このシデムシゆく世界で過去と未来と先駆蟲と特別討議と映画館での一夜の欠片と報告と敷居の蟲とシデムシーとシデムシオ
評価: +32+x

 
2016年11月2日。アメリカ時間でね 日本だったらもうお昼
僕達の個体数は唐突に512体に増殖した滅びろ人類死ねくたばれ昆虫の時代だ議会開始賛成派503により抹消作戦を そこで、あらかじめ予定されていたセーフティによって即座に256体の僕達が存在を別次元へと移され、世界は一命をとりとめた。頭いいとこれが困る なんとか個体数半減で済んだぜ 創世記だったら人類終わってた
 
第4期には満たない個体数なのにひどく利口さは残っている 全ての装置がマニュアル要らず アイデアだけの拡張 楽しみ 天気だって読める
 
何より僕達がそんなセーフティを組んでた記憶も記録も存在していない。 鎮まれ僕達 思い出せない 海馬だって無いんだもの 
 
何かが変わったのだと感付いて、今回の総会は情報を集めながら食事と同時に始まった。困った時の財団チェック 今日のセキュリティ・レベルはO5-1 2 2 3.5 8 10 19 間を取って6.5
 
調べてみた結果、財団が1971年から保護していたエネルギー場が当初の予想通りに消失していた事が分かった。 前に飛ばした実験用ロケットのお礼じゃなかった 前に飛ばしたカタパルトの仕返しでもなかった ああ 良かった
 
財団の把握していた物から把握していなかったものまで 例えば僕達 残念ながら僕達 全てのオブジェクトが異常な行動を見せるだろう。リストを作成して僕達は備える必要がある。 財団がそうする様に 保護じゃなくて保身なんだろうけど
 
 
 
 
影響を受けたオブジェクト 僕達の把握していた概要 今後発現する異常性
僕達 自明。 まさか秘めた力があるとでも? 過去改変その他別の理由によって僕達の個体数が急激に増殖。人類を支配可能な領域にまで達する。 おのれ僕達 しかしながら僕達は既に対応を済ませていた。 ありがとう僕達
SCP-030-JP 石油と石油加工製品を捕食する単為生殖可能な生物。 まずい 体内に高濃度のアミノ酸とグルタミン酸を保有する事で鳥類が捕食するようになり、糞に卵を混入させる事で分布範囲が爆発的に増加する。ちょっとぐらいは食べたいよね
SCP-041-JP それぞれが異なる異常性を保有する蠅7匹。 いいなー こっちなんて知識を高める事が精一杯だ 蠅同士が交尾をする事で異常性を保有する個体が777匹に増殖。 痴情のもつれ、反抗期、牛乳屋を自称する個体の影響により3日以内に全滅する。 僕達も気を付けよう そんな増えたら世界が持たない
SCP-048-JP 目視した知性生物の「いもうと」と誤認させて近寄った相手を850度の体温で焼いて食べる甲虫の群体 データでしか見た事ないのに酷い目に遭った気がする 誤認させる為の擬態に「おとうと」「おにいさん」「おかあさん」「おとうさん」「ビッグママ」おっと! が追加される。
「ファイル名が確認されません」 何かのメッセージだ。 今はチリ一つない。僕達もお腹が膨らまない。 何にも無い。最初から存在もしていない。 僕達の仕事が無い。 えー
SCP-240-JP どれだけ個体数が増減しても個体数が0匹に保たれるバッタ。 噛み千切った葉っぱが腐って僕達のご飯になる 僕達がやったら大変 ん? どれだけ個体数が増減しても個体数が∞数に保たれるようになるだろう。 僕達がやったら大変 0の隣にはいつも無限
SCP-657-JP 毒に侵された他の生き物がムカデしか産めなくなるトビズムカデ。 冷却ガスは切らしてはいけない 頸と触覚を狙って来る ムカデの産卵や出産を目視した本来の番である雄の脳を爆発させる異常性が追加。 良い所なのに
SCP-831-JP 接触した相手に段階的かつ破滅的な幻聴と体感気温の変化をもたらすミンミンゼミ。 秋口に落ちてて助かる たまに生きてるからその時は部分的に貰う 第三段階までの変化が一週間以内に終了する様になった。短い夏がすぐ終わる 助かる
SCP-1180-JP 寄生した相手を生息地域でユキノホズキと呼称される摂食可能な物体に変化させるブユ。 僕達は腐らないと食べられない 変わった相手はからからに渇いて食べるのに時間が掛かる なんてこった 変化させた相手が金色に光り、地方住民からはキンノホズキと呼称される個体が発生。食べた人間に強烈な抗酸化作用と消化器官の不調改善が確認されるだろう。 僕達は頑張らないと食べられない 長寿なんて関係ない なんてこった
SCP-2075-JP シオカラトンボとザトウクジラの遺伝子を含有する人型実体。ザトウクジラの鳴き声を聞いた時行なう自慰行為 なんで? を視認した対象に精神影響を与える。 ████が凄い事になって████が両方とも█mまで肥大化し████が████になる。 見えてる? 人によっては
SCP-2472-JP イエネコに擬態したダニの群れ。 知的生命体はイエネコにしか見えない。 僕達みたいな僕達じゃない 掃除しないとすぐくっ付く 認識対象が増加。ライオンもトラもヒョウもチーターもしゃもじも全部ダニ。 ほんとに
SCP-2644-JP 死んだ人間の遺伝子を含有する甲虫の死骸。 ごはん 似てる 後に死ぬ人間の遺伝子を含有する甲虫の死骸。 実質人類と同じ数 ごはん

 
 
こんなにオブジェクトの異常性が変化してしまったならばきっと財団は大変な事になるだろうし、僕達の安全だって保障されなくなるに違いない。 というか既に異常性も変わっている 僕達は僕達だし 個体数半減の恨み
 
影響の全ては外宇宙からやって来た九つの衛星を持つ母星からやって来る。あらかじめ僕達が傍受していた んだっけ まあいいか ネットワークから漏れて来た音と声によると、ただ人類に苦痛を与える為にやって来る。 食べもしないのに
 
衛星の個数が九つって事は人体の身体の部位になぞらえていて、 柔らかい粘膜ぐらいちょっと分けてよ 腐ってから 人類史に関わる内容なんだろう。 僕達はシデムシ史 シデム史
 
僕達が知れる範囲はこのぐらい。後は捜索範囲を広げて対策に当たる。
 
こうして38秒間の緊急総会は終了した。 歴代2位の短さだ よく考えたものだ 多分そういう調子いい日だよ
 
総会終了から3秒後に夢の中でSCP-990と出会い、話を聞いた。以下は会話の内容の記録である。
 

僕達代表名: 僕達 急だもん 時間が違うもの たまには南米の神話になぞらえたかった

[開始]

SCP-990: ここに人以外が…それも虫が来るとは。

僕達: 僕達は財団の…財団の味方であり続けたいと思っています。此処に来れたのは、きっと貴方が招いたからでしょう。

SCP-990: まだ準備の段階であったのに…だが、君達が本当に財団の味方でありたいと思っているのなら。

僕達: 頑張ります。なるべく。

SCP-990: ならば可能な限りの情報を伝えよう。用心の為だ、手を出して。

僕達: 肢です。

SCP-990: そうか…

そこで手の星の話を聞いた。僕達には無いのに。このままでは他でもないO5が活発化したり異常性が変質したオブジェクトから人類を守る為に地球に近い環境にある手の星への移住を決める事になり、彼等のシステムに組み込まれる事になる。

人類は生き残るだろうし、無限の苦痛から成し遂げられる愛情を傍らに置かれながら絶対に届かない。 子は母の為に、衛星は惑星の為に。月は母星の為に。

僕達: その世界って死骸はある?

SCP-990: 無いだろうな。飢餓も孤独も腐敗も、奴等が全て苦痛と捉えているならば苦痛だ。

僕達: 裏を返せば、彼等の統治する世界にはそれらがない? ごはん

SCP-990: その通りだろう。

僕達: えー、僕達のご飯が足りないじゃない 養殖分じゃ足りない 食い物の恨み

SCP-990: 一体どうしたんだ?何か君は…たった一匹の虫にしては…声が多いんじゃないか?

僕達: 失礼、思ったよりもここに繋がった僕達の数が多いみたいです。 アラーム掛けてないもんね 食い物の恨み 人間にだってあるんだもの。

SCP-990: あまり騒がしくしないでくれるかな。

僕達: 食い物の恨み 食い物の恨み 食い物の恨み 食い物の恨み 食い物の恨み 食い物の恨み 食い物の恨み。

[終了]

 
 
15秒間の夢とのコンタクトを経て、このまま行くと僕達のご飯が無くなる。 あと財団が危険だ それから食い物の恨みだ。
 
オブジェクトの活性化によって人類もその他生き物も僕達のご飯になり得るものも汚染されて、つまり僕達のご飯が無くなる。 あと人類がこのまま滅ぶか 手の星の中で苦痛に過ごすか
 
腐敗の無い世界では僕達のご飯が無くなる。システムの中に組み込まれた生命体は全て永遠の苦痛を受けながら腐敗を食べられない。
 
腐敗のある世界では活性化したオブジェクトによって意図的な圧力が組み込まれていく。仮に僕達の調子が良くなったとしても食事が十二分に出来る状況でいられるかは怪しい。
 
安定した食糧の供給には安定した世界が必要であり僕達の様にただ洞穴の中で静かに過ごしながら死骸をほじくる様な存在であったとしても最終的に死ぬ生命体の個体数が制限される。
 
果てには死ぬのではなくなり、彼等に組み込まれる。
 
つまり。 つまり。 つまり。 つまり。 つまり。 つまり。 つまり。 つまり。 つまり。 つまり。 つまり。 
僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 僕達の。 
ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 ご飯が。 
なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくぬる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。 なくなる。
 
 
 
 
 
僕達はいつでも飛ばし過ぎる。というか普通に別次元まですっ飛ばされてから、やっと元にいた世界に何が引き起こされようとしているのか15秒もの時間を掛けて行われた総会によって予想する事が出来た。 歴代2位の短さだ そういう調子いい日なんだろうね
 
 
身体の動かし方を理解出来るまで20秒ぐらいの時間を要して、現在地点の確認を済ませてから18秒程眠ったのを覚えている。幸いにも夢の世界、深層意識の中で僕達は僕達と意識を繋ぐ事が出来た。SCP-990の話だって覚えている。 ごはん 食い物の恨み ご飯がなくぬる 腐敗の無い世界
 
 
洞穴の中に留まり続けている僕達は逃げられないし離れる事が出来ない。無限に循環する世界の中で生き続けなければならないから、手の星に組み込まれる程に滅びに近付く。 手首だけなんて ねえ
 
だから僕達だろう。ただ別次元に放り込んだのは緊急的な手段であったが、512体の僕達による予測と対応は256体の僕達とは比べ物にならない程の精度を誇る。 なんとか個体数半減で済んだぜ 創世記だったら人がレプタリアンになってる
 
腐敗を肉体的な苦痛の一種として受け止め、永遠の完璧な幸福を甘受し続けるのならば肉体は存在しない。 僕達に似てない
 
地球に直接的な干渉は出来ず、使いの者を置いて地球の住民を手の星に誘導させるぐらいしか行なう事は無い。 僕達にちょっと似てる あれは調査用
 
それらと言った以上はただの一個人や唯一の思想に統合されているのではなく、複数が存在している。 僕達っぽい 僕達じゃない どっちかというと僕達
 
 
完全に閉じている以上、それはネットワークと呼べるものになる。地球を征服しようとしている規模だったならばすぐに見付けられる事が出来て 稼働音がある訳でも無いのに
 
ついさっき 時間で言うと850フレーム 何fps? 30 60 ごめん17秒 えっ 僕達がネットワークに介入する準備を済ませた所だった。
 
 
魂そのものを叩いたりするよりは、話し合いで決める事こそが肝要だ。別次元にいる僕達は距離的に言えばかなり遠く、それだけ向こう側が感付くまでの時間が稼げる。 僕達が512体繋がれてよかった 僕達が居なくなっても256体が残っていてよかった
 
僕達は死から産まれた。僕達は死に現れ、死に寄り添い、死を見届けながら死のケリを着けてここに居る。 ほら言うでしょう シデムシって 死から出づるって読むんだよ
 
死の無い世界もそれは素敵だし、目指すものであるのは間違いないと思う。だけど僕達は知って欲しかった。 捨て去った死の中に、僕達の様な存在がある事を。 あとご飯が無い 食い物の 弁論の場に怨みはNG
 
そして記録を残す。この先に何が待ち構えていたとしても。 誰の為に? 僕達じゃなくてもいいから 後の為に あと装置残ってたし
 
ネットワークの接続を開始。同時に記録を開始した。 丸いボタンだっけ 丸くて赤い方
 

<接続開始>
<記録開始>

 
 

[張り裂けそうな魂の声]

 
 
なんて思ってたんだけどね。 停止ボタンどっちだっけ 四角い方 このマーク平行四辺形じゃないの?
 
 

[反応は無い]

 
 

<記録終了>

 
こうなるとは思っていなかった。 256体の僕達ならね 分かってたんじゃないの 512体の僕達だったならば
死から全てを始めていた僕達の存在や思想そのものが死を捨て去ったネットワークにとっては水に油 精密機器に海水 僕達に死の無い世界 だったのだろうか。
または単純に僕達の思考密度が向こう側にとっては到底耐えられないものじゃなかったのか。 焼かれた脳も無い 僕達だって食べられない
 
 
後に残っているのは完全に内側から食い破られたネットワークと、それに繋がっていた僕達以外の意識だけだ。 辛うじて生きてはいるんだけどね これを生きていると言えるのか あ!
 
だから僕達は言ってやった。
 
 
 
 
「恐怖から逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない」 そうだよ 折角だもの 作ればいいんだ そして 僕達は
 
 
 
 
さっきまで異様に良かった調子が薄らいでいって、僕達の頭の中でかなりの物事が忘れていくのを感じる。 256体分の僕達だ
向こうの僕達は張り裂けた残骸を前にして、それをほじくって行くんだと思う。 慣れっこだ 前からやっているんだもの
人智を逸した存在のぼろくずから何を作るのかなんて、絶対に財団だろう。 あえてのオカルト連合 まさかのJOICLE ひょっとしてPAMWAC
 
 
 
 
僕達は僕達だけで僕達ではない財団を作り上げ、そこで初めての相対に至る。
 
僕達はその先を知らない。 知らないんだもん それが未来の為 過去の為 どうせ食べて寝てるだけ 分からない 多分そう 部分的にそう
 
 
 
 
……良いなあ。 本当にそれだよ 僕達を差し置いて僕達め

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。