クラインバーグに自由を

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redditのサブレディット「FoundationWatch」上のスレッド「サウスダコタにあるタイムループの町って聞いたことあるか?」への投稿

こいつは不気味な話だ。クラインバーグっていう小さな町があるらしい。人口2300人で、1920年代から抜け出せないんだ。1920年から1928年が何度も何度も繰り返されてる。やつらはSCP-1309って呼んでる。
RealTwilightZone

なんてこった。ひどい話だね。出口のない8年間の人生を繰り返すなんて想像できない……
idk6942069

いや、それが一番不思議なとこなんだよ。その人たちは生まれて、生きて、子供を産んで、死んでいく……同じ8年の中で。だから60歳の男が1922年に生まれたって話すんだ。
RealTwilightZone

そりゃもっとひでえ
FucktheFoundation

ここは財団が彼らをそこに囲っていることを知る場ってことか?
4thwalldestroyed1

明らかにね。この人たちのために何かしなきゃ
idk6942069

ええと、ニューヨークの反財団抗議デモを知ってるか?
RealTwilightZone

うん……?
FuckTheFoundation


反財団デモ隊が州議会議事堂に降り立つ
The Capitol Journal - 2018年1月10日

ピエール - サウスダコタの冬の寒さと雨に耐えながら、約100人の抗議者が昨日、州議会議事堂の外に集まり、デューイ郡クラインバーグ(SCP-1309)の影響を受けた市民をSCP財団の管轄から解放するための行動を立法府に要求した。抗議は、ウェブサイト「reddit」の反財団グループ「FoundationWatch」によって組織されたと思われており、最大の注目を集めるよう新立法議会の初日に行われた。

スローガンを叫び、粗野なものから高貴なものまで(最も人気のあるものは「F**k the Foundation」で、「Free Kleinberg」が僅差の2位)プラカードを掲げ、抗議者たちはサウスダコタ州の議員たちの善意に訴えた。

「この人たちは1920年代に囚われているが、まだ権利を持っています」と、ある抗議者は言った。「どちらかといえば、彼らが少数派だからこそ、彼らの権利が守られていることを確認することがより重要なんです。時間の少数派です!」


「くたばれ!」

「セルベス博士、気をつけてください-」

「私は一体何をすればいいんだ、ローラ? 彼らはあの町を離れられないんだぞ! redditの馬鹿どもはやつらが抗議してるアノマリーについて何にも知らないんだよ」

「存じ上げております、サー。腹立たしい事です」

「虚構が壊れてからの生活はイライラしっぱなしだ。それで、悪い知らせを持ってきたのか、それとも───」

「博士、頼まれていた報告書を書き上げました。簡潔に言えば、SCP-1309を準アクセス可能な公開SCPにすることを推奨するものです」

「悪い知らせだな? サイト-24が彼らの一挙手一投足を追いかける間に、記者が大勢クラインバーグを詮索している……」

「理想的ではないということには同意いたしますが、妥協案であり、現時点では最良の解決策であると思われます」

「いいだろう。こんなことを言うとは思ってもみなかったが、北朝鮮が恋しいな」


アメリア・ウォンはインタビュー相手がタバコに火をつけているのを見ても、苦笑しないように最善を尽くしていた。財団がレポーターをSCP-1309に入れたとき、彼女が考えもしなかったことの一つは、この「1920年代に閉じ込められた町」がまだ屋内喫煙を禁止していないということだった。

"もう1度確認してもいいですか?" 彼女は憤慨を声に漏らさないように最善を尽くして尋ねた。

男はしかめっ面をして、深く息を吸った。「いいですか、奥さん、審判の日まで話をしても構いませんよ、あなたが私にお金を払い続けてくれて、食事代を出してくれる限りは。でも、何の意味があるのかわからない」

「我慢してください、いいですか?」神様、私はこのマインドファックの報道よりも、気味の悪い悪夢のほうがいいかもしれません……「それで、あなたの名前はマーティン・スミス、合っていますか?」

「ええ、そうです。そして私は1923年10月3日に生まれました、前回の質問の繰り返しになるでしょうから」

「それは2年前です」

「その通りです。今日は1925年8月31日です」

彼女はため息をついて、麦芽入りのミルクセーキをもう一口飲んだ。確実に、煙にもかかわらず美味だった。昔のほうが本当においしかった……今となっては。「そしてあなたは35歳、ですね?」

「はい」マーティンは目を丸くした。「ほら、財団の人たちはすでにタイムループのことを指摘しています。何がそんなに問題なのか本当にわからない」

「あなたは……」彼女は目に見えて言葉を探すのに苦労していた。「スミスさん、我々の現実への認識が変わってからほんの数年しか経っていません。財団には正常性を維持する責任がありましたが、彼らは失敗しました。今や世界はクラインバーグの窮状を知っていて───」

「窮状?」マーティンは少し苛立って口をはさんだ。「町の外の人たちにはわからないでしょうね」

「わからないことなんてありますか? あなたはここに囚われている! あなたの『休暇』は存在しないんです!」

「それで、私たちが怒り狂うべき理由を教えてもらえますか?」彼は煙草の灰を落とし、彼女に向けた。「文化人が持ってきた映画です。マトリックスを見たことは?」

彼女は固まった。予想外のことだった。「10代のときに。なぜです?」

「私たちの町によく合っていると思うので、気に入っています。クラインバーグは世界の他の部分と同じ時間にないかもしれませんが、我々にとっては十分に現実なんです。そして私はこの町を愛しています。この時代でもあなたたちの時代でも、他の場所に住むことはないでしょう。だから、誰が気にするんでしょう、私たちが『異常存在』か、それとも何かなんて? この小さなシミュレーションはうまくいってるし、救助は必要ありません」


サイト-24の主要SCP-1309観察室の中で、セルべス博士は温かく微笑んだ。ローラの予感は正しかった。

「彼女はどこにも行っていないな?」彼はローラにというよりもむしろ自分自身に訊ねた。

「はい」それでも彼女は答えた。

「彼女がスミス氏の発言を正確に報道すれば───いや、我々が認可した記者全員がそうすれば───抗議者どもは落ち着くだろう。あの町の誰も『現実』世界に関わりたくないんだ」

「そして、彼らを責めることは難しいことです」ローラは付け加えた。「この世界はひどく混乱していて、彼らはそこからの素敵な猶予を得ているのです。たとえ彼らが本当に離れることができたとしても、おそらく彼らはそうしないでしょう。『壊れていないものを直すな』という言葉が頭に浮かんできます」

セルベスの表情がまた険しくなった。「彼女が壊れていると気づかない限り───」

「気づかないでしょう」

ローラの言う通りで、ウォン氏が数時間前に彼女がいたダイナーに充満していた大麻の匂いに気付いたという証拠はなかった。以前に文書化されていたように、SCP-1309は不定期に1920年代の規範から逸脱しており、「未来」の世界が明らかになると、その逸脱は加速したように見えた。最新の逸脱は、2014年の地方選挙で可決されたレクリエーション用大麻の合法化であり、5年後の現在、3つの薬局を擁して好調に推移している。

3つの薬局……反対派もいない。セルベスが気づくまでに時間がかかったが、期待されていた以前の規範への『回帰 』は、現地の人々の間ではまだ始まっていなかった。それは、SCP-1309が時間的に影響を受けた文化的な異常を恒久的に取り入れているという不穏な仮説を生み出した。

「ああ」彼は溜息を吐いた。「我々はできる限りのことをしている。財団は決して公の場で活動することを意図してはいないが……」

「しかし安全は公開の下続きますSafety Continues in Public」ローラは財団の新たなモットーで答えた。

「ああ、そうだ」彼は同意した。「ああ、そうだ」

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