複素経済への招待
帝都大学コンプレックスエコノミー学習センター 内閣府複素経済導入支援事務局
はじめに
1998年以降、ヴェールの解体により世界は大きく変わりました。経済の構造もまた、多様な価値を受け入れる現状に合わせ、柔軟な対応が可能となるようなものへと変わっていきました。この文書では、複素数や複素経済になじみのない人に向けて、複素数が経済のなかでどのような役割を果たしているかを解説します。
導入の意義
複素経済の導入以前は、アメリカのiドル札など一部の例外を除き、貨幣の額面が数直線上にある数に限られてきました。数直線上にある数とは、例えば1、2、100、100000、130.3784、-10000などです1。これは大きな問題をはらんでいました。
たしかに、身長や体重は、数直線上にある数で表せば十分です。しかし、経済の重要な基盤となる「価値」は、本当に数直線上にある数字だけで表すことができるのでしょうか。新しい経済の形を決める第五回沖縄新経済構想会議で出された結論は、それだけでは不十分である、というものでした。
貨幣の額面が数直線上にある数に限られる経済は、価値も必然的に数直線上の数に縛られます。これを「実経済」と呼びます。それに対し、価値のとれる範囲を「複素数平面」という平面へ広げた経済を、「複素経済」と呼びます2。
複素経済に使われている複素数は、数直線上にある数「実数」に、別の要素を追加したものの中で、最もなじみやすいといわれ、様々な便利な性質を持つため、新しい経済の骨格として採用されました。
複素経済の基礎
複素経済はその名の通り、金額が複数の要素で表記されます。
上の式が何かの値段を表している場合は、iのついていない1000を実貨、ついている2000を虚貨と呼びます。また、簡単に「1000,2000」と表記することもあります。物理的には、白い縁取りの実貨と黒い縁取りの虚貨、紙幣や小切手で支払うこともできますが、あまり使用されることはないでしょう。
虚価や実価には特別な意味があるわけではありません。金額の意味合いは、後ほど扱う偏角と絶対値により記述されます。
加法
100+50i円のチケットAと200+30i円のチケットBを買うときは、以下のように実貨と虚貨に分けて足し合わせます。
引き算も同様です。所持金が1000+100i円で300+80i円払う場合は以下のようになります。
定数倍
1グラム100+50i円の血漿を2.5グラム買う場合、以下のように計算します。これを、「定数倍」といいます。
為替互換条約締結国の間、つまり為替に後ほど紹介する「ひねり」がない場合、為替は以下のように表されます。このとき、3.85を掛ける、つまり定数倍することでニュー台湾ドルを日本円に換算することができます。
乗算
虚数単位の平方は-1です。これを利用して、金額に複素数を掛けることができます。
一年後に元本100+1000i万円の0.71+0.71i倍を返す必要がある場合、以下のように計算した額を払うことになります。
複素数平面
金額z=a+ibは直交座標系上の点(a, b)に対応させることができます。
このとき、原点(0,0)との距離が「絶対値」となり、以下のように表されます。
また、金融の分野においては、以下のように、絶対値rと、x軸から測った角度「偏角」または「位相」の2要素で金額を表現することがあります3。
共役
金額の共役は、虚価の符号を反転することにより計算できます。元の金額とは、偏角の符号が逆転した関係にあります。以下のように表記します。
ねじれ
国同士で価値観が大いに異なる場合、複素数から複素数への変換全体に比べ自由度は高くありませんが、「すべり」、「ずれ」、「ひねり」の総称である「ねじれ」によって調整を行っています。数学的にはそれぞれ「平行移動」、「拡大縮小」、「回転」です。例えば、ドルとドンのレートはこのように表せます。
内積
複素数で表される金額は、原点を始点とする実二次元ベクトルと同様に考えることができます。そのため、一方の金額の絶対値に、他方の金額の平行成分を掛け合わせた値を求めることができます。一方をα、他方をβとすれば以下の通りです。
複素金融
金融とは、基本的には金の融通です。ある時点で買いたいものを買うことができない場合、経済の停滞を防ぐため、これを乗り越える二つの方法、「預金」と「借金」があります。
預金と借金
預金と借金の金額は、一定期間ごとに変化します。その変化の仕方は様々で、サービスの種類で大きく変わります。実経済では、以下のように利率γ%の等比級数的な増加を見せるものが複利と呼ばれました。
福利は、現在も複素金融に拡張されたうえで採用されています。利率γは実数で、φは角利率と呼ばれています。
この場合、金額は以下のように変化していきます。

また、現在では以下のような増え方をする場合も増えてきました。以下のような複素数の値をとる二次の漸化式は、元本の額面によって払うべき収束することもあれば、そうでないこともあります。
元本がどのような金額であればどうなるのかを示したのが、以下のようなジュリア集合です。

複素信用創造
複素信用創造とは、足して0円となる複数の0でない金額を、同時に複数の口座に振り込み、貸付を行うことによって、通貨を創造し、経済の規模を拡大させる銀行の役割のことです。多くは、以下のような1の累乗根の定数倍が用いられています。
貸付において支払準備が必要ないという事実は、複素経済が導入されてから確認されました。複素信用創造の能力に際限がなかったとしても、時間や貨幣の需要、位相(phase)のずれといった調整機構がはたらき、経済の破綻には至らないと広く合意されています。
複素経済の分析
アナリストは、様々な手法を使い経済を分析しています。その中の一例を見てみましょう。
複素経済の様々な数値はフーリエ変換を行うことによって、さまざまな周期の画像のような波を足し合わせたものとして表現できます。

例えば、景気動向を表す指数のスペクトル分析を行い、複素景気循環の分析を行うことができます。実際に、日付をxとした場合の景気流動指数f(x)のフーリエ変換F(ζ)の絶対値に複数のピークを認めることができます。F(ζ)の偏角にも似た性質が認められます。周期が短いものから順にキチン、ジュグラー、クズネッツ、コンドラチェフと呼ばれています。
現在、複素力学系に関する理論やその他の様々な理論が分析に用いられています。
まとめ
複素経済の導入により、経済の自由度が上がり、社会の在り方も大きく変わってきました。必要だったにもかかわらず実経済ではありえなかったような売買が複素経済で可能になったり、実経済に大きな影響を及ぼすことができなかった立場の人々も、複素経済ではその実態に合わせて影響を及ぼすことが可能になりました。
現在、経済は社会の根幹であり、形を変えつつも、ますます重要性を増しています。経済について知りたいと思いこの文章を読んだ読者の皆さんが学習を継続することを願っています。