幽霊の標識
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よろしくお願いします、私は黒の女王・ダチュラ。

僕のコールサインはネルシャツパイナポー。

皆さんこんばんは! TELETOKYO所属黒の女王の蒲田とけいです!

オレは黒の女王のぉおぉ標識ぃいいぃ。ヨロシクぅうう。


ベースライン

幽霊の標識は、知覚、自律思考、そして発話が可能な、「道を譲れ」という意味の言葉か記号が書かれた物体です。ほとんどの宇宙では、アメリカ合衆国の「交通制御機器類統一の手引き(Manual on Uniform Traffic Control Devices)」によって標準化されている、赤い三角形の中に「YIELD」という英単語が書いてある規制標識の形態を取っています。ルーツがUSAでないか、そもそもその宇宙にUSAが存在しなかったりする場合は、ダチュラの言う通りではない。しかし逆に、ブラジルにあっても韓国にあっても宇宙空間にあっても“図書館”にあっても「YIELD」であることもあれば、USAにあってそうでないこともある。

自分を幽霊であると主張することが多いけれど、無軌道に自称を変える。「幽霊免許を落としたから幽霊じゃなくなった」、「オレは今はアザラシだ」、「サンカの女だったけどサンカの女免許を落としたからサンカの女じゃなくなった」、など。ともあれ我々はこの標識を、便宜上「幽霊の標識」と呼んでいる。少なくともこのオレはあぁあ、今はぁ黒の女王のおぉおお標識だあぁぁああ! 率直に言って、標識は常に“ナンセンス”に振る舞ってる……ように見える。当人がどういうつもりなのかは別として。

必須条件

  • ええと……よくわかってない。っていうかどの宇宙にもいるみたいなんだよね。
  • 以前の私たちは「標識は文字文化と亡霊が存在する場所でなければ存在できないのではないか」という仮説を立てていたのですが……ああ、後述します。
  • 宇宙に免許のぉおお概念があぁることだぁあ。「免許の概念」の定義って何……? 全き不明です。標識はどう思いますか? それはぁあ、免許を取る側の決めることじゃあなぁあい! ん、まあ、そうかもしれない。

実用性

いい話し相手になるよ。暇がかなり潰せる。これは非常に重要な職務ですよ標識。この幾千万の平行宇宙の中にあっても、孤独と退屈ほど恐ろしいものはそう多くありません。全標識を代表してぇえ、誇りにぃい、思う。他には、不可解な言動で追手の撹乱ができそうですね。個人的には集めたり増やしたりして大勢並べてみたいところですが……コストが掛かりすぎると思います。

あと忘れがちだけど、標識たちがどの宇宙でも喋ることしかできないわけじゃないことは特筆すべきだね。その性格が面白がられた、敵の意表を突かせたい、などの理由から、幽霊の標識実例に後から特性を付与されることがある。対して、幽霊の標識らのパーソナリティはどの宇宙でも共通している。他者と理由もなく敵対することはない。「バカなノリ」に見えるが、命令をこなせないわけではない。従って交渉によって、パートナーやアーティファクトとしての利用価値が見込める。もちろん、私たちが標識に対するイニシアティヴを取れればの話だけど。

傷つきやすさ

「YIELD」が書いてある部位が物質的に破壊されたことで沈黙した例があるため、その部位が核なのではないかと分析できる。しかしその後、該当部位が物質的に修復されることで回復したことから、幽霊の標識らに完全な死はないとも考えられる。該当部位だけで切り離されて移動させられる分には、実例が不服を表明することはあれど、少なくとも致命的な問題はないらしい。幽霊は死ななぁああぁい! オレはぁ黒の女王だが、やっぱ死ななぁああぁあぁあい!! うおぉおおぉおお!!


実例: タイムライン A-133

「YIELD」の標識であり、メリーメーカー……ゲーマーズ・アゲインスト・ウィードのマスコット的存在の一つです。Tumblrで毎週更新のブログもやってます。ただこの宇宙では、メンバーの2、3人が彼らとしての活動を引退する際に能力を標識に移譲したことで、標識はミームに関するかなり強くて広範な能力を持つことになり、彼ららしい活動に関わるようにもなりました。私は一応、この宇宙の彼らとの個人的付き合いがあるのですが、標識に力を借りられるかどうかは状況と条件次第でしょう。まあ、私に連絡してください。

実例: タイムライン A-329

「YIELD」の標識であり、財団によって収容されています。2015年の時点では、ジェームス博士という人物によって収容と実験のプロジェクトが監督されているようでしたが、彼は標識の言動に困惑しているだけで、標識の利用価値などについては考えていませんでした。そして、この宇宙での財団の性質がオーソドックスなそれである以上、彼らによって標識の有効な利用が実行されることはまずないでしょう。標識からすると財団暮らしは退屈でしょうから、話し相手にしてもいいし盗み出してもいいでしょうが、たぶん費用対効果が釣り合いませんね。

実例: タイムライン A-589

「YIELD」の標識であり、火星の衛星軌道上を漂っていた。オォオオォケェエエェイ、アイツはぁああ、オレのダチ公だぁあぁ。うん、黒の女王の標識とこの宇宙における幽霊の標識実例との関係性については後述する。この宇宙の実例がいつ頃からその位置にいたのかはわからないが、僕がA-589を訪れた時にはちょうど非超常な学術機関が実例を捕捉し、マスコミがそれを報道し、小さくないパニックが発生していた時だった。正常性維持組織へのコンタクトはできなかったが、恐らく隠蔽に手酷く失敗したか、この実例の存在を察知できなかったものと思う。実験的に標識同士の対面を試みようとすると、黒の女王の標識が実例からのテレパシーを受信した。アイツはぁああ、一人で宇宙空間を漂っていてぇえぇ、寂しかぁあぁったんだぁあぁ。だからぁあぁ、宇宙の全ての標識にテレパシィイイィを送ることにしたぁあぁ。オレはアイツの最初の友達になったんだがぁああ、次にこの宇宙に来た時には……もうアイツはぁあぁいなかったぁあんだぁああぁ! うおぉおおぉおぉ!! ……再々訪時、実例は見つからなかったばかりか、実例の存在に関する全ての痕跡と記録は消失していた。財団の介入が明らかだが詳細は不明。OK、私も近々探りを入れてみましょう。友人の友人を取り戻すために。

実例: タイムライン B-080

「YIELD」の標識。世界オカルト連合に調査されたけど、やっぱり困惑させて、財団に引き渡された……で合ってるっけ、ダチュラ? 合ってます。経緯は情報が曖昧なんですが、意味がわからないものでも取り敢えず貯め込む財団と違って、世界オカルト連合は標識にさほど興味を惹かれなかったのでしょうね。そのあとはA-329と同じです。そして、私ととけいの仮説では、この流れの宇宙が一番多いはずです。

実例: タイムライン B-876

この宇宙における標識は、アメリカのフィラデルフィアに在住する痩せ型の青年だった。性格は他の宇宙の標識とほとんど変わらないけど、社会生活を送れる程度の常識はある。彼は財団所属のエウクレイデスで、専用コスチュームに着替えて「YIELD」の標識を模った仮面を被ることで、周囲に音源不明の不協和音や無数の引っかき傷を発生させる「死霊の痕」Specters' Signsの能力を得ることができる。追補 - B-876の地球全体は財団パタフィジックス部門によって強力に“平坦化”されている。その直接的な理由は不明。ここでは殆どの知性ある異常存在は「エウクレイデス」か「ケテル」と呼ばれ、“超人”や“怪人”として振る舞っている。おっと、ありがとうパイン。興味深く思うだろうけど、この宇宙が気になるだけなら私から説明してあげられる。もし「スペクターズ・サイン」に用があるなら、私なら短い間平坦化に抵抗することもできる。色んなところで話してることだけど、有効な耐性がなければB-876には行かないで。現実平坦化はとても対処が難しい力で、迂闊に近付くべきじゃない。

実例: タイムライン C-302

このカタログで語るべき幽霊の標識とは直接の関係はない可能性もあるが、C-302で——この宇宙に免許の概念があるにも関わらず——幽霊の標識実例が未だ発見されていないことも考慮し、念のため記す。西暦2010~2016年にかけての日本で、「不吉な声を発した“その他の危険”の標識」という形式の怪奇現象の目撃談が頻発していた。僕が認識できているだけで11人の人物が目撃者として確認されており、その全ての目撃例は長野、埼玉、滋賀などの内陸県で、山中で起こっている。いずれの目撃談においても標識は意味ある言語を発してはいないため、個体数増加の代わりに知性を失っているという解釈もできる。知性を失ったぁあぁ標識ぃいいぃはぁ……こええぇええぇえぇ……。いや、殆どの標識が知性を持っていないからこそきみが特例なんだけど。もっとも、それらの怪談の信憑性については不明。C-302在住の蛇の手構成員、蒐集院、財団他、十分な調査能力を持つオカルト関連組織はこれを確認できていないか、そもそも興味を惹かれていないらしい。なお、「“その他の危険”の標識の中には、幽霊の存在を警告するために国が設置するものがある」というのは、日本では有名な都市伝説の一つだ。ふーむ。この“その他の危険”が本当にこの宇宙における「幽霊の標識」だとすれば興味深い例ですが……標識は大抵太陽系のどこにいるかわかりませんから、「幽霊の標識がまだ見つかっていない」はあまり強い論拠ではなさそうですね。C-302に行く機会があったら、蒐集院か元奇譚会界隈辺りを伝って調査してみますか。

実例: タイムライン D-337

特例的なタイムラインが続きますが、D-337での標識も人型存在です。“帝国”からの漂流者で、見たところ10代女性の姿ですが、頭部が「讓路」の標識に置き換えられています(なお、「讓路」は中国国内で使用されている標識で、「YIELD」と概ね同じ意味です)。彼女自身の目的は不明ですが、私がウランバートルで出会った時にはカオス・インサージェンシーの、ある程度上級に見える工作員でした。……彼女が口を開かなければ(おっと、これは言葉の綾です。標識に口はありませんね)、私は彼女が幽霊の——もとい、混沌の標識だとは思わなかったでしょうね。私はインサージェンシーとの取引の時に少し話しただけですが、恐らく何か追加された能力があるものと思います。接触の際は気をつけて。

実例: タイムライン E-565

さあ標識、あなたの番ですよ。オレは幽霊のぉぉお標識ぃいいだぁああった頃ぉおおおぉ、ミズーリ州ぅうのコロンビアぁああぁにいたぁあああぁあ! オレはぁあぁYIELDって書いてある標識でぇえ、アメリカは10年前からトーマス・ホアンってやつだらけになっててぇえぇ、つまり、チャールズぅううぅぅう! 彼は最後の男ぉおぉおにして、孤独なオレの話し相手ぇえ! そしてぇえぇ長い戦いの中でぇオレのになった人だぁああぁ! えっ、あっ、——パパ? いや、え? ……なるほど。彼はぁああぁ家族を失ってぇぇえ放浪している最中でぇえオレと出会い、オレのアタマを切り取ってぇええぇ正気を保つための話し相手とすることにしたぁあ。チャールズはトーマス・ホアンが人間に感染する菌類なのだぁということを突き止めたぁあぁが、不運にもトーマス・ホアン菌に感染してぇえぇトーマス・ホアンになりつつあったぁああぁ。しかし……ある時サイガってやつが現れて、治療のためだと言って彼を連れてったぁあぁ……オレを置いてぇえええ! いや、じょ、情報量が多い! 犀賀?! その後オレは一人その宇宙に残されていたぁあが、ダチュラが現れてオレの話を聞いてくれたんだぁあ! そう、私は犀賀のことを調べるためにこの宇宙を訪れ、偶然標識に出会ったのです。犀賀六巳は他の複数の宇宙の犠牲としてE-565を選び、トーマス・ホアン菌の脅威を、この宇宙へ押し付けたようです。そして恐らく、E-565唯一の生存者であるチャールズ・オグデン・ギアーズを、共同研究者として強引にリクルートした……。私は……同じルーツを持つ者として、標識を放っておくことはできませんでした。……とけい、私が標識の処遇にこだわる理由が、これでわかってもらえますか?まあ……うん、“これまでの経緯”はわかったよ。あとは黒の女王の標識の有用性もここに書いておいてね。ええ、“黒の女王の標識”の有用性は、E-565におけるチャールズ・オグデン・ギアーズとともに戦いの中で得た広範なサバイバル知識と、他のタイムラインの標識には見られないほど勇敢で仲間想いである点です。全標識を代表してぇえ、再び誇りにぃい、思う。

実例: タイムライン F-668

えーと……この宇宙か。F-668は直近で私が訪れた宇宙で、ここもまた犀賀六巳が“使った”と覚しいのですが……。オォオオォラァアアァイ、アイツもぉおぉ、オレのダチ公だぁあぁ。この宇宙における標識は、えー、地球そのものです。ロシアの大地に200km大の「ផ្តល់វិធី」が書かれていて、赤道付近から明らかに他宇宙における標識と同質のパーソナリティで発話します。且つ……この標識の上に、識字能力を持つ存在の痕跡は一切見られません。「オレはぁあぁあ、惑星の標識ぃいぃいいぃ!」ってぇええ言ってたぁあぁあなぁあ。この実例についての見解は? 「標識は文字文化と亡霊が存在する場所でなければ存在できない」が否定されたので、謎が深まった形です。免許の概念はぁあぁ、間違いなくあったぁあぁ! ああ……やはり標識たちの存在は「免許の概念」のみを必須条件とする説を採用するしかないのか……? しかしそれなら、免許とは……概念とは、一体……? いやあ、まあ、最初から謎しかないのが標識だったじゃん。好きなだけ調べたら? 私もできるだけ付き合うよ、ダチュラの友人としてね。

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