異常な商品
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そのエレベーターには4人の男がいた。2人はだらしなくスーツを着て端に立っている筋骨たくましい男であり、彼らは正面の壁をじっと見ていた。左のガードの隣には灰色の口ひげを生やした中年のイギリス人男性がいた。彼は不格好に笑っていた、おそらくは若い頃の脳腫瘍のせいであり、彼の口ひげの片方は反対側より明らかに位置が高かった。彼は白い月並みなスーツを着て、胸に"マーシャル、カーターアンドダーク有限責任株式会社"と飾られたものを身につけていた。最後の男はそう見えるにも関わらず笑っていなかった。なぜなら彼の顔は上下がさかさまだからだ。

「私たちは今日とても興味深いオプションを貴方に持ってきました、マニー、そうですね?」イギリス人の男が聞いた。

「あんたが呼びつけたなら、そうだ、」逆さま顔の男は答えた。これは馬鹿げたあだ名だったが、彼はイギリス人の男、バーゲスに、以前2回会っていた(フラーの付き添いであったが)。さらに、マニーと呼ばれることは過剰に業務的な会話の空気を和らげるのに有効であった。

「とてもいいですね。ついてきてください。」エレベーターのドアが開くとイギリス人の男は会話を終わらせた。マニーは彼の後を大股で歩き輝く廊下を通ってタペストリーが飾られた大きな赤い部屋に入った。3体の怪物が、部屋の中程で窮屈な鉄の檻に入っていた。1つは、重度の幼形成熟の年老いたアボリジニーの女性で、マニーが戸口から入ってきたときから檻のバーに顔を押しつけて彼を飢えた目つきで追いかけていた。他の檻には15歳以下だろう少年が、全身を暗いピンクの物質の薄い層に覆わせていた。3番目の檻は明滅する炎で満ちており逆さま顔の男はそれが形を変えたのを見たと断言することができた。

「わかった。こいつらは何が出来るんだ?」彼は少し思案した。「この女、」マニーが言った。「こいつの才能が見たい。」

「はい、かしこまりました、私たちは彼女を脅威のオーストラリア人と呼んでいます。彼女は自分の重心を両足や体の中心に移すことができ、それが信じられないようなアクロバティックの芸当を彼女が成し遂げるのを可能にしています。私たちは彼女がどうやってそれをやっているのかわかっていませんが、ですがそれが再現できるなら、私たちは気にしません。」バーゲスは行商人の見せ物のように若い男のエネルギーで話した。彼は不気味サーカスの人々がどのような素晴らしい弁舌にも心を動かされないだろうと知っていたにも関わらず。結局、彼らは彼がしたように生活のために物を売っているのだから。

「見られるかな?」逆さま顔の男が尋ねた。彼が話す度に、彼の眉は首の近くまでぴくぴく動いた。

「もちろん!」バーゲスが言った。「アナ、檻を投げて。」

何も起こらなかった。「アナ、檻を投げて。」彼は再び言った。まだ何も起こらない。バーゲズは歩み寄り彼女の顔の隣のバーを蹴った。悲鳴を上げ、彼女は箱の天井と側面に張り付くと空気中に箱を投げつけた。それが床に固定された太い鉄の鎖によって引っ張られるまで。彼女はバーの中からマニーを再び見つめた。

「バーゲスさん、」マニーは憤慨して言った。「この女性は長くは生きられない。このちゃちな曲芸をやる度に彼女の命は削れるし、彼女はすでに老いている。これを買ったとして、4回以上ショーに出させることはできないだろう。多くて5回だ。」

「より念入りに吟味されたほうがおそらくよろしいのでは?彼女は見た目よりは健康ですよ。」バーゲスが提案した。

「いや、彼女は違う。次は何だ?」マニーは尋ねた。真ん中の檻で、クリーチャーは静かに呻いた。

「これは貴方がフリークとして興味を持てるような奇妙な性質を有していると我々は考えています。これはつるつるしたサケ色の、いささか甘い匂いのする物質を分泌します。これは以前のものよりも若く、貴方の目的により適しているはずです。」

檻の中の少年は彼らを見上げようとも認めようともしなかった。それは再び強く呻き、それから大きな泣き声を上げた。

「ふむ、これは無邪気なのです。」バーゲスはポケットの中で小さな鍵を探り、檻の後ろに回って鍵を開けた。多大な努力の結果、彼は檻を回転させドアをマニーへと向け、檻を傾かせた。するとピンクのべとついた波が床を、映画スターの正面にレッドカーペットが広がるように浸食した。中のクリーチャーはぬかるみの中のいかだのように滑り出てあわてふためいていた。それは自分の脚につまづき、自分の分泌物に滑り、すぐさまひっくり返った。それの視線はゆっくりとマニーの視線とぶつかった。まるでそれが必死に新しい環境に注意を払っているかのように。

マニーはそれと話すために下を向き、彼の額がクリーチャーの真上に来た。それは訴えかけるように彼を見上げた。何十秒か後、マニーは再び立ち上がってバーゲスに向き直った。「これはやめておく。最後のオプションを見たい、あんたが気にしないなら。」

「もちろんです、サー。」バーゲスが言った。彼はゆっくりと3番目の檻へ向かって広がっていく分泌物を避けるために注意深く横へどいた。「これは少し不運です。気の毒な事に、悪い相手との賭けに負けたのですよ。彼の頭部全体が永久に炎に飲み込まれているのです。おそらくこれはあなたの興味を引きますね、マニー?」

「実際のところ、ほとんど感覚は無いんだがね、」フリークが口を挟んだ。それはバーゲスと同じくらい強いロンドン訛りがあった。

マニーは彼の頬が裂けるほど大きな笑みを浮かべ炎の近くまで体をかがめた。「お前はイギリス人か?」

「はいサー、」それは答えた。

「仕事は好きか?」彼は尋ねた。「三食与えられ服も着られる。」

「とっても大好きだと思います、サー」

「パーフェクト!」そう言って、マニーは立ち上がりバーゲスまで歩いていった。「あんたが予定した実行日はいつだ?」彼は尋ねた。

「私たちのパトロンは次の木曜日を望んでいます。」

「グレート。俺たちは彼らにイベントの日にどこでそれをやるのか知らせてやる。」マニーは手を突きだした。「あんたとまた仕事が出来て光栄だよ、バーゲスさん。」

「同様です、」バーゲスは答えた。彼はマニーと握手して鍵を渡した。マニーはそのフリークの檻を開けてそれが足をのばしている間に頷いた。「付き添いましょうか?」バーゲスが尋ねた。

「結構だ、道はわかってる。マーシャルによろしく言っておいてくれ。」マニーは向きを変えた。「ついてこい、」彼は炎の男に命令した。2人はエレベーターに向かって廊下を歩いた。ガードの1人ににらみつけられた後、彼らは階段を使って降りることに決めた。とうとう、炎の顔の男が話しかけた。

「ありがとう、」彼は静かに言った。

逆さま顔の男は再び笑った。「ほとんどの人間はそう簡単には俺と来てくれない。いつもはそいつらを説得したり、愛、金、名声を差し出す。お前たちすべてが望んでいたのは檻から出ることだ。」マニーはため息をついた。

「俺は何人かは単純だと思うぜ、」炎の顔の男は答えた。

「何人かはな。」

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