追加探索ログ2117
Z9が2085-Aに捕縛されて以降、SCP-2117へのアクセスは切断され、全てのSCP-2117-A-1実例は作動しなくなりました。サイト-19により受信された通信は2085-Aがゼータ-9を人質として捕縛したことを示しましたが、一方向の通信は送信され続け、Z9は財団に発見を伝え続けることができました。
2017/6/14、Z9は最小限の犠牲で地球に帰還しました。特筆すべき追加の探索ログは以下になります。
Z9-1が財団製の作業服を着て、レーザーカッターを持っているのが見える。彼女はさらに酸素タンクとマスクを装着している。
Z9-1: あの猫耳を付けたクソ女が私達を強制徴募して、その姉妹を探すようにさせてから3日と半日が経ったわ。彼らはキューブを使用不能にしている。私達が彼女らを見つけたら返すと言っている。
Z9-2: ジーザス、この場所はデカすぎる。
Z9-1: 実際どれくらい?
Z9-2: あのビューっと行くリフトを使ったとして、艦の頭から尻尾まで2時間位だな。
Z9-1: じゃあ、ええと、Z9-1──つまり私と──-2はチームになりましょう。それと-3とテック-1でもうひとつ、-4とテック-2が3つ目、それと──
2085-A: インターネットを通じてお前をガイドする。
Z9-1: それで、ここで何が起きたの?艦によると90%のクルーはいなくなったって。
2085-A: もっとだ。スタートレックは知ってるだろう?エンタープライズがボーグのキューブか何かに突っ込んだときに、何も知らされてなかった一般人の一団が乗っていた。
Z9-1: 一般人が、何人くらい?
2085-A: 少なくとも400、殆どが難民。彼らを望まなかった世界からのな。あと何体かの"skip"もいた。お前達から逃げてきたものだ。
Z9-2: それで、営倉に行けばいいのか?
2085-A: 名前から分かる通り、私達はそこにトラブルメーカーを閉じ込めることにしていた。ほとんどの期間、そこはただのドランクタンク1だった。リフトを使えば行ける。
Z9-1: この手のものは大嫌いだわ。
2085-A: 誰も好きな者はいないだろう。みんなが消える一ヶ月ほど前にできた。
Z9-1とZ9-2は共にリフトのプラットホームの上に乗り、ガードレールを掴む。
Z9-1: 1ヶ月?設置するのは大変だったでしょうに。
2085-A: 私達がしたんじゃない。ただ出現したんだ。船の色々なものがやったんだ。
リフトは300km/hで動き始める。
Z9-1: 心配にはならなかったの?ハイテク機械が出てきて?
2085-A: 心臓発作を起こしそうになった。部屋のコーヒーマシンへコーヒーを取りに行ったと想像してみてくれ。驚いたことにコーヒーマシーンは机くらいのサイズになって、人類が知るあらゆる飲み物を作っている。ちょっと待て、コールが鳴った。
2分後、リフトは営倉に着く。
2085-A: オーケー、スキャナーは使えない。いいニュースだが、営倉は干渉を避けるために鉛で覆われている。そこにライフサインがある。
Z9-2: それも鉛のせいじゃないのか?
2085-A: それについては考えるな。信じないと動かない。
Z9-1とZ9-2は互いに肩をすくめる。カメラは彼らが営倉に入るのを写す。
営倉は最低でも2kmの高さがあり、数枚の壁に様々なサイズの、金属の棒、アクリル樹脂の障壁、フォースフィールド、ウォークイン型のスクラントン現実錨などを備えた独房が並んでいる。200以上の独房が見える。
2085-A: 重力を切る。
営倉の人工重力が切られる。Z9-1はマイクロスラスターを起動して構造物の頂上まで飛ぶ。Z9-2は下部から調べ始める。
Z9-1: ウィザードは死んだって言ったわよね?ウィザードってAIじゃないの?
2085-A: 同じことだ。彼が死ぬ前に、私達は彼をアップロードした。
Z9-1: お気の毒。
2085-A: 共感か。この世界の財団はアンチスパイラル2でできていたりはしないのか?
Z9-2: 俺たちは80年代に痛い目にあったのさ。サイトの半分が自滅的な同盟にサインして出ていった。俺たちは「冷酷だが残酷ではない」は人間には通用しないことに気づいたんだ。
Z9-1: あなたは人間じゃないって言うわけじゃないわよ。つまりそれは、文字通り……
2085-A: いいさ。悪く取りすぎていた。
Z9-2: 財団は職員を人間的に扱い始めた。それがあんたみたいなものにも降りてくるんだ。
Z9-1: ちょっと待って──
Z9-1はウォークイン型スクラントン現実錨の前で空中停止する。ヒューマノイドが内部におり、空中に浮いている。
Z9-1: 何か見つけたわ。ミッチ、こっちへ来て。
Z9-2はZ9-1の側へ来る。両者は独房の側の通路へ降り立つ。
Z9-1: 開ける前にシャットオフしないと行けないと思うわ。
Z9-2: 2085-A、どうやってシャットオフするかわかるか?
返答はない。
Z9-1: おそらく別のチームと交信中ね。
Z9-2: そんなに大変じゃないだろう。訓練で扱ったことがある。
Z9-1:マニュアルを出すわ。
Z9-1はタブレットにファイルを出し、読み始める。
Z9-1: オーケー、まずカント計をオフにして──
Z9-2: その……必要はなさそうだ。
Z9-1: どういう意味?
Z9-2はコントロールパネルを指す。"ON"と"OFF"の2つのボタンが見える。
Z9-1: ハン。
Z9-2はOFFのボタンを押す。ウォークイン型現実錨の前にあるケージが開く。女性型のヒューマノイドの両足が見え、柔らかい唸り声が内部から聞こえる。
2085-A: オーマイゴッド。誰を見つけたんだ?そこにいるのは誰だ?
Z9-1は現実錨に入ろうとする。
2085-A: ダメだ!入ってはダメだ。カメラを──カメラをそこへ入れてくれ。あとマイクも。ヘッドセットごと。私に彼女と話をさせてくれ。彼女は──彼女は傷ついているかもしれない、あるいは恐れて。あるいは何かの幸運で落ち着いているかもしれないが。
Z9-1はヘッドセットを取り、内部へ押し入れる、微小重力のためにそれは前進する。カメラには猫耳とトラ猫色の髪の女性が写る。
2085-A: 生きている?この装置のサーマルはどうやって起動するの?
Z9-1はサーマルイメージングを起動する。内部の人物は生きた人間と同様の熱を発している。
2085-A: 彼女は大丈夫だ。彼女は──彼女の友人には、ここに何度も送られた人がいる。さっき言ったとおり、ここはドランクタンクだ。彼女は──おそらく何が起こったか見ていて、自分自身をここに閉じ込めたのだろう。
Z9-1: 待って、水もなしにここに6ヶ月近く居たって言うの?
2085-A: ジーザス、それほどになるのか?私達はサイボーグだ。十分な水や酸素がない時には、ローパワーモードに入れる。オーケー、足場の一番向こうに、医療ステーションがある。応急処置キット、ストレッチャー、生理食塩水、必要なものは何でもある。レーションもあるかもしれない。
Z9-2: 取ってくる。
2085-A: 彼女をベースへ運んできてくれ。ファック──チーム3がマズい事になっている。ユークリッドエンジンが働いていない。ちょっと待ってくれ。
Z9-2がストレッチャーと医療物資を持ってくる。彼は突然眉をひそめる。
Z9-2: ベースに歩いて戻るまで最低でも1時間だ。彼女がこんな状態ではリフトは使えないぞ。
Z9-1は女性を現実錨から引き出し、ストレッチャーに乗せる。その間その尾の大部分が切り取られているのを見て息をのむ。
Z9-2: ここに包帯を巻こう。Aに──これを見せたくない。
Z9-1は尾に包帯を巻こうとするが、その人物は驚き目を覚まし、Z9-1を払いのける。その力は不意に彼女を微小重力の中で浮かび上がらせる。
2085-A: 私に彼女と話をさせてくれ。私が渡したインカムを彼女に渡して。
Z9-2はインカムをその人物に渡し、彼女は左耳にそれを装着する。数秒すると彼女は落ち着き、頷く。
2085-C: ……ええ、私が頷いているのは聞こえないでしょうけど。ごめんね姉さん。私の尻尾に何が起きたの?
Z9-1: 今包帯を巻こうとしてたところよ。
2085-C: そうみたいね。尻尾を止血したことはないの?
Z9-1は少々苛立ったように見える。
2085-C: まあいいわ。それを頂戴。
2085-Cは包帯をZ9-1から、その他の医療物資をZ9-2から受け取る。
2085-C: 姉さん、重力を戻してくれる?モルヒネや抗生物質の注射から塞栓を起こしたくはないわ。
Z9-1とZ9-2はこの時点で営倉の床から数百メートル上方に浮かんでいる。.
Z9-1: 硬い床に着くまで待ってくれる?
2085-C: ええ、当然ね。
Z9-1、-2、2085-Cは全員床の高さまで下降する。重力が再度有効になり、2085-Cは自身への医療処置を再開する。
2085-C: オーケー、リフトは低衝撃セッテイングになっている。私を載せて、それからもう1台にあなた達が乗って。
2085-Cは立ち止まる。
2085-C: ボスはなぜ私にだけ話しかけているのかしら?
Z9-1、 Z9-4、Z9-Tech-2は全員リフトから無事に降りる。
Z9-1: オーケー、慣れてきたわ。リフトがゆっくりになっているのか、私がマゾになってきてるのかはわからないけど。
Z9-4: それで、12日目だが、4人の姉妹のうち見つけたのは1人だけか。ここのところ探索したセクターは6つ連続で何も見つからなかった。
Z9-Tech-2: コアを換気したから、熱センサーで何かを見つけるのはやりやすくなったと思う。そこには2つ熱源があるわ。
Z9-4: ちっとも涼しくなった感じはしないぞ。
Z9-1: それは言わない約束よ。我々だけでやるの?
Z9-4: Aは姉妹を探している。見つからなくておかしくなってる。Cを連れて行った。
Z9-1: なぜCと呼んでいるの?Bじゃないの?
Z9-Tech-2: 彼女らがそう主張しているわ。それはそうとここは船のどの部分かしら?
Z9-Tech-2のカメラは上方へ向けられる。上方にあるサインには"動物園"と書いてある。
Z9-Tech-2: ああ。
Z9-1: じゃあ、さっさと済ませるわよ。
Z9-1はコントロールパネルで動物園のドアを開けようとする。ドアは引っかかったように動きが悪い。開きながら、線維質の蜘蛛の巣のような物質が左右のドアを繋ぎ止めているのが見え、引きちぎられる。
Z9-Tech-2: 一体これは何?巨大な蜘蛛でも飼っていたの?
2085-C: 違うと思う。
線維質の物質はミーム疑似餌と一致するパターンで点滅を始める。Z9-1、Z9-4、Z9-Tech-2は武器を落とし、線維へと入る。
2085-C: あーっ!ダメダメダメダメ!
2085-A: どうした?
2085-C: 赤毛が動物園にいるわ。
Z9-1、-4、-Tech-2のカメラには線維の塊しか見えない。Z9-1のカメラはパイプレンチによるものと思われる突然の衝撃で破壊される。Z9-4とZ9-Tech-2は括り縄罠に捕らわれる。
影の中に、動物の檻の近くにある手すりを掴む手が映る。もう片方の手はスイッチを掴んでいる。眼帯以外の人物の特徴はよく見えない。気を失ったZ9-1がその隣りにいる。
2085-D: オーライ、クソ野郎共。俺のお友達、姉妹、船にしてきたことを喋ってもらうぜ。
Z9は2085-Dがスイッチを押し、全てのライトが消えるまで反応しない。
2085-D: 俺は210の殺害ミームをこのライトに、30を音声にプログラムした。お前らは喋り始めるか、でなければケツにG.E.レクイエムを突っ込んで何度でもゼロに戻してやる。
Z9-4: お前の姉が俺たちをここに送ってきたんだよ!
2085-D: ファック・ユー。
2085-Dはコントローラーのスイッチを入れ、ミーム麻痺エージェントを起動する。
2085-D: 1年間、丸1年間俺たちは互いに会えなかった、話せなかった、生きているのかどうかすらもわからなかった。俺は何がこの船をファックしたのかを見た。そいつはモルモンの連中を全員クソ形而上レベルまで食った。そしてお前らはそれを崇めている。
2085-D: それで、あと1回聞くぞ。次からは拷問だ。俺の、姉妹は、どこに──
2085-D は空中を見つめ突然会話をやめる。ライトへと踏み出し、赤い髪と片耳だけの猫耳が顕になる。
2085-D: チャットが作動しているのか?俺は──誰がやっている?どうやって──
Z9-4と-Tech-2は混乱して互いを見つめる。
Z9-Tech-2: 彼女らの目は……自然なものではないわ。その中にインターフェースやヘッドアップディスプレイがあるんだと思う。
2085-D: ああ、チャットウィンドウでだ。何だこれ、何だこれ、何だこれ──
2085-Dは見たものを眠らせるもう一つのミームエージェントを起動する。
2085-D: プライバシーが必要だ、ジーザス。
2085-Dは檻の前に座り、Z9のカメラとは別の方角を向く。感情的なストレスの呻きが彼女から聞こえる。
2085-D: 畜生、俺抜きで復帰しやがって。
それ以降数分の沈黙がある。Z9-1は2085-Dのそばへと這っていく。2人の間で短い会話があり、2085-Dはバイノーラルアドレナリン産生ミームを起動し、Z9全員を起こす。
2085-D: 起きろ怠け者共。社にはまだ2人行方不明がいる。ボスからはもしお前らが従わなかったらバイオリアクターの燃料にしていいって許可が来ている。
2085-A: ジョークじゃないぞ。彼女は私達の中で唯一クソを焚べる方法を知っている。
Z9-4: フン、俺たちを刻むってわけか。
2085-D: ナイフを使ってな。あと蜘蛛の糸はナノチューブの強さとマシュマロの弾力がある。お前を刻むには十分だ。
Z9-1: ところでG.E.レクイエムって何?
Z9-1: こちらゼータ-9エージェント、メガン・ユー、私は……2085実例により艦橋に呼ばれた。彼らは私に何かを見せたいようだ。何かはわからない。
Z9-1はリフトに乗る。
Z9-1: ここのところスピードメーターをチェックしている。この種のリフトはだんだん速くなっている。遅くなるのではなく。何にせよ、私は慣れてきてえええええええええ──
Z9-1のリフトは600km/h以上で進み、ブリッジに着く。
Z9-1: ファック!オーケー、うう、オエェ。
Z9-1: 気づいたこととして、目が見えなくなるほどの速度で進んだにも関わらず、私は目に風を感じなかった。しかし質問するなと言われているので……なぜかはわからない。
Z9-1はリフトから降り、艦橋に向かう。中央に大きな司令コンソールがあり、2085-Cがそこから他の2085実例を取り外そうとしている。2085-Aは部屋の後方側のコンソールの側に立っている。窓からタイタンと土星が見える。
Z9-1: ホーリーシット。
2085-A: ああ、想像できていなかった光景だろうな。
Z9-1は艦首方向へと歩き、外部視界の上方に見える突起物を見上げる。
Z9-1: これはな──
2085-E: 私の旦那様!
Z9-1は驚いて2085-Eへと振り向く。2085-Eは概ね他の2085実例と似ているが、髪色、耳、尾は銀青である。その両腕は司令コンソールと融合している。
2085-C: 彼女はこの船を攻撃するもの全てをこれで撃とうとしたわ。結果としてこれと一体となった。
2085-E: モモコ、私達は勝ったわ!私は中にいるの!グランドウェーブモーションプロジェクションキャノン!私の旦那様~~~~~!
2085-C: 彼女はモルヒネのせいでちょっとお馬鹿さんになっている。普段はこんなに喋らないわ。
2085-A: これがこの船の名前の由来だ。大大砲丸、つまり"ビッグ・ガン"。月をこれで吹き飛ばした。
Z9-1: 何をやったですって?
2085-A: みんなで技の名前を叫んで攻撃するスーパー戦隊のやつをやった。すごかったぞ。
Z9-1: オーケー、だけど──何故月を吹き飛ばす必要があったの?
2085-A: それを見せよう。ウィザード、フェーズ4を再生してくれ。
2085-Aはホログラム投影機を持ってきて、SCP-2117と実体(仮にSCP-2117-オメガと呼称)の戦闘を再生する。実体は、触手の不定形の塊のような姿をしていて、いくつかの触手は映像開始時点で死亡している。
2085-A: これがお前たちの世界で財団を動かしていた監督者だ。
Z9-1: ああ、ええ、でも私達の監督者はこんな姿はしていないわ。
2085-A: おそらくそれは……まあいい、我々にわかっている限り、サイトの半分が吹き飛んだとかの全てが地球で起こった、だがそれは秘密裏に処理された。
Z9-1: ジーザス、こいつは苦しみか何かを食ってるの?
2085-A: 財団が日常的にこいつを食わせてたんじゃないかと思っている。。もっともこれを見せたかったわけじゃない。
2085-Aはコントロールコンソールからどき、銘板を示す。表面の損傷のため、SCP-2117-1をもってしてもほとんど読めない。
2085-A: 急がなくていい。よく読んでみろ。
ご挨拶申し上げます、[判読不能]の方々。我々が[判読不能]発見し、[判読不能]と同じくらい、あなた方も当惑しているに違いありません。[判読不能]当然そうでしょう。宇宙は危険な場所です。[判読不能]
[判読不能]すなわちこの団結号という船は、正常性を[判読不能]組織が存在する現実世界にしか現れないということです。我々の知る限り団結号は一つしか存在せず、[判読不能]
この船は遥か昔に我々の元へ現れましたが、我々は無視し続けていました。ですがそれも太陽系の外部から来た大きな脅威に直面するまでのことでした。その脅威がこの船に引きつけられてきたのかどうかは我々が知る由もありませんが、この船は[判読不能]十分なもの[判読不能]
ですから今はあなた方が誰であろうと、我々地球人、そして[判読不能]第六位階[判読不能]どれだけ距離と時間を隔てていたとしても、自分たちの存在を守ろうとしている限り私たちは決して孤独ではないのです。
メッセージの最後に、全員同じ服を着た独特な矢状のトサカを持つ猿のような生物の13体の彫刻が添えられている。彼らは北極に大陸がありジブラルタル海峡から西に伸びた島々があること以外は地球に似た外見の惑星の図の後ろ半分に立っている。
Z9-1: 読めない部分もあるけれど、読める……英語じゃない……だけどなぜ……
2085-A: この船中にミームがある。私は今日本語を話しているが、お前は気づいていない。
Z9-1: ええ、わからなかった。
2085-A: 信じないだろうと思っていたよ。 何か重要なものに気づいたか?
Z9-1は銘板をもう一度見る。
Z9-1: "これが唯一の団結号"……がおかしい。
2085-A: こいつはジャンピーの過ちだ。あいつは他の大大砲丸を使って平行世界を渡り歩き、その一部──あるいは全部を持ち帰っている。なぜ持ち帰ろうとするのかはわからない、どうやって平行世界の大大砲丸を得ているのかもだ。そしてそれが船を変えていく。
2085-A: 目覚めてからログを見返しているが、ウィザードからの自動シグナルを設定したのは我々じゃない。あのキューブは我々にはなかった。そしてパワーコアには再起動ボタンはなかった。あいつはお前たちが我々を助けられるように船を作り変えたんだ。
Z9-1: それは良いことだったわね。面白くもある。
2085-A: 宇宙のモルモン教徒は合流のしかたを知っていたようだな。
Z9-1: ジャンピーはただ……遊んでいるだけなのかも。移動手段のローラーコースターは音速の三分の一で動くし、反重力の遊び場はあるし、劇場には80の平行世界からの映画がある。
2085-Aは笑う。
2085-A: Bも同じ説を言っていたよ。我々が孤独と見るとジャンピーは新しい人間たちを連れてくる。手狭になってくると新しい船の部品を。Bはバトルアーマーを欲しがっていて、レプリケーターに週に一度は打ち込んでいた。去年ジャンピーが2日間消えたとき、そいつはついに──
2085-Aは瞬きする。
2085-A: 気づかなかった。銃フェチが非常事態に行く場所など兵器工場以外ない。船内に20箇所はあるが、その全部が落ちている。
Z9-1: チームを招集するわ。
2085-A: Dはハッカーだ──彼女だけが工廠のドアを開けられる。
2085-D: 「俺はお前を絶対に信頼しない。I trust you as far as I can throw you.3」という言い回しを知っているか?
Z9-4: 知っているが、何で聞く?
2085-D: ここじゃあ意味が通らない。重力が切られてれば、俺はお前の生白いケツを船の端から端まで投げられるからな。
2085-DはPDAをトレンチコートから取り出す。
2085-D: なので別の言い方をすれば、俺達が死ぬとき、もし俺たちの死体をお前とエド・ゲインのどっちに預けるか選べるならば、ゲインを選ぶってことだ。
Z9-4: いつもそうなのか?
2085-D: もしお前が誇張なしに、親父の会社を継いだバカ息子がカローシしないようにするためだけに育てられたら、お前は"生まれたときから"、そいつらがクソだってわかるだろうよ。
2085-DはPDAを操作しながら、"第15工廠"と書かれた小さなドアをくぐり抜ける。彼女は不明なソフトドリンクの入った瓶を取り出す。瓶の首のところにはビー玉が入っている。
2085-D: 俺たちはお前を信じない。俺たちはお前に名前を教えない、嘘の名前でもだ。お前たちはそれに値しない。
Z9-4は2085-Dに人差し指を向け、片目を閉じる。
Z9-4: スギ、二、オマエワ"もう一度やったらその顔に拳を叩き込むぞ!"ト、イウ。
2085-DはZ9-4の作業服の襟を掴み、拳を握る。
2085-D: もう一度やったらその顔に拳を叩き込むぞ!
2085-Dは言いよどみ、Z9-4を離す。
2085-D: こうなるのか。
2085-Dは瓶の中身を飲みながらPDAを操作し続ける。
2085-D: どうしてこれを知っているんだ?
Z9-4: お前がモルモン教徒を笑っている音声ログにあった。
2085-D: これまでのプライバシー侵害のうちじゃあ一番マシな部類だな。
Z9-4: あのログは、お前たちがこれを盗んでからたったの2年後か?もう大体30年が経っている。なんというかその、お前たちは……
2085-D: 退屈したかって?ああ、クソ退屈だった。死ぬほどな。そしてこのクソみたいな人生の間ずっと怒っていた。地上にいた時はずっと暗いところにいるかポリから逃げてるかのどっちかだった。
2085-DはPDAを置き、数秒間瓶の飲み物を飲む。
2085-D: 30年も続けてれば冒険心も友情も薄れていく。"アングラ遺伝子クリニックを吹き飛ばす"以外の意味でアキハバラを体験することもねえ。
Z9-4: 他の連中はうまくやってるように見えるが。
2085-D: そう見せかけてるだけさ。だが俺は違う。お前たちの牢屋にいる時も見せかけなかったし、今もそうだ。世界はクソだ。創造の7日間で俺達はクソにされた。そして俺もはクソほどの怒りの中にいる。
2085-Dは唸る。
2085-D: もしあいつが生きていたら、殺してやる。あいつは暗号化に何かを──
工廠のドアが開く。2085-B──ヘッドバンドを付け、白黒の髪と耳をした──が歩き出てくる。
2085-B: ロックはしていなかったわよお馬鹿さん。ただ手で押さえてただけ──来たのが本当にあなたなのか確かめたかっただけ。
2085-D: ところでお前も競争に負けたぞ。妹がウェーブモーションキャノンをファックした。
2085-B: ええ、誰かに譲っても良い頃だわ。
Z9と全ての2085実例がブリッジに立っており、財団により書かれた、2085実例の死亡日時以降にSCP-2117の所有権を財団に譲渡する文書にサインした所である。2085-Aが歩み出る。
2085-A: ところで、レプリケーターがこいつらを吐き出した。
2085-AはSCP-2117-A-1実例と同様の複数のキューブを差し出す。表面の文句が違っている。Z9-Tech-2がキューブを手に取る。
Z9-Tech-2: "我らの家は大大砲丸の寝台。しかし今、大地へと帰る。"それで、これはどこへ通じるわけ?
2085-A: 長野の平野だ。これが最初に衝突した所だ。
Z9-1: 聞こえた皆?帰る準備をするわよ。
Z9-1は集合した2085実例たちを見る。
Z9-1: それで、何をするつもりなの?その……帰ったら?
2085-B: 飲んで、ゲームして、アニメ見て、古き良き頃みたいにね。
2085-C: 私は皆をモニタリングするわ。皆が快適でいられるようにね。
Z9-4: 財団は遺伝子治療も出来る。君たちは──
2085-E: 私たちの遺伝子が滅びるようになってるってだけじゃないわ。私たちの強化も元々停止するように作られている。
2085-Eは踏み出してUSBドライブをZ9-1に差し出す。
2085-E: この船の動かし方のチュートリアルよ。ウェーブモーションガンを起動するパスコード、ジャンピーの飼い方、乗組員名簿の使い方──
2085-D: ジャンピーはどこへ行った?あいつも渡すのか?
2085-C: それは……ええと。元々スキャンでは12体の生命体がいる事になっていて、この人達も合わせてだから、これで11人……
SCP-2117-A-3が2085実体たちの後ろに現れ、長い舌でZ9-Tech-2の持っているSCP-2117-A-1実体を全て消費する。
Z9-Tech-2: ヘイ!こいつは何──??オーマイゴッド、エイリアンよ。
2085-EはSCP-2117-A-3に飛び乗り、吐き出させようとする。
2085-E: ダメ!吐き出しなさい、ジャンピー!
SCP-2117-A-3はSCP-2117-A-1実体を飲み込み、2085-Eの下から消滅する。
2085-C: 一体何が──何で??
SCP-2117-A-2: 私がそうしろと言ったのだよ。
Z9と2085全実例はSCP-2117のブリッジの窓へと向く。それはスクリーンになり、宇宙飛行士の制服を着て魔法使いの帽子をかぶった顔色の悪い男のイメージが皆を見下ろす。
SCP-2117-A-2: 私は君たちが死ぬのは見たくない。君たちは過去25年間ほとんどこの船から降りたこともない。この世界の財団もただ翼を持っているという理由で人を閉じ込め、癌の治療法を世界から遠ざける蛮人の群れだ。
Z9-2: ヘイ!
SCP-2117-A-2: だが少しだけマシだ。
SCP-2117-A-2のスクリーンに2018年からのニュースのヘッドライン映像が映る。これらのヘッドラインには以下のようなものがある:
宗教はいかにしてハイテク業界に旋風を巻き起こしたか
ゲテーレス事務総長:「もはやサモトラキを無視することはできない」
ビッグフット目撃談が過去最大に増加
HIV新薬試験において、十人の子供が二ヶ月間ウイルス検出されず
世界初の違法な遺伝子実験グループ、アフリカで判明
境界線イニシアチブ:福祉かカルトか?
南アメリカで発見の遺跡、アトランティスの可能性
2085-D: これが何なんだよ?
Z9-4: 滅亡への備えだ。
2085-A: 何だって?
Z9-2: 今後2年のどこかの時点で世界は終わる。我々はそれを防ごうとしている。そうなった場合でも、被害を少なくしようと。
SCP-2117-A-2: ブラックラビット社憲章第7条: "我々は家族である。誰も飢えず、誰も取り残されない。"だが私は君たちを置いて去った。
2085-A: ウィズ、あんたは死んだ。それはやむを得ない。
SCP-2117-A-2: 君たちと過ごした日々は最高の冒険だった。だが君たちが平穏を得たことはない──常に星々を、そして世界を駆けていた。そして死は安らぎではない──それは無だ。
SCP-2117-A-2: 私は君たちにただ生きて欲しいわけではない。私は君たちに何らかの平穏に生きて欲しいと思っている。
2085実体は全員混乱と苦悩を示す。2085-Cは2085-Dを抱く。全員数分間沈黙する。2085-Aが緊張した声で話す。
2085-A: 全員一致にて、ブラックラビット社は、その現在の状態への治療を受けるため、メーガン・ユー、ミッチェル・アーノルド、クレーグ・ブラウン、フランシス・ルーカス、及び全ての地球由来の人物に同行する。
2085-B: 設計図を見つけるには少し時間が──
2085-Bは咳をする。
2085-B: 失礼、レプリケーターでキューブの設計図を探し出す間、少しお休みください。
2085-D: 俺たちの肝臓がダメになるまであと1日はありそうだ。酒はどうだ?