伝えたい
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「それで、あなたが今までに働いてきた中で、1番ダメだったサイトはどこ?」

サイファーは尋ねた。

「分からない。難しい質問だな。」

カントスは真剣に考え、少しの間動きを止めた。

「ソウル。71。殆ど機能していなかったな。」

彼らが乗っていたBMWには、かつてアメリカの企業の重役が乗っていたのかもしれない。黒の塗装はワックスがけとバフがけをしたばかりで、内装の革には汚れが無かった。市内最大級の銀行の前に停められていても、誰も目を向けることはないだろう。窓に何層もの染色が施されていることも、運転者と同乗者が身につけていた銃のわずかな膨らみにも、気づく者はほとんどいないだろう。ここは法の領域を出た場所だ。

エージェント・サイファーは窓を開けて前の座席に座り、煙草を持った手を外に出していた。相棒が話すと、彼女は身を乗り出し煙を吐き出した。

「へえ?」

カントスはうなずいた。彼は中間管理職にはふさわしくないタイプの男だった。身長は6フィート弱、髪の毛はまだ太くて短く、端の方は白髪になり始めていた。30代にしては良い方だ。濁った茶色の目が白いフレームのメガネの奥にあり、あごは生まれた時と同じように毛がなかった。彼が着ていた黒いスーツは、銃と、過去20年間毎日ジムに通っていた男の体格を隠すために仕立てられていた。

「集中暖房すら半分の時間も使えなかったんだ。あのクソソウルめ。」

強いギリシャ語のアクセントで彼は話した。

「酷いわねぇ。」

サイファーは言った。カントスより少し背が低く、おそらく数歳は若く、黒褐色の髪をおだんごにし、パートナーと同じようなスーツを着ていた。 彼女は話しながら外の様子を見ていた。彼女の視線は歩道を飛び交い、全ての歩行者を見極めていた。

「察するに、いつも'要望に応じて'修理していたのかしら? 」

カントスは笑った。

「クソだ。まあ、仕事は悪くなかったさ。半分は施設から離れすぎていて、どうでもよくなっていた。今ではな。」

彼は指を振り回して要点を強調した、

「16歳。カナダ。酷い、本当に酷い場所だった。机の後ろで記録を整理し、会議に出席し、一日も現場に出られなかった。4年間も。」

彼は動きを止め、首を振って溜息をついた。

1度だけ、あなたはサイト管理官の妻と寝てたわね…」

サイファーはにやりと下品な笑みを浮かべた。

「で、何だ?」

カントスは尋ねた。

「んーん。」

行き交う通行人を目で追いながらサイファーは言った。

「1つ選ばないといけないの?」

彼女は煙草をもう1本吸い、使い終わったフィルターを歩道に流した。

「たぶんレッド・ロッジだと思うけど、もしそのことを話したら、このブロックのみんなを殺さないといけないわね。じゃあ、サーティーファイブってことにしましょう。クソみたいな同僚にくだらないリーダー、何度も無断欠勤したわ。研究責任者がscipとヤったのがバレたのよ。」

カントスは口笛を吹いた。

「ああ、そうなのか?侵入後の監視カメラを見直していた時あいつらは気付いたんだよ。馬鹿はカメラのことを完全に忘れていた。後から来た男はもっと馬鹿な奴だった。」

彼女は車の外をジェスチャーで示した。

「あそこに彼女がいるわ。」

サイファーは車のドアを開けて外に出た。彼女は歩道を渡り、黒い窓のあるドアから出てきた女性のところまで行った。その女性は彼女よりも頭一つ分以上背が低く、60代を過ぎていた。褐色の肌に短い黒髪、冬の空気から身を守るために白いジャケットを着ていた。彼女が歩くと、人の流れはほとんど気づかないうちに、彼女を通すために分かれていた。

「マダム。」

女性に近づくと、サイファーは言った。彼女が体の向きを変えると女性も同じ方向を向き、2人は車に向かって歩き始めた。

「エージェント・サイファー。」

O5-4は言った。声には何の感情も篭っていない。

「貴方がこんなに早く任務を始めるとは思ってもいませんでした。」

「職務から長い間離れているとそわそわして仕方が無いのですよ、マダム。」

サイファーは言った。評議会の女性が中に入れるように、彼女は後ろのドアを開けた。

「漸く貴方達に会えて良かったです。」

O5は言った。サイファーは感謝の意を込めて頷き、ドアを閉めた。助手席に戻ると、サイファーは拳をO5-4の顔に叩きつけた。彼女が反応する前に、カントスのピストルの銃口が彼女の頬に押し付けられた。

「さて。」

彼は言った。

「本当のO5-4に何をしたのか教えてもらおうじゃないか。」

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