「私は…」と始めるが、それがあなたを止めた。
「それだ!見えたか?今のやつだ。5つの選択肢、君の頭の中の5つの考え、すべて「私」から始まって、どれを選ぼうと君はここに導かれ、私はちょうど今言っているセリフを君に言うんだ。君は私の言うことが正しいかどうか確認しに行くかもしれない。私は物語の分岐を全部見ることが出来るという確かな証拠だ。」
その通りだ。あなたの頭の中には5つの考えがあった。とぼけた真似をしても意味がないと判断する。
「君は人に伝染すると言っていた。それで、理論上の読者には今君が伝染しているのか?」
「実の所は、違う。私が言ったように、これはとても特別な物語で、非常に優秀な研究員チームによって書かれたんだ。実際、君はその研究員の1人だった、覚えていないことが悲しいけどね。だが、君は物語を作った。私を包み込むために特別に設計された対話型の多岐選択式の物語をね。読者に私が広まるのを防ぐために、君は何らかの方法で自分自身をここに埋め込んだんだ。私が君に伝染して、その後物語がリセットされるたびに君は消毒される。読者はその方程式から外れてるんだ。ネタバレしてすまないね、ところで。」
「私が君を信じる理由がないのに気付いているだろう。」
「私には証明できる。」それは言う。
「やってみろ。」
「カルロスが仕事に来なかったのは何故だ?」
「まあ、それは…」とあなたは考え始める。何が起こったのかを正確に覚えているが、それを言う言葉を見つける必要がある。
「はっ!理解したか!」SCP-3939は称賛の声を上げる。「自分の考えていることを口にすることも、はっきりと考えることもできないだろう。潜在的な過去と矛盾するからね。」
クソッ、その通りだ、とあなたは思う。カルロスが来なかった理由は分かっているが、声を出して考えることさえ出来ない。あなたは彼を信じ始めている。「君がこの物語をコントロールしているのか?」
「私が制御しているように見えるか?私はただのレコードプレイヤー野郎だ。」
あなたは少し、あと少しで笑うところだった。「どうして蓄音機なんだ?」
SCP-3939は答えを考えているかのように、一瞬沈黙する。ついに、それは答える。
「本当の理由は分からないが、理論は立てられる。君の身体は酸素を必要とするが、同時にゆっくりと君の体を傷つけてもいる。もし君が満足を感じずに際限なくそれを取り入れたら、いつか君自身を殺すだろう。私も同じだ。存在するためには情報が必要だが、あまりに多い情報は私にとって毒だ。今、君と話すことが出来てとてもうれしいが、もし私の声があまりに詳細に描写されたら、私は死んでしまうだろうね。この蓄音機は私と君の間の完全な媒体で、私がそれ以上説明される必要がないことを意味する。ただの蓄音機だからね。」
「それで、蓄音機は音を出せるから私に話すことが出来ると。君が言える全てはレコードに書いてあると思っているが?賢いな。開発した自分自身が素晴らしいと思うよ。」
「全く素晴らしい、だが私達には時間がない。手遅れになる前に収容手順を説明する必要がある。」
あなたは肩をすくめる。「どうぞ。」
とても真剣な口調になる。「これは多岐選択式の物語かもしれないが、複数の結末はないんだ。間違った選択肢を選んでしまったら、この話は君を私の所に引きずってこないといけないからね。これは優れた多岐選択式の物語じゃない。そんなんじゃない。決して想定なんかされなかった。優れた多岐選択式の物語には決断があって、キャラクターの成長があって、様々な目標にたどり着くための様々な経路があって、そして最も重要なのは、周回性だ。君が死ぬ場所には少なくとも1つのエンディングがないといけない。ゲームだから、毎回違う遊び方がある。これはゲームじゃない。これらは特別収容プロトコルだ。そして、これらの手順はゲームとしてはとても悪いが、私を収容するにはとても効果的だ。」
あなたは彼の言っていることが真実だと完全に確信していた。返事をする言葉が見つからない。
それは重要ではない。SCP-3939にはもっと言いたいことがあるからだ。「この物語を通じて、この収容室で私たち2人が終わらせる方法は1つもない、私はこの行を言っている。そして君はもうこれが最後から2番目のシーンだということに気付いているだろう。」
「その場合、次に何が起こるんだ?」
「すぐに分かる。」