発端
始まりは、今月中旬に「元財団職員」を名乗る人物から送付された6本のDVDだった。付属の文書には、財団が行っている残虐行為の中で特に苛烈な実態を記録しているという旨が記載されており、編集部内で映像の検証が実施されることとなった。以下は付属文書の内容を記録したものである。
情報提供者からの声明全文
私は財団の元職員として「博士」と呼ばれる立場にあった者です。財団職員として働いていた頃、私は「人類のため」に「異常存在」を「確保・収容・保護する」という財団の理念を信じていました。財団は決して正義の組織ではありませんが、この財団の理念のためには仕方のないことだと思っていました。
しかし、現実は私の中の「理想の財団」を打ち砕きました。
財団は「人類のため」と言いながら、その人類を、それも罪もない子供達を手にかける組織であることを私は知ってしまったのです。私は財団のあまりの蛮行に耐えられなくなってしまいました。
それから私はせめてもの罪滅ぼしとして、子供達を笑顔にするための商品の開発を行ってきました。しかし、財団は私のそんなささやかな活動すら妨害してきたのです。もう私は財団に対する怒りが抑えきれなくなりました。
恋昏崎新聞社様にご提供した映像には目を覆いたくなるような光景が記録されています。皆様には、財団がどれほど酷い所業を行っているか知ってほしいのです。「人類を守る」という名目のためにその人類の未来そのものたる子供達を犠牲にしている…これが財団という組織の実態なのです。私の情報提供によって少しでも財団の実態が知れ渡ってくれることを願います。
DVDに記録されていた映像には実験に参加した児童の個人情報が含まれていた上、一部の媒体には検証中に体調不良を訴える記者が続出するほど凄惨な様子が記録されていたことから、映像そのものの公開は差し控えさせて頂くこととする。どうか御了承願いたい。本記事では最も生々しい実態が記録されていた映像記録を紹介する。
実験の開始と進行
▲少年が転移した場所と見られる写真。
足元は花崗岩らしき物質で形成され、
周囲には火山が確認できる。
まず、映像は殺風景な部屋にオレンジ色の作業服を着た十代前半と見られる少年が、財団の構成員と見られる男に「D-65320」と呼ばれる場面から始まる。財団構成員が「これから財団が開発したアーティファクトの試験を行う」と宣言し、部屋に用意された布団で就寝するよう指示される。布団には世間の人気キャラクターが怪物から逃走するイラストが描かれている事以外、特に変わった所は見当たらない。少年はそのまま布団の中に入り、画像が一旦暗転する。
しばらくの時間が経過すると、それまでと全く異なる場所に切り替わる。少年は「こんな話は聞いていない」「前回と違う」と呟きながら混乱する様子を見せる。それから程なくして、周囲から大きな叫び声が木霊する。驚いた少年が周囲を見渡すと、背後から棍棒や槍といった武器で武装した、謎の生物集団が少年に向かってくる様子が映し出される。謎の生物は世間で言う「ゴブリン」又は「オーク」のように見え、明確に少年を追跡している事が分かる。少年は恐慌状態となり慌てて逃げ出す。それから数十分程度の間、少年が生物集団から必死に逃亡する様子が記録されていた。少年は何度も「死にたくない!」「財団の皆さん助けてください!」と訴えるも、財団からは無情にも「実験を継続して下さい。無許可での離脱は終了理由となります」と告げられてしまう。これ以降、財団から特にこれと言ったアクションは見られない。
少年の末路
▲財団の人体実験によって変わり果てた少年の写真。腰から上は原型を留めていなかったことが確認済み。
そうこうしている内に少年の体力が底を尽き始め、追跡してきた生物集団に完全に追いつかれてしまう。周囲を囲まれてしまった少年の手足は震え、底知れない恐怖を感じているのが見て取れる。少年は生物集団に向かって必死に命乞いを行うが、それから間も無くして少年に対する暴行が始まった。少年は繰り返し「助けて!」と叫ぶも、生物集団が止める様子はない。それ所か、少年へのリンチを楽しんでいる節すら感じられる。地獄絵図そのものとしか言いようがない。やがて、少年が完全に力尽きた所で再び画面が暗転する。
その後、映像は再び財団の施設と思われる部屋へ移る。部屋には先程実験に使用した毛布が映っているのが確認できる。その毛布の中へ突然死体が出現し、それと同時に財団の構成員が「実験終了」と宣言した。直ちに死体の確認作業が行われるが、見るも無残な姿である。顔が潰れてしまっていたものの、死体の背丈や服装から死体が先程の少年である事に間違いはない。最後に財団構成員と見られる男が「今回は42分か、新記録だな」「まだまだ実用化には遠いな」と呟いたところで映像は終了する。
映像記録から財団の蛮行が明らかに
従来、重犯罪者しか存在しないとされたDクラス職員に十代前半程度の児童が存在していたことは驚くべき事実である。財団が未成年者に対しても容赦なく牙を剥くことが証明された格好だ。更に、実験開始時の少年の発言から、映像記録の実験の前にも何かしらの実験が実施されていたことも見逃せない。財団が実験に参加した少年に対し、実験の内容についての最低限の説明もしていないことは明白である。少なくとも少年に死ぬつもりが無かったことは実験中に「死にたくない」と叫んだことからも確認できる。生命に危険が及びかねない危険な実験に参加しているという自覚が少しでもあれば、もう少し反応は違ったはずだ。
また、我々が注目したのは財団が少年の「終了」に言及したことだ。少年が実験からの離脱許可を求めた段階で「終了」に言及したということは、最初から少年のことを「消耗品」としか考えていなかったということである。普段からDクラス職員をこのように扱っている事は想像に難くない。
実験終了後の財団構成員の態度は財団の残酷さが良く表れている。死体の出現と同時に実験終了を宣言した手際の良さから、財団では同一のアーティファクトによる実験を繰り返し実施していた可能性が高い。「新記録」という発言から、他に実験台となった児童達が複数存在し、その多くが犠牲になったことが伺える。その場合、児童達がどのようにして財団に関わったかが重要になる。当新聞社は児童達の身元についてできる限りの調査を実施したが、現在まで一切の情報を入手できていない。我々は財団による拉致の可能性が存在すると考えている。
映像中の実験で使用された毛布には「ワンダーファクトリー重工総研博士™️」と記載されていたが、もちろん財団による稚拙なカバーストーリーであることに疑いの余地はないだろう。財団が卑劣にも他の団体・人物に自らの罪を擦り付けながら、危険なアノマリーの開発を行っていることは明白である。情報提供を受けたDVDは財団の蛮行を記録した決定的な証拠と言える。我々は今後もこの問題について追及していくつもりだ。【柳瀬 栄・大久保 凛子・ジョージR】
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