この航海情報記録装置の音声記録は、本件船舶事故に関して、特異的脅威の予備評価規則に基づき、予備評価審議会により、特異的脅威によって発生した被害の調査、および脅威の暫定的評価ならびに特別収容プロトコル制定の要否を問うことを目的として収集されたものである。
事件概要
船舶概要
船種船名 フェリー さざなみⅡ(長距離カーフェリー)
総トン数 14,458トン
甲板概要
A甲板 操舵室 船員区画
B甲板 客室区画
C甲板 客室区画 共用スペース
D甲板 車輛甲板 船尾ランプ扉
E甲板 車輛甲板
事故状況
事故種類 沈没
発生日時 2015年8月9日 15時50分~16時00分ごろ
発生場所 能登半島沖
フェリーさざなみⅡは、船長ほか乗組員34人が乗り組み、乗客284人を乗せ、車輛などを積載して能登半島沖を南西進中、2015年8月9日15時50分~16時00分ごろ、異常な浸水によって沈没したと推定される。
この事故により、乗員乗客あわせて318人が行方不明となった。
案件規模が「個別大規模」と指定されたため、広域Aクラス記憶処理が行われた。
音声記録
時刻 | 内容 |
---|---|
15:10:35 | (船橋内に警報音。浸水警報の音であることが確認されている) |
10:36 | 浸水警報、どこ、デルタ(D甲板)、えっ、波受けたの、まさか。(当日の時間帯、周辺海域では荒天は認められていない) |
10:38 | エコー(E甲板)には出てない、エコーとデルタに内線して。(E甲板はD甲板の直下となる) |
10:50 | エコーは異常なし、誤作動じゃないか、デルタは出ないのか。 |
10:53 | デルタが出ません。 |
12:15 | (船室の扉の開閉音) |
12:17 | デルタの天井まで、水が来てます、浸水してます。 |
12:18 | えっ。 |
12:20 | 会社(本船の運航会社)にも連絡して。 |
12:22 | エコーを呼び出せ、デルタだけとかあんのか。 |
12:23 | ありえんだろ。 |
12:25 | エコー出ません。 |
15:00 | (衝撃音) |
15:03 | (船橋内に警報音) |
16:05 | 機関室に浸水、機関止まります。 |
17:10 | 乗務員は乗客を集合させろ。 |
17:25 | (船橋内に警報音) |
17:27 | えっ。 |
17;30 | ブラボー(B甲板)に浸水、浸水が、ブラボーでか、チャーリー(C甲板)は。 |
18:05 | (内線の呼出し音) |
18:07 | はい、ブリッジ、チャーリーか、浸水、上から、パイプが、なんだ。 |
18:18 | ゴボゴボいってて、なんも聞こえん。 |
18:24 | もしもし、チャーリー、チャーリー、どうした、答えろ。 |
20:30 | 外から、通路降りて、下のデッキには行けんか。 |
24:10 | 船長、船首が波かぶってる、あかん。 |
24:10~30:00 | (騒然としており内容が聞き取れない) |
30:10 | メーデー発信、さっきのタンカーにも救助要請。(14:30:00ごろに付近を航過した第二東祥丸と推定される) |
30:21 | (船室の扉の開閉音) |
30:23 | 水が来てます、ブラボーから、入ってきて、人が溺れて。 |
30:30 | ブラボー、チャーリー、デルタ、エコー、誰かいないか、応答しろ。 |
30:32 | 船内放送、つないで。 |
30:35 | (避難の呼びかけが行われていると考えられるが、反響のため不明瞭) |
42:20 | (「ガリガリ」という音) |
42:25 | 何の音だ、おい。 |
42:32 | 床からで、水、何か削るような。 |
43:40 | (「ガリガリ」という音、15:42:20時点より明瞭になっている) |
44:03 | なんだよ、穴、なんだってこんな。 |
44:05 | (悲鳴) |
44:06 | (水の流入音) |
44:06~48:30 | (騒然としており内容が聞き取れない) |
48:31 | 何かいる、何だ。 |
48:45 | 何だ、えっ。 |
15:49:01 | (記録終了、海水によって機器が水没したためと推定される) |
16:40:00ごろ、救助のため引き返してきた第二東祥丸が付近を捜索したが、さざなみⅡの船体および遭難者は発見されなかった。
沈没したさざなみⅡの船体は、2015年9月24日に発見された。本音声記録は、潜水調査で回収された記録媒体より復元された。
潜水士とROVによる調査で、船内に、平均直径3メートルの、石灰質で構成された筒状構造物が確認された。この筒状構造物は、さざなみⅡの設計上の設備ではないと認められている。
筒状構造物は、バラストタンクを始点として、蛇行しながら各甲板を貫通し、船底中央から海底へ貫入していることが確認されている。筒状構造物の内部には、極めて強い水噴流が発生しており、探査器材の投入は困難である。
原資料保管場所
サイト-8177資料保管庫
貸出承認者
種子島 巨爆