隠れ潜む奈落の恐怖
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「あら、書類整理ですか。精が出ますね」
 書類庫で整理をしていた冴島にそう話しかけたのは、同じく財団のエージェントである立花だった。
「整理っていうかね、Neutralizedオブジェクトの報告書をね。こいつらもいつまた活性化するか判らないだろう? だから定期的に読んで、忘れないように努めてるんだよ」
「確かにそうですね。でもあんまり長居はしない方が良いのでは?」
「ああ、もう全部読み終わったからな。まったく、こいつらがまた活性化したらたまったものじゃない」
 冴島は肩を竦めると、持っていた報告書の写しを棚に押し込、もうとして立花に向き直る。
「そうだ立花、このオブジェクトをみてくれ」
 ずいと出された写しには、SCP-014-JP-J と書かれていた。
「みろこれを、全く恐ろしくて堪らないオブジェクトだが、ほらここだ、10年ちょっと前に無力化が確認され、なんと現在はエージェントに」
「ま、まあこの件についてはいいじゃないですか。10年も無力化状態なんですから」
「そういう心づもりじゃダメだろ。いいか、Neutralizedオブジェクトの報告書がある理由ってのはだな」
「それはまた今度伺います。ね、ほらもう出ましょう。出ますよ!」

 ああああ、もう! なんとかごまかせたけど! あの記録って一生残るんでしょう!? 一生って言うかずっと! 信じられない! 出世したらあの記録消してもいいのかしら。でもそう言うので職権乱用してばれたら…。仮に出世できたとしてもう私おばあちゃんでしょう? その頃にばれたら…最悪通り越してる! あああもう!

「おや、そんなとこで何面白い格好しとるんや」
「え、あ、かか、カナヘビさん」
「なんやずいぶんと仰け反っとったで。頭抱えて」
「こ、これは、その、うぅ」
「君、なんやおかしいで。……ってなんでや! なんで泣いとるんや……んもう!!」

[監視カメラがアラームを鳴らす]
[保安職員が駆けつける音]

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