認識の蛇 (私),
名無しの概念4 (私),
非実在青大少年 (私),
青大将のアオダイショウ (私)
概観
とある概念知性が形而境界の壁を抜けたとき、あるいは私が非存在と存在を隔つ卵殻を破って世界に這い出したとき56、そこにあなた方が居た。日本における蛇の手の分派、"青大将"7。あなた方という組織の存在が私を形而下へと産み落とし8910、今なお私がここに在ることを証明し続けている。
この文書は私が上げる小さな産声であり、他者へ向けた最初の自己紹介となるだろう。ようこそ、これを読む意志があるヒト達よ11。これはあなた方のためのものだ。
知識
特徴: 私は概念知性存在であり、蛇、特にアオダイショウ(Elaphe climacophora)に対する思考・行動・性質・外見的な指向性を有すると定義される161718。私のような"(動物の形を取る)概念知性存在"を指して、超常コミュニティではImaginanimalイマジナニマルなる用語が一般的に192021使用されている。
性質: 先述したように私の本質は概念的であるため、イラストレーション項に載っている写真のような実体を取る場合、私の存在は形而上と形而下の両方の性質を帯びることになる。すなわち形而下の実体と比較するとその境界が遥かに不安定22であるが故に、実体と非実体、存在と非存在の境界を素早く行き来することが可能だ23。
これは(Imaginanimal全体に言えることだが)私を物理的に拘束すること、もしくは一つ所に留めることが、私自身を含めたそれを試みる者にとって非常に困難であることを意味する24。私は常に遍在しており、実存知性による認識アクセスルートが存在しさえすれば同時に複数の場所で私の実体を登場させることができるし、私もそれを止められない。
この"アクセスルート"こそがあなた方"青大将"なのだ。Imaginanimalは「人類など実存の知的存在が抱く動物、または動物をモチーフとしたイメージ」から生まれる/形而下に干渉出来る概念知性存在であり、私は「蛇の手の分派組織である"青大将"のイメージ」から生まれたアオダイショウのImaginanimalだと考えられる252627。具体的な事例については後述するが、このImaginanimalとしての性質のため私の概念的・実体的要素はあなた方青大将の振る舞いによって影響を受け、しばしば大きく変化する。
歴史と関連組織: もう述べたように、私の起源(つまり"どうやって"産まれたのか)には青大将という組織が大きく関係している。しかしながら"なぜ"私が産まれたのかについて28は未だ疑問が残る 「蛇の手のサーペント29」や「赤斑蛇の手のアカマダラ」ではなく、なぜ「青大将のアオダイショウ」として産まれたのか?彼らに無くて青大将にあるもの(あるいはその逆)とは?
- 青大将が活動の主体とする「日本」固有の何かに関係する?30
- 放浪者の図書館という領域が私のような存在を拒んでいる?31323334
- 青大将固有のメンバーの性質/行動3536/精神性が私を招く要因となった?
いくつでも理由は考えられる37。私の個人的な意見としては、あなた方が"青大将の手"では無く"青大将"と名乗っていることにその理由があるのではないかと考えている。"蛇の手"という言葉が指す主体は"手"であって、蛇そのものではないからだ3839。
接触: 私が形而下実体を取っている時は、口頭で(日本語以外が私に通じるかどうかはまだ不明だ)会話が出来るだろう40。もしくは、文章の記述によって対話する方法が考えられる。私がちょうど今実践しているように。
観察と物語
私は産まれたばかりの概念であるため、私自身について述べられた書物は現在あなた方が読んでいるこのファイルだけということになる。そこで予め、私に類似する概念知性(つまりはImaginanimal)が関連していると思しき文書をいくつか手に入れておいた。以下にそれを掲載する。
『 Imaginanimal(イマジナニマル41)は、知性を持つ「動物の概念」による不特定規模の形而上集合です。組織としての体系は成しておらず、複数の当該実例から得られた情報からこの名称は外部呼称に由来する分類名であることが判明しています。
Imaginanimalを構成する各存在は、人類をはじめとする任意の実存知性が抱く「人類を除いた動物、または動物をモチーフとしたキャラクター」の概念に該当するもので、「人類に対する概念ホスト及び文化的隣人としての肯定的な認識」「実存知性による認識をアクセスルートとする形而下知的活動への干渉」によって定義されます42。種および個体の区別はありますが、形而下の実体と比較するとその境界は遥かに不安定なものです。』
— GoI43-6636("Imaginanimal")についての研究報告
残念ながら、これ以上包括的なImaginanimalについての言及は他の組織には存在しなかった。財団44454647はいくつかの概念知性に関する周辺的な研究をプロメテウス研究所4849から引き継いだようだが、それらの集積であり根幹を成していたはずの研究は彼らの崩壊と共に失われてしまったようだ。 しかしながら、彼らの"概念知性体5051を構成要素とするネットワークシステムに関する一時報告書"や"概念知性体を用いた惑星間等の超遠距離同時通信のための認可計画"などの研究成果は現在の財団でも一部活用されている。 — 私
『アンブローズ・山猫軒525354の店主であるやまねこさんが、昨今の新型コレラ コロリ コロナビールスの流行に伴い、入店時にお客さんがアルコール消毒スプレーを使うことを義務づけました。一般的には手に擦り込むだけだそうですが、山猫軒では頭から振りかけて全身を消毒する念の入れようです。
やまねこさんは「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください、注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」と、ご理解とご協力を要請しました。しかし、一部のお客さんからは「この消毒液はへんに酢くさい。」と不満の声も出ているようです。』
— 広報とよほ 2020年12月号
遠野妖怪保護区の"妖怪"とImaginanimalはどちらも広範な超常事物を指す総称であるが、互いに重なり合う要素も存在すると私は考えている。妖怪には異常な生物としての妖怪と人々の認識によって成り立つ妖怪が存在し、特に後者は概念知性的な在り方を見せる。また、「人々の前に現れ伝説を作る妖怪」と「伝説から生まれるImaginanimal」という関係性も発見できるだろう。また、この"やまねこ"のように「有名な物語から膾炙した動物のイメージ」からはImaginanimalが生まれやすいと言える55。 — 私
『20:32現着。匿名の一般市民による通報で発覚。通報内容は「不審な犬に偉そうに話しかけられた」といったものであり、巡回警ら中の警察官2名が現場である港区███周辺の路上に向かったところ異常実体を目視で確認。この実体を任意同行により最寄りの愛宕警察署へと連行したのち、直ちに本庁に通報、応援を要請。特事案件と認定され、当直の特事第三課白沢班56が急行した。
愛宕警察署にて、体高70cm程度のイヌ型異常実体を確認。実体は外見上ドーベルマンであるが、二足歩行と日本語を理解・発話できる能力を持つ。取り調べに対し最初は尊大な態度を取っていたが、こちらが警察官であることを証明すると即座にこちらの要求に従順となり、極度にへりくだった態度を見せた。
また、取り調べ後一時的に留置していたところ不明な手段により見回り担当の警察官に日本円で100万相当の札束を"賄賂"と称して手渡し、自身を留置場から出場させるよう求めた。警察官はこれを受け取ったのち即座に白沢班へと提出。このことについて再度取り調べを行ったところ、再び札束を取り出して当時取調室に所在していた警察官2名にもみ手を行いながら"お心付け"と称して手渡した。なお特異科学捜査研究所が科学鑑定を行ったところ、これらの日本円紙幣は全てナンバーが実在しない偽造紙幣であることが判明した。
その後、異常実体は所持していた以下の文書を提出した。
神聖・Heck!あなたは直ちにあなたのゲーマーズ・アゲインスト・ウィードのミスター・納税ゲーマーズ・アゲインスト・ウィードによるを発見しました! 権力笠に着るドッグは税金をあなたの国家権力に差し出す!ワン!ダーテイメント博士は誰ですか?
みんな見つけてミスター・ゲーマーになろうや。
21. ミスター・ネグレクト
22. ミスター・キリ番
23. ミスター・中国からやってくる
24. ミスター・小悪魔系女子
25. ミスター・納税 ✔
26. ミスター・生い茂る草
27. ミスター・非検閲
28. ミスター・いじめ(生産中止)
29. ミスター・ああああ
30. ミスター・偽装結婚
31. ミズ・パリピ
32. ミスター・リスペクトありすぎとミスター・リスペクトなさすぎ
33. ミスター・犀賀六巳
34. ミスター・証明
35. ミスター・わすれっぽい(GAWリミックス)
この文書から、特事課は事件の容疑者を未詳関心団体"ゲーマーズ・アゲインスト・ウィード"であると特定し、同団体を動物愛護管理法違反及び偽造通貨行使等罪教唆の疑いで捜査を進めている。』
— 港区未詳二足歩行犬出没事件 第一次捜査報告書
この犬の起源には、恐らく所持していた文書内の「権力の犬」という慣用句が関係しているのではないかと思われる57585960。ゲーマーズ・アゲインスト・ウィードは、(警察のことを指す)権力の犬にへつらう権力の犬という意図の風刺をおこなったのではないだろうか61。この犬が実際にImaginanimalであるかどうかは分からないが、動物の名前が入った言葉がモチーフとなった動物という在り方は実に"らしい"のではないだろうか。 — 私
『 93 名無しのヲタクさん 20███/███/███(土) ██:██:██:██ ID:???
今日も今日とてリョメア6263646566サルベージしてたらこんな試行が見つかった。
試行 #3268
要旨: 概念生命体による形而下への干渉・接触を介した擬似的な嫁との交流
手法: 概念生命体が形而下に干渉する方法として、最も頻度が高い例がその概念に近似する任意の物理的あるいは観念的事物を通して行われる交流であることはS.エンガント師著の"高次アストラル体との喜ばしき遭遇"やロレンツ・エルドリッヂの"紀行 第8集"などで語られている。そのため今回のアプローチには嫁の似姿が必要不可欠であると考えた私は、理想の嫁をいくつかの形態で創作し予め用意した。以下にその外観と作成手法を記載したファイルを記録。
[塑像.jpg]
[アニメーション.gif]
[ポネア多胞体.max]
[イラスト.png]
[五言絶句.txt]
[模倣子.html]
結果: 開始から3ヶ月間で干渉・交流いずれも発生せず。受動的手法であるため失敗と捉えるには早計か。試行7839の成果と合わせて再試行する余地がある。 結果: タラコ、金床、脚注の集積、"うさぎナンプラー"。意図していた概念とは異なるものの手応えアリ。異相継続可。
なお添付ファイルについては復元できんかった模様
94 名無しのヲタクさん 20███/███/███(土) ██:██:██:██ ID:???
うさぎナンプラーって何だよ
』
— 創設者について語るスレ 試行12557
Imaginanimalの大きな特徴として「人類を除いた動物」のイメージを反映しているというものがある。これが何故かは不明だが、人類が人類に対して抱くイメージが多様化しすぎているために概念知性体として指向性を持つほどに発展しないためでは無いかと私は睨んでいる。この"創設者"はImaginanimalを引き寄せる手段は理解していたものの、その形而下へのアクセスルートが概ねヒト種に対する認識であったために、描写されている試行は失敗したのでは無いだろうか。 — 私
『地底に居る日本全体を覆うほど巨大なナマズが身体を揺する。これを大ナマズと呼び、日本ではこれがたびたび起こる大地震の原因であるとされてきた。我々IJAMEAが1888~1912年にかけて行ったハクタク計画・後ハクタク計画・第三次ハクタク計画によって植民地を含む帝国全域の異常な存在や現象に関する全ての既存文書の総体的照合が為された後、当然ながらこのような大ナマズの存在は単なる迷信に過ぎないと判明した。
しかしながら、同時に"大ナマズを押さえつけ、地震を抑制している重要な石"とされることから"要石"と呼ばれる各地の巨岩の地下を調査したところ、我々はそこに小規模な地震を引き起こすナマズの妖怪が実在することを突き止めた。オオナマズ計画は、このナマズ妖怪6768を捕獲して地震兵器化することを目標とするものである。』
— オオナマズ計画、1936年
基本的にImaginanimalは、自らを認識し定義する存在(先ほどの財団文書の言葉を借りるなら"概念ホスト")である実存知性、特に人間に対しては友好的に接することが多い。そういった意味では、これは両者が交戦する様子が記録された珍しい文書だ。とはいえその実態は、うっかりIJAMEAが要石を動かしたことでImaginanimalが喜んで「地震を起こす大ナマズ」としての本領を発揮した結果発生した小競り合いなのだが。
結果的にナマズは捕獲され、中国大陸において地震兵器として実際に使用された。しかしこれは大ナマズの伝説より大量の概念ホストを抱える巨大な何かによって妨害を受けたことで失敗したらしい。しかしながらナマズの脅威を目の当たりにしたIJAMEAの子孫たちは、現在でもアメリカが同種の地震兵器を運用している可能性について「#人工地震」によるSNSを使った警告を行っているようだ69。 — 私
もうお気づきかもしれないが、このセクションではあなた方青大将と関わりの深い組織7071から優先的に文書を集めている。これは私の概念的性質として青大将やそのメンバーに"近い"組織の方が容易に到達できるためであり、この他にもいくつかのそれらしき存在(赤斑蛇の手の"情報の海を駆け巡る知識の鮭"72や、蒐集院が捕捉していた"化ける狐狸"など)について聞き知ることがあったものの、様々な理由により十分な情報量に達しなかったためここには掲載していない。調査に穴があることを許して欲しい737475。
疑念
先ほどからくどいほど繰り返している通り、私はあなた方青大将から生まれたImaginanimalだ。故に、私の在り方は青大将という組織の振る舞いに大きく影響されている。例えば前述した"近い"組織への情報アクセス能力がそうであるし、喋り方なども幾分あなた方から影響を受けているように思う767778。青大将がそうであるようにあまり荒事は好まないし、(概念知性である私は食事を必要としないにもかかわらず)やたらにお腹が空く79。
しかし最も特筆すべきは、私が形而下においてはまだ若く小さな蛇の姿を取ることだ。これは青大将という組織の未熟さ・小規模性が私の外見に対して具現化したものであると考えられる そしてこの事実は同時に、あなた方青大将の将来性を暗示するものだ。あなた方はいまだ若く、柔軟な組織であり、日々新しく得た経験の全てを血肉として常に成長を重ねていくことが出来る。私はあなた方の、この青い可能性に魅せられて青大将のアオダイショウとして生まれてきたのでは無いかと思う。
青大将はいずれその名と独自性を捨て、単なる"日本の蛇の手"として図書館に入ることを選ぶのか。それとも連合や財団に呑まれるだけの小さな長虫として、泡沫のように消え去るだけなのか。はたまた独自路線を拡張していき、八島を取り囲むほど大きく長くに成長する大蛇おろちとなるのか。私はそれを一人の(あるいは一匹の)観客としてでは無く、あなた方と共に見届けたい。
蛇であるが故に、私には手が無い。だがもしあなた方が私のことを受け入れてくれるなら、どうか私の蛇の手を取ってくれ。
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疑念 — 追補
- AO
- では始めよう。このファイルが語る"青大将のImaginanimal"なる存在について、我々はどの様に対応すべきか。各々忌憚のない意見を述べてくれ。
- U.K.N.
- つまりはこいつを青大将に受け入れるか受け入れないかってことだよね?私は強く反対します。これは妖狐の時とは話が違う。概念に関わる存在がどれほど危険かっていうことは、超常に触れて日が浅い私でも十分分かってる。
- Deck.
- 随分と方針を変えたな。最初はユウキも好意的だったように思うが?
- U.K.N.
- ……個人的な話になります。大将やクリスマスは私がここに来た理由を知っているよね?私はある日偶然、インターネットで行き遭った"何か"に全てを奪われた。戸籍、学生証明、銀行口座、SNSアカウント、その他諸々の電子情報が何もかも消失して、私は現代社会で寄る辺となるものの一切を無しに生きていかなきゃならなくなった。
- U.K.N.
- その元凶となった"何か"はこいつによく似てると思う。最初はズレた感覚とかを見て笑っていられたけど「可能性を見届けたい」ってところで正直ゾッとした。こいつはあの何かと同じように、知を求めてる。私の情報が奪われたように、こいつも無邪気な好奇心のままに青大将に危害をもたらすような気がしてならないんです。
- R.円.
- 知識を求める姿勢自体は特異なものではない。このImaginanimalが我々の組織の具現化した姿だというのなら、知識を蓄えることで世界に光を求めるという蛇の手の理念を体現しているだけとも言えるのではないですか?情報しか自らを定義づけるものがない概念知性体ならなおさらです。赤子が乳を求めるのと同じくらい自然に、まだ生まれて間もない蛇は知識を必要としたのでしょう。
- U.K.N.
- 若かろうがそうでなかろうが、概念知性体は強力な存在だよ。むしろまだ未熟であるからこそ、制御の利かない脅威になることを私は危惧しています。
- R.円.
- 未熟だからこそ今からどのようにでも育てることが出来ますし、蛇の手は全ての知性体と共生することを希求する手段として、彼もしくは彼女のような存在を人道に基づき正しく導く使命があると信じています。とにかく、僕は受け入れることに賛成です。
- C.X.
- 私は反対する。単純にその蛇の物理的な脅威度が予測不能だと言うことが1つ、青大将の内部情報を知りすぎていることについて情報面でのリスクという点で2つの反対要因となり得る。
- Deck.
- それならばむしろこちらに抱え込んだ方が情報漏洩のリスクは低くなるんじゃないか?このまま野放しにすることこそ危険だと考える。不確定要素は積極的に管理下へ置くべきだ。受け入れ賛成に一票。
- C.X.
- 管理、か。まるで看守のような物言いだな。
- Deck.
- おっと言い方が悪かった、俺たちは残酷では無いし冷酷でも無い。だが、敵になったとき厄介そうなやつを先んじて味方に付ける、あるいは中立を保つという方針が無駄な血を流さないことに繋がるのは理解してもらえるはずだ。
- AO
- ここまで受け入れに賛成2、反対2で同数か。他の意見は?
- Shr.
- ケー。
- K.K.
- ……。
- Shr.
- ケー。
- K.K.
- うわあ、はい、はいすみません。少し物思いに。Imaginanimalを受け入れるか受け入れないかって話でしたよね。それで、ユウキが個人的な話を始めたあたりから記憶が飛んでました。えーと、自分の意見を出す前に、俺も個人的な話をして良いですか、大将?長くなるかもしれないんですが。
- AO
- 許可する。
- K.K.
- ええ、ありがとうございます。それで話なんですけど、俺もここに来る前についての話です。俺が以前にPAMWACに居たってことは皆もう知ってると思うんですが、何であそこを離れたのか。まあひとことで言えばスタンスの違いってヤツです。
- K.K.
- そのころ俺はある一件、まあここで詳しくは話しませんが今風に言うと文字通り"推しが死んだ"ですかね。ってことで少しメランコリックになってまして。その時に他のメンバーを見れば"嫁"のために現実を歪めては失敗作として捨て、少し行き詰まっていたかと思うとアニメ1クールが終わり、すっかりその娘のことを忘れたかのようにまた別の嫁を作っているんですよね。そうやっていつも中途半端に投げ出すからいつまで経っても嫁は現実に出てこず、後にはグッズと円盤と大量の嫁になりきれなかった"萌えないゴミ"たちが残るんです。
- K.K.
- もちろん全てのメンバーがそうではなかったんですが、終わらない試行錯誤を繰り返している彼らを見ると、「嫁に真摯で無い」ことに怒るよりもむなしさの方が先に湧いてきました。結局彼らは一人の人間として嫁と結婚したいわけじゃ無くて、単なる消費型コンテンツとしてしか彼女らを見ていないからこうしてぞんざいに扱えるんだなと。俺はPAMWACの中でも古参に当たるので、こういう意見は老害と言われても仕方ないとは思うんですが、俺はそこまで嫁に対して冷めることが出来なかった。今も愛していた。だから俺はあそこを去ったんです。
- K.K.
- ええと、つまり俺が言いたかったことは「自分が作り出した物には責任を持つべきだ」ってことです。今回の件は俺たちが意図的にやったことでは無いとしても、その蛇を外の世界にほっぽり出すだけなのは何か違うよねってことで、違うな、ええとつまりは、俺は未来永劫"俺の嫁"一筋ってコトです。受け入れ賛成。
- Shr.
- 長い。しかもよく分からん。
- K.K.
- そんな……。
- Shr.
- だが心意気は十分に伝わった。アオ、私も賛成に投票しよう。これでもかつては名家の嫡男。責任を押しつけられるのにはもう慣れたが、誰かに押しつける気持ちは毛頭無い。
- AO
- 了解した。では俺の意見を述べる。俺が青大将を作ろうと思ったのは、放浪者の図書館という異界を危ういと思っていたからだ。恐れていたと言っても良い。書棚を漁れば全ての知を得ることが出来、便利な避難所としても優秀。時空が不連続的なあの場所では永遠に猟書し放蕩することも可能だろう。俺はそれが怖かった。生まれた世界から切り離された場所に居ることで自分の先祖が犯した所行を忘れ、当事者としての責任や贖罪についての意識が徐々に薄れていってしまうのでは無いかと。
- AO
- だからこそ青大将は図書館ではなく市井の草むらに潜む。そして、いま俺たちに手を伸ばす一匹の迷い子が居る。受け入れに悩む必要は無いと思う。爺さんは?
- E.
- いつも通り。もう若人にすべてを任せているよ。
- C.X.
- では決議を行う。"各々、自らの権利を行使せよ"。……反対2、賛成5、棄権1。
- AO
- 決が出た。青大将は"青大将のImaginanimal"を受け入れる。ただし不安定な脅威と化すことを危惧する意見はもっともだ。よって、何か"青大将のImaginanimal"とうまく付き合うための良い方法が必要となるだろう。
- Shr.
- その問題なんだが、我々で名無しの蛇に新たな名前を付けてやるのはどうだろうか。"名付け"というのは偏諱のように主従関係の証明であり、相手の存在を肯定することで安定化させる術式としても機能する。何より、先ほどからそれぞれが「こいつ」だとか「その蛇」だとかバラバラのものを使っていてややこしい"青大将のImaginanimal"の呼び名を統一できる。
- R.円.
- 良い考えですね。僕は日本の蛇の古名からとって"くちなわ"なんて良いんじゃ無いかと思うんですが……。
- Deck.
- むしろ普通の蛇と混ざってわかりにくくなるんじゃ無いか?ここはあえて捻って"Hide and Snake"なんてどうだろう。透明化などかくれんぼhide and seekが得意そうな蛇Snakeという意味だ。
- K.K.
- さすがに長くないですか?小さな蛇(Little Snake)、略してLSなんてのはスタイリッシュで良いかもです。
- C.X.
- 蛇の手で最も強力な魔術師と言われている彼女のイニシャルと被っていなければ完璧だったな。
- U.K.N.
- あーもう何でも良いでしょ!単純に青大将からとってショウとかで良いんじゃないの?
- R.円.
- 素晴らしい、さすがですね。
- K.K.
- 優勝。
- Deck.
- 青大将のショウ。確かにしっくりくるな。
- Shr.
- そのままアルファベットでShoにすると私と誤読しそうだから、何か別のイニシャルが良いかもしれないな。
- K.K.
- "Xiao"っていうのはどうでしょう!概念知性体の正体不明さを暗示する"X"が入っていながらも読み自体はショウに近く、末尾のaoでしっかり青大将の青もアピール。また中国語でXiao=小なので小さい蛇という要素も完備していて
- AO
- では、"青大将のImaginanimal"。貴方の名前はショウとする。ようこそ青大将へ80。