Indonootokoの提言 III
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レオナルド・ダ・ヴィンチ作 "女神エルマ"


アーカイブ手順: SCP-001-JPに指定された当ファイルは複数のデコイ-001-JPアーカイブの中に保管されます。当ファイルへのアクセスはサイト-01、サイト-8100、エリア-81T1から同時に暗号コードを送信した場合のみ可能であり、それ以外の手段によるアクセスが確認された場合、当ファイルは72時間の間アクセスが不可能になります。

特別収容プロトコル: SCP-001-JPの収容は現実的ではありません。SCP-001-JPの出現を阻止するため、GoI-101 ("エルマ外教") の壊滅作戦を継続します。GoI-101は財団の存在する宇宙 (以下"基底宇宙") 以外の宇宙にも複数の支部を所持しているため、他の宇宙でも壊滅作戦を行わなければなりません。これを実現するため、他宇宙の財団との情報共有を積極的に行い、可能であれば機動部隊の投入による壊滅作戦の援助をします。

SCP-001-JPに関する情報を取得するため、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿の捜索を行います。回収された手稿はサイト-01で研究資料として保管されます。

説明: SCP-001-JPは基底宇宙外の宇宙の1種です。敵対的な自意識を保有しており、GoI-101 ("エルマ外教") により「女神エルマ」として信仰されています。SCP-001-JPの存在自体は多数の宇宙で認知されていますが、SCP-001-JPの実態はGoI-101によって拡散されている「女神エルマ」の概要と大きく異なります。SCP-001-JPはGoI-101にユニバース01と呼称されており、GoI-101の本部機能が置かれる宇宙として機能します。

GoI-101の指導で宇宙間を移動した存在はSCP-001-JP-Aに指定されます。SCP-001-JP-Aは宇宙間移動を繰り返すうちに、SCP-001-JPの発言を幻聴として聞き取る能力を徐々に獲得します。この幻聴は通常の場合、GoI-101の教義を拡散させる命令です。SCP-001-JP-Aが宇宙間を移動する度に、双宇宙の境界部分にSCP-001-JP-Aの大きさに併せた位相空間外トンネル1が形成されます。位相空間外トンネルは一定時間で閉鎖され通常の状態に回復しますが、断続的に形成し続けることにより位相空間外トンネルが回復困難な大きさに拡張され、大型位相空間外トンネルが形成されます。これによる悪影響は多岐に渡ります2

SCP-001-JPはSCP-001-JP-Aからの幻聴に従い大型位相空間外トンネルの形成を積極的に行います。SCP-001-JPは大型位相空間外トンネルによって繋がった世界と融合し、1つの巨大な宇宙へと変容します。融合の際、融合される宇宙には深刻な破壊現象が発生し、融合に巻き込まれたすべての物質はその存在を維持できません。

SCP-001-JPはSCP-001-JP-Aのみに融合されない安全な宇宙を通告します。SCP-001-JP-Aの多くはGoI-101構成員であることから、GoI-101は壊滅せず存続しています。融合したSCP-001-JPは複数の宇宙を吸収することで自身の空間が圧縮され、時間流が高速な宇宙へと変容します。SCP-001-JPは通常の宇宙より高速で成熟します。宇宙として成熟したSCP-001-JPは再度自我を得ます。

SCP-001-JPは融合された宇宙の情報や記録を深刻なミーム災害のベクターとして機能させます。SCP-001-JPによって融合された宇宙の風景や人物の写真は、閲覧者の生命活動を妨害する認識災害を内包したミーム災害として機能します。この異常性は「この風景は存在しない」と認識するようになる精神影響性のミームを摂取することで罹災を防ぐことが可能です。罹災の予防手段が発見されたことから、このミーム災害は宇宙が不正な方法で消滅した場合に発生する副次的な異常性であると結論付けられています。

補遺-001-JP-1: 発見

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レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿

SCP-001-JPは財団が発見したものではなく、財団が遭遇/観測/確認した実例は存在しません。SCP-001-JPに関する情報は、レオナルド・ダ・ヴィンチ3 (以下"レオナルド") が遺した手稿を財団が収集した際に情報資料として獲得したものであり、獲得された情報資料と後述する複数のインシデントを根拠に当報告書は作成されました。

レオナルドはルネサンス期のギリシア文化復興に便乗して勢力を拡大したGoI-101と青年期における不明なタイミングで接触しており、GoI-101の実態に強い関心を抱きその教義について学んだとされています。そのため『GoI-101が教祖と定める人物はキリスト教における「洗礼者ヨハネ」である』という仮説を手稿内で提言しており、レオナルドの描画した絵画には洗礼者ヨハネが多く登場します。絵画「岩窟の聖母」はその実例であり、『キリストら聖家族が、天使の加護を受けながらエジプトへ逃避する最中に幼い洗礼者ヨハネと出会う』という聖書正典との整合性が欠落した背景を持つ絵画となっています。当時完璧主義者と評価されていたレオナルドがこのような作品を残したことは不可解であると考えられており、GoI-101の影響を受けた結果と推測されています。

以下はレオナルドの仮説に関する手稿の転写です。

女神エルマの外なる教え、エルマという宗教文化は大変興味深い。この世界とは異なる世界と交わり、試練と救済を受ける。この地球すら踏破した者などいないというのに異世界とはまったく考えが及ばない。遷教師4の話を聞くのが最近の楽しみになっている。これほど私の知識欲を刺激するものは中々ない。

さて、遷教師がこの地にいるということは、この地球にもエルマの教祖が訪れたことがあるということだろうか? 教祖はその地でもっともありふれた名前を名乗る…… 私が考察するに、洗礼者ヨハネこそが教祖だったのではないだろうか? ギリシア正教に前駆授洗者と呼ばれる洗礼者ヨハネは、キリストを洗礼し導いた存在であり、まさに遷教師が語る教祖の人物像に近い。だとすれば、ヨルダン川でヨハネが説いたという神の王国とは、エルマの国だったというのもあり得るだろう。

その後、レオナルドはGoI-101主導のもと他宇宙への転移を実行しています。転移はレオナルドが故郷フィレンツェに帰還した西暦1500年から死亡する1519年の間に複数回行われています。ただし、基底宇宙と比べて他宇宙の時間の流れの速いケースが多く確認されていることから、レオナルドが他宇宙で過ごした期間は単純に算出されるものではない可能性があります。レオナルドの肖像画は実年齢と比べて老いていると評価される風貌に描かれることが多く、これは他宇宙で過ごした時間が長期間であったためと推測されており、前述の可能性は高いと結論付けられています。

絵画「モナ・リザ (ラ・ジョコンダ)」はレオナルドが他宇宙に滞在している最中に描いた作品です。正式なタイトルは「女神エルマ」であり、現在一般社会で広く認知されている「モナ・リザ」という呼称や絵画の制作背景は、財団を含める複数の正常性維持機関が共同で行ったカバーストーリープログラムによるものです。財団の調査によって、描かれている背景は、GoI-101が旧ユニバース34と呼称する他宇宙に存在するケアード渓谷湖およびリケアード橋梁周辺であると特定されています。周辺道路や山岳の位置関係なども一致することから、レオナルドが転移した宇宙は旧ユニバース34であると結論付けられています。

以下はレオナルドが旧ユニバース34に滞在している際に作成した手稿の転写です。

ケアード渓谷はかつて教祖が女神エルマの声を初めて聞いた場所だとされている。そして私は今、実際にケアード渓谷の土を踏みしめている。この静かな場所で耳を澄ませていると、確かに美しい女のような声が聞こえる気がする。なるほど。私の中から不確かなものが無くなっていくのが分かる。すべては事実だった。

異世界が存在し、女神エルマが存在するならば、ヨハネがキリストを洗礼したのも事実と見てよいだろう (私の仮説が正しければだが) 。私は此処を描きたい。この地に女神が存在し、不確かなものを明らかにしてくれるような気がするからだ。ガブリエルの翼を虹の彩光で描くことを拒否したあの日から、ようやく報われた気がする。世界は全て正しい。探求すれば必ず、答えが分かるのだ。

レオナルドは旧ユニバース34への転移の際にSCP-001-JP-Aとなっていたと推測されています。幻聴について言及する手稿を残しており、その中でSCP-001-JP融合イベントに関する記述が確認されています。

異世界への跳躍を重ねるごとに、女神エルマの声をより鮮明に聞き取れるようになっている気がする。

"その地から離れるな"

どういう意味なのだろうか?

エルマの遷教師が家を訪ねてきた。異世界から来た同志を何人か匿ってほしいらしい。

その際に遷教師は私の絵を見てきた。"女神エルマ"を眺めた遷教師は私の腕を賞賛したが、未完成作品であることを伝えると表情を曇らせた。

この絵はこれ以上描いてはいけないという。特に背景のケアード渓谷湖とリケアード橋梁が良くないと言い、これ以上鮮明に描きこむとこの絵は死の絵となると言った。どういうことか聞き返したが明確な返答は得られなかった。

不確かなものをそのままにする。許しがたい行為だ。正しいものは正しく描かねば、それは冒涜ではないか。

なぜケアード渓谷に行くことが許されないのか? なぜ忘れなければならないのか?

女神エルマとは何なのか。この耳元で囁く悍ましい声は何なのだ。

匿ったエルマ信者を問いただした。私は無学の人だ。私の理解する正しさとはなんなのだろうか。

"布に針が通るたびに穴が広くなるように、虚空を隔てる障壁は脆く弱い"

ならばヨハネは死神なのか。私はまだ何も成し遂げていない。

GoI-101はケアード渓谷周辺を含める旧ユニバース34の写実的絵画を敵対的組織に送付しています。既に旧ユニバース34はSCP-001-JPと融合しているため、この写実的絵画には致死性のミーム災害が内包されています。

レオナルドが遺した手稿の中には「他宇宙への転移理論」や「位相空間外トンネルの形成理論」に関する考察が存在する場合があります。ただし、これら理論や考察は全て論理的に破綻しているものであり、レオナルドはこれ以上の情報を得ていなかったと考えられています。

レオナルドの手稿は死後フランチェスコ・メルツィ5に相続されましたが、フランチェスコ・メルツィの実子 (名前不明) がこれを売却してしまったため、その多くが失われています。財団は全体の3分の2にあたる手稿の回収に成功しましたが、残る3分の1の回収には成功していません。また、フランチェスコ・メルツィの実子が売却した物品類の中には「外神」と裏書された絵画が存在します。この絵画は"レオナルドが描いた14番目の絵画"という触れ込みで販売されていたとされています。事実関係は不明ですが、この絵画の油絵具には起源不明な成分の土が練りこまれており、この土はレオナルドが晩年を過ごしたクルーの館でも発見されています。

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作者不明 "外神"



補遺-001-JP-2: D-2930

SCP-2133-JPの内部探査に投入された機動部隊に-9 ("モータルオフィサー") の隊員がSCP-001-JP-Aとなりました。以下は隊員のD-2930に対するインタビュー記録です。

インタビュー記録 D-2930 (に-9"モータルオフィサー"隊長) #1
2010/10/31

付記: 機動部隊に-9 ("モータルオフィサー") はSCP-2133-JP探査任務の後も、GoI-101関連オブジェクトに関する探査/実験に投入されていました。


≪記録開始≫

インタビュアー: 幻聴が聞こえ始めたのはいつ頃ですか?

D-2930: 最近だ。あのシチューに入り込んだあとから、最初は耳鳴りみたいなもんだと思っていたが、いろいろ任務をこなして段々音が大きくなるんだ。

インタビュアー: わかりました。幻聴はどういうものですか? 人の声がする、だとか変な音がするだとか

D-2930: 女の声だ。内容は「アトラル6を目指せ」が大半で、他も大体どこかへ行けみたいな命令だ。アトラルってのは最近よく聞く単語だな。

インタビュアー: ええ、そうですね。その幻聴は今でも聞こえますか?

D-2930: いや、聞こえるタイミングはバラバラだ。昼も夜も関係ないし、こっちが寝てようが飯を食ってようが関係ない。結構迷惑だ。

インタビュアー: 分かりました。以上で結構です。今後の任務について変更が発生するかもしれません。それまで待機してください。

≪記録終了≫

このインタビューを受けGoI-101担当職員は「D-2930が幻聴を聞くようになったプロセスが、レオナルドが幻聴を聞くに至ったプロセスと一致する」と指摘しました。それまでレオナルドの手稿は信憑性に欠けるとしてBクラス情報資料に指定されていましたが、指摘に基づき見直しが進められました。

補遺-001-JP-3: 他宇宙財団との交流

SCP-588-JP実験にて他宇宙にも財団の存在が確認されました。友好的に接することで情報資料獲得に繋がるとして、他宇宙の財団 ("SCPF-HER86") へのコンタクトを実行しました。このコンタクトは成功し、SCP-588-JPを経由し有線ネットワークの構築に成功しました。

SCPF-HER86から複数の情報資料が提供され、その中には位相空間外トンネルなどSCP-001-JP関連情報が含まれました。SCPF-HER86はこれらの情報を入手した経緯について、イギリス南部・ソールズベリーより発掘された白骨遺体から情報資料を発見し、そこから発展させた研究の成果だと説明しています。財団はこの情報を元に発掘作業を行いましたが、一切の成果も得られませんでした。

SCPF-HER86は白骨遺体の情報を財団に提供しています。白骨遺体の遺伝子情報をSCPF-HER86が鑑定した結果、SCPF-HER86の存在する惑星に存在する種のものではないことが判明しました。また、白骨遺体と同時にいくつかの物品が発掘されています。物品の内訳は、初等教育用と推測される不明な言語の教科書・不明な言語の辞書・不明な言語で書かれた文書です。以下はそれらからの抜粋です。

この文は、此処ではない世界からこの世界へのメッセージです。私は希望を繋げるために単身この世界にやってきました。

私の世界はエルマと呼ばれる宗教に滅ぼされました。私たちは油断していました。異世界への跳躍を謳う彼らを、私たちは友人として迎えていたのです。女神エルマと呼ばれる神をアニメやゲームを使って布教する彼らを、ちょっと愉快な人たち、ぐらいにしか考えていなかったのです。

私たちは彼らの勧め通り、異世界を何度も跳躍しました。時には旅行として、時にはビジネスの一環として、時には新天地として、エルマは私たちの生活を豊かにしていると思っていました。

でもこれが誤りでした。私の星の学者が、宇宙と宇宙の障壁が破壊されていることを発見しました。私たちの異世界跳躍は宇宙の壁を傷つける行為だったのです。気づいた時には障壁の修復は困難になっていました。この直後から、人々や物が突然消えたり現れたりするようになりました。障壁の損傷に気づいた学者が、『障壁が破壊されたことで異世界跳躍が自然に発生してしまっている。』と話しました。その学者も次の日にはいなくなってしまいました。解決策を知っているだろうと、エルマの人たちを探しましたが、彼らは既にどこにもいませんでした。

こうして世界は繋がりました。世界が繋がったことで女神は降臨しました。女神は宇宙そのものであり、宇宙を食らう化け物でした。私たちは食われる前になんとかして脱出しようと模索しましたが、その方法は見つかりませんでした。そして空は割れ、女神エルマがその汚水に油を溶かした空のような悍ましい姿を現しました。

その時、私を呼ぶ声がしました。それは上半身だけの男でした。男は空中に浮いており、私たちの文化で"壁尻"と呼ばれる状態でした。男は私に辞書と幼児向けの教科書を用意するように伝えると、地面に空間の亀裂を作り出しました。ここに飛び降りろということか? と問いただすと、男はいつの間に逆を向いたか、下半身だけになっていました。私は男の言う通り、教科書と辞書を用意すると亀裂に飛び込み、そして今に至っています。

もしこれを貴方が読んだなら、世界中に"エルマを信用するな"と伝えてください。エルマは陽気な隣人ではありません。そして、もし、もし私の遺体も同時に発見してくれたら、私をバダニカ7に埋葬してください。貴方には悪いですが、私はこんな薄気味悪い場所で眠っていたくない。

SCPF-HER86はGoI-101を攻撃対象に加えており、SCPF-HER86の存在する惑星では既に壊滅しています。ただし、GoI-101は新たに他宇宙から転移し拠点を再構築するため完全な根絶には至っていません。

補遺-001-JP-4: SCP-001-JP出現予兆

SCPF-HER86より、人や物が不規則に消滅し、起源不明な物品や生物が出現するインシデントが報告されました。これは前述の文書で示唆された現象と一致した内容であり、SCP-001-JP出現の前兆です。SCPF-HER86はいくつかの手段により他宇宙への転移を模索しましたが、発生中のインシデントの影響でSCPF-HER86施設内にもさまざまな物品や生物が出現し、またSCPF-HER86構成員が消滅していることから困難でした。

このとき、D-2930は新たな幻聴を主張していました。以下はその内容です。

インタビュー記録 D-2930 (に-9"モータルオフィサー"隊長) #2
2017/05/21


≪記録開始≫

インタビュアー: 新たな幻聴とは?

D-2930:「そこに居ろ」だとさ。

インタビュアー: そこに居ろ?

D-2930: そうだ。いつもは何処かへ行けとか、そんなのばっかだったが今回は何処にも行くな、と。

インタビュアー: えっと、それは。[数秒無言] もしかして、幻聴の声が女性から別の物に変わっていませんか? なんというか、恐ろしい声というか。すいません、うまく伝えられないですが。

D-2930: はは。よく分かるな。まるで喉が泥に変わったような汚い声だ。何か心当たりが?

インタビュアー: いえ、大丈夫です。以上で結構です。ありがとうございました。

≪記録終了≫

D-2930の聴いた幻聴はレオナルドの手稿の内容と類似します。SCP-001-JP出現の予兆であるとして、SCP-001-JP収容方法の確立を目的とした、SCPF-HER86救出作戦が計画されました。

補遺-001-JP-5: 惑星ムベベ突入作戦

SCP-001-JPは実態が不正確であり、SCPF-HER86から提供された情報資料の通り宇宙そのものであった場合、対抗手段はほとんど存在しません。

財団はSCP-2163-JPに関する調査の過程で、GoI-101によってユニバース9224と呼ばれる他宇宙に時空間兵器が放棄されているという情報を掴んでいました。この時空間兵器は財団より遥かに進歩した文明の産物であり、作用した地点の時間を停止させるというものです。この兵器は空間そのものに作用し、宇宙が対象でも機能すると考えられます。ただし、時空間兵器が放棄されているユニバース9224内惑星「ムベベ」は超文明同士の民族紛争の結果さまざまな超常兵器によって汚染されており、生物の生存が困難な危険な惑星となっています。惑星ムベベ突入作戦には、SCP-2163-JPと機動部隊に-9 ("モータルオフィサー") が利用されました。

SCPF-HER86救出作戦 計画書


立案経緯: SCPF-HER86の存在する宇宙でSCP-001-JP出現の予兆が確認された。SCP-001-JPは財団を含める全ての存在にとって脅威であり、SCPF-HER86はSCP-001-JP収容のために必要不可欠な協力関係組織である。よって、SCPF-HER86を救助するべく、SCP-001-JPを打倒/撃退/収容する作戦を立案する。

作戦概要: ユニバース9224内惑星「ムベベ」に放棄されているとされる時空間兵器を回収し、これをSCP-001-JPに対し使用する。時空間兵器は対象の時間流を停止させるものであり、宇宙そのものである可能性が指摘されるSCP-001-JPにも有効であると考えられる。惑星ムベベは民族紛争により汚染されており、惑星ムベベの兵器技術者も死亡しているとされている。そのため、惑星ムベベへ突入し、時空間兵器を直接回収する必要がある。

作戦内容: 惑星ムベベへは、SCP-2163-JPを利用することで安定して転移することが出来る。惑星ムベベは生存困難なレベルにまで汚染されている他、環境に適応した狂暴な生物が分布しているため、突入する部隊には財団の用意できる最新鋭の装備を支給する。ただし、現地の汚染については研究段階であり、支給する防護服などが汚染に有効である保証はない。

作戦は極めて危険であり、財団の所有する通常の機動部隊を利用することは人材ロストの懸念から許可されない。そのため隊員がDクラス職員で構成された機動部隊に-9 ("モータルオフィサー") を利用する。機動部隊に-9はGoI-101関連の作戦でも活躍しており、成果を期待できる。また、隊長のD-2930はSCP-001-JP-Aであり、SCP-001-JPからの幻聴を聴くことが可能なため、何らかの異常を察知できる可能性がある。

時空間兵器の確保に成功した場合、回収が可能であれば回収し、回収が困難であれば安全を確保した後に退避する。後者の場合、再度の作戦計画を立案する。


 

惑星ムベベ 探査記録 機動部隊に-9 ("モータルオフィサー")
2017/08/01

突入作戦参加メンバー:

  • 機動部隊に-9("モータルオフィサー") 部隊長 コードネーム"ニコラス"
  • 同機動部隊 隊員 コードネーム"ドッグ"
  • 同機動部隊 隊員 コードネーム"ミーナ"
  • 同機動部隊 隊員 コードネーム"ガショウ"

付記: 突入に際して、対汚染用防護服が支給されます。ただし、この防護服の効能が惑星ムベベの汚染に有効であるかは、資料不足により保証されていません。


≪記録開始≫

[SCP-2163-JPが停車した瞬間に撮影機材が破損し、録画機能が故障する]

ニーナ: 外が……。

[一同無言]

ガショウ: これがムベベか。息を飲む景色だ。

ニコラス: ガショウ以外は降りるぞ。ガショウはバスに残って撮影機材と通信機を守──

[ニコラスが黙り込む]

ドッグ: ボス、大丈夫です?

ニコラス: 幻聴だ。女神様のありがたい啓示は「ここから立ち去れ」だとよ。

ガショウ: 例の幻聴か。地球では「ここに居ろ」で、ムベベでは「ここから去れ」ってことは、ここもじきにSCP-001-JPと融合するってことなのか? 

[一同無言]

ニコラス: 上等だ。最初は「ブツがデカかったら持って帰れないな」とか馬鹿みたいなこと言ってたんだ。ヤツの方から現れるならお持ち帰りの心配はもう必要ない。

ガショウ: だが、それでは。

ニコラス: 捨て駒に相応しいミッションだ。なに、こっちの武器は超文明の最終兵器様よ。

[3人分の足音]

ニコラス: よし、いくぞ。まずは市街地の兵器群だ。

[激しいノイズが数十分続く]

[ノイズが回復する]

ニコラス: ガショウ聞こえるか? ニーナは大丈夫だ。だが、ブツは此処には無いようだ。

ガショウ: 了解。やはり、こんな危険な場所でどこにあるかも分からない兵器を回収するのは不可能か。

ニコラス: 弱音はいい。幻聴も酷くなってきた。次に行くぞ。

[バスのエンジンが掛かる音がする]

ニコラス: おい、今の音はなんだ。

ガショウ: 運転手がバスを動かそうとしてやがる。おいお前! 誰が動かして良いと言った。

SCP-2163-JP-B: もうすぐ女神が降臨する。ここに居てはいけない。

[バスが発進する]

ニコラス: [罵倒]

ドッグ: ボス! 空が!

ガショウ: バスを止めろ! まだ3人が外に居るんだ。

[この時点でガショウのGPS情報が地球に復帰する]

ガショウ: あ! おい! すぐに戻れ! 今すぐに!

[ガショウのGPS情報が新宿バスタ構内に移動する]

ガショウ: [罵倒]

≪記録終了≫

この突入作成以降、SCP-2163-JPは出現していません。また、ガショウを除く機動部隊に-9 ("モータルオフィサー") メンバーの安否は明らかになっていません。

惑星ムベベ突入作戦から約4か月後、SCPF-HER86との交信が途絶えました。SCP-588-JP内の有線コードは中腹部分で物理的に途切れており、再度SCP-588-JPにCCDカメラ付き特殊スコープを挿入しSCPF-HER86とのコンタクトを試みましたが、成功しませんでした。また、SCPF-HER86が財団に対し送付した風景写真に致死性のミーム災害が確認されました。この写真はSCPF-HER86が存在する惑星での風景を映したものであるため、SCPF-HER86の存在する宇宙がSCP-001-JPと融合した確証とされています。

財団はSCP-001-JPのオブジェクトクラスをPantokratōr8に指定し、特別収容プロトコルを現在のものに定めました。GoI-101の行う他宇宙への転移は阻止され続けます。

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致死性ミーム災害を発現した画像


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