重力子
評価: -1+x
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アイテム番号: SCP-XXXX

オブジェクトクラス: [NULL]

特別収容プロトコル: SCP-XXXXで構成されるコロニーは発見場所にて収容します。

オフィスは中々に広く、このデスクと水槽を除けば何もない。私はデスクに着いて、報告書を書いて だらだらと仕事を先延ばしにしていた。ラップトップの脇に小さなバインダーが置いてある。デスクの上にあるプラカードにはアレックス・ソーリー現実性リエゾン、非現実部門と書かれていた。

この部門が担当するアノマリーについてどう説明すればいいのか分からない。私の名誉のために言っておくと、この部門についてはどのみちほとんど理解できないのだ。何もせずに暇を持て余したまま、執拗にファイルを保存し直す。

そのまましばらく時間が経ち、私はため息を吐いた。とりあえず、バインダーの内容に目を通すとしよう。

瞬きをすると、私はビーチチェアに腰を掛けていた。足元には、太陽の光が燦燦と降り注ぐ砂浜が広がっている。空気は暖かく、塩辛い。カモメがクゥクゥと鳴きながら頭上を飛び、波の満ち引きとともにスナホリガニが海岸をちょこちょこ走り回って……

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SCP-XXXX

私は立ち上がり、周囲を見渡す。後ろを振り返ると、そこには草が生い茂る浅い砂丘が広がっていた。建物は存在しない。

ここはどこだ?

どうしてこんな所に?

空気がべたついていて湿っぽい。顔の湿気を拭き取っていると、青みがかった灰色の海が誘っているように見えた。ふと気が付いたのだが、この砂浜には私を除いて誰もいない。知らない人たちの前で泳ぐ気まずさを感じなくても済むのだ!

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SCP-XXXXの収容場所。


私はウェットスーツを着て海の中へと歩いて行った。通り際にスナホリガニが次々と素早く動いて穴を掘っていく。

そのままどんどん進んでいき、水は今や腰の高さにまで達していた。

冷たい。

波が迫ってくる。私は息を止めて身構えた。波がぶつかる。

泳いだのはいつぶりだ?

塩辛い唇を舐める。舌の先端に塩が付いた。

泳ぎ方なんてどこで覚えたんだ?

さっきまで何か大事なことに取り組んでいたんじゃ?

うねる波が迫り、大きくなる。私は迫る波に向かって泳いでいった。波に引き込まれながらも私は泳ぐ。ひんやりとした水が顔に押し寄せてきて、幸福感を覚える。私は水中を素早く泳ぎ回った。

泳ぎ始めてから数分後、右の脇腹が引っ張られているのを感じた。さらに海の方へ引っ張られていって、私はパニックを起こした。

次の波は思っていたよりも早く砕けた。辺りが真っ暗闇になる。人影とサーフボードのシルエットが、私のはるか下方で海の奥底へ消えていく。薄っすらと、海底が虚無へと沈んでいくのが見えた。目眩でふらふらとする中、周囲に虚無が広がっていく。胸が波打つ……

中空の穴が胃に空いて、虚無が私を完全に包み込む。息を呑むと、こんな何もない所でも呼吸ができることに気付き、私は水面を飛び出した。

目を開けると、私はウェットスーツを着てデスクに座っていた。それに濡れてもいた。目の前にはパソコンともう一つの席がある。その席には洗濯して乾かしたばかりの私の衣服が掛けられていた。ため息を吐いて、パソコンの画面に目を向ける。そこにはこう書かれていた。

説明: 当該

私にできることは全部終わったんだ! やったね! 私は呆れた顔をして、服を着替えようと立ち上がった。水槽のそばを通る際に、数匹のスナホリガニが砂の上を軽快に動き回っていることに気付いた。身体を乾かして着替えた後、ラップトップまで戻ると、文書に新しい編集が加えられていた。

アイテム番号: SCP-XXXX

オブジェクトクラス: [NULL]

特別収容プロトコル: SCP-XXXXで構成されるコロニーは発見場所にて収容します。SCP-XXXX-11はサイト-00に収容します。

説明: 当該

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