財団記録・情報保安管理局より通達
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このバージョンは2030/██/██に編集されました。
— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
アイテム番号: SCP-CN-1256
オブジェクトクラス: Neutralized
特別収容プロトコル: 現在、SCP-CN-1256は財団中国支部アノマリー特別収容データベースに収容されています。財団インターネット情報セキュリティ部門は当該コンピュータの監視制御を続けるとともに、内部ファイルの漏洩を阻止します。中国支部のサイトで低脅威度の収容違反が発生した場合、事態の安定化にSCP-CN-1256を用いることが、財団職員に限って許可されます。SCP-CN-1256に関する実験は所属するサイトの管理官に申請しなければなりません。
2016/██/██更新: 現在、SCP-CN-1256は全財団サイトの業務用PC内に財団内推薦ゲームとしてインストールされ、財団中国支部における収容の安定性を増強するために用いられます。
2030/██/██更新: 現在、SCP-CN-1256は異常性を失っており、審査の後、Neutralizedに再分類されました。
説明: SCP-CN-1256はレターズ・エンターテインメント傘下のI&Iスタジオであった、現I&Iエンターテインメントコーポレーションによって研究開発された《財団中国支部クロニクル》という名の育成型PCゲームです。オブジェクトはWindows XP以上のOS環境でサポートされていますが、“紅旗”シリーズのOSではサポートされていません。ゲーム起動後のメインページのタイトルには《財団中国支部クロニクル ——守護者のChronicle》と表示されます。
以下はSCP-CN-1256の主な遊び方です。
- プレイヤーは収容サイトxx(番号はプレイヤーが指定可能)のサイト管理官として、収容サイトへ一連の管理事項を伝える。
- 収容サイトの主な仕事は“バグスキップ”という名の事物の捕捉及び収容である。また、それと同時に研究員を手配して“バグスキップ”の特性1を分析し、大量の実験データ2を得て、知性を持つ“バグスキップ”の感情3を落ち着かせて収容を維持することでもある。“バグスキップ”の異常特性値が0まで低下すると“Explained”と表記される。
- 初めに収容サイトは2部屋の収容室、4名の研究員及び10名の“ラット”を有している。チュートリアル時には収容室、研究員、“ラット”を更に補充するために“収容室建造”、“研究員募集”、“ラット招集”を開く。
- ゲームの主な資源は“ファンド”である。“ファンド”は収容室の建造、研究員の募集、及び研究員に配備される武器の更なる獲得に用いることができる。“ファンド”は本部へ実験データを提出、または実験データを使用して武器を制作し、販売することで獲得できる。
- “バグスキップ”は心理値が0になる、またはゲーム内で規定された“収容プロトコル”に違反した際に収容違反イベントを引き起こす。このとき、研究員は武装して鎮圧を行うか、収容違反の影響で知性を失う。鎮圧が劣勢の場合、“バグスキップ”が収容サイトを突破、もしくはサイト管理官のオフィスに突入するとゲームオーバーとなる。
- ゲームの目標は「全てのバグスキップを解明し、安定した世界を手にする」ことである。目標を達成するとゲーム内での行動に基づいてハッピーエンド、またはトゥルーエンドに入る。現在はハッピーエンドとトゥルーエンドのストーリーを入手済であり、メインテーマはいずれも“バグスキップが再び生み出されない世界で、人類は元バグスキップの能力を利用して宇宙へ踏み出す”というもので、ゲームキャラの生存で差異がみられる。
SCP-CN-1256は未知の方法で自身に追加コンテンツ(DLC)のインストール、及びゲームの更新をします。増加したコンテンツとSCP財団中国支部で増加した収容アノマリーは互いに一致しています。
オブジェクトの異常性は財団中国支部で職務を持つ職員がニューゲームでプレイしたときに発現します。標準的な場合、そのプレイヤーが属している/属していた業務サイトでの実験失敗、収容違反及びサイトの破壊が発生する月平均確率は前月と比べて約█0%低下します。同時に、プレイヤーには財団のために尽力しようとする更なる願望/意欲の感情の変化が生じます。この感情の変化が共感作用か自発的なものなのかは現在確定できていません。
2030/██/██更新: SCP-CN-1256の全コピーは無力化後に再起動すると、トゥルーエンドの状態のストーリーを常に流します。現在確定できることは、SCP-CN-1256の無力化は大規模なアノマリーの無力化を引き起こした源であり、解明済アノマリーの実験データからなる技術がもたらした第4次科学革命を促進したということです。
歴史: SCP-CN-1256は当初2016/██/██にSteamで公開され、その後財団は発見とともに取り下げを命じました。翌日、“南瓜ntw”というIDのSteamユーザー(POI-12864と表記)が財団にコンタクトをとり、自らを当該オブジェクトの制作者だと称しました。2時間の話し合いの終了後、財団はPOI-12864と目標の一致を達成し、POI-12864の指揮下にある人員が財団に加入することに合意しました。会話記録の詳細は補遺B: インタビュー記録CN-1256-Aを見てください。
しかしその後の14年間、財団職員は当該ゲームをクリアできませんでした。プレイヤーの一般的な評価は「難しすぎる、まるで進められない」そして「クリアできそうになると、リストにすぐ新たなバグスキップが追加されてしまう」というものでした。これはPOI-12864の息子(███博士、POI-25632と表記)が約1週間でこのゲームをクリアするまでのことでした。その後Ninth博士によってインタビューが実施されました。インタビュー記録の詳細は補遺B: インタビュー記録CN-1256-Bを見てください。
補遺A: インタビュー記録CN1256-A
警告: データ消失。詳細は財団記録・情報保安管理局に問い合わせてください。
補遺B: インタビュー記録CN1256-B
インタビュー対象: POI-25632
インタビュアー: Ninth博士
<記録開始>
Ninth博士: クリアおめでとうございます。財団でこのゲームをクリアしたのはあなたが初めてです。
POI-25632: それはどうも。実際のところ、少しも嬉しくないけど。
Ninth博士: どうしてです?
POI-25632: あんたらは“収容を安定化できる”からプレイしてるだけで、ちっともプレイを楽しんでないじゃん。
Ninth博士: そう言われても、私達にはもっと重要な仕事があります。現実改変効果が多少あるだけのゲームで時間を無駄にするつもりは……
POI-25632: いや、父さんがほのめかしてただろ!最初に頑張っとけば、後でずっと楽になる話だってのに、あんたらはちっとも深入りしなかった!このゲームに現実改変の効果があって、その上父さんは異常が存在しないエンディングがあるって言った。なのにあんたらは何も思い付かなかったのか?
Ninth博士: 落ち着いて、あれはただのゲームですよ。
POI-25632: ただの?父さんの心血の結晶をそんな扱い?父さんの遺言のおかげで、財団の一員になって、したのはこのゲームのクリアだけだったってか!
Ninth博士: 少し落ち着いてください。知りたいだけなんです。このゲームをクリアして一体何が起こるのですか?
POI-25632: (ため息)ごめん、興奮しすぎた。父さんが書いたプログラムの通りにいけば、ゲームをクリアすると、世界の全てを異常が存在しない世界に変えるんだ。このゲームのエンディングと同じようにね。
Ninth博士: あなたの父親は異常性のない箇所のコードを書いただけではないのですか?
POI-25632: いや、コードは全部父さんが書いてる。本当のことをいうと、父さんは現実改変者だった。好き勝手できる力があったのに祖父の教えに従って、財団の一員になる道を選んだ。……でも僕だって同じだ。死んだ父さんの遺志を継いで、今まで生きてきた。
POI-25632: 正直いって、あんたらも同じようなもんでしょ。“管理者”はとっくに消えたっていうのに、その教えを堅く守って、今まで受け継いできた。でも、僕も父さんも財団の異常への対処法が正しいとは思えなかった。当然、他の同業者なんてもっとヒドいし。父さんは祖父の死をずっと引きずってて、「もう人が死ななければいいのに」っていつもつぶやいてた。結果は……知ってるでしょ、父さんも任務で殉職したって。
Ninth博士: なるほど、分かりました。クリア後は何をするつもりですか?
POI-25632: 辞めさせてもらうよ。それと、あんたらも荷物の片付けを始めたほうがいいから。
Ninth博士: それは何故です?
POI-25632: 簡単なことだよ。異常が存在しない財団はそれでも財団っていえるの?
<記録終了>