侵入者たち
評価: +8+x
blank.png

◁ 前回

全てが燃えていた。

オペレーターが駆け降りた壊れゆく緊急シュートにて、壁の回路から火花が弾けた。上がった多くの炎が、オペレーターの身体にある肉の玉に危うく触れそうになった。その頭部  四方八方に向いたカメラとセンサーの塊  が、崩壊したコンピューター端末から飛んできた金属片に危うくぶつかりかけた。背部のエンジンが点火し、安全な場所へと進路を変えた。

オペレーターは発砲に驚かなかった。そこは軌道兵器貯蔵庫であり、当然機械の故障というものは起こるものだった  しかし、それは故障などではなく、攻撃だったのだ。

崩壊した機器がシュートを高スピードで落ちていき、いくつものプラズマをほとばしらせた。オペレーターは、出口から広い金属製トンネルへと流れるように進んだ。プラズマが突き抜けてくる数瞬前、オペレーターの肉玉の身体に繋げられた7本の機械アームが、出口の前の安全障壁を引き上げた。障壁はガシャンと音を立てて所定の位置に戻り、熱を帯びてオレンジ色のにぶい輝きを放った。

どこに、どこに?トンネルはどこにも通じていなかった。トンネルにあった前方後方どちらの出口もただの壁にしか通じておらず、施設のセクションのうちどれが構造上安定しているかオペレーターにはわからなかった。ミサイルの初撃によって破壊されたのは貯蔵庫の神経系、すなわちステーションに張り巡らされ、オペレーターに継続的に無線を通じて障害について知らせ続けていたファイバー伝送網だった。何かが壊れれば、その神経がまず警報を鳴らすはずだったのだ。

今や神経は沈黙していた。それでも、オペレーターには貯蔵庫全体が数秒後にでも崩壊しうることがわかった。

轟音がトンネルを揺らした。オペレーターは自身の検波器がズキズキと痛むのを感じた。爪を振り上げて頭部のダイアルを調整し、検波したものを何でもいいから取り敢えず微調整しようとした。ほんのちょっと回すと、信号がハッキリと検波できるようになった。それはある正弦波だった。脳内の人工部分を揺らし、通常の神経信号と完全に一致するものだった。

トンネルはまだ使えたのだ。

オペレーターは信号を返した。トンネルを構成するナノマシンが、肉のように振動した。すぐに構造全体が歪曲し、前方の出口が上へと捲れながら壁を越えていった。出口が金属製の壁の脇を動いていく際、そこは貯蔵庫の他のチャンバーに繋がる窓になっていた。シアン色の火災現場、爆発する球状保管庫、溶けていくロボット、全てが凄まじい勢いで通り過ぎて行った。ヘビ状の生命体がオペレーターの育った場所に存在していたなら、トンネルの動きは確実に1つに例えられただろう。もし比喩の概念をオペレーターが持ち合わせていたのなら、の話だが。

さらに何度かの轟音があり、貯蔵庫を揺らした。トンネルの動きは止まり、オペレーターはカーブの終端に辿り着いた。前方の出口から勢いよく、球状のコマンドセンターへ疾走した。数秒後、何かがトンネルを強く叩いた。ナノマシンの壁は出口をピッタリと封鎖するよう変形し、爆発の光景を遮った。トンネルの神経が沈黙した。

コマンドセンターの中央を転がっていたのは巨大な柱、もといメイン監視コンピューターだった。オペレーターは基板から長い電線を引っ張り出し、頭部のソケットに押し込んだ。周囲の光景が溶けていき、まだアクティブな全監視カメラの視界へと置換された。内部のカメラはどれも炎に飲まれているか、使えないほど静止したままだった。しかし、貯蔵庫の外部の多くは機能していた。オペレーターは視界を切り替えた。

黒い虚無。デブリの柱。遠くの、しかしそこまで離れてはいない位置に環の形をした船があった。軌道を静かに辿っていて、側面にある長方形のミサイル格納庫は既に空っぽの状態で開いており、描かれた緑色のシンボルが連星の光に輝いていた。それは12の星々の迎撃機だった。他に遠距離兵器は存在していないようであり、ゆえにオペレーターは危機を脱した。

オペレーターは迎撃機の動きの中に些細な変化があったことに気づいた。監視コンピューターが高速で一連の計算を行っている間、迎撃機が徐々に徐々に近づいてきた。それはすぐに、カメラの視界全体を覆っていった。コンピューターは既に明白な結果を返してきた。迎撃機の軌道と貯蔵庫の軌道は交差しているという結果を。

機械アームが迎撃機から伸びてきて、揺れ動いた。眩い白のつる状の何かがアームの穴から現れると、コマンドセンターに反響するほどの甲高い摩擦音を伴って、貯蔵庫めがけて急角度で突っ込んできた。オペレーターは電線を引き抜いて現実に戻り、センターの壁に明るい白の輪郭が刻まれていくのを見た。

何かがひび割れた。

壁が外側に爆発して暴風を吹き付け、オペレーターは宇宙への新たに形成された通り道のそばに叫びながら吹っ飛ばされた。爪でコンピューターを掴もうとしたが、バラバラになる前にその表面を引っ掻くだけに終わった。オペレーターは貯蔵庫の外に吹っ飛ばされ、迎撃機のそばを通り、やがて軌道に乗った。真空が身体をなぞり、肌が沸騰した。

オペレーターは最後のミサイルが迎撃機から落とされ、コマンドセンターに空いた穴へとゆっくり降下していくのを見た。視界から消える前、より深くへと押し込まれていくように思われた。青い光が瞬いた。空色の火球が貯蔵庫から立ち上ってそこをズタズタに引き裂き、センター内部で建造された、絡み合った全てのトンネルやコンテナを蒸発させた。

どこか上の、オペレーターの軌道上にある荒涼とした惑星にて、2回目の爆発があった。オペレーターの精神は、身体のガスが虚空へと吐き出されるにつれグラついていった。防衛せよと教育されていた全てが、バラバラになっていった。

オペレーターの脳内の回路がブンと音を立てた。そして、肉体を切り替えた。


「じゃあ、俺らは行先について"爆発した何か"以外のことを知っていると?」

「まあな」

「で、つまり?」

「まあまあの大爆発だったってこたあよ」

ミカ・マイナはケスラ-002の艦橋にて、1機のコンピューター端末の隣で浮遊しながらニヤニヤ笑った。第3モニターのスピーカーからヘヨン・3ムンの声が聞こえてきて、さらに今は上陸用舟艇に持ってきていたツヤツヤのブリキ缶にN・J・ワッツがいるようだった。少なくともそれが、ケスラ-002のドックから出て振動したものにヘヨンがまずつけた名前だった。

「役立つ情報ありがとう、ミカ」アレクサンドラ・マクスウェルはミカのちょうど傍を浮遊しており、ストローからコーヒーバッグを啜った  無重力の中におけるコーヒー1杯への最も適した副題だった。アレックス1が船の居住環における地球と同等の重力下で飲まなかった理由は、ミカには全くわからなかった。

「ああ、まったく役に立つことだな」第1モニターには、着陸船内装の4枚の写真が表示されていた  備え付けられたコントロールパネルと3席のシートが勢いよく縁に出ていた  ヘヨンはカメラをジロジロと見つめた。

ミカはまだニヤニヤ笑っていた。

4日前、ケスラ-002はテルザン2星団への1週間の星間旅行を終えた。ある小連星系に到達し、ガス惑星の強力な重力井戸に飲まれていった時点で超光速航行を中断した。Te2-2658、財団が指定した星系名だった。ゲートウェイ、ケスラのクルーがそう命名した。

「わあった、マジな話、こっちの司令部はお前がそこで出会ったものについては見当もついてねえ」

初日のX線の誤信号を除き、この場所に生きる者や生物の証拠はなかった。

「結局俺たちが得たのは、この辺りの軌道に流れ込んだらみんなわかったようなものしかなかったわけだ」

例の恒星のハビタブルゾーンにおける彼方の境界線にて、砂塵舞う惑星からの立て続けの信号が受信されるまでは。

「だから……」

続いて、その表面にて爆発があった。

「……俺たちにできるこたそう多くねえってこった」

ミカには居心地悪い沈黙しか返ってこなかった。

「ここから見えるような何かがあったら、君にも知らせるよ」アレックスが付け加えた。「まあ、アレに期待するのはオススメしないけどね」アレックスが手で目を擦るとその目は黒に溶けていき、アレックスが引っ張るまで知覚のモヤがその顔を覆っていた。ミカはそこからどんな感情も読み取れなかったが、コーヒーバッグを指で叩く音からは明らかに緊張が感じられた。

ミカは第2モニターに振り向いて、第1モニター隣の艦橋の壁から顔を出した。そこには傷があった。書類によれば、焼け焦げた跡のようにその荒廃した世界の表面にできた、暗いクレーターだった。ペイルブルーの砂丘がそれを迂回したようであり、まるで如何なる代償を払ってでも回避しなければならなかったかのようだった。

«着陸船レッシュ-1が現在Te2-2658-2の大気圏に突入しました。無線通信よりX線通信に切り替えます。通信障害に備えてください»人工知能構成体Artificial Intelligence Constructカイオウニーがインターコムを通じて、"一般的な人間"と"感情のないロボット"の中間ぐらいに聞こえる声でアナウンスした。

ミカが第1モニターの視点を切り替えると、着陸船との接続にホワイトノイズが走った。外部カメラの視界に映ったのは、燃えゆく着陸船が惑星の地平線へと突進していき、その下の未知のものへと急降下していく光景だった。


オペレーターが、溶け落ちてきた廊下を撃ち落とした。現在オペレーターがいる兵器工場の最深部さえも、12の星々の爆弾で燃え尽きており、見かけ上回収できるものがあったりはしなかった。安定している廊下があったりもしなかった。すべきことは逃げる、ただそれだけだった。

その身体は矢じり状の胴体であり、今漂っている狭い工場通路ではなく広い空を急速航行するために設計されたものだった。オペレーターは支柱を駆け抜けて、落ちてくる機械をスイスイと回避した。その中で、背後にて廊下は溶けゆく津波と化し、どんどん粉々になっていった。天井が次々と液状化した。オペレーターは、脳からのサイオニック力によってそのマグマを上部へ打ち上げ、それにより自身の身体を浮遊させ続けるための集中力を欠いた。転落し始め、壁にかすり、突き出たパイプに何度か当たって跳ね返った。

パイプのひびが広がった。とげとげしい紫色のエクトプラズムの塊が、星間ボイドから集められて純粋燃料へと粉砕されたものが、にじみ出してきた。彼らに残ったあらゆる知性はとうにその精製過程でちぐはぐな状態まで減衰していただろうが、それでも何を失ったのかはわかっていた。誰が自分たちを精製したのかわかっていたのだ。彼らは叫んだ。

とげとげしい塊は追うように流れ出してきた。どのカーブにも、どの回避されたデブリにも、どのマグマで引き裂かれた廊下のパーツにも、塊は振り払われずにオペレーターの尾に飛びついてきた。オペレーターの胴体背部は部分的にマシンガンへと変形しており、絶え間ない保護象形文字が刻み込まれ、さらに圧縮奇跡論的エネルギーの嵐を廊下から受けていた。崩壊する機械は、奇跡論的ボルトによってスラグ2へと粉砕されていった。塊は無傷だった。それぞれが、衝撃の数秒前にグニャリと曲がったか、ボルトが通過するであろう自分たちの塊に穴を形成したのだ。

廊下に更なる歪曲が起こり、オペレーターは円柱状の巨大なトンネルに入った。工場下部の更に奥深くおよび直上へと通じていた。まばゆい光の点が、上部の出口から下を照らしていた。この工場セクターにて身体を切り替える賭けは成功だった。

バリバリ。

あるとげが、保護象形文字に屈する前に銃を締め付けて胴体から切り離した。エクトプラズムは液状化すると落ちていった。残ったとげの塊が廊下から流れ出してきた。オペレーターは上方へと急速移動し、胴体がさらに薄く空気力学的な形状に伸長し、焼け付くような痛みが思考に打ち寄せる間、精神がより強く前へと向かった。塊もそれに続いた。胴体を渦巻いて取り囲み、伸長し、オペレーターをすぐにでもバタンと閉じ込める繭へと再結合した。

遮音障壁が破壊され、轟音を立てた。オペレーターは繭を爆破して突き抜けた。トンネルは立ち消えた。出口を撃ち抜いた。減速し、表層世界の黒ずんだ荒地が見えてくる間に精神から痛みを消し去った。オペレーターは生還した。

遠方で動きがあった。すぐ近くに緑色のシンボルと、ある物体を遠く上部に備えた銀色の機械であり、空を燃やしていた。オペレーターは加速した。


ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ……

「エヌジェイ、同じ結果だったのか?」

ヘヨンは崖の端に立ち、周囲の砂から際限なく吹き込んでくる青い塵をはらい落として、自分たちの擁する分厚い立方体型検出器のモニターをその目で見つめていた。

NJも同様に自分の検出器を見ていた。適度に高い電磁放射線レベル(彼らの宇宙服でどうにかできないものではなかった)、高い奇跡論的粒子レベル、高い温度の計測結果であり、まるで現実の安定性が酔っているかのようにヒュームは上下に踊り狂っていた。端に近付くほど、ヒュームは低くなった。「そうね」

「よし、俺らはこれ以上先には一切行けないわけだ」

崖は自然形成物ではなかった。何マイルにもわたってクレーターを取り囲んでおり、突風が来て、ターゲットが何であれそれを取り囲む砂丘と地下の岩々を風が上昇させたときに形成されたものだった。NJが遠近感を失い、2次元の背景としてしか見れなくなるほどに広大だった。

«前進は不必要な危険となります。現在位置に待機して周辺を監視してください»

その危険に気が付くのに検出器はいらなかった。黒々と焼け焦げた世界の間には金属の露頭3があり、それは不明な本来の状態から全く認識不可能な形状に捻じ曲がった柱であり、不規則な地点に存在して明滅を繰り返していた。時々、その露頭は突然そびえ立った機械へと変形した。それは異質ながら人間の工学技術を連想させるものであり、やがて存在しない爆発に続いて自ら瓦解した。時々、露頭の上部の光が歪曲し、まるで水に回析したかのようなひずんだ風景を見せていた。

抑圧されし混沌だった。

「アレックス、解読は進んだ?」

«全然だね。カイオーニーがさらにプロセスを進めたけどまだ何も。あれはオルトサンで爆発をどうにかしないといけないんだ、って未だに考えてるけど、でも僕は……»

ケスラ-002からの送信にノイズが走った。

「アレックス、干渉から回復するわ。まだ聞こえてる?」

未だにノイズが走っていた。

「アレックス?」

«ケスラ-002の送信は完全にロストしました。原因は不明です»

数少ないことだったが、NJには自身の神経インプラントにダウンロードしたAIのコピーがあるために問題なかった。「ヘヨン、あなたは干渉は受けてる?」

「めちゃくちゃに。こりゃあまずいな」

はるか彼方にて、2つの銀色の点がクレーターの表面を曲がりくねって進んだ。後方のものは、前方のものを何とか避けて地面にぶつかった、明るいエネルギーのボルトを発砲した。攻撃を受けていたほうは速度を上げ、地面から離れるように持ち上がると突然現れてきた露頭を辛うじて回避した。2つは近づいていった。

「ヘヨン、行かないと」

「ああ、クソ!」彼は既に、着陸船から2人が取り出していた探査機に向かって走り出していた。宇宙服が彼に力をかけたせいでぎこちない足取りで動いていた。NJが続いた。

«そのまま前進して問題ありませんが、アノマリー群の監視は可能な限り継続してください»

探査機の外装は、探査機に期待されるそれというよりは装甲車のようだった。これは、異星人との戦闘が将来迫るとなったらNJが抱きうるくらいの慰めにしかならなかった。ヘヨンは探査機の暗い金属メッキに取り付けられたはしごを登り、その頂点にあるハッチをガッと開けて、そこに飛び降りた。NJが後に続いた。車輪が回転し、空中へと青い塵の雲を打ち出して、やがて雲は彼方へと消えていった。


奇跡論的ボルトの1つが命中した。オペレーターを刺し貫いて電気奇跡論的バッテリーを薄切りにし、胴体の後部半身をバラバラに引き裂くほどの強烈な爆発を引き起こした。脳のサイオニックスは鈍化していった。瞬間的な自由落下に陥り急落下していった。ドローンは遠かったが、最後の一撃に近づいていった。

オペレーターの脳内回路がブンと音を立てた。オペレーターは身体を切り替えて、その胴体から抜け出した。


着陸船レッシュ-1は、輝く金属製の灯台のように砂漠から突き出ていた。NJとヘヨンが探査機から走り出て、着陸船の黒焦げたエンジンや地表に突き刺さった降着装置の分厚い脚の横を走り去る間、2人の上にレッシュ-1はそびえていた。彼らは頭上で大きな轟音を聞いた。

«着陸船レッシュ-1に干渉できません。接続障害が継続中です»

船に手作業で乗り込むには遅すぎたが、探査者たちのどちらもそれに集中してはいなかった。彼らは矢じり状の車両が燃えるのを見ていた。瓦礫は、平凡な空の筋を切り裂くシアン色の炎と煙を残した。

そこから球体がこぼれてきて、彼らに向かって落ちてきた。

数秒後、それは探査機から数ヤード先に落下し、地面に強く叩きつけられて跳ね返ってから急停止した。いくらかのハッチが横開きし6本の機械肢が出てきて、地面から起き上がって直立姿勢になった。球体の最上部が伸びて筒状の"頭"になり、アンテナとカメラが側面の毎インチに取り付けられた。

「俺  うーん、エヌジェイ、俺らにファーストコンタクトで  できそうかな?」

ホログラム光のパネル群がその異星人の前に出現したが、すぐにグリッチのかかったポリゴンへと壊れて立ち消えた。頭部カメラの1つにはレンズに割れ目があり、火花が散っていた。機械肢がさらに伸びてその生物を持ち上げて、2人に向かって機械肢を引きずりながら近づいてきた。探査機のすぐ近くで止まり、リズミカルなエンジン音を立て、そして何度も大幅な弧を描くように砂から爪を振り上げた。

«オルトサン地球外言語の記号が観測されました。翻訳が進行中です»

「オルトサン?」メッセージはそう読めた。

「嘘? それとも正確な情報なの?」NJは尋ねた。

「まあ、どっちもちょっとはあり得るんじゃないか」

NJは自身の宇宙服の手首にあるコンピューターパネルをタップした。カイオーニーは仕事をこなした。ホログラムがそこから明滅して現れ、粗雑なオルトサン語に翻訳された返答を表示した。

「味方だ」

もっとハイピッチなエンジン音が返ってきた。

遠くから轟音が鳴った。矢じりを撃ち落とした宇宙船が彼らめがけて飛んできて、連星の前の黒い点となった。異星人の機械肢は速度を上げ、見えないほどのスピードで地面に刻んだ。翻訳のない記号群だった。雑に筆記されて内容がグチャグチャになり、時折の突風でメッセージが取り除かれた。片言のメッセージだけが残された。

「聖なる兵器働く者。新兵器を攻撃、聖なる兵器を破壊。12の星々が攻撃。ついてきた」

轟音が大きくなってきた。異星人はさらに記号を付け加えた。

「教えてくれ、新兵器脅かす……」何かよくわからないものが後に続いた。「……を」

NJは再びタップした。「よくわからないの」

同じメッセージがもう一度筆記された。

「よくわからないんだってば」

低いエンジン音があった。NJは異星人が急接近してきたために一歩下がり、その爪が彼女の腕を掴むと悲鳴を上げた。黄色い閃光が走り、彼女のホログラムが歪曲して、新たな形状に変形した。ゲートウェイの2つの恒星と3つの惑星の表現であり、彼らのいる星から広がった近隣の恒星群へとズームアウトし、大きくカメラを回転させ、ある超巨星の彼方の軌道上にある広大な惑星の月へとズームインした。繰り返しだ。指示だったのだ。

異星人は一歩下がった。轟音は今や一番のボリュームを誇っていた。その宇宙船は表面に降下し高速でやってきて、もはや黒いシルエットではなくなった。それは横向きに倒れた銀色のピラミッドであり、全面から銃身が伸びていて、輝く光輪の間に浮いていた  光輪の1つは上に、1つは下にあった。砂が下側の光輪の端に吹き付けた。それが近づくほど、NJは側面を一周する長い緑色の線で描かれた奇妙な偶像のパターンをよりしっかりと見ることができた。

「ちくしょう」ヘヨンは呟いた。「俺らは終わりだ」

NJは静かに、パニックになった自身の呼吸をコントロールしようと試みた。突然、脈動する感覚が自身の身体に走るのを感じた。何十年も前に奇跡論を試みてから一度もそんな感覚はなかったが、親しみある感覚としてそれは訪れた。何かがエーテルを歪曲させていた。

その宇宙船は探査機から今や数ヤードほどの距離にあった。光輪の間で旋回して照準を合わせた。機械的な高音と共に、輝く奇跡論的ボルトが銃身から連続かつ高速で発射された。異星人の機械肢はいくつものキネト災害的象形文字の間を跳び、ボルトは金属の体から数インチ反射して、攻撃者を強く打ち付けた。ボルトがいくつもクレーターを残したが、異星人は止まらなかった。宇宙船はさらに速く発砲した。

1本の機械肢が象形文字を残し、砂に最後のメッセージを描いた。

「神聖なる第四位よ永遠に」

象形文字がぐらついた。ボルトの稲妻のごとき一撃が、腕や頭部を刈り取った。半身が落下し、残りは背後へと緊急脱出した。宇宙服が彼女の感覚の多くを阻害していたが、NJにはまだ遺体からあふれる燃え盛る臓器やオレンジ色の血の匂いがわかるかのように感じられた。

その宇宙船は再び旋回した。銃身はNJとヘヨンに向けられた。まさにトラックのヘッドライトに照らされた鹿だった。NJの心臓は強く、強く、どんどん強く鼓動した。銃身のシャフトから白いエネルギーのきらめきが下りてきた。彼女は目を閉じた。

………

彼女は目を開けた。銃身からの光は消えていた。新たな光が彼女の目に差し、目がくらんで視界が普通に戻るのに時間を要した。その宇宙船は揺らめいていて、ありえない色で染められた水のように波打っており、少しずつ点滅ていった。クローキング障壁だった。突風と共に、攻撃者は見えなくなった。消え去ったのだ。

«接続障害が停止しました。ケスラ-002とのコンタクトが復旧されました。着陸船レッシュ-1に干渉しています。送信されたデータが神経インプラントによって記録されました»

着陸船のタラップが滑り落ちてきて、そこに繋がっているエアロックハッチが開かれた。分厚いパネルが探査機のそばにバラバラに滑り出てきた。機械アームが出てきて、その横に掛け金をかけて着陸船の格納スペースにガチャンと引き上げた。それらの機械群が、空の生物災害コンテナを遺体のそばに降ろした。

«研究と最終的な軌道エリア-11への輸送のため、その死体を回収してください»

NJは吐きそうになった。彼女はゲートウェイの連星に向き直った。彼女のホログラムは未だにあの異星人の指示を繰り返していた。ズームアウト、カメラ回転、ズームイン。ズームアウト、カメラ回転、ズームイン。ズームアウト……

彼らに何が起こっていたのだろうか?


特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。