是にて我見し聞きしを語りなむ
昨日我、廣末孝行の發見すくうぷしたるところには、放棄されたる鐵錆の果實敎團の據點あじとにて怪しげなる男、儀式行いたり。儀式は奇怪にして妖邪の類と見え、壽司囘轉させぶつけ合ひたるものなり。以下に經緯いきさつ記す。
先日空德剌祇修道會こんどらきしゅうどうかいの騎士團、鐵錆の果實敎團らの據點あじと征伐す。鐵錆の果實敎團ら、“溫羅の箱”なる邪惡な品を所有する人物或いは集團なり。ゆえに騎士團、この者らを大いに警戒せり。
征伐終了ののち、我一人蹟地あとちに向かひけり。蹟地は廢敎會はいきょうかいなりしが、閑散として靜まり渡るなり。さやけき月影、破やれ天蓋より零れ落つ。あな息衝かし心地したれば、不覺おぼえずに一句詠む。
廢敎會 不信心ゆえに 荒れ果てつ
いみじき句詠めたるに、良き心地になりて更に一句詠む。
月影降り さながら我は 月光假面げっこうかめん
これはわろき句なり。
その時、我が背後から物音聞こえたり。赤面しつつ怪しがりて寄りてみるに、男の壽司囘す者居たり。男、両の腕かいなに箸と湯呑持ち、「丙辣謝意へいらっしゃひ」なる言の葉を發はっすことで壽司囘せり。この者、壽司を愛玩動物ぺっとのごとく扱い、その樣子誠に奇怪なり。我、この者が妖邪の類用いる術師だと直感せり。ゆえに罷りて騎士團へと知らせること試む。されど男、我に氣付きたり。我逃げること能わずなり。