また、日本各地における人魚伝説とSCP-1724-JP-Aとの関係性は現在まで不明であり、これはSCP-1724-JPがいつ頃出現したオブジェクトなのかが判別不可能であるためであるとされます。
物語の本筋には関わりませんが、この記述の因果関係が奇妙な気がします。オブジェクトの出現時期が不明であるから人魚伝説との関連が不明というより、人魚伝説は彼らの起源を紐解くための手がかりであり(古文書の記録を古気候や地震火山活動や天文現象の復元に用いることだってあります)、それを元にオブジェクトの出現時期を議論するというのが妥当ではないでしょうか。書くのであれば「伝承との関連が不明であるため出現時期が分からない」的な、現状の記述とは真逆の因果関係になるかと思います。
加えて、日本の人魚伝説は西洋のものとは結構印象が異なります(このあたりは公式Discordで人魚の生物学的な議論をしているチャンネルが詳しいでしょう)。江戸時代以前の日本における人魚とは、頭部だけが人間であり、ポストクラニアルが魚類という、一般に想起される西洋型人魚とはボディプランがかなり異なるものです。軽くググッただけですが、上半身が人間という人魚のスタイルが定着したのは江戸時代の後期のようです。従って、日本という舞台設定に拘り、また西洋型にするのであれば、1724-JPの起源こそ不明ながら遅くとも江戸時代後期には1724-JP-Aと人間との接触がありそうだ、くらいの推測はできるのではないでしょうか。
また、1724-JP-Aが自然選択の結果として既知の動物から派生したのであれば窒息死した死骸からDNAを抽出して分子系統解析にかけたり、解剖して骨格形態から分類を議論するなどして、彼らの文明の産物であろう1724-JPはともかく、1724-JP-Aが他の生物との共通祖先から分岐した時期はある程度掴めそうだとも思います。まあ1724-JP-Aが人為的に作られた存在とかならこれは成り立ちませんが。
内容については楽しめましたが、人魚を扱う必要性が薄く、前半と後半で内容が分かれているようにも思いました。せっかく人間という人魚から見れば別系統の生物を変化させるということもやっているので、彼ら目線でそれを行う意義(例えば自種族が滅びかけていて地上からヒトの遺伝子を取り込み遺伝的多様性を増したいとか、あるいは単に人口を増やしたいとか、などなど)というものを本筋に盛り込めたら良かったのかな、などと感じます。後半の展開が真にやりたかったことなのかなとは思いますが。