御器所の提言
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財団81管区理事会通知

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財団81管区設立宣言を受け、本日「JP」の符号を附した異常物品識別番号が解放された。これを受け、旧蒐集院が保有していた蒐集物の一部が当該番号のいずれかに暫定的に割り当てられた。

当報告書の示すSCP-001-JPは、蒐集物覚書帳目録第〇〇〇一番・"国津神"登録の為に設定された番号である。

しかしながら蒐集物第〇〇〇一番は旧蒐集院における特級晦蔵対象に指定されており、資料の殆どは既に破棄され、現存する文書及び物的痕跡は極めて寡少である。

当文書は蒐集物第〇〇〇一番の安定封存の為、旧蒐集院の晦蔵手順に従って作成された報告書である。

内容には虚偽が含まれることに留意すること。

賀茂相忌
財団81管区1号理事 "獅子"
昭和20年12月31日





5/001-JP LEVEL 5/001-JP
CLASSIFIED
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Item #: SCP-001-JP
Safe

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LoI-001-JP-1(葛城一言主神社、奈良県御所市)

特別収容プロトコル: SCP-001-JPは低セキュリティクリアランスレベル保持職員に対しては全国の神社で祭祀されている一般的な神格の一種として公表され、ミーム部門、神学部門、秘儀術部門、神話・民俗学部門、戦術神学部門、対抗概念部門、応用形而上学部門、叡智圏保護課が保有するクラスI神格存在に対する標準的な収容体制が構築されます。一方でセキュリティクリアランスレベル5/001-JPを有する職員が上記各部門を管掌し、当該神格がSCP-001-JPに指定されているという事実の秘匿と並行して収容継続の監視が行われます。印刷物及びオンライン上の情報の内容は財団運営botによって監視され、財団が規定するSCP-001-JPの背景情報から逸脱する内容を発見した場合は担当職員に通知された後、審議の上削除または修正が実施されます。SCP-001-JPを祭祀している神社境内はLoI-001-JPに指定され、監視体制が構築されます。

SCP-001-JPに関する各種調査の結果、蒐集院によって行われた一連の施策によってSCP-001-JPの神格的権能・霊的威力・形而上学的影響は他の神格存在と比較して十分に低減されたと判断されています。これを受け、現在SCP-001-JPはSafeに分類されています。

説明: SCP-001-JPは神格「一言主神ひとことぬしのかみ」です。SCP-001-JPは記紀1の神統譜に登場せず、元は大和葛城山2周辺の土着神格であり、葛城氏及び賀茂氏によって奉斎されていました。SCP-001-JPは言霊信仰・託宣の神であると解釈され、一般的に「悪事も一言、善言も一言で言い放つ神3」、「一言であれば何でも願いを聞く神」として認識されています。

SCP-001-JPの性質や神威・神徳の内容は古代から蒐集院の削実定偽政策4の対象とされ、SCP-001-JPに関する口伝や記録等の内容に対する斎蔵いみくら5及び蒐集院による徹底的な再編集が行われていました。この施策はSCP-001-JPの神格規模の弱体化を企図したものであると考えられており、これによる叡智圏ノウアスフィア上の概念集積体の変容がSCP-001-JPの性質に変化を与えた結果、SCP-001-JPの本来の神格的性質は現在ほぼ完全に喪失していると考えられています。また現存記録の不足から、SCP-001-JPの本来の性質の解明は困難であると判断されています。

SCP-001-JPに対する記述の変化、及びそれによるSCP-001-JPの性質の改変に関する考察を以下に抜粋して示します。

一般的に認知されている記述内容 財団による考察
『古事記6』での記述。雄略天皇が葛城山に登った際、SCP-001-JPは天皇と同じ姿で現れた。雄略天皇が名を問うと「吾は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神7。葛城の一言主の大神なり」と答えた。天皇は恐縮し、「神がウツシオミ(この世の人の姿)でおいでとは思いませんでした」と言った。その後天皇は武具や衣服を献上し、SCP-001-JPは天皇を長谷の山口まで見送った。 SCP-001-JPは天皇を模倣し、天皇と会話することができる神格であることが示されている。また、天皇はSCP-001-JPに対して畏怖の態度を示している。SCP-001-JPに関する最古の文献だが、当該イメージは既に削実定偽によって再編集されたものであると考えられている。
『日本書紀8』での記述。上項とほぼ同様の内容だが、遭遇後のSCP-001-JPに対する献上の場面を伝えていない。SCP-001-JPと雄略天皇は共に猟をし、来目川までSCP-001-JPが天皇を送ったことによって、百姓は雄略天皇を「有徳天皇」と称えた。 上項と比較してSCP-001-JPの地位が天皇に対して大きく接近しており、ほぼ対等なものになっている。
『続日本紀9』での記述。天平宝字8 (764) 年に伝わる話によると、葛城山の「高鴨神」は雄略天皇と狩りで争い邪魔をしたので、天皇はその老人を土佐の国に流罪とした。 「高鴨神」はSCP-001-JPであると考えられる。SCP-001-JPは天皇の姿を模倣せず、「老人」として扱われている。また、天皇が神格であるSCP-001-JPを流罪としていることから、SCP-001-JPの神威は大きく減衰していると考えられる。
『日本霊異記10』での記述。文武天皇の御世、えん優婆塞うばそく11がSCP-001-JPを含めた多くの鬼神を使役して大和の金の峰と葛木の峰との間に橋を架けさせようとした。これを嫌ったSCP-001-JPは人に乗り移って「役の優婆塞が謀反を起こして天皇を滅ぼそうとしている」と讒奏し、結果的に役の優婆塞は伊豆に流された(後に許された)。これによってSCP-001-JPは役の優婆塞に呪縛され、今の世になっても解かれていない。 役小角えんのおづぬに対する讒言が成功する点にかろうじて神格性質の片鱗が認められるものの、SCP-001-JPは役小角に使役される無数の鬼神のひとつであるとされ、さらなる神威の毀損が認められる。また当説話の類話は『三宝絵詞12』、『今昔物語集13』、『扶桑略記14』等の後世の文献に大量に発見され、役小角によって呪縛されるSCP-001-JPのイメージがこの時期には既に確立していることが示唆される。
『枕草子15』での記述。SCP-001-JPは「姿の醜さを恥じて昼には姿を現さない神」であると認識されている。『笈の小文16』では上記の伝説を受け、「なお見たし花に明行あけゆく神の顔」と詠まれている。 さらに時代が下り、SCP-001-JPは「姿が醜悪である」という性質が確立した。これによって、SCP-001-JPの本来の神格性質はほぼ完全に摩滅したと考えられる。

上記経緯から、SCP-001-JPは8世紀前後において急速に神威を減耗させており、10世紀の時点で一般的な神格と比較しても劣弱な影響力しか有していなかったと考えられています。蒐集院が行った以上のようなSCP-001-JP弱体化の施策は、標準的な施策と比較して徹底的なものであると財団において判断されています。

上記考察から、SCP-001-JPの実態として以下の要素が有力視されています。

  • SCP-001-JPは少なくとも「他人の模倣」及び「他人への憑依」が可能な神格である。
  • 役小角の存命期間(634~701年)が蒐集院による文献上でのSCP-001-JP弱体化施策の直前にあたるため、役小角がSCP-001-JPの弱体化方法を蒐集院に提案した、または弱体化に協力した可能性がある。

SCP-001-JPの古代以前における本来の神格性質に関する調査が継続されています。















財団日本支部理事会通知

以下の内容はクリアランスレベル/8100-001機密情報です。
再度自身が保有するレベルを確認してください。


















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