財団は現実改変者の身体検査をどのように行うのか

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「次のチェック項目は……ヒューム値だな」

鄭医師はPoI-61A98の検査レポートを一目見ると、振り返って私に指示を出した。

「エージェント君、君は棚からカント計数機を取ってきてくれ」

我々が外で使っている携帯型の計数機とは違い、身体検査に用いるソレは高い精度を誇っており、検知チューブもいくらか大きいサイズをしている。ぼんやりと眺める私を見て、鄭医師は付け加えた。

「現実改変者のヒューム値には2種類の指標が存在する。まだ覚えているか?」

「個人のヒューム水準と周辺のヒューム水準……でしょうか」

私は答える。これらの知識はエージェント訓練において重要視されたために、私はしっかりと記憶していた。「彼らの内部ヒュームは常人よりもずっと高い水準にあります。このため、彼らの周囲にある現実も影響を受け、希釈されます」

鄭医師は感心しながら頷き、私から計数器を受け取ると、脇で待つPoI-61A98に告げる。

「君、そこの兄ちゃん、壁と向かい合うようにして立ってくれ。抵抗しようなんて思わないように」

PoI-61A98は壁に向かって直立し、息を小さく押し殺す。私は怪訝そうに鄭医師を見つめた。

「何を見ている。内部のヒューム水準をどのようにして測るか、君は知っているのか?何だと思ってたんだ?」

「えっと……」私は小声で尋ねる。「口腔を測るのでは?」

「ああ、昔はそうしていたがな」鄭医師は話しながら、卓上にある医療用潤滑剤に手を伸ばした。「有効な検知距離が短いんだ。それに、現実改変者は脳のヒューム値が他の臓器よりもずっと高い。口腔で得られるヒューム値には5~10ほどの上振れが出るため、誤ったデータになってしまうんだ。ほら兄ちゃん、ズボンを脱ぎなさい」

「それって──」

PoI-61A98は振り返り、私達を見つめる。私と彼の目が、一瞬ながら対峙する。動かない彼の額から、玉のような汗が滲み始めた。

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