タンホニーの提言II

黒き月は吠えているか?

血を流すことなく。


最終アップデート: 1991/11/04/

アイテム番号: SCP-001-CAGE

オブジェクトクラス: Thaumiel

特別収容プロトコル: 現在の財団の組織構造および使命の制定において行われた合意のとおり、SCP-001-CAGEは常にサイト-01に収容されなくてはいけません。この合意を確実に遂行するために、SCP-001-CAGEには常に保安要員が付き添わねばならず、彼がサイト-01を去ろうとした場合には、精神安定剤の使用によりSCP-001-CAGEを無力化することが許可されています。

SCP-001-CAGEにより行われるSCP-001に関する研究の全ては、個人的に選抜された研究スタッフのチームとともにサイト-01の4階にて行われなければなりません。この研究に必要な外部とのコミュニケーションは遠隔に、あるいは中継者を介して行われなくてはいけません。

これらの収容手順は、特異概念バンカー(Singular Conceptual Banker: SCB)の完成までは変更の可能性があります。

説明: SCP-001-CAGEは30代後半に見える人間の男性であり、財団の公式な記録の大部分では「管理者」と呼称されています。SCP-001-CAGEの正確な実年齢は不明ですが、既知の人類文明の大部分より長いと考えられています。

収容下に入って以来、SCP-001-CAGEは当初の外見から老化の兆候を見せていません。彼の肉体に加えられたあらゆる外傷は、その重大さに関わらず、正確に4秒後に回復するため、SCP-001-CAGEを恒久的に傷害する、あるいは無力化する方法は不明です。精神安定剤は限られた程度ながら効果を示し、SCP-001-CAGEは薬剤が体内から排出された後も短時間の間意識不明のままとなります。

不死性と傷害の不可能性について質問されると、SCP-001-CAGEはSCP-001を追う使命を持つ実体である「平衡力」に指定された結果であると主張します。SCP-001-CAGEによると、「平衡力」としての指定は他の人物に転送することが可能ですが、それを証明するために他の財団職員に転送することは拒否しました。

SCP-001-CAGEはSCP財団の創設者であり、最初のO5評議会を招集し、財団以前の経歴において収集した多数の異常なアイテムの情報を提供しました。自身を収容し、前述の情報を提供することと引き換えに、SCP-001-CAGEはSCP-001と、その収容もしくは無力化の方法の研究に必要な資源を供給されました。


補遺001-CAGE-1(インタビューログ):

1███年の財団の創設以来、SCP-001-CAGEに対しては彼の精神状態とSCP-001研究の成果の確認のためのO5評議会のメンバーとの定期的なインタビューが行われています。以下はそのようなインタビューの最新のログです──完全なアーカイブはサイト-01データベースにて閲覧可能です。

<ログ開始>

O5-3: あれを見てください、録音しています。始めてもいいですか?

SCP-001-CAGE: ああ、いいね。最近は録音機器が好きになってきたよ、知っていたかね?便利だからね。

(間。)

O5-3: それでは、いつもと同じように始めます──記憶テストから。

SCP-001-CAGE: 君は新人かね?

O5-3: ええと?どういう意味ですか?

SCP-001-CAGE: 以前に会ったことがあるとは思えないな。新人かね?

O5-3: この職について今年で30年になりますが。

SCP-001-CAGE: つまり君新人だ。すまないね、記憶テストだったな。やってくれ。

(O5-3は紙を広げて読み始める。)

O5-3: 生まれたのはいつか思い出せますか?

SCP-001-CAGE: 名前ができる以前だな。

O5-3: 以前──もっと詳しく説明してもらえますか?

SCP-001-CAGE: 名前というものは、人と人の区別ができなくなるから必要なものだ。私が生まれた頃、それが問題になるほど人はいなかった。

O5-3: ふむ、わかりました。では、あなたの現在の異常な能力をどのように獲得したか思い出せますか?

SCP-001-CAGE: 平衡力について?

O5-3: あなたはそう呼んでいるようですね。それです。

(間。)

SCP-001-CAGE: (静かに)我々は海のほとりに村を作って住んでいた──ただテントと洞窟だけの。その頃の村といえばそんなものだった。私はその頃子供だった。名前に最も近いものは、ただその人が何であるかだった。その頃には、我々のようなものは世界に一人しかいなかった。

(間。)

SCP-001-CAGE: ある日、見慣れない者が来た。隠者だ。彼はまるで生まれてこの方何も食べたことがないように見えた。まるで骸骨のように。だが彼は死ななかった。彼は村の中心に来て、石の上に座った。そして待った──そして何日か後、黒き月が吠えた。

O5-3: SCP-001ですか?

SCP-001-CAGE: 黒き月だ。最も若い狩人が彼の洞窟に入り──そして消えた。歩いている途中の姿の、ピッチのように黒い彫像。そして4秒後に、無だ。そして隠者は私を向き、何が見えたかを聞いてきた。

(間。)

SCP-001-CAGE: 私は彼に答えた。彼は私に黒き月について語った──彼の不死の生で学び取った全てを。それは4分かかった。

O5-3: 彼は早口で喋ったのですか?

SCP-001-CAGE: いや、ただ彼も多くを知らなかっただけだ。(静かに)彼は何千年も生きてきた。

(間。)

SCP-001-CAGE: そして彼は私にそれを伝えた。そして私は歩み始めた。それで……これで十分かね?次に行ってもいいかね?

O5-3: ええ、十分です。

(間。)

SCP-001-CAGE: (ため息)そうか。今日は他に何があるのかね?

O5-3: 記憶テストは終わりです。では──001について現在は何か進捗がありましたか?

SCP-001-CAGE: 遅いな、だがそれは驚くことではない──始まりからずっと遅かった。だが、モト博士が我々皆が興奮するような提言を行った、そして私はいつでも、希望をSCBに賭けてきた。

O5-3: 興味深いですね。もっと詳しく聞かせていただいても良いですか?

SCP-001-CAGE: 計画の提言は送ったし、どちらも承認された。それで十分だろう。

O5-3: だとしても、今あなたとそれを議論したいのです。

SCP-001-CAGE: 君は私をクソの塊だと思っているだろう?

(間。)

O5-3: ええと、失礼ですが、どういう意味で?

SCP-001-CAGE: 君は3つのうちどれかを考えている。私が嘘をついているか、妄想家であるか、的を外した努力をしているか。君の目からすると、最初の2つのどちらかだな。多分1つめだろう。

O5-3: 信じてください、私は最大限の敬意で──

SCP-001-CAGE: ──君の立場と評価のためにそうしている。ああ、ありがとう。だが私は君に個人的な感覚に素直になってもらいたい。これは私達双方にとって不誠実だ。

(間。)

O5-3: まるで私の感覚をわかっているかのようにおっしゃいますね。

SCP-001-CAGE: ああ、その通りだ。

O5-3: あなたはテレパスではない。何十年も前にそれは確認されています。

SCP-001-CAGE: ああ、そうだ。君の前任者はいい仕事をした。

(間。SCP-001-CAGEは前に乗り出す。)

SCP-001-CAGE: どんな人間にも個性がある、という考えは好かれるが、実際には──これは私の個人的な意見だ、事実として取らないでくれ──ごく限られた種類の人間しかいない、100かそこらだ。ちょっとした違いがあるだけで、何度も何度も現れる。気性のちょっとした違い、花の好み、蜂を怖がるか。これらは皆、同じ限られた類型に、窓枠の飾りを変えただけだ。

O5-3: それは──

SCP-001-CAGE: 私のように長く生きれば、誰でもそれを見分けることができるようになる。そういうわけでだ、私に嘘をつかないでくれ。それは全部以前に聞いたことがあるんだ。

(間。)

O5-3: あなたは私について思い違いをしています。私は──私は確かに疑いを抱いています。ですが言ったように、私はあなたに最大限の敬意を持っています。しかしもし、あなたが言うように、SCP-001が観察されることによってのみ停止する実体なのだとしたら、しかし決して観察できないのだとしたら、これまでの努力は的を得ていないことになります。

SCP-001-CAGE: 白鯨はもう読んだかね?

O5-3: もう?

SCP-001-CAGE: メルヴィルの新しい本だよ。私は実に共感したね。エイハブというキャラクターがいて、クジラと戦うんだ。そして不幸な終わりを迎える。

O5-3: 私の印象では、本全体を通して、エイハブの自然への復讐が、いかに最初から失敗を運命づけられていたかを描いていると感じました。

SCP-001-CAGE: そうかね?それは私の印象とは違うな。

O5-3: それでは、あなたの印象はどうだったのですか?

(間。)

SCP-001-CAGE: エイハブはただ努力が足りなかっただけだ。

<ログ終了>

補遺001-CAGE-2:

インタビューの後、SCP-001-CAGEはオロマスデス計画の範囲内でのSCP-001の収容についてのモト博士の提言のさらなる情報を提供しました。

モト博士の収容の試みについてのアップデートされた記録は添付ファイルにて参照できます。

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