フトマル飼育日記
/いっしょに夏を楽しもう!\
はやと
7月14日
我が家に来た日
お父さんがカブトムシをプレゼントしてくれた。
去年いっしょに行った林に朝早くから行って、がんばってとってくれたみたい。
夏と言えばカブトムシ、大好きなのでとてもうれしかった!大きな虫カゴの中は木とか葉っぱで林っぽくなってた。
カブトムシはよろこんでるみたい。名前は、短くても太く生きられるように「フトマル」で決定!
ひと夏の命だからこそ、太く楽しもうね!
7月17日
フトマルの好きなもの
今日はフトマルがゼリーを食べなくて困った…。
いちご味もメロン味も好きじゃないみたい。お母さんが「果物をあげるといいんじゃない?」と言ったのでバナナをあげることにした。
エサ皿の上にバナナを置くと、あっという間に食べてしまった。
フトマルにも好ききらいがあるんだなぁって思った。ぼくもバナナが好きなので、ぼくとフトマルは食べ物の好みも同じなのかも。
今度はハンバーグ食べさせようって言ったら、お母さん笑ってた。
フトマルも元気に動き回って、いっしょに笑っているように見えた。
7月24日
公園
フトマルもたまには外に出たいだろうと思って、今日はいっしょに公園で遊んだ。
怒られると思ったから、お母さんが買い物に行っている間に内しょで行った。前歩いてた通学路より短いはずだけど、とても長く感じた。つかれたけど、なんとか着いた。
家から持ってったバナナをフトマルといっしょに食べた。
ピクニック気分で楽しかった!でも、お母さんがぼくのことを探してむかえに来た。
車に乗せてくれたのは良かったけど、車の中でいっぱいおこられちゃった…。確かに外で何かあったら大変かも…お母さんとお父さんを心配させちゃうから、もう勝手に外出しないって決めた。
7月26日
海
今日は家族で海に行った!!
もちろん、フトマルもいっしょ。フトマルは最初びっくりしてたみたいだけど、なれてきたら海をじーっと見てた。
楽しい?って聞いたら、ツノをうなずくみたいに下げて返事した。
フトマルめっちゃかしこい!もっと楽しんでもらおうと思って、砂浜で波が来るギリギリまで行って虫カゴを置いたら…フトマルが大きめの波さらわれてしまった。
お母さんもお父さんも探してくれたけど、中々見つからない。
ぼくのせいでフトマルが死んじゃった…ショックで泣きそうになった時、フトマルが遠くから、海から飛んできた!
ぼくの足元に止まって本当にビックリしたけど、フトマルは「なんともないよ」って感じにツノを動かしてた。
もうダメかと思ったけど…本当に良かった!お母さんとお父さん、そしてフトマルにちゃんとあやまった。
怖い思いをさせて、本当にごめんね。ハプニングはあったけど、とても楽しかった。
やっぱり家にいるより外に出た方がフトマルも楽しそう。でも、そろそろ家でも楽しめることをさがさないと。
家の中でも出来るだけ、夏らしい思い出をいっぱい作ろうね。
8月 1日
花火
今日は家で花火大会をした!フトマルはやっぱり楽しそうに花火を見てた。
林の中じゃ、海とか花火は見られないもんね。線香花火が一番好きみたいで、その時は手足をいっぱい動かして喜んでた!
ぼくとフトマルは花火の好みもいっしょ。パーッとはじけて、スッと落ちる。
そうゆうところが好き。今日もすごく楽しかった。
本当に、夏って楽しいなぁと思った。こんな日がずっと、ずーっと、続けばいいのに。
8月 2日
調子が悪くなっちゃって、お父さんにフトマルのお世話してもらってる。
いやだな、早く元気にならないと。でもうれしいこともあった。
お母さんに「花火がすごく楽しかった」って言ったら、明日もう一度花火大会してくれるって!花火は何度見てもあきない。
フトマルも楽しみにしているのが分かる。明日のために、今日は体をしっかり休めようと思う。
8月10日
また入院 思ったより早い
お母さんとお父さんがこのノートを持ってフトマルとおみまいに来てくれたフトマルがバナナのこしてた
たべないの?ときいたらツノでぼくとバナナを指したぼくのぶんをのこしてくれてた
うれしいフトマルが天国に行くまではがんばる
ぼくもフトマルも ひとなつの命だから
いっしょになつをたのしもう さいごまで
月 日
あの夏を思い返していた。
美味しかったバナナ。
広かった海。
綺麗だった花火。
そして、優しかったハヤト。
僕は夏が大好きだった。
君といる、あの夏が。
でも、君は僕を置いてどこかに行ってしまった。
帰らない君を探しに僕は家から飛び出した。
入院していた病院
お父さんが僕を捕まえた林
家族で行った海
君が内緒で連れていってくれた公園
何処を探したって、君はいない。
それでも僕は探し続けていた。
あの日見た花火を、もう一度一緒に見たかったから。
でも、限界だよ。
君のいない夏を生きるのは。
もう終わりにしたいのに、ずっと、ずーっと、続いてる。
「ひと夏の命」が邪魔をする。
何度も、何度も、邪魔をする。
お願い。
誰か、どうか
説明: 胸部から腹部にかけて大きく損傷しているにも関わらず、生命活動を維持し続けているカブトムシ(Trypoxylus dichotomus)。
回収日: 20██/██/██
回収場所: 茨城県████市
現状: サイト-81██内にて収容中。
追記: 損傷の原因は自動車による轢圧と推定される。
僕の夏を終わらせて。