これの元ネタは「山幸彦と海幸彦」の伝説です。前半の山幸彦が豊玉毘売命から潮満珠を受け取り、それで海幸彦を懲らしめた、という逸話はみなさんも神話もののアンチョコ本くらいは一読したことがあるでしょうから知っていると思います。
で、その後のいまいちマイナーな後半では、山幸彦=火遠理命は海幸彦を下した後、海神の国で豊玉毘売命と婚姻します。豊玉毘売命は天津日高日子波限建鵜草葺不合命を産み落とすのですが、その時に恐ろしい八尋和邇=超巨大な海の怪物の姿を晒してしまいます。八尋和邇を恐れた火遠理命はその場から逃げてしまいます。で、豊玉毘売命は嘆き、天津日高日子波限建鵜草葺不合命を陸上へ残し、自分は海の底へ帰って行ってしまいます。ちなみにこの子供、天津日高日子波限建鵜草葺不合命は神武天皇の父親です。
この火遠理命の話+日本武尊命が最期に白鳥になって空へと飛んでいった話を読んで思いついた天皇家には鶴とか朱鷺になるパワーがあるんじゃね? みたいなアホなアイディア、それに山幸彦伝説が変化したと考えられる浦島太郎をちょこっとだけ混ぜたのがこれです。
■籠の中には何がいるの?
八尋和邇=豊玉毘売命です。多分正気を失うようなものが出てきます。
■翁が何書いてるのかわかんねえって人用の現代語訳。
カウフマン博士: SCP-777-JP。あなたは我々が新たに管理することになったことは知っているか。
SCP-777-JP: 知っている。
カウフマン博士: では、これからあなたに対して質問がしたい。あなたはどうして、そんな姿になったのか。
SCP-777-JP: 常世に行って、こちらに帰ってきたためだ。
カウフマン博士: とこよとは何か。
SCP-777-JP: 海の底。姫がいる、不死の国。
カウフマン博士: そこで何があったのか。
SCP-777-JP: 姫と契りを結び、私と彼女の体内に珠を埋め込み、永劫に夫婦であれと誓った。私は永劫を得た。
カウフマン博士: その結果あなたはそうなったのか。
SCP-777-JP: いいや。私の兄と兄の国の民に懲らしめを行った。姫へと呼びかければ潮が私の兄を飲み込み、止まれと言えば潮が引く。私の兄は私の元に土下座した。
カウフマン博士: しかし、あなたは老いているではないか。
SCP-777-JP: 私はこの力を使って、民を率いて日本の王となった。そして、姫を迎えに常世へと向かい、姫が八尋和邇であることを知って、恐れて逃げた。八尋和邇は私を呪った。「お前が逃げても、お前は常世のものだ。お前が常世へ向かった時、私は地の底から起き上がって、お前を迎えるだろう、私の部下があなたを迎えにゆくだろう」と。
カウフマン博士: それで老いるようになったと?
SCP-777-JP: そうだ。だから私は千年を生きるため、鶴になった。けれど、亀は万年生きると聞く。まして、八尋和邇はいつまで生きるだろう、それよりも、遥かに……。
■蒐集院が何書いてるのかわかんねえって人のための現代語訳。
常世が海より現れた。荒御魂である、と神祇官より報告。
だから、私たちは神を滅ぼそうとした。
砲撃した。
けれど、神の肉に効果はなかった。
火炎を使ったけど、魚どもには効果はなかった。
だから、巫蠱、魔道、陰陽道、神道による攻撃を行った。
咒詛、式神、鬼により、魚どもは死んだ。
陰陽師が、式鬼を打って、護法童子の剣で駕籠を突いた。
私たちはみな死んだ。
陰陽師、魔道師、巫蠱師、皆ことごとく神罰を受け、またその親、子、孫、三代に至ってやはりことごとく神罰を受けた
皆、陸にいながらにして溺れ、生きながら肉が腐り、蛆と鰻に肉を貪られ、さながら九相図の噉相(注:腐敗した死体が昆虫や獣に貪り食われ、ぐちゃぐちゃになること)のようだった。
神祇官が神降ろしを行い、何故怒っていらっしゃるのかと聞けば、その一柱の神は応えていわく。
私は竜宮の主である。私は男と結婚して竜宮に迎えたけれど。
男が私の姿を見て私から逃げ出した。
男は鶴に変わって私から逃げ出した。
私はその心臓の音を聞いて、そいつが常世に来るので、再び結婚しよう。
今こそその魂を私のものとしよう、と。
私達はイザナギとイザナミの伝説にならって、常世との境界を封じた。
永劫に鶴を崩御させてはならない。