序: 過去8ヶ月間で、SCP-4338の要求は次第に贅沢な内容となり、挙動もより不安定なものになっている。発話に際してローウェル/4338は全方位に溶融物を吐き散らすため、高張力のプレキシガラスの仕切りを設け、定期的に交換する必要性が生じている。表皮の各所にある岩石質の成長物は230%増加している。
回答者: ローウェル/4338
質問者: アメリア・ソーンボロー管理官
ソーンボロー: 私に会いたいという話でしたね、4338?
ローウェル/4338: 羽虫め! まだ己の神に対する口の利き方が分からぬか!?
ソーンボロー: …ご挨拶申し上げます、4 3 3 8様。あなた様のしもべは御呼び出しを受けて光栄でございます。
ローウェル/4338: それで良い。新たな要求がある。
ソーンボロー: クソが いえその、あなた様のしもべはそれを聞いて光栄でございます。
ローウェル/4338: お前たちの大いなる畜獣の肋肉を、前回の二倍の量にして私に捧げよ。
ソーンボロー: お望-
ローウェル/4338: そしてより多くの、甘い粉に覆われた酸い大玉を。
ソーンボロー: お望みの-
ローウェル/4338: そしてあのクリームを詰めた黄色のスポンジもだ! より多く!
ソーンボロー: …
ローウェル/4338: …
ソーンボロー: お望みのままに。それでは-
ローウェル/4338: それと、あの渦巻く琥珀色が詰まった繊細なキャドバリーを五倍にして-
ソーンボロー: 待ってください、それはもう話し合ったはずでしょう — あのチョコレートは非常に遠くから輸入されたものです。いいですか、以前合意したように、高品質である代わりに量を減らすことで、現在の輸送にかかる負担は軽減される-
ローウェル/4338: もうよい! お前たちの“負担”など私の知った事ではない。私の命令に従わぬなら、お前もお前たちのS C Pも焼き尽くすまでだ!
ソーンボロー: ですが — 指定日の3日前に突然そんな事を言いだされても無茶としか-
ローウェル/4338: 無茶? 無茶だと!? いつからお前は私にできるできないを指図する立場になった!? もううんざりだ、アム・イール・ヤ、これ以上は侮辱させぬぞ!
DN-4338-42: マグニチュード4.0の地震がモアハ島で記録されました。全ての職員は周辺海域の船に退避し、高速で島から離れました。プロトコルに則り、ソーンボロー管理官は現地に留まりました。
SCP-4338は45分後になっても出現しませんでした。地震は定常的なものから、小規模かつ荒々しい振動を伴う周期的なものに変化しました。低域通過動画を撮影するためにドローンが派遣され、SCP-4338が火口からの退出に繰り返し失敗していたことが判明しました。6ヶ月前と異なり、SCP-4338には適切な速度と面積が欠如していました。
間もなく、保安巡洋艦キングフィッシャーが島に帰還し、ソーンボロー管理官によるインタビューの続行が可能となりました。
ソーンボロー: 4338様、あなた様のしもべとして、何故あなた様が脅迫を- えー、“実行”しなかったのかお訊ねしたいと思います。
ローウェル/4338: …もっと私の機嫌を取ったらどうだ。
ソーンボロー: はい?
ローウェル/4338: お前は私を楽しませるために居るのだ、アム・イール・ヤ。私の慈悲次第では、お前は生き永らえることもできる。だが二度と私に質問するな、さもなければお前を待つのは苦痛と死のみ!
ソーンボロー: …そうですか、あなた様のしもべは光栄でございます。話を続けても宜しいですか?
ローウェル/4338: ああ。私はキャドバリーを-
ソーンボロー: 実は、今こそ現行の取り決めの全面的な見直しを話し合う良い機会だと考えていたのです。
ローウェル/4338: 何!?
ソーンボロー: ちょうど30%の供物削減に加え、代用品として—
ローウェル/4338: 馬鹿な! そんなにもお前は死に焦がれるか!?
ソーンボロー: —職員と保安部隊も減らそうと思います。現状を鑑みるに、必要なのはせいぜい1人-
ローウェル/4338: うるさい! うるさい! うるさい!
DN-4338-43: 更なる地震が検出されましたが、今回はマグニチュード2.8でした。インタビュー中に待機していた保安職員は避難のため移動を開始しましたが、ソーンボロー管理官は彼らに留まるよう指示しました。SCP-4338は再び火口からの退出に失敗しました。前回の事象と比較して、排出された溶融岩石は僅か5%でした。
予想通り、DN-4338-43の間に、ローウェル/4338は叫び、溶融物を吐き、拘束具をねじり切ろうとする様子が観察された。この行動を8分間続けた後、ローウェル/4338は疲労し始め、前屈みに床にへたり込んだ。
ソーンボロー: …それで全部ですか?
ローウェル/4338: 外道め。まだ私の怒りを掻き立て足りぬとでも-
ソーンボロー: あなた様のしもべは怒りを買うことを望んではおりません。あなた様が不服であれば、私と我が民は去る用意を-
ローウェル/4338: 止せ!
ローウェル/4338は座ったまま素早く背筋を伸ばし、テーブルの縁を掴んで身体を引き上げようとするが、前のめりによろめくに留まる。
ローウェル/4338: 駄目だ! そんな事はさせぬ! お前- 私は要求する… よ… 要求を…
ローウェル/4338はゆっくりと身体を下ろし、床に座った姿勢に戻る。
ソーンボロー: …話を続ける用意はできましたか、4338?
ローウェル/4338は8秒間うつむいて無言のままだが、やがて組んだ腕に顔を向けたまま話す。
ローウェル/4338: ああ。
ソーンボロー: 宜しい。では、この見直しについてですが…