ORUCA運用開始から1年半 ICカード申請者数が目標を達成

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タイトル: ORUCA運用開始から1年半 ICカード申請者数が目標を達成
著者: Tark_IOL
作成年: 2023

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ORUCA運用開始から1年半 ICカード申請者数が目標を達成
201█/5/18 12:41

撮影: 恋昏崎新聞社

ORUCA運用開始から1年半 ICカード申請者数が目標を達成　恋昏崎新聞社（新八大路市）

新八大路市への新たな入境手段として導入された「ORUCA（おるか）システム」の利用申請者は、市の発表によれば、人数は非公表ながら運用開始から1年半で目標を達成した。『広報しんはちおおじ』5月号によれば、その成果は朝の入出境口の混雑の緩和という形で表れており、担当者は「僅か1年半での目標達成は予想を上回る」とし、「交通の利便性と市内治安の維持のバランスを取ることで、市民生活や企業活動を支援していく」所存であると発言している。先月には、遠野妖怪保護区区役所の対外担当と観光担当が新八大路市を訪れ、市の担当者や開発主体である理外学研究所とイワカガミ奇跡工芸社の技術者の説明を受けるなど、市外への導入の兆しを見せている。

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ORUCAシステム導入の背景

パラテック・バブルの終焉、そして日本の表社会における経済低迷以降、新八大路市の経済活動と人口動態は長らく微増ないし横ばいの状態を維持してきた。しかし近年の超常社会はその経済を回復させつつあり、またSCP財団や世界オカルト連合による過激な収容排撃活動の継続や政治的紛争といった情勢は、日本国内の超常市民の脅威であり続けてきた。

▲夜の立川市内（多摩モノレール立川北駅前）

そのために、近年日本国内の超常都市における人口動態は増加に転じている。これを背景にした市内の地価上昇は、学生にとって悩みの種となっており、朝夕の混雑や収容排撃活動の危険性を堪えて、八王子・立川市内に生活基盤を置く学生も多い。こういった事情から院立鎌倉大学や新八大路超常科学高等専門学校を中心に、市内の教育機関は、入出境手続きの簡略化や入出境口の増設等を市に要望してきた。

しかし、現状、入出境手続きは旅客レベルでは十分に簡略化されており、これ以上の簡略化が見込めないこと、現実出血を予防し空間の安定性を保持したいことから、上記の要望の達成は叶えられなかった。そこで市当局が目を付けたのが鏡原市と小田急電鉄の超常セクションが運用を始めていた、交通系ICカードを利用した転移手順、「EKICAシステム」である。

EKICAシステムとORUCAシステム

鏡原市は基底次元の相模原市と重なって位置する隔離次元であり、両市は住民らの呼称するところによる「鏡映し」の関係にある。

▲EKICAシステムに対応した規格のある小田急電鉄4000形電車（この車両は非対応）

EKICAシステムは奇跡論紋様が刻印された特定のカードを所持する小田急小田原線の乗客を、市内において同一の位置を走行中の、市交通局の車両に転移させる奇跡術機構である。常に市内の地形が変容し、"道"を設置し難い鏡原市の状況においては、唯一安定的に、そして規模の割に安価かつ、スムーズな進入方法である。しかし、このような"相互乗り入れ"は鏡原市特有の鏡写しの地勢を最大限利用したものであり、新八大路市当局者の期待に反しEKICAシステムを新八大路にそのまま移植することは不可能であった。

201█年、新八大路市は次世代交通システム協議会を設置し、理外学研究所とイワカガミ奇跡工芸社を技術顧問として招聘した。三者は検討の末、ゲニウス・ロキと結界工学を活用した真的神隠しの人為的発生と制御を利用した転移手法の確立を考案した。

▲ORUCAシステムの認証フロー

この手法は、基底現実上の特定地域（結界）内に侵入した人間を、隔離次元上の特定地域（結界）に転移させるという点では類似している。加えて、転移時には対象者に対する認識をずらし、他者に認識されないようにした上で、対象者の視覚を封じることで自身の位置感覚を困惑させ、基底現実における対象者の現実性を低減することとしている。しかしこの状態のままでは、転移機構が対象者を認識することが著しく困難となり、神隠しの制御が不可能となってしまう。そのため、対象者を識別するためのマーカーを利用する。転移システム側が「居るか」と問いかけ、マーカー側が「居るよ」と答える構図から、ORUCAシステムとORUYOカードのネーミングが来ているわけである。

また、市政府との契約を持つゲニウス・ロキに紐づいた契約機構と、市庁舎における厳格な申請時検査の二重チェックによって、不正入境の予防を図っている設計であることは、EKICAシステムからの着実な進化であり、新八大路市は日本政府の施政下にあるとしてSCP財団や世界オカルト連合の不当な侵入を防ぐという明確な意思表示であると言えよう。

本紙学生記者による利用体験

新八大路市内の大学に通学する本紙学生記者もまた、ORUCAシステムを利用して、市外から通学している。ここでは紙面を割いて彼によるレポートをお送りしよう。

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ORUCAシステムの利用申請は、新市街中心部に鎮座する近未来的な新八大路市役所本庁舎、ではなくその隣の平成中期の趣がある、第一合同庁舎の3階に設けられているORUCA申請窓口にて行う。第一合同庁舎には、公安調査庁の超常セクションの分室があるとまことしやかに囁かれているため、入庁には少しの緊張感がある。

足を運んだのは3月初め、書類審査の期間を勘案すれば新学期前に利用権を取得・更新する最後のタイミングということもあり、若者を中心にみどりの窓口もかくやといった大混雑であった。整理券を自動発券機から受け取り、数少ない椅子に着席。順番が回ってくれば大量の申請書類や収入印紙と共に窓口に向かう。戸籍謄本や住民票、学生証などの申請書類の内容の再確認を含むいくつかの質問に答えれば、通常であれば約2週間後の受け取り期間を提示される。

▲配布されたアイマスクとカードケース

3週間後、記者は第一合同庁舎にカードの受け取りに向かった。列に並び、窓口ではシステムの利用法について一通りの説明を受けたのち、ORUYOカードとアイマスク、そして利用ガイドを手渡され、一連の申請は完了する。ORUYOカードはカードとはいうものの、一連の機構をサイバネ規格準拠のICカード乗車券サイズに収めることは不可能であったためか、カードケース型の筐体と一体で扱う。申請時には偽装のための外装とカードデザインを指定することも可能だが、今回は選択肢は限定されていた。

新学期投稿初日、ORUYOカードを携えた記者は午後のゼミに合わせて多摩都市モノレールの駅に足を運んだ。中途半端な時間ということもあり、駅はある程度すいていたが、朝夕の通勤通学ラッシュ時には大いに混雑する場所である。周りの乗客と同じようにカードを自動改札機に通し、その後やって来た車両にホームから乗り込んだ。空いていた座席に腰を下ろし、アイマスクをかけて仮眠の姿勢をとると、周囲の気配が感じられなくなり形容しがたい非現実感が全身を襲う。

▲走行中の多摩都市モノレール1000系電車

1分経ったか、それとも30分経ったか、胸ポケットに収納していたORUYOカードが振動し、転移の通知が行われた。これを合図にアイマスクを外せば、車内の幾人かも同時にアイマスクを外していたようで、窓の外を眺めれば、千人町はずれの山林上空を走行している新八大路モノレールの車内にいることがすぐに分かった。まもなく車両は大学の最寄り駅に停車し、普段の通学と同じように改札を通過し正門前へ到着した。

本来であれば新八大路市内への越境は、入出境ゲートを利用しなければならない。入出境証の忘れ物が許されない点やお役所質問の繰り返しなど海外旅行に来たのかと疑問を投げかけたい手続きで精神をすり減らしての通学は、期末前や徹夜後にはかなりこたえるものがある。これらがないということは利用者にとってありがたいが、しかし1限が不可避な大学1年生や社会人など、通勤通学ラッシュに投げ込まれることが必至である人々にとってはどちらをとっても辛いものがあるだろう。（レポートここまで）

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ORUCAシステムの課題

申請者数が増えているといっても、ORUCAシステムは問題も抱えている。

ORUCAシステムはマーカーの信頼性に通行者の安全を全面的に担保するものであり、万一転移作業中にマーカーをロストした場合、対象者は次元のはざまに消えていくことになる。実際、201█年8月の実証実験中には視察中の嘉瀬健次郎市長（当時）が行方不明になり、1か月後に新八大路市内の山岳を登山中だった市民と遭遇するといった事件も起きた。この事件の為に、ORUCAシステムの導入は1年延期された。市当局はこの間で安全を確保したと説明しているが、安全性を疑問視してか、入出境ゲートを利用する市民も非常に多い。

▲偽装先の1つとされている西東京バス

また、ORUCAシステムの実証実験は当初、多摩都市モノレール沿線の大学の夏季休講期間に行われたが、運用開始後は8時～11時に稼働が停止されている。これは沿線大学の1・2限に合わせて混雑率が250％を優に超える多摩都市モノレールの状況を考慮したもので、身体が接触し合う状況では認識阻害の奇跡術の効力が著しく減退するためであった。現在は対象路線を多摩都市モノレールだけではなく、特別運行のバス路線の設定などで拡大を図ってはいる。しかし現状、ORUCAシステムはその導入理由に十分に応えているとは言えないのが実情であり、東京都と新八大路市にはORUCAシステムの安全性の更なる確保と入境手段の拡充が求められるのは言うまでもない。

【山ノ手マイケル・学生記者（匿名）】

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～お知らせ～

本記事の執筆に協力してくれた学生記者・笹葉修くんですが、新八大路市当局の不当な干渉により、「関心団体"恋昏崎新聞社"との関係を持ったこと」を事由に、所属する保遍都短期大学にて「停学」の懲戒処分を受けることとなってしまいました。笹葉くんは、新八大路市内の取材において八面六臂の活躍をし、SCP財団や世界オカルト連合におもねる超常企業の卑劣な実態や市内に無断で侵入した財団や連合による悪質な活動を白日の下に照らし出してきました。恋昏崎新聞社は、このようなジャーナリズム精神にあふれた彼を今後も応援すると共に、市の圧力に屈し彼を懲戒処分に処した大学当局と断固として対決していく所存です。読者の皆さまのご理解とご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

201█年6月20日
編集部一同

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 「新八大路市」 しんはちおおじ

日本政府特事関連の出先機関やJAGPATO加盟組織の拠点を有する、多摩地域から進入可能な超常都市。日本政府の施政権が及ぶ。陸軍・異調施設跡地にある現代的な新市街と、丘陵地帯・山間の千人町（学術機関群と旧市街）から構成される。

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かつては多摩地域の裏往還として蒐集院関係者や忍者などに知られていた隔離次元だが、江戸時代に八王子千人同心が発見。戊辰戦争時に九十九機関が確保し、その後陸軍・調査局に引き渡された。戦後、基底現実の焼野原から多くの市民や知的アノマリーが移住し闇市やバラックを形成したことで、今日の発展の基礎が築かれる。現在は、行政関係者・加盟組織構成員・学生を中心に5-10万の人口が推測されている。

q9mNP✱✱✱✱

15日前

認知抵抗や奇跡術の素養がある稀有なひとが見れば、同じアイマスクをした人々があちこちにいる奇妙な光景が広がっているってことにならないか。来週あたり、前途明るい学生共を凝視して遅刻させに、多摩モノレールに乗りに行こうか。

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q774lvipdk

12日前

ヲチでは局所的に話題になったらしいぞ。時刻表に無い上、中が良く見えない不思議な路線バスに、一時アイマスクの売り上げが高まったドラッグストア。オレが見に行った時にはもうなかったから、飽きたか、対策されたか、検閲部隊に一掃されたか…。

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hutunohito55

4日前

条約に則るとのたまいながらも、素知らぬ顔のままヴェールの下で悪逆非道を重ねる「認可企業」のなんと多いことか。そんな奸賊を衆人の前に引きずり出してきたことに感謝するどころか、奸計に嵌めるとは許されない。市当局も糾弾するべき。

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fkeQ5✱✱✱✱

4日前

流石に子供を利用するのは信じられない。恋昏崎は超常組織からの児童の保護を掲げているのに、この新聞社は自らの手先のように扱っている。役所やほかの住人はなぜ傍観しているのか。

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gpvvc✱✱✱✱

3日前

保遍都短大は根性がないな。まあもとはといえば伊呂波学大から逃げた腰抜けどもの集まりか。というか、編集部、もう実名報道されてるからって名前出すなよ…。

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z4Lms✱✱✱✱

3日前

やれ子供だ学生だと言っても、もう名前も出る二十歳だろ。一昔前の呪術社会ならとっくに一人前の年齢だし、現代でも成人だ。自分のケツは自分で拭くことだよ。

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ShinshigaiOL

3日前

新八大路市議会や日本政府は「風説書」や「観測気球」などとして恋新を"活用"してきた節があるが、流石に危険地帯に突き進む学生を黙って見送った今回の事案は看過しがたいらしい。地雷原に鉢逢坂に利家塚に異調の隠れ遺跡に某宗教団体に噂の研究室に非公然拠点と、確かにろくでもないところばかり。市議会議事録でもお怒りの様子の女傑・継枝先生と恋新との大バトル、期待しています。

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cv7bb✱✱✱✱

2日前

「ぶちあげたのはいいものの、大して益がないからその内フェードアウトする」に、どうせ使いに行けない、とよほ商品券500円分を賭けるぜ。しかしかわいそうな学生さんだ。恋昏崎には素晴らしい支援団体が他にあるのに。

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SRC717

2日前

どこまで信じるかは読む人次第ですが、まあ不法侵入に限らず色々やっちまった（あるいはやらされてしまった、か）みたいですね。
ちなみに、大学の広報部の発表はこれね。八大路のイントラネットに入れないと読めないのは要注意。
rkos://shojnet.hoheto-td.ac/news/201X/06/71725/

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 本年5月の事件に関連する学生懲戒処分について - 保遍都短期大学（rkos://shojnet.hoheto-td.ac）

広報室　201█年6月16日掲載

　本学は、本日付けで、1人の学生に対し無期限の「停学」の懲戒処分を行いました。

　既に本学は新八大路市警察からの指導を受け、この学生が関心団体「恋昏崎新聞社」と雇用関係を持った事実から、平成██年5月25日に既に本学から「訓告」の懲戒処分を行っていました。しかし新たにこの学生が学生の身分を悪用し、住居侵入罪、器物損壊罪、不正競争防止法、また新八大路市制定の複数の条例の違反で逮捕・起訴されたことを受け、本学は「停学」の懲戒処分を決定しました。

　本学として、「学生の懲戒処分に関する規定」に基づく、厳正な審査・手続きの結果、以上の行動・行為は、同規定第5条に定める行動・行為に該当することを認め、学則第4章第3節にて定める懲戒処分を実施しました。

　本学は、同様の事例が二度と発生しないよう、学生教育の改善に努める所存です。

201█年6月16日
保遍都短期大学学長　耳本 美之

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