けていた事情は理解しております。しかし私がカオス・インサージェンシーの指導者に就任した暁には方針転換を行います。提携してくれるお二方を紹介しましょう、どうぞ壇上に。

<暗闇から、仮面を被った2人の人物が現れる。2人はバウの両側に立つと、被っていた仮面を外した。片方の人物はGoI-004("壊れた神の教会" )の最高指導者ロバート・ブマロである。もう片方の人物は識別できない。>

バウ: 左はMEKHANEの教会の最高指導者ロバート・ブマロ。右は緋色の王の教会のマスター・ジョン・イトリックです。私の財団在籍時代において、お二人の率いる組織はどちらも財団にとって脅威勢力でありました。しかしながら財団の世界的覇権掌握により、穏健路線への変更を余儀なくされました。我々の最終目標は異なるかもしれませんが、掲げる方針は明白であります。アノマリーを人類の幸福のために活用することです。そのためにも、我々は団結して財団に立ち向かいます!

<バウは2人の方を向いて、握手を交わす。>

バウ: これは財団に抑圧されてきた全ての勢力からの協力要請です。財団の終焉以外何も望まない団体には、打倒のために、どうか我々と手を組んでください。現時点をもって、息を潜めるやり方は終わりだ!世界の幸福のために、財団に対して宣戦布告する!

<聴衆からは耳をつんざくばかりの拍手が鳴り響く。バウが一礼した時点で、映像は終了する。>

<記録終了>

異常コミュニティ内での諜報作戦の結果、この映像が複数の要注意団体へ送信されていた事が分かった。カオス・インサージェンシー内での作戦はPoI-1912(バウ将軍)の最新状況に関する更なる情報収集を目的とする。他の要注意団体内で部隊を再編する作戦は現在も進行中である。

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