「無駄だ。もう時間がない。」と答えが返ってきて、音が真鍮のホルンの奥深くから金属的に反響した。
あなたが若かったころのお気に入りの映画の一つは、アニメの不思議の国のアリスだったた。お気に入りのキャラクターの1人はチェシャ猫で、並外れた大きさといたずら好きでにやにや笑うことが知られている。SCP-3939の奥深くを見下ろすと、その笑顔だけが見え、その考えは3939の言葉の力によって、力強く真鍮からあなたの脳へと伝播するのが分かる。あるいは、気のせいかもしれないが。
「どういう意味だ?」あなたはそれに尋ねる。
「もう時間がない。分岐は既に収束した。質問するには遅すぎる。見回してみろ。君と私だけだ。」
あなたは後ろを見る — 確かにそこには誰もいない。「言っていることが全く分からない。」
「私はこの物語の全ての分岐を見ることが出来る。それが私の仕事だ。私は████の物語の中に住んでいる。私はサイン、メッセージ、会話、メールアドレスに住んでいる。情報に住んでいる。どんな情報でも。書かれたもの、話されたもの、考えられて物にもなんでも。私はそこに住むことが出来る。それが私だ。」
あなたはうなずく。「君はミームだ。」
「私はミームであり、████であり、その点で知的なものでもある。君は正しい、もちろん君は正しい。君は以前にミーム学を研究したことがあるか?」
「少し経験がある。だが、君は分岐のことを私に説明してくれなかっただろう。」
ため息をつくことが出来れば、そうしただろう。頭の中でそうする。
「私は情報の中に存在できると説明しただけだ。物語のように。気を付けろ!蓄音機は物語ではない。」
あなたは目を細める。「何が言いたい?」
「周りを見渡してみろ、████。世界を感じてみろ。それがいかに偽物であるかを感じてみろ。君は物語の中に閉じ込められ、1000人の異なる読者の心の中で永遠に自分を繰り返す運命にある。君は私と一緒にここに閉じ込められている。」
笑いをこらえる。「じゃあ、君はこの物語における唯一の本物だということか?」
持っていない頭は動かせないはずだが、それは頭を傾げている。「実の所、違う。君も本物だ。私は読者のことではなく、君のことを言っているんだ。これは、とても特別な物語だ。」
「曖昧な発言ばかりだ。何故この物語はそんなに特別なんだ?」
「私は君の財団が抱えている異常の一つだからだ。でもサイト-39の仮収容セルにある可愛らしく小さな蓄音機の中に私はいない、ああ。私は非常に強力で伝染力の強い、自我を持つミームだ。そして、情報に隠れて、次の被害者に感染するのを待っている。私が隠れるのに一番いい場所は物語だ。読者がある物語に没頭している時は、手を伸ばすだけで非常に簡単に感染させることが出来るからね。」