急速な人口増加を補助する育成・教育設備の開発のための認可計画
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急速な人口増加を補助する育成・教育設備の開発のための認可計画
GRANT REQUEST FOR DEVELOPMENT OF NURTURING AND EDUCATION FACILITIES TO SUPPORT RAPID POPULATION GROWTH

問題
戦争や大災害、黙示録的事象によって急速に人口が減少した場合、その回復には長い時間がかかります。過去に発生した大規模な感染症流行に関する研究[1]などに基づけば、人類の20%が10年以内に死亡した場合に発生する社会的パニックは異常性の隠蔽を困難にし、さらなる混乱の拡大を招くでしょう。

純粋な産児管理プログラムおよび妊婦に対する社会的取り組みのみでは十分な人口再生産率の確保は困難なものとなり、何らかの方法で高い出生率を確保したとしても労働人口の大半を保育に費やす必要があると結論付けられています[2]。よって、この問題の解決のためには同時に成長の加速技術と教育設備の開発が必要不可欠なものとなります。

母体によらない生命の創造は長らく錬金術及び生物学において重要な問題であるとみなされてきました。パラケルススによるホムンクルス作成の試み以来様々な方法が試されていたものの、秘教的触媒として以上のものを生み出すことにはいまだ成功していません。

また、成長の加速や記憶の高速な刷り込みについては未だ体系的な研究がなされているとは言えない状態にあります。催眠術がこの分野に関する最も有力な解決策と目されていますが、その成功範囲は限られた分野に過ぎません。

1901年頃より活動を開始した国際的な超常組織の連合体"財団"はこの分野に対する強い興味を持っており、黙示録的事象に対する対抗策の一つとして活用するためにプロメテウス・ラボに対し研究委託が行われました。この研究に対する膨大な資金・人員・資材の援助が約束されています。

解決策
大量のヒトの発生について、大きく分けて3つの方針が立てられています。

  1. 他生物の子宮の利用
    ブタは一度におよそ10体の分娩が可能であるため、代理出産の母体として適していると考えられます。現状不適合反応によって着床に成功した例は確認されていませんが、いくつかの薬剤がこの反応を抑える可能性があります。母体となる生物の生命維持などの問題も存在します。
  2. 組織ごとの培養と組み立て
    複数の体組織の細胞が特定条件によって培養できることが近年知られるようになりました。J. ブライトの開発した新式の培地液体[3]を用いることにより、ほぼ全てのヒト体組織の培養に成功しています。一種の精巧な組み立て装置を用い部分ごとに製造した組織を組み上げることによって、人体を構築できる可能性が示唆されています。組織を組み立てた後の全体の協調や、製造される人体の形質が極度に均一化されたものになるという問題を抱えています。しかし胎児からの発生を経ず、直接成体の状態で製造が可能であることは特筆すべき利点です。
  3. 自動式の受精卵発育補助システム
    子宮の代替となるシステムの開発は現在遅滞しています。子宮内膜を再現した培養組織膜への着床には成功していますが胎盤の発生が確認された例は未だ存在しません。また、血中内に存在する一種の基質が胎児の発生に少なくない影響を与えていることも示唆されています。これらの問題を考えた場合、この方面の研究はあまり将来性がないと考えられます。

どの方針を採用するにしろ、遺伝学と発生学に対するより深い洞察が必要不可欠なものとなります。現状、遺伝子となる物質については様々な議論があるものの、F. ミーシェルが発見したヌクレインを中心とした高分子が遺伝物質であるという仮説が複数の異常オブジェクトの分析からほぼ間違いないものであるとされています[4]。この高分子の配列分析によって表現型を事前に予測し、特定の形質の発生を誘導できる可能性があります。そのためには新しい検査技術と離散的な情報を高速に処理できる計算機が必要となるでしょう。現状この処理が可能な装置は存在せず、最も近い機構はC. バベッジによって研究されていた解析機関のみです。必要とされる水準を機械的な計算機によって実現するのであれば、より精密な機械部品の製造技術と離散的演算数学分野の研究が必要になるでしょう。

催眠術は成長の加速と教育において重要な役割を果たすと期待されていますが、複数の問題を抱えています。適切な暗示及び心理誘導が精神構造を大きく変化させることは教育分野の研究から知られており、肉体および精神の相互作用によって精神の変化を肉体の変化へと照応させる準秘教的手順についての分野が今後重要になるでしょう。また、一般的に術者による注意深い観察と、その反応に応じた行動の調整が催眠術において非常に重要な要素であることが分かっています[5]。このような対応ができるシステムは未だ模索段階です。脳の電気現象・解剖学的構造に関する研究プログラムは進行中です。また、フォノトグラフ・フィルム1は音声による催眠のために重要であると考えられるため、この分野の研究も進められています。

全ての理論及び技術の選択は、今後の研究発展によっては置き換えられる可能性があります。

事業例
この装置が必要となるほどの戦争や大災害、黙示録的事象への対策を講じる事のできる組織は非常に限られたものとなるため、最終的な完成品の納入先は"財団"のみとなるでしょう。

しかしながら、研究成果およびそこから生まれる技術は市場において価値あるものになると考えられます。この計画によって遺伝学、生化学、発生学、教育学、心理学、神経科学などの幅広い領域の知見が得られるため、この分野においてプロメテウス・ラボが先駆けとなることができるでしょう。

注意すべきは、これらほぼすべての技術が未だ未発達なことです。この計画が利益をもたらすにしても、おそらく50年以上先のことになるであろうと見積もられています。

資金の使用
この計画は数十年スパンで行われ、関係する人員や資金は膨大になるでしょう。その見積もりについては付属資料1から3を参考にしてください。

資金は"財団"より事実上無制限に提供されます。"財団"の保有する「太陽の子ら」に関する情報がこのプロジェクトに参加する職員に対し公開されることが決定しています。

既知の問題
この分野の研究が公となった場合、倫理的及び宗教的観点から強い反発が起こることが予想されます。そのため研究成果を徐々に市場に開放するとともに、政治家や思想家に対するロビー活動を強化することによってこの分野に対する忌避感を避けるよう誘導することが必要であると考えられます。

参考文献
1. F. アントニーニ、ゲッティンゲン大学における1889年の講演「死と疫病の数学理論」より
2. L. ピツェク「急速な人口増加の手段」"財団"1903年科学部門紀要、p.146-149
3. J. ブライト、「新式の培養液についての概説」ASCI(全米確保収容イニシアチブ)1896年技術年報第3巻、p.8-13
4. 財団考古学・生物学部門合同作業部会「SCP-███群に刻印された記号の分析、およびそこから得られる生物学的知見」、"財団"1908年科学部門紀要第8巻、p.82-89
5. 1899年に作成された独逸帝國異常事例調査局による内部レポート「催眠術の統計学的分析」より。一般には公開されていません。
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