途中までは面白く読めていたのですが、「このままどこかへ消えてしまえたら。」あたりから急に語り手の思考が後ろ向きに変化していて困惑しました。この部分以前は理想と現実の差異や自分の預かり知らぬところで起きた事態に打ちのめされつつも使命を果たそうとしており、「現実逃避」の前提となる発想が見えていなかったので、急に人が変わったようになってしまっています。
語り手がなぜ現実逃避をし、なぜ誰かに止めてほしいと思うに至ったかという導線が前半で引かれておらず、後半の心情変化が宙に浮いてしまっているため、『揺れ動く感情に対して身体は訓練通り引き金を引いてしまう』というラストが重み付けされず楽しめませんでした。現状ではdvです。