僕の友達には凄い子がいた。勇樹君っていうんだけど。
勇樹君は常にクラスの人気者だった。
だって勇樹君はいつも新しいゲームを持っていたから。
勇樹君の家には行ったことが無いからきっとお金持ちなんだろうなって思ってた。
でも勇樹君は不思議だった。
勇樹君はいつも新しいゲームを持っていたけど、秋とか冬に出たゲームは持っていなかった。
多分趣味とかよく分からない何かがあったんだと思う。
家には行ったことが無いけど外ではよく一緒に遊んだ。
物凄く欲しかったゲームを何回も遊ばせてもらった。
何だかんだもう6年の付き合いになった。
人数の少ない学校だったからクラスは一組しかなかった。
だから6年間ずっと一緒。
何回遊んだかもう数えきれない。
おんなじ中学校に行ってこれからも仲良く遊ぶはずだった。
それなのに。
勇樹君は死んでしまった。理由は聞いたけど覚えていない。
ショックで涙が止まらなくなった。
動かない勇樹君を見て最初は何で動かないのか分からなかった。
時間が経つにつれ、これが死ぬってことなんだってだんだん分かってきた。
お母さんが励ましてくれて思ったんだ、勇樹君の分まで生きなきゃって。
それでもやっぱり、中学校に入ってみると勇樹君のいない風景っていうのは寂しかった。
家は引っ越して自分の部屋が出来た。勇樹君と一緒にこの部屋で遊びたかった。
机の中にしまった昔のゲームを見るたびに、思い出が画面に映し出される。
でも、やっぱり進まなきゃいけないんだ。きっと勇樹君も天国でそう言っていると思う。
これ以上悲しい顔を見せちゃいけないな。
弟が無邪気な笑顔で部屋に入ってくる。
「おとうさんが買い物いこうって!」
今日は弟の5回目の誕生日だ。
今日は、何をしていたんだっけ?