その節は大変お世話になりました。初稿を読んだときの高揚感が思い出されました。
地球、ひいては宇宙までもを巻き込む壮大すぎるほどの比喩ではありながら、一貫して視点人物個人の感覚にフォーカスすることで、このtale世界の唯一の観測者たる視点人物の中の感覚と大自然に起こる事象を同格以上に仕立て上げてしまう手法はさすがです。また、以前より霊安室の描写が掘り下げられたことにより、絶妙なバランスで調和していたはずのアイスバーグという人間の持っていた性質と名、大自然に起こる事象、視点人物の感覚が、はっきりと断絶してしまうような切なさを覚えました。暖かい風に触れた氷が氷でなくなってしまうように、視点人物の認知によって、アイスバーグは改めて手の届かない何かになってしまったのでしょうね。
それと、ところどころの比喩表現がやっぱり好きです。長い廊下に連なる蛍光灯が歩みを進めるたび自らを照らし、消え、照らし、消え、を繰り返していく様(と私は認識しました)が「蛍光灯の昼夜」と置き換えられているところとか、「死体のように冷たかった」の対象がアイスバーグであるからこそ際立つ表現であるとか…大自然に例えられるかと思いきや「ミネストローネスープ」という人工物がマグマのイメージを背負っている逆転現象だとか…噛み砕けば噛み砕くほど面白く感じられます。
素敵な作品を世に出していただきありがとうございました!
氷河―水 / ディスカッション