黒き月は吠えているか?
衰えるときにのみ。
最終アップデート: 5011/05/03
アイテム番号: SCP-001-SAGE
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-001-SAGEは標準人型収容チャンバーに収容し、栄養チャート001-SAGE-1に従って必要物を1日2回供給されなくてはなりません。SCP-001-SAGEを収容する収容チャンバーには常に最低2名の保安要員による護衛をつけなくてはなりません。保安要員はテレパシーの影響の可能性を避けるため、チャンバーから3メートル以上離れた距離を保たなくてはなりません。
SCP-001-SAGEとのあらゆるインタビューは管理者レベル4職員により行われなくてはなりません。
説明: SCP-001-SAGEは、共生関係にあると見られる様々な異質な形態を取る菌類により構成された概ね人型の実体です。SCP-001-SAGEの地球への移動の前後に行われた分析では、これは知的生物であり、構成するパーツ間および人類との間でコミュニケーションする能力があることが判明しました。その表面の色合いは青色の蛍光を帯びており、その強さは思考の深さや激しい感情に応じて変化することが観察できます。
SCP-001-SAGEは、その文明により「ただひとつの星」と呼ばれていた惑星上で発見され、地球へと移動されました。SCP-001-SAGEは、学者に該当する立場として、繁栄した文明に貢献していたと主張しています。証言によると、SCP-001-SAGEの研究の主要な対象は、財団によりSCP-001と指定される現象でした。ただひとつの星の政府がSCP-001への対抗手段を立案することに失敗したため、SCP-001-SAGEはその影響から逃れる望みをかけて、自らを冷凍睡眠状態にしました1。
種々の証拠から、元来、SCP-001-SAGEの種族の構成員はテレパシーを用いて同種の他者と接続することにより知性を高めていたことが示唆されます。しかしながら、SCP-001-SAGEは当該種の唯一の現存個体であるため、新たな概念の習得や既存知識の拡張に多大な困難を示しています。
補遺001-SAGE-01(インタビューログ):
以下は管理者とSCP-001-SAGEの間で、特異概念バンカー(Singular Conceptual Banker: SCB)の起動直前に行われたインタビューの書き起こしです。テレパシー攻撃および物理攻撃を防御する管理者独自の特性により、彼はリスクを犯すことなく近距離に近づくことができました。
<ログ開始>
(管理者が収容チャンバーに入る。SCP-001-SAGEは部屋の中央にいる。)
管理者: ハロー。
(管理者を見て、SCP-001-SAGEは強い青い光を発し、記録機器を数秒間乱す。)
SCP-001-SAGE: 平衡力か。
管理者: 知らされているようだね。座ってもいいかな?
(間。)
SCP-001-SAGE: 座る……ああ、わかった。いいぞ。
(管理者はSCP-001-SAGEの向かいに足を組んで座る。)
管理者: フーッ、どうもありがとう。私は管理者。君に名前はあるかね?
(SCP-001-SAGEは激しく発光する。)
SCP-001-SAGE: 私の名前は光の点滅と動きで表現される。あなたの体の構造では不可能だ。ここではSCP-001-SAGEと呼ばれている。それで十分だろう?
管理者: 君がそれでいいなら。
SCP-001-SAGE: ああ、問題ない。
(間。)
管理者: 方法はあるかね?
SCP-001-SAGE: 方法?
管理者: あれを止める方法だ。黒き月。
SCP-001-SAGE: ああ。あなたにはもうわかっているはずだ。方法はあると。
管理者: 君は私の心を読めるのかね?
SCP-001-SAGE: あなたの心は私に叫びかけている。それを無視するのはやろうとしてもできないくらいだ。
(間。)
SCP-001-SAGE: S……C……B……それが解決法か?それは何だ?
(間。)
管理者: (静かに)勝利。だがそれはとても、とても長い時間がかかるだろう。私にできるかどうかはわからんが……私はもうずいぶん長く待った。とても疲れたよ。
(間。管理者は額を拭う。)
管理者: 私を愛してくれた人々もいた。愛してくれていたと思う。君は愛されていたかね?
SCP-001-SAGE: ああ。
管理者: 我々は2人とも、それらを遠くに置き去り、こんなところにいるというわけだ。
(間。)
SCP-001-SAGE: そうだな。
管理者: (ため息。)あとどれだけの別れを重ねればいいのか、私はそれに耐えられるのかわからんよ。
SCP-001-SAGE: ならば、平衡力を誰かに渡せばいい。
(管理者はSCP-001-SAGEを見上げる。)
管理者: どうして知っている?平衡力のことを。
SCP-001-SAGE: かつて、私の惑星にもそれを持つ者がいた。頼もしい英雄──だが、あなたのように、彼は疲れていった。彼は重荷を手渡すために、他の世界に旅立った。想像だが、彼も誰かから受け取ったのだろう。彼から受け取った者もまた手渡した。世界を超えて、受け継がれる偉大な鎖だ。
管理者: 私に渡したのは老人だった。
SCP-001-SAGE: まだ持っているべきだったのなら、彼はそうしなかっただろう。あなたはどうするのだ?
(間。)
管理者: 私は勝つ方法を知っている。それを誰かに話す事もできるし、それを手放す事もできる。
SCP-001-SAGE: そうだろう。私に手渡すこともできるはずだ。
管理者: (ため息)だが私はこれに関しては誰も信頼できないのでな。(笑う)私は管理職のくせに何でも自分でやりたがると評判が悪いんだ、見ての通りな──それに、あれは皆が思っているのと違う所もある。 黒き月はまだ私を殺そうとしているが、それは最後だろうな。
(間。)
管理者: すまんな。
SCP-001-SAGE: 気にするな。種族の中に思考が生まれたときから、監視者はそれを見つめてきた──その時から、全ては時間の問題だったのだ。私は自分の終わるべき時を随分と過ぎてしまった。
(間。)
SCP-001-SAGE: あなたは時間がかかると言った。それはどれくらいなのだ?
管理者: 君は……君は夜になって、星が現れるまでずっと空を見ていたことがあるか?
SCP-001-SAGE: いや……だがあなたが何を言いたいかわかる。
管理者: 私は永遠にそれらが消えてしまうのを見るだろう。
(間。)
SCP-001-SAGE: ならば、勝利したとして、何になるのだ?
(管理者は立ち上がり、出ていこうとする。SCP-001-SAGEは再び青い激しい光を発する。)
SCP-001-SAGE: 平衡力よ!何のために勝つというのだ?
(管理者は振り向き、SCP-001-SAGEを数秒間見つめる。)
SCP-001-SAGE: そうか。なんと烏滸がましい。願わくば、うまくいくとよいな。
(管理者は去る。)
<ログ終了>
インタビューの直後、管理者は無期限の不在の間、新たに組織したO5評議会が財団の運営を行うように指示を出し、特異概念バンカーへ向かい、それに入りました。
補遺001-SAGE-2(事案報告):
5011/05/01、SCP-001-SAGEは突然青い光で発行し、発話を行いました:
願わくば、願わくば。
この直後、SCP-001-SAGEは黒い固形物質へと変化し、4秒後に消失しました。SCP-001による消滅と確認されました。Neutralizedへの再分類は検討中です。
この件について相談されると、SCB内部の管理者は、もはや指示を出すことはないと回答し、SCBを次の機会に実験記憶モジュールに装填することのみを指示しました。このプロジェクトに関する情報は添付ファイルにて閲覧可能です。