サムサラ

「喜び、痛み、喪失、発見。」

「痛み?」イラントゥがその単語を吟味した。以前に聞き覚えはあるはずだが、その時はそれが内包する意味を完全に無視していた。

「気に病むな。 これは苦しい。約束する。

瞬間、機動部隊タウ-5"サムサラ"のメンバーは通常ではない、奇妙な、昂る痛みが体を突き抜ける感覚を感じた。まるで質の良いワインのように、彼らはそれをサンプリングし、味わう事ができた。焼け付く感覚は火蟻が血管を這うように感じた。彼らの臓腑が溶けた溶岩になったような感覚があった。まるで彼らの魂が肉体から引き剥がされるかのようだった。

戦士もそれを感じることが出来た。彼は彼らを手をつなぎ、それを通して彼らは一つだった。機動部隊は彼ら自身であることをやめ、それに戦士も続いた。肉体と心は結合した。そして一瞬の後、全ては正常に戻った。しかし戦士はそうではないことを知っていた。彼は今や彼のものとなった力を感じていた。かつてどんな人間も持ち得なかった程に。彼はこのために千年以上も準備してきていた。

囚われた精神Mindが抗議しようと考える間もなく、戦士はそれを籠から取り出した。戦士は彼の手の中に、人類を後援する事ができると考えていた神の三分の一を保持していた。それは知らなかったのだろうか?人類は自身を後援する事ができる。そして戦士はそれを貪ったのだ。


サイト-30の地下殆どを占める埃っぽい部屋で、MTFタウ-5、サラ・ヒューズ大尉はドアをドンドンと叩いた。それを開けたずんぐりとした男はアミル・エスカミラ、"サムサラ"計画の技術主任だ。

サラは苛立っているように見えた。「デスクが緊急事態だと言っていた。何が起こっているの?」

「入って、入ってください。」アミルは彼女を暗いオフィスへ入れながら囁いた。計算を書き込まれた紙が彼女の歩行が起こす風で舞い上がった。部屋の唯一の明かりは反対側のドアについた観察窓から来ていた — そのドアは再生ベイのドアだ。

ヒューズ大尉は腕を組んだ。「これは何?」

「再生で何かまずいことが起こっています。2-9-70で何かあったときのために、我々は新しいシェルを育てていたのですが、しかし…再生レートが異常に増加しています。見積もりでは三日でしたが、今では十分です。停止命令も受け付けません。」

「何故私を呼んだの?」ヒューズは目を細めた。「これはサイト保安の問題よ。彼らに対処pull the plugさせて。」

「ええ、ですが…もし彼らが機械のプラグを全部抜いたpull the plug entirelyらどうしますか?こんなことが起きていると知ったら、彼らはプロジェクト全部を処分しますよ。」

「落ち着きなさいアミル。私が保安部にこの -」

大尉はガラスが割れ、金属がもげる音に割り込まれた。その音に観察窓に硬いものが当たる音が続いた。

部屋の反対側で、怒れるシェルの群体がドアを叩いていた。


戦士は肉体が拡大するのを感じた。彼の形そのままではなく、彼の肉体が複製されるという形ではあったが。彼の背後では、四人の戦士が立ち尽くしていた。彼らはもはやシェルではなく、死にゆく神の欠片のしるしであった。彼らは生まれたばかりの指であった。

戦士は呼吸すると、彼は自身が完成されたことを感じた。すべての機能は回復した。すべての記憶は清浄であった。表面は一片とも、嫉妬深い存在の死ぬほどの苦悶に損なわれてはいなかった。彼の脳裏には、かつての精神Mindははもはや存在しなかった。戦士自身の精神は神的であり、サムサラが彼の肉体であった。

世界全体を通し、闘いがあった。戦争があった。人を殺そうとし、破壊しようとする者がいた。踏みにじられたものの上に立つ者達がいた。他者の痛みに喜びを見出し、進歩を妨げる者達がいた。

しかしそのような者達の全てが大地を歩かねばならない。そして彼がそれに触れた時、戦士は大地であった。そして彼もまた彼らである。戦士、一万の手と一万の足を持つ神。

一万年前、神は肉となった。今、肉は再び神となった。

そしてそれは大地の上を歩く。

そしてそれは大地である。

そしてそれは結合した肉の触手を伸ばす。

そして全ては一つとなる。

そして全てが戦士となった。

そして戦士は彼の真の名を知っていた。

彼は人類の真の後援者であった。


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